D-3300Aの写真
KENWOOD  D-3300A
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥198,000

1986年に,ケンウッドが発売したプリメインアンプ。1982年のCDプレーヤーの発売により,デジタル オー
ディオの時代が到来して3年,当時,多くの技術者がD/Aコンバーター をアンプと直結した構成を理想と考
え,D/Aコンバーター内蔵型アンプを開発していました。そして,1986年にALPINE/LUXMAN が世界初
のD/Aコンバーター内蔵型プリメインアンプLV-109を発売し話題になり ました。そして,それに次いで2番
目に発売されたのが,同社の当時の高級シリーズ「D-3300シリーズ」のプリメインアンプD-3300A でした。

D-3300Aに内蔵されたD/Aコンバーター部は,4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター+左右独 立
ラダーネットワーク型D/Aコンバーター+7次バターワースFDNR型ディスクリートローパスフィルターと いう
基本的には,「D-3300シリーズ」のCDプレーヤーであるD-3300Pと同じ豪華な構成になっていま した。
4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターにより,デジタル信号のサンプリング周波数44.1kHz付 近
の高調波雑音成分が176.4kHzという高い周波数帯に移り,44.1kHz,88.2kHz,132. 3kHzのスペ
クトラムが大幅に減衰され,後段で,位相特性等音質への影響の少ないゆるやかなローパスフィルターの使
用が可能となっていました。そして,マルチビット形の基本となる非常にオーソドックスなタイ プのラダーネット
ワーク型D/Aコンバーターは,IC内部の電流源と抵抗の精度で変換精度が決まるという特長 があり,レーザー
トリミングにより精度を追い込んだ高精度なD/AコンバーターICを搭載して,高い変換精度を実現させてい
ました。また,このD/Aコンバーターは上述の4倍オーバーサンプリングに対応して高速なものとしてグリッ
チの発生をなくし,グリッチャー回路は排除されていました。後段には,帯域リップルが少なく位相特性の良い
ディスクリート構成の7次バターワースフィルターが搭載され,信号経路に能動素子を持たないFDNR(Frequ-
ency Depndent Negative Resistance=周波数依存型負性抵抗)構成として,SN比を高めていました。
デジタル入力は,PLLデータ復調器による自動切換でサンプリング32kHz,44.1kHz,48kHzに対応し,
光デジタル,コアキシャル・デジタル,DATモニターの3系統が搭載されていました。

アンプ部には,L-02Aで 開発されたケンウッド自慢の「DLD(ダイナミック・リニア・ドライブ)サーキット」が搭
載されていました。これは,ローパワーアンプとハイパワーアンプを持ち,約50Wまでの通常使う出力領域
の大部分を歪率0.001%以下のクオリティの高いローパワーアンプが受け持ち,それを超える瞬間的な大
出力時のみハイパワーアンプに電子的に切り換えるという方式でした。これにより,通常の使用状態では,
ローパワーアンプを,ハイパワーアンプに対応した300W以上出すことのできる巨大な電源部で駆動するこ
とになり,結果として電源インピーダンスを低くすることができ,スピーカーの負荷変動にも強い良好な特性を
得ることができるというものでした。

D-3300Aの内部とリアパネル

KA-1100Dに採用さ れたNew VIG(Voltage Interface Gate)回路も搭載されていました。これは,それ
まで別個に性能追及が行われていたアンプ部と電源部の関係を見直し,強力な電源部をアンプの一部として
設計するという考えのもと,アンプ部と電源部を理想的にインターフェースしようとする回路で,出力トランジス
ターのブートストラップをファイナルトランジスタのベースにかけ,さらにバッファを挿入するというものでした。
さらに,このVIG回路は,ファイナルトランジスターのベース,エミッター間の電圧を常に一定にすることにより
アンプのファイナル段の動作によって発生する変動成分がプリドライバー段やドライバー段に影響する現象も
抑制し,よりピュアな信号伝送が可能となっていました。
NEW VIG・DLD回路を支える電源部は,強力なものが搭載されていました。ピッチ詰の防振対策が施された
大型トランスと合計72,000μFの大型コンデンサーにより構成され,D/Aコンバーター部,イコライザー部は
独立巻線が使用されていました。また,回路側も高性能出力コンデンサーをディスクリート構成にして再生帯
域特性や電源供給能力が拡大されていました。

D-3300Aは,アナログディスクにも対応した設計で,MCカートリッジ用,MMカートリッジ用それぞれ専用の
イコライザーを搭載したデュアルイコライザー方式が採用されていました。MMイコライザーアンプは,Hi-gm
=40mS超ローノイズFET入力,MC用イコライザーアンプは,γ’bb=4π超ローノイズトランジスタ入力と
それぞれ独自の特性,性能に設定され,歪率は測定限界レベル,RIAA偏差はともに±0.2dBというすぐれ
た性能が実現されていました。また,MC入力は100μVという微小信号にも対応した特性となっていました。

ケンウッド自慢のΣドライブも搭載されていました。これは,スピーカーまでもアンプのフィードバックの中に 組
み込んで最適なスピーカー駆動をしようという ものでした。D-3300AのΣドライブは typeBで,スピーカー端
子までをNFループに取り込むという考えはそのままに,通常の2線式の結線で使いやすくなっていました。
アースポイントをアンプのスピーカー端子に集中させ,アンプの動作基準点を明確化し,デジタルノイズ等もア
ンプの信号系へ影響を及ぼしにくい構成となっていました。また,出力端子までのリレー,スイッチ類もNFルー
プ内に取り込んで,出力端子でダンピングファクターは1000という値を実現していました。

入力系は,デジタル入力が光,コアキシャル,DATモニターの計3系統,アナログ入力がフォノ,チューナー,
CD,AUX1,2,テープ1,2,3の合計8系統が備えられていました。
トーンコントロールは,変化特性にすぐれたNF-CR型で,BASS,TREBLEとも2種類の中心周波数が選べ,
バイパスするラインストレートスイッチも装備されていました。ラウドネスは,中心周波数100Hzで,レベルを
連続的に可変できるようになっていました。

以上のように,D-3300Aは,当時のケンウッドの上級機シリーズ・「D-3300シリーズ」のプリメインアンプと
して,また,ケンウッド初のD/Aコンバーター内蔵アンプとして力の入った内容を持っていました。明るくクリア
な音はケンウッドらしいものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



D/Aコンバーター内蔵。
デジタル伝送で,
アンプのあり方は変わった。


◎光,コアキシャルのデジタル伝送とアナログ伝送,
 3系統のCD入力で,CDプレーヤーに応えます。
◎光デジタル伝送にふさわしい
 高性能D/Aコンバーター部
◎CD,DAT,DBS・・・デジタル入力を
 ダイレクトに受け入れます。
◎デジタルソースを忠実に再生するDLD
◎強力な電源と高性能アンプを
 巧みにインターフェイスするVIG回路
◎ダンピングファクター1000(20Hz〜1kHz)
 デジタルノイズを排除するΣドライブ
◎低出力カートリッジも使いこなす。
 デュアルイコライザー回路
◎NewVIG・DLDを支える強力電源部
◎デジタル時代にふさわしい豊富な入力系統

●トーンコントロールをバイパスするラインストレート回路
●変化特性にすぐれたNF-CR型トーンコントロール
●ウィンキング・パワーインジケーター
●連続可変ラウドネスコントロール
●ボリュームツマミの指示位置を表示する発光ポインター
●新開発インシュレーター



●SPECIFICATIONS●


●総合特性●

定格出力 20Hz〜20kHz両ch動作8Ω(THD0.004%) 150W+150W
                 6Ω(THD0.006%) 180W+180W
1kHz両ch動作8Ω(THD0.004%)        160W+160W
          6Ω(THD0.004%)        190W+190W
          4Ω(THD0.004%)        220W+220W
全高調波歪率 AUX→SP8Ω:POWER-IN→SP8Ω
  定格出力時 20Hz〜20kHz      0.004%
  1/2定格出力時 20Hz〜20kHz  0.003%
PHONO→SP8Ω VOLUME−20dB
  定格出力時 20Hz〜20kHz     0.005%
混変調歪率
 (60Hz:7kHz=4:1)
定格出力時 8Ω 0.003% 
周波数特性 オーバーオール
 AUX→SP CP-301A 1Hz〜100kHz+0dB,−3dB
 AUX→SP         1Hz〜150kHz+0dB,−3dB
PHONO RIAA偏差
 PHONO→REC OUT 20Hz〜20kHz±0.2dB
出力帯域幅(歪み率0.04%時 8Ω) 5Hz〜50kHz
SN比(IHF-A)定格出力時 PHONO(MM)2.5mV        87dB
PHONO(MC)250μV        78dB
CD,TUNER・AUX・TAPE PLAY 110dB
トーンコントロール BASS   200Hz  50Hz±10dB
        400Hz  100Hz±10dB
TREBLE 3kHz    10kHz±10dB
        6kHz    20kHz±10dB
フィルター
SUBSONIC −3dB 18Hz 6dB/oct
ラウドネスコントロール
     (VOLUME−30dB)
100Hz/0〜+8dB
ダンピングファクター(50Hz) 1000
入力感度および
 入力インピーダンス(定格出力時)
 PHONO(MM)             2.5mV 47kΩ
 PHONO(MC)             0.1mV 100Ω
 CD・TUNER・AUX・TAPE PLAY 150mV 47kΩ
PHONO最大許容入力
 (PHONO→TAPE REC)
PHONO(MM)1kHz 210mV(0.003% THD)
PHONO(MC)1kHz  8mV(0.003% THD)
出力レベルおよび
 出力インピーダンス(TAPE REC PIN) 
150mV 220Ω



●D/Aコンバーター部●

対応サンプリング周波数(自動切換)
32kHz,44.1kHz,48kHz
SN比
105dB(EIAJ)
ひずみ率
0.003%(EIAJ)
チャンネルセパレーション
115dB(EIAJ)
デジタル入力系
OPTICAL受光電力     −14〜−23dBm
COAXIAL           0.5Vp-p/75Ω
DATモニター          0.5Vp-p/75Ω
デジタルアウト(COAXIAL) 0.5Vp-p/75Ω




●電源部その他●

電源電圧・電源周波数 100V 50Hz/60Hz
定格消費電力
(電気用品取締法に基づく表示)
430W
電源コンセント 電源スイッチ連動   2個100W
電源スイッチ非連動  1個400W 
最大外形寸法 475W×170H×424Dmm
重量 19.7kg

※本ページに掲載したD-3300Aの写真,仕様表等は,1986年
 11月のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無
 断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
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