1979年にローディー(日立)が発売した高級カセットデッキ。ローディーはカセットデッキの分野でコンビネーション3ヘッドをはじめ
Lo-D D-5500M
STEREO CASSETTE DECK ¥220,000
数多くの画期的な技術を開発し,実用化してきました。ローディーは1978年,初めてコンピューターによるバイアス,テープ感度,
イコライザーのオートチューニングをカセットデッキに搭載した画期的な1台D-5500を発売しました。このD-5500Mは,その翌
年にマイナーチェンジを受けたメタル対応モデルでした。
D-5500Mに搭載されていたオートチューニングシステムは,ATRS(Automatic Tape Responce Search)と称され,4ビッ
ト1チップのマイクロコンピューターにより,バイアス,テープ感度,イコライザーがそれぞれ16ステップの中から最適値に調整され,
16×16×16=4096通りの組み合わせの中から最適値を選ぶというものでした。これにより,すべてのテープで,平坦な周波数
特性とバイアス不足による歪みの防止,ドルビーの最適なキャリブレーションなどの効果が得られるということでした。最新のチュー
ニングシステムに比べれば,20秒以上時間がかかるなどの問題点もありましたが,何より,ボタン1つ,全自動でテープに最適な
チューニングが行われることが,当時驚異的なことでした。そして,チューニングした結果のテープのデータの保存は3種類まで行え
ました。また,バイアス,テープ感度を示すメーターが独立して設けられ,ATRSのインジケーターと共にチューニングが行われてい
る過程が目で確認できるのが何ともかっこよかったものでした。
ATRSでチューニングを行わない場合は,マニュアルでテープポジションを選びましたが,ノーマル,クロム,フェリクロム,メタルの4つ
のポジションが選べ,いわゆるタイプ1〜4まで全てに対応していました。そのほか,機能的にユニークな点として,テープ走行の操作
部がそのまま脱着式のワイヤレスリモコンになっていて,デッキから離れて操作ができたことがありました。
走行系は,滑らかな回転を誇るローディー自慢のユニトルクモーター搭載のDDによるキャプスタン駆動方式を採用し,デュアルキャプ
スタン方式の走行系で,0.028%(WRMS)の高精度なテープ走行を実現していました。ユニトルクモーターは,原理的にコッキング
要因のないブラシレス,コアレス,スロットレスの3相モーターで,8極に着磁された駆動用ドーナツ型マグネットと電気的に120°ずつ
ずらした6枚の8分割3相コイルから発生するトルクが,相互に補完しあい,絶えず一定のトルク総量を生み出して,滑らかな定速回転
を得るという優れたモーターでした。
ヘッドは,コンビネーション3ヘッドを開発したローディーならではの「1.4mmクローズギャップ・メタルR&Pコンビネーションヘッド」を搭
載していました。このヘッドは,録音,再生それぞれ理論的に解析されたギャップ長を持つHigh Bsフェライト素材の録音,再生ヘッド
を,ギャップ間隔1.4mmという狭間隔でひとつのコンパクトなケースに納め,チタン溶射皮膜による鏡のような滑らかなヘッド面とあい
まって,2ヘッド機と変わらぬ滑らかなテープ走行および安定したヘッドタッチ,タイムラグが極少のアフターモニターを実現したものでし
た。そして,このヘッドは高精度を維持するために,高精度に加工されたダイキャスト製のヘッド台座に取り付けられていました。
以上のように,D-5500Mは,日立ならではの総合技術が生かされた先進的で高性能なデッキでした。ここで開発された技術は,同
社のテープデッキのみでなく,各メーカーのテープデッキに影響を与えたと思います。時代を代表する名機だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
メタルテープも含め,各種テープの
イコライザー,バイアス,感度を自動検出する
ATRSシステム搭載。
さらに赤外線ワイヤレスリモコンボックスを
装備した3ヘッドDDメタルカセットデッキ。
ローディーデッキの最高級モデルです。
◎ローディーデッキの頂点に立つ最高級モデル
◎コンピューターがテープ特性を自動検出
◎ワイヤレスリモコンボックスを装備
◎1.4mmクローズギャップメタルR&Pコンビネーションヘッド
◎ヘッド台座に高精度ダイキャスト基盤
◎ユニトルクモーター採用DDメカニズム
◎2モーターメカニズム
◎専用IC採用ロジックコントロールシステムによる
フェザータッチオペレーション
◎オートリワインド・プレイ/ストップ機構
◎メモリーリワインド機構
◎ワンアクションタイマーON・OFFスイッチ
◎ダブルドルビー・NRシステム
◎3点ピークインジケーター
◎エアダンプ方式カセットドア開閉機構
◎REC MUTE機構
◎可変・固定2系統入出力端子
●Specifications●
トラック型式 | 4トラック2チャンネル |
録音・再生ヘッド | クローズギャップメタルR&Pコンビネーションヘッド×1 |
消去ヘッド | ダブルギャップメタル消去ヘッド×1 |
モーター | ユニトルクDDモーター×1
DCモータ×1 |
ワウ・フラッター | 0.028%(WRMS) |
周波数特性 | (マニュアル,ATRS)
20〜22,000Hz(メタル) 20〜22,000Hz(クロム EX) 20〜20,000Hz(フェリクロム) 20〜20,000Hz(ノーマル ER,UD) (ATRS)
|
S/N
メタルテープ 3%歪みレベル 聴感補正 |
69dB(DOLBY・NR ON)
60dB(DOLBY・NR OFF) |
(ATRS仕様)
使用マイクロコンピューター | 4ビット1チップマイクロコンピューター |
バイアス可変ステップ | 16 |
感度・イコライザー調整ステップ | 16 |
使用電池 | SUM3×2(メモリー保護用) |
(赤外線リモートコントロール仕様)
方式 | パルス幅変調方式 |
使用マイクロコンピューター | 4ビット1チップマイクロコンピューター |
使用電池 | SUM3×4 |
(その他)
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 45W |
外形寸法 | 435W×186H×320Dmm |
重量 | 14kg |
※本ページに掲載したD-5500Mの写真,仕様表等は1980年5月のローディーの
カタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
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