Lo-D D-8
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥69,800
1982年に,ローディー(日立)が発売したカセットデッキ。日立はローディーブランドで数多くの
すぐれたカセットデッキを出していました。昭和48年(1973年)に世界初のコンビネーション3
ヘッド搭載の3ヘッドカセットデッキを発表した技術力は高く評価され,コンビネーション3ヘッド
方式は,3ヘッドカセットデッキの標準的な方式ともなりました。そして,それ以降も多くの3ヘッ
ドデッキを発売していきました。そんなローディーは,1982年に,D-9,D-8,D-7という型番
の3ヘッドデッキの「D-1桁シリーズ」を発売しました。D-8は,その中の中間の機種でした。

D-8は,ローディーらしくコンビネーションヘッドによる3ヘッド構成で,録再ヘッドには,ロー
ディー自慢の「新ハイパボリック形状R&Pヘッド」が搭載されていました。このヘッドは,新形
状チタン溶射R&Pヘッドをベースに,開発されたものでした。新形状チタン溶射R&Pヘッド
は,素材に新開発の高飽和磁束フェライト材(High Bsフェライト)を採用し,良好な録音特
性の得られる6μのギャップ長をもつ録音ヘッドと高域まで周波数特性を伸ばした1μギャッ
プ長の高精度再生ヘッドを,1.4mmの狭間隔でひとつのコンパクトなケースに収めたもので
テープ走行面は,安定したヘッドタッチとテープ走行に悪影響をもたらす凹凸を排除した上で
チタンを溶射し鏡のように滑らかな走行面を実現したものでした。「新ハイパボリック形状R&
Pヘッド」は,この録再ヘッド間に小さなVカットをいれ,コンター効果(ヘッドとテープの当たり
から起こりがちな低域周波数のうねり)を改善したものでした。



走行系は,キャプスタン駆動用に電子制御DCサーボモーターを,早送り,巻き戻し,巻き取り
用にDCモーターを搭載した2モーターメカニズムが採用されていました。さらに,デュアルキャ
プスタン方式を採用して,より安定したヘッドタッチと安定したテープ走行を実現していました。
テープをガッチリホールドするデュアルキャプスタン方式でのキャプスタンのループ外の走行
系の外乱の排除により,変調ノイズも大幅に低減していました。

コンピューターコントロールシステムと称していたマイクロプロセッサーを搭載した操作系は,
フェザータッチの操作と多彩なコントロール機能を実現していました。早送り,巻き戻しからダ
イレクトに再生に移れるなどの軽快な操作はもちろん,PLAYボタンを押した位置まで巻き戻
して再生,停止できるコンピュータメモリーリワインド,オートリワインド・プレイ/ストップ,REC
MUTEボタンを押すだけで,4秒間の無信号録音部分を作ったのち,自動的にポーズ状態に
なるコンピュータREC MUTEなどの機能が搭載されていました。
さらに,D-8では,前後15曲までの頭出し選曲機能DRPSが搭載されており,ランダムに最
高15曲までランダムに予約再生もできるようになっていました。また,曲のイントロを次々に
連続再生していくSCANAPLAY機能もありました。そして,途中まで録音されたテープの未
録音部分の最初を頭出しするブランク・スキャン機能も搭載されていました。さらに,頭切れ
録音が心配となるリーダーテープの早送りメカも搭載されていました。

テープセレクターは,NORMAL,CrO2,METALの3ポジションが装備され,ノイズリダク
ションとして,DOLBYのBタイプとCタイプが,録音系と再生系それぞれに装備されていまし
た。また,バイアスアジャスト機構も装備されていました。
表示部は,2色FLデジタルピークメーターと,3桁の電子カウンターが配され,マルチデジタ
ルディスプレイと称されていました。
フロントパネルのデザインは,こうしたディスプレイにイメージを合わせたのか,操作ボタンを
はじめ,スライド式の録音ボリュームなど,フラットでシャープなイメージを押し出したもので,
それまでのローディーのデッキとは少しイメージと異なるものとなっていました。

以上のように,D-8は,当時のローディーの3ヘッドデッキの中で,中級機の主力モデルとし
て,機能面でもマイクロプロセッサーにより多機能を実現し,音質的にも同社自慢の3ヘッド
デュアルキャプスタンメカニズムを採用するなど,内容の濃いモデルとなっており,コストパ
フォーマンスにすぐれた1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新開発R&Pヘッドに加え,
多彩な選曲・探索メカ。
音と機能のドルビーC3ヘッド。

◎新ハイパボリック形状R&Pヘッド搭載
◎録再独立のダブルドルビーB-C回路を内蔵
◎好みの音質で調整録音。バイアスアジャスト
◎デュアルキャプスタン2モーターメカ
◎15曲まで予約可能のランダムメモリー選曲
◎もう1台デッキを加えランダムダビング編集
◎全16曲早送り頭出し演奏のSCANAPLAY
◎未録音部分を探し出すブランク・スキャン機構

●フェザータッチ操作のコンピューターコントロールシステム
●頭切れ録音の心配のないリーダーテープ早送りメカ
●コンピューターオートREC MUTE
●コンピューターメモリーリワインド
●オートリワインドプレイ/ストップ
●ワンアクションタイマーON・OFFスイッチ
●タイマーアラーム
●2色FLデジタルピークメーター
●電子カウンター
●スライド式録音ボリューム
●リモコン端子
●初段FETアンプ




●主な仕様●

録音再生ヘッド 新ハイパボリック形状R&Pコンビネーションヘッド×1
消去ヘッド マルチギャップフェライト 
メタル消去ヘッド×1
モーター 電子制御DDモーター(キャプスタン用)×1 
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター(WRMS) 0.035%  ±0.08%W・Peak
周波数特性 メタル   20~21,000Hz  30~19,000Hz±3dB 
クロム   20~20,000Hz  30~18,000Hz±3dB
ノーマル 20~18,000Hz  30~17,000Hz±3dB
S/N メタルテープ 
     3%ひずみ 
     レベル聴感補正 
DOLBY・C・NR・ON 74dB 
DOLBY・B・NR・ON 68dB 
DOLBY・NR・OFF   60dB  57dB(新EIAJ)
入力インピーダンス/感度 LINE IN  50kΩ以上/mV 
MIC(適合)300Ω~5kΩ/0.3mV
出力インピーダンス(負荷) LINE OUT   50kΩ以上 
HEADPHONE 8Ω~2kΩ
電源電圧 AC100V 50/60Hz(切換不要)
消費電力 25W
外形寸法 幅435×高さ110×奥行272mm
重量 5.2kg
※本ページに掲載したD-8の写真,仕様表等は1982年8月の
 Lo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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