Lo-D D-90s
STEREO CASSETTE DECK ¥79,800

1979年に,ローディーが発売したカセットデッキ。ローディーは,1973年に,日本初(世界初)のコンビネー
ションヘッドを搭載した3ヘッドデッキを発売するなど,カセットデッキにおいて先進的な技術を持つモデルを次々
開発・発売していきました。
1960年代に登場したカセットデッキは,日本のメーカーの努力で本格オーディオ用テープデッキとして急速に
進歩し,1970年代に入り,当初無理と思われた3ヘッド化も実現されました。しかし,3ヘッドデッキは10万円
を超える高級機に限られていました。また,1978年には,アメリカ3M社が,世界初のメタルカセットテープとし
て”Metafine”を発売し,それに対応したメタル対応デッキが発売されるようになりました。ローディーも,高級
機を中心に従来モデルのメタル対応化を図る一方,メタル対応の新シリーズとしてD-90s,D-80s,D-70sの
「Sシリーズ」を発売しました。その中の最上級機であり,高級機の技術3ヘッド構成や走行系を思い切って中級
機に投入したモデルがD-90sでした。

D-90sの録再ヘッドは,ローディー自慢の「1.4mmクローズギャップメタルR&Pヘッド」が搭載されていました。
このヘッドは,「3ヘッドを開発したローディー」が,メタルテープが聴けるメタル対応ではなく,メタルテープのすば
らしい音質を生かしきるメタル対応をめざして開発した,当時最新のコンビネーションヘッドでした。
新開発の高飽和磁束密度フェライト材(High Bs フェライト)によるフェライトヘッドで,録音・再生が独立専用設
計のR&Pヘッドの利点を生かして,録音ヘッドには6μ,再生ヘッドには1μ高精度ガラスギャップが設定され,
フェライトを活かすギャップ長と加工が施されていました。ギャップ間隔1.4mmという狭間隔でひとつのコンパクト
なケースに納め,2ヘッド機と変わらぬ滑らかなテープ走行および安定したヘッドタッチ,タイムラグが極少のアフ
ターモニターが実現されていました。ヘッドの台座には,取り付け精度やヘッドタッチなどをしっかり保持する高精
度ダイキャスト基盤が採用され,ガタやズレが極小に抑えられていました。

走行系は,キャプスタン駆動用にDCサーボモーター,早送り,巻き戻しおよび巻き取り用にDCモーターを搭載し
た2モーターメカニズムが採用されていました。さらに,テープ巻き取り側と繰り出し側それぞれにキャプスタンと
ピンチローラーを配したデュアルキャプスタン方式が採用され,高い精度により,正確なテープ走行,レベル変動
を抑えたヘッドタッチが実現されていました。こうした高精度の走行系により,ワウ・フラッター0.04%が実現さ
れていました。
また,ローディー自慢のIC技術により複雑なロジックコントロール回路をワンパッケージIC化した専用ICを採用
したICロジックコントロールが搭載され,回路の簡略化が実現されるとともに,コントロールボードに軽く触れる
だけのフェザータッチオペレーションと,どのモードからでもダイレクトに次の動作に移れ,誤動作によるメカニズ
ム,テープの損傷の心配がない設計となっていました。

テープセレクターは,METAL,EX(CrO),ER/UD(NORMAL),FeCrの4ポジションが装備され,いわゆる
TYPETからTYPEWまで,すべてのテープに対応していました。ノイズリダクションとしてドルビー(Bタイプ)NR
が搭載されていました。ドルビー回路は,録音,再生が独立した2回路4系統のダブルドルビーNRシステムで,
3ヘッドならではの録音同時モニター時にもドルビー効果が確認できるようになっていました。また,テープ感度
に応じてレベル調整ができるREC CAL(レック・キャリブレーション:録音感度調整)が装備され,さらに,バイア
スアジャスト(録音バイアス微調整)も装備されていました。
その他,REC MUTE,オートリワインド・プレイ/ストップ機構などが搭載されていました。入力は,LINEに加え
て,MIC入力も装備され,INPUTスイッチで切り換えるようになっていました。レベルメーターは,大形のVUメー
ターが搭載され,中央部にLEDによる5点ピークインジーケーターも装備されていました。

以上のように,D-90sは,中級機ながら,基本構成,機能など,上級機の3ヘッド機に準ずる高度な内容をもっ
たコストパフォーマンスにすぐれたカセットデッキでした。低域から高域までバランスのよい音も,録音機として使
いやすいものでした。薄型の筐体に各機能や表示部がバランスよくまとめられたデザインは,通産省選定のグッ
ドデザインにも選ばれていました。ローディーのすぐれたデッキ技術を示した1台だったと思います。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




真のメタル時代は今始まる。
頭脳明晰。メタル3ヘッド。

音質に自信。メタル3ヘッド
◎1.4mmクローズギャップメタルR&Pヘッド
◎録音同時再生モニターが可能
◎ヘッド台座に高精度ダイキャスト基盤


高精度のデュアルキャプスタン
◎より確かなテープ走行,ヘッドタッチを追求

安定の2モーター・ICロジック
◎走行系を無理なく分担。2モーターメカ
◎専用IC採用ロジックコントロールシステム


美しさのダブルドルビー
◎REC CAL付ダブルドルビー・NR・システム

多彩な付属機能,機構
●別売リモコンユニットRB-2000(¥10,000)により
 遠隔操作が可能
●メタルポジション付バイアス/イコライザー同時切換
 テープセレクター
●オートリワインド・プレイ/ストップ機構
●ワンアクションタイマーON-OFFスイッチ
●MPXフィルター
●REC MUTE機構
●大形VUメーター
●5点ピークインジケーター
●エアダンプ方式カセットドア開閉機構
●インプットセレクター
●モニターインジケーター

●D-90s Specifications●

トラック形式
4トラック2チャンネル
録音方式
ACバイアス
消去方式
AC消去
録音・再生ヘッド
1.4mmクローズギャップメタルR&P
コンビネーションヘッド×1
消去ヘッド
ダブルギャップメタル消去ヘッド×1
モーター
DCサーボモーター(キャプスタン用)×1
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター
0.04%(WRMS)
周波数特性
20〜21,000Hz(METAL)
20〜20,000Hz(EX,CrO
20〜18,000Hz(FeCr)
20〜18,000Hz(UD,ER,LH)
S/N
(メタルテープ,3%ひずみレベル聴感補正)
68dB(DOLBY・NR ON)
60dB(DOLBY・NR OFF) 
入力インピーダンス/感度
LINE IN:50KΩ以上/60mV
MIC(適合):300Ω〜5kΩ/0.3mV
出力インピーダンス(負荷)
LINE OUT:50kΩ以上
HEAD PHONE:8Ω〜2kΩ
使用半導体
IC×5,トランジスター×43,ダイオード×38
LED×10
電源電圧
AC100V 50/60Hz
消費電力
23W
外形寸法
435W×110H×267Dmm
重量
7kg
※本ページに掲載したD-90sの写真,仕様表等は1979年11月
 のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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