Lo-D D-99
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥99,800
1981年に,ローディー(日立)が発売したカセットデッキ。ローディーは,1973年に,世界初のコンビネー
ションヘッドを搭載した3ヘッドデッキD-4500を発売し,1978年には,これまた世界初のコンピュータによ
るオートチューニング機構ATRSを搭載したカセットデッキD-5500を発売するなど,高い技術を誇り,画期
的なモデルを開発・発売していました。1979年には,D-5500のメタル対応モデルD-5500Mの弟機とし
てD-3300Mを発売し,1980年にはD-1100MBを発売して,プレステージモデルとしてのD-4桁シリー
ズは完成度が高められていきました。そして1981年には,D-4桁シリーズの集大成的な1台・D-2200MB
が発売されました。このD-2200MBの技術を生かし,より一般的なモデルとしてほぼ同時期に発売された
のがD-99でした。
D-99には,D-5500で開発・初搭載され,D-3300Mで改良・強化されたオートチューニングシステムであ
るATRS(Automatic Tape Responce Search)がさらに改良されて搭載されていました。テープ1巻ご
とに,最適バイアス,最適録音感度,最適補償量をマイクロコンピュータが自動検出,録音回路をコントロー
ルすることで,(1)バラツキのない平坦な周波数特性を獲得(2)各テープの感度補正を行うため,ドルビー録
音感度補正が不要(3)バイアス不足による歪み悪化がない(4)不適当なバイアスによるMOLの低下がない
などの効果が得られるシステムでした。ノーマル,クロム,フェリクロム,メタルの4つのテープポジションごと
に1つずつデータのメモリーが可能となっていました。また,テストトーンの録音が不可能なリーダーテープ部
のとき,自動的に早送りして再びATRSテストを行う機構と,タイマー録音時にもATRSが働く,自動ATRS録
音システムが搭載されていました。ノイズリダクションは,ドルビーNR(Bタイプ)及び(Cタイプ)が搭載されて
いました。
ヘッドは,コンビネーション3ヘッドを開発したローディーならではの「チタン熔射R&Pコンビネーションヘッド」
を搭載していました。素材に高飽和磁束密度のフェライト材(High Bsフェライト)を採用し,6μのギャップ長
をもつ録音ヘッドと,1μギャップ長の再生ヘッドを,1.4mmというきわめて狭間隔で,ひとつのコンパクトな
ケースに収めた構造で,ヘッドタッチがきっちりと得られるようになっていました。テープ走行面は安定したヘッ
ドタッチとテープ走行に不利な凹凸を一切排除した上で,酸化チタンをプラズマ溶射してコーティングし,鏡の
ように滑らかな走行面を形成していました。また,ヘッドとアンプ初段のFETとのダイレクトカップリングにより
SN比及び周波数特性を改善していました。
走行系は,キャプスタン駆動用にDCサーボモーターを,早送り,巻き戻し,巻き取り用にDCモーターを搭載
した2モーターメカニズムが採用されていました。さらに,慣性モーメント1,687g・cm/s2,直径66mmの大
型フライホイールを採用して,ワウ・フラッター0.032%の安定したテープ走行を実現していました。
新形状のチタン熔射R&Pヘッドは,それ自体十分なヘッドタッチが得られる形状となっていましたが,さらに
デュアルキャプスタン方式を採用して,より安定したヘッドタッチと安定したテープ走行を実現していました。
ヘッドの磁性粒子の微小化と鏡のように滑らかなテープ走行面,デュアルキャプスタン方式でのキャプスタン
のループ外の走行系の外乱の排除により,変調ノイズも大幅に低減していました。
マイクロプロセッサーを搭載した操作系は,フェザータッチの操作と多彩なコントロール機能を実現していまし
た。早送り,巻き戻しからダイレクトに再生に移れるなどの軽快な操作はもちろん,PLAYボタンを押した位置
まで巻き戻して再生,停止できるコンピュータメモリーリワインド,オートリワインド・プレイ/ストップ,REC MUTE
ボタンを押すだけで,4秒間の無信号録音部分を作ったのち,自動的にポーズ状態になるコンピュータREC
MUTEなどの機能が搭載されていました。
レベルメーター,テープカウンターなどの表示系は,上級機のD-2200MBとほぼ共通で,2色デジタル表示
ピークメーター,テープ走行経過時間分秒表示のELAPSED-TIMEと通常の3桁表示が並列したテープカウ
ンターが搭載されていました。
以上のように,D-99は,ローディーらしいすぐれたデッキ技術が総合された使いやすく音のよいカセットデッキ
でした。内容的にもD-2200MBをいくつかの点でコストダウンした形になっており,高域から低域まで元気な
音を持つ音は,音楽を楽しく聴かせるところもありました。
また,D-99には,ブラックパネル(ややブラウンに近いですが・・・)のD-99MB(なぜか¥5,000ほど価格が
高くなっています。)も登場しました。
Lo-D D-99MB
STEREO CASSETTE DECK ¥105,000
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
新形状チタン熔射R&Pヘッド搭載。
ドルビーC内蔵のATRS・3ヘッド。
◎新形状チタン熔射R&Pコンビネーションヘッド
◎ATRS(自動周波数特性補正)システムを搭載
◎テープヒスノイズを20dB低減するドルビーCタイプ
◎ワウフラ0.032%デュアルキャプスタン&2モーター
◎テープ走行経過時間を分秒表示,ELAPSED-TIME
◎コンピューターコントロールシステムの多彩な機能
◎テープ編集に便利なコンピューターオートREC MUTE
●2色デジタル表示ピークメーター
●再生系と録音系を明確に分離したコントロールスイッチ
●リモコンユニットRB-100(¥6,000別売)接続可。
●D-99 Specifications●
録音再生ヘッド | 新形状チタン熔射R&Pコンビネーションヘッド×1 |
消去ヘッド | フェライトガード付ダブルギャップ消去ヘッド×1 |
モーター | DCサーボモーター(キャプスタン用)×1 DCモーター(リール用)×1 |
ワウ・フラッター(WRMS) | 0.032% ±0.065%W・Peak |
周波数特性 | メタル 20~21,000Hz 25~20,000Hz±3dB クロム 20~21,000Hz 25~19,000Hz±3dB ノーマル 20~19,000Hz 25~18,000Hz±3dB フェリクロム 20~19,000Hz 25~18,000Hz±3dB |
SN比 メタルテープ 3%ひずみ レベル聴感補正 |
DOLBY・C・NR・ON 75dB 71dB(EIAJ) DOLBY・B・NR・ON 69dB 65dB(EIAJ) DOLBY・NR・OFF 61dB 57dB(EIAJ) |
入力インピーダンス/感度 | LINE IN 50kΩ以上/100mV MIC(適合)300Ω~5kΩ/0.4mV |
出力インピーダンス(負荷) | LINE IN 50kΩ以上 HEADPHONE 8Ω~2kΩ |
ATRS仕様 | 使用マイクロコンピューター:4ビット1チップマイクロコンピューター バイアス可変ステップ:16 ゲイン可変ステップ:16 イコライザー可変ステップ:16 |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz(切換不要) |
消費電力 | 29W |
外形寸法 | 幅435×高さ110×奥行282mm |
重量 | 6.3kg |
※本ページに掲載したD-99/D-99MBの写真,仕様表等は1981年
9月のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社
に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引
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