D-C88の写真
PIONEER  D-C88
CARRIABLE DAT RECORDER ¥198,000

1994年に,パイオニアが発売したDATデッキ。DATに力を入れていたパイオニアは,据え置き型ですぐれた
DATデッキを数多く出していました。そして,同社初(そして唯一)の可搬型DATデッキとして発売されたのが
このD-C88でした。

D-C88の最大の特徴は,ポータブル機でありながら,1992年のD-07で実用化され,その音質の良さが評
価されていた「96kHzハイサンプリング・ワイドモード」を搭載していたことでした。20kHzを超える高域成分の
録音・再生を実現するためにサンプリング周波数を標準の48kHzから2倍の96kHzまで高めたもので,これ
により,録音・再生周波数も従来の2倍の44kHzまでにも達していました。ハイサンプリング実現のために,
テープスピードを倍速化し,ヘッドドラムの回転数も高速化していました。さらに,信号処理LSIの動作速度,ヘ
ッドアンプの帯域も従来の2倍にされていました。

従来の標準モードにおいては,同社のCDプレーヤに搭載され高い評価を得ていた,パイオニア自慢の「レガート
リンク・コンバージョン」を搭載し,オーバー20kHzの高域を含む自然な音楽再生を実現していました。これは,テー
プに記録された信号をもとにデジタル信号処理を行い,記録前のオリジナル信号を推定してデータの間をなめらか
な関数曲線で結ぶ技術で,1/f減衰特性にしたがった20kHz以上の音の再現までも可能となるものでした。
A/Dコンバーターには44kHzにまで至るワイドレンジに対応した18ビットのマルチビット方式コンバーターが採用
されていました。D/Aコンバーターには,1ビットタイプのハイスピード・パルスフローD/Aコンバーターを搭載して
いました。D/Aコンバーターは,上記のリガートリンク・コンバージョンを内蔵したLSIとして搭載されていました。

DAC信号処理タイミング制御用ゲートアレイLSI4ヘッドドラム

ハイサンプリング・ワイドモードでの高性能な録音・再生性能をささえるヘッドは高出力AT(ALL TRACK)ヘッドを搭
載していました。これは,トラックのトレース方向に対して20μmの均一なトラック加工を施した構造で,ヘッド両側に
ガラスを溶着して高回転に備えた高い耐摩耗性を実現し,ギャップには特殊なポリシング加工を施して,安定したテー
プタッチを実現した高性能ヘッドでした。そして,録音・再生とモニター専用,それぞれ2個1組の4ヘッドドラムを新開
発し,それにともなう信号処理タイミング制御用ゲートアレイLSIも新開発して搭載していました。このヘッド構成により
録音同時モニターが可能となっていました。



入力系は,アナログ(RCAピン・ライン/標準ジャック・マイク切換式)をはじめデジタル(同軸,光)を搭載し,デジタル入
力は96kHzハイサンプリング(HS)モード,48kHz標準(SP)モード,32kHz長時間(LP)モードの3モードに加え,CD
と同じサンプリング周波数の44.1kHz標準(SP)モードも搭載され,CD等からの録音(SCMS対応),CD等への音源
またはマスターテープの制作にも使えるようになっていました。出力はアナログ(RCAピン)とデジタル(同軸)が搭載され
ていました。デジタル出力は96kHzモードにも対応しており,対応したDACを使用すると驚くほどの再生音が実現できま
した。マイク入力アンプには,過大入力時に対応したアッテネーターや声の帯域の録音の際に効果的なローカットフィルター
も装備されていました。

A4サイズ

ポータブル(可搬型)DATとして,A4サイズ大に作られ,スタジオ,屋外など様々な場での使用が可能な専用バッテリー
が搭載できるようになっていました。手触りで分かる凹凸ボタン表示や,光サイン,消費電力の少ない液晶パネル表示
など可搬型の使用目的にあった設計が採用されていました。液晶パネル表示は,ポップアップ構造やバックライトも搭
載され,利便性が高められていました。また,設定したオペレーションを固定して誤ってボタンやスイッチに触れた場合
の誤動作を防止するキーホールド機能も搭載されていました。バッテリーをはじめ接続端子,ボタンなどはすっきり筐
体内に収める設計がとられ,持ち運びにも便利なデザインとなっていました。

以上のように,D-C88は可搬型DATデッキとしてはやや大きめの筐体に,すぐれた性能と機能性を実現し,高い評価
を得て,ロングセラーモデルとなりました。特にHSモードで録音・再生された音はすばらしいものでした。ヘッドホン端子
に良いヘッドホンをつないで聴くと,その音のすばらしさには驚かされることもあるほどで,デジタル再生機としてみても
すぐれた1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ワイドレンジ・テクノロジーの世界が広がる。
96kHzハイサンプリング
キャリアブルタイプDATレコーダー。


◎新開発4ヘッド搭載
◎高音質を追求した±(プラスマイナス)
 電源の専用バッテリー採用
◎大きくて見やすい
 バックライト付き液晶パネル
◎アナログ/デジタルの
 多彩な入力に対応
◎A4サイズ大のコンパクト設計
◎バッテリーチャージャー内蔵
◎多彩な機能で快適なオペレーション
◎ワンタッチ切り換え録音同時モニター
◎誤操作を防ぐキーホール機能
◎アッテネーター&ローカットフィルター
 装備マイク入力端子

◎新開発の4ヘッドドラムを搭載。
 録音状態をリアルタイムでチェック。
◎44kHzの超高音域まで録音・再生。
 96kHzハイサンプリング(HS)モード。
◎標準モードでも自然な音のニュアンスを再現する
 レガート・リンク・コンバージョン搭載。
◎小型・軽量でも音の妥協はしない。
 ワイドレンジリニアA/Dコンバーター&
 パルスフロー1ビットD/Aコンバーター。
◎CD感覚の快適な操作性を実現。
 TOC記録/再生機能を搭載。
◎キャリアブル対応のキメ細かな
 配慮が行き届いたデザインと機能。
◎44.1kHzのアナログ入力にも対応。
 多彩な録音・再生モードを装備。




●主な仕様●

型式 回転ヘッド方式デジタル・オーディオ・テープレコーダー
テープスピード 8.15mm/s(標準)
4.075mm/s(LP)
16.3mm/s(HS)
録音時間
(標準120分テープ使用時)

SP:最大120分,LP:最大240分,HS:最大60分
量子化ビット数 16ビット・リニア,12ビット・ノンリニア
サンプリング周波数
(SCMS搭載)
48kHz(録音・再生)
44.1kHz(録音・再生)
32kHz(SP:デジタル録音のみ・再生)
     (LP:録音・再生)
96kHz(HS:アナログ録音のみ・再生)
録・再周波数特性 HS:5Hz〜44kHz
SP:5Hz〜22kHz
LP:5Hz〜14.5kHz
SN比 90dB以上
ダイナミックレンジ 92dB以上
全高調波歪率 0.005%以下
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・PEAK)以下
アナログ入出力端子 マイク入力端子 標準ジャック6φmm 1系統3mV
ライン入力端子 RCA PIN 1系統 500mV
ライン出力端子 RCA PIN 1系統 500mV
デジタル入出力端子 同軸入力端子 RCA PIN×1 0.5Vp-p/75Ω
同軸出力端子 RCA PIN×1 0.5Vp-p/75Ω
光入力端子×1
寸法 300W×58H×230Dmm(つまみ等の突起物を除く)
重量 2.7kg(バッテリーパック搭載時:3.2kg)
消費電力 ACアダプター使用時録再:20W
ACアダプター使用時充電:24W
電源 ACアダプター 入力:AC100V/120V/230V(切換) 50/60Hz
          出力:DC±11V,+1200mA,−400mA
バッテリーパック:DC±7.2V,+1800mAh,−1100mAh
           (電池持続時間:約2時間SPモードEIAJ録再)

※本ページに掲載したD-C88の写真,仕様表等は1994年11月のPIONEERの
カタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したが
ってこれらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
でご注意ください。 
       
  
 
 
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