DENON SC-3000
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥128,000
1981年に,デンオン(現D&Mホールディングス)が発売したスピーカーシステム。デンオンは,前
年の1980年に,新しいデジタルオーディオ時代への対応を標榜した大型の3ウェイスピーカーシ
ステムとしてSC-5000を発売しました。その弟機として発売されたのがSC-3000でした。

SC-3000は,SC-5000同様に,オーソドックスなコーン型ユニットで構成されたオールコーン型
ユニットのシステムで
,全体にスケールダウンし,3ウェイのブックシェルフ型とされ,バランス良くま
とめられていました。とはいえ,当時のブックシェルフ型としては,高さ70cm・重量30kg以上と,
かなり大型で重量級のシステムとなっていました。



ウーファーは,30cm口径のコーン型で,振動板には,デンオンが開発したHigh-M・P(ハイムP)
振動板を使用していました。これは,紙パルプ
振動板の優れた面を生かしつつ,構造的に剛性を
高めるなど,弱点を補強したものでした。High-M・P振動板は,木材パルプよりヤング率が高く,
比重が小さい精製ラミー繊維(麻の一種)を木材パルプに配合し,入念に叩解処理を行って繊維
長の
分布をコントロールした後,紙を漉く新技術によって,リブパターンを一体構造で製造したも
のでした。
リブパターンは,5本の同心円状と13本の放射状リブによって形成され,コーン部静質
量を約10%も軽減していながら,従来の紙コーンより剛性を約2倍向上させ,大入力時における
振動板のたわみ(変形)を防止し,同時にピークやディップを抑え,高調波歪みを低減するととも
に平坦な周波数特性を実現していました。
駆動系は,直径156mmの大型フェライトマグネットが搭載され,195,000マクスウェルの総磁
束と,11,600ガウスの磁束密度の強力な磁気回路が構成されていました。また,マスバランス
を考慮した直径60mmのボイスコイルは,放熱効果の高いアルミボビンを使用し,最大許容入力
200Wを確保していました。
支持系は,リニアリティを改善したリニアモーションコルゲート曲線の大型フラットダンパーと発泡
ウレタンをロール状に成型し裏面から制動剤をコーティングしたエッジで構成し,直線性を高めて
いました。さらに,重量1.2kgの肉厚成型ダイカストフレームが,ユニット全体を支える重量級の
ウーファーユニットとなっていました。

スコーカーは,10cm口径のコーン型で,振動板には,High-M・T振動板を使用していました。
この振動板は,高分子化合物の一種である高弾性繊維(アラミド繊維)の織布をエポキシ系樹脂
で強化し,木材パルプよりも広帯域にわたって理想的な内部損失を維持するとともに,紙の約3
倍の硬さを確保していました。そして,このHigh-M・T振動板を,織布の折り目が互いに45度に
なるように2枚重ね合わせた二重構造とし,面剛性の方向性を均一にするとともに,さRに均一な
内部損失の広帯域化
を図り,ピストンモーション領域の拡大と分割共振周波数の共振Qの低域
化を実現し,周波数特性をより平坦化していました。
駆動系は,直径100mmの大型フェライトマグネットにより,70,500マクスウェルの総磁束と,
14,300ガウスの磁束密度を確保し,高能率化を実現していました。さらに,高耐熱ボイスコイ
ルとの組み合わせにより,高耐入力を実現していました。そして,スコーカーにも堅牢なアルミダ
イカストフレームが採用されていました。



トゥイーターは,5cm口径のコーン型で,中央部にセミドームが設けられた複合型ともいえる形状
となっていました。センタードーム部には,厚さ30ミクロンの特殊アルミニウム合金を使用してドー
ム部の面積を大きくして振動板部との指向性や音圧放射バランスをとっていました。振動板には
スコーカーと同素材のHigh-M・T振動板を採用し,ピストンモーション領域の拡大と分割共振周波
数の共振Qの低域化,周波数特性の平坦化を実現していました。

磁気回路は,直径100mmの大型フェライトマグネットを採用し,軽量・高耐熱のボイスコイルとの
組み合わせで,高能率・高耐入力を実現していました。
さらに,ダンパーを排し,振動板をボイスコイルボビンと直結することにより,駆動力の損失をなくし
振動系全体の軽量化をはかって,応答性を高めるとともに,最低域共振周波数を下げ(1.2kHz)
高域限界周波数を伸長して,再生帯域を拡大していました。そして,トゥイーターにもアルミダイカス
トフレームが採用されていました。

エンクロージャーは,ブックシェルフタイプの密閉型で,ブックシェルフタイプとしては,最大クラスの
大きさで,75リットルの内容積を確保していました。材質は,硬質パーティクルボードで,リアルロー
ズウッド仕上げの堅牢なエンクロージャーとなっていました。ユニット配置は左右対称設計となってい
ました。
ネットワークは,クロスオーバー周波数,500Hz,4kHzに設定され,聴感テストを経てパーツも厳
選されていました。また,回路損失を最小限にするため,ダイレクト配線,ワンポイントアース接続
としていました。

以上のように,SC-3000は,10万円超クラスの大型ブックシェルフ型スピーカーとして,当時のデ
ンオンの技術を投入して作り上げられた高性能なコーン型ユニットをベースにまとめ上げられた1台
でした。しっかりとした色づけの少ない音は,業務用機器に実績を持つデンオンらしいものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



限りない音楽情報の解放

音楽のリアリズムを
鮮烈な高分解能で聴く・・・SC-3000

デジタルオーディオ時代への飛躍

◎High-M振動板をはじめとする
 DENONのスピーカー技術が
 応答性のスピードアップを達成
◎リブ一体構造High-M・P振動板採用
 30cmコーン形ウーハー
◎High-M・T振動板採用
 10cmコーン形スコーカー
◎High-M・T振動板採用
 ダンパーレス構造5cmコーン形ツイーター
◎重低音のクオリティを支える
 内容積75Lの豪華大形キャビネット




●SC-3000の主な仕様●

形式 3ウェイ・3スピーカー密閉形 
使用スピーカー  ウーハー:30cmコーン形×1
スコーカー:10cmコーン形×1
ツイーター:5cmコーン形×1 
入力インピーダンス  6Ω
再生周波数帯域  30Hz~30kHz 
平均出力音圧レベル  92dB(1m/1W) 
最大許容入力  200W(プログラムソース) 
クロスオーバー周波数  500Hz・4kHz 
レベルコントロール  中音域・高音域連続可変(前面操作) 
キャビネット  リアルウォールナット仕上げ硬質パーチクルボード 
寸法  W410×H700×D382mm 
重量  32kg 
※本ページに掲載したSC-3000の写真,仕様表等は1981年6月
 のDENONのカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権
 があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をする
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
                        
 

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