DA-1100EXの写真
KENWOOD  DA-1100EX
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥138,000

1987年に,ケンウッドが発売したプリメインアンプ。D-3300Aの弟機とも後継機ともいえる1台で,見方によって
は,KA-1100シリーズの最後を飾る,D/Aコンバーター内蔵アンプともいえる1台でした。KA-1100シリーズと
共通点の多い外観デザインや増幅回路の中に,当時最新のD/Aコンバーターを内蔵したアンプで,同社のD/Aコ
ンバーター内蔵アンプとしては第2世代機でした。

DA-1100EXの基本的な回路構成は,KA-1100Dか ら継承されたNEW・VIG回路とDLD回路が組み合わされ
たものでした。NEW・VIG回路は,それまで別個に性能追及が行われていたアンプ部と電源部の関係を見直し,強
力な電源部をアンプの一部として設計するという考えのもと,アンプ部と電源部を理想的にインターフェースしようと
する回路で,出力トランジスターのブートストラップをファイナルトランジスタのベースにかけ,さらにバッファを挿入す
るというものでした。従来,一定であると考えられながら,実際にはパワートランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧
が変動を起こして増幅信号を汚していることに着目し,電源部のリップルやノイズ成分を排除し,ファイナルトランジ
スタの電圧を一定に保ち,負帰還をかける前の電力増幅段の裸特性を向上させ,Aクラス段とBクラス段の信号の
受け渡しをより高精度に行えるようになったというものでした。 このNEW・VIG回路のはたらきにより,電源のノイズ
成分がパワーアンプに伝わらず,DLD回路の性能確保に寄与していました。
DLD回路は,1983年発売のKA -1100シリーズ,ひいては1982年発売のKA-2200以来の,トリオ・ケンウッド
伝統の回路方式で,ローパワーアンプとハイパワーアンプを持ち,ある一定までの通常使う出力領域の大部分を歪
み率0.001%以下のクオリティの高いローパワーアンプが受け持ち,それを超える瞬間的な大出力時のみハイパ
ワーアンプに電子的に切り換えるという方式でした。これにより,通常の使用状態では,ローパワーアンプをハイパ
ワーアンプに対応できる巨大な電源部で駆動することになり,結果として電源インピーダンスを低くすることができ,
スピーカーの負荷変動にも強い良好な特性を得ることができるというものでした。

DA-1100EXでは,これら2つの技術に加え,新たにクリーンサイクロン電源を組み合わせていました。クリーンサ
イクロン電源は,トランスの巻線に特殊なクリーンサイクロンデバイスを追加することによって,高周波領域にあるデ
ジタルノイズを2次電圧に変換させないという技術で,これにより,電源そのものの裸特性がアップし,50Hz,60Hz
のピュアなAC電源が得られ,音質が向上するというもので,NEW・VIG回路,DLD回路とのコンビネーションで電源
回路の悪影響が徹底的に抑えられていました。
電源部自体は,大型のコアを使用し,積層を十分に増して放熱効果を高め,巻線インピーダンスを低くした大型のト
ランスを採用し,ブロックケミコンには,DLD専用の大容量ケミコンを4本搭載した強力な電源部を構成していました。
電源コードには,極太の電源コードを使用し,エネルギーロスを抑えていました。

Σドライブは引き続きtypeBが搭載され,スピーカー端子までをNFループに取り込むという考えはそのままに,通常
の2線式の結線で実現していました。また,すべてのGNDをアンプのスピーカー端子に一点集中させ,GNDラインの
パターンや線材による相互干渉を抑え,デジタルノイズもアースラインを通ってアンプの外へ逃がせるようになってい
ました。

D/Aコンバーターは,4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを組み合わせたL・R独立型のものが搭載されて
いました。16ビットD/Aコンバーターですが,最大のビット(MSB)とその半分の大きさにあたるビット(2SB)の歪み
補正を行い直線性を高めた「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」が搭載されていました。また,このD/Aコ
ンバーターには,データーを正確に速く検出できる,当時最高速のゲート・アレイによるオリジナルICとして搭載され,
遅延量を全くなくした1チップIC構成で低歪みのD/A変換を実現していました。
さらに,D/A変換の精度を決める同期信号の精度を高めるために,DA-1100EXでは,ツインクォーツPLL方式が
採用されていました。D/Aコンバーターとして,CDだけでなく,DAT等の多様なデジタル機器に対応し,各サンプリン
グ周波数に正確に同期するように,PLLが二段構えになっているもので,一段目で外来ノイズや入力経路による揺
らぎを吸収して確実なデータ取り込みを行い,二段目ではクォーツを使用したPLLにより,さらに精度の高い時間間
隔でデータを読み取り,D/Aコンバーターに送られるようになっていました。
デジタル入力は,光デジタル2系統を含む5系統が備えられ,DATに対応してデジタル入出力端子が備えられてい
ました。


DA-1100EXの内部ストラットエアーサスペンション

内部は,小信号と大信号,デジタル信号とアナログ信号,各信号処理部と電源をシールド板により分離した5ボックス
構造がとられていました。そして,そのレイアウトは信号の流れにそって配置され,ロジカルフローコンストラクションと
称されていました。また,電源トランスを中央に配置し,重量バランスに配慮し,防振特性と放熱効果にすぐれたチム
ニー型ヒートシンクを搭載していました。さらに,床からの振動を排除するためのストラットエアーサスペンションが採用
されていました。床接地部の特殊弾性ゴムにより振動を吸収し,次段階のコイルスプリングとエアーダンパーにより直
線性を保ちつつ振動を吸収するという構造で,主要部品を剛性の高いアルミダイカストで構成し,床から伝わってくる
振動を可能な限り吸収しようという強力な防振構造となっていました。筐体自身も鉄板を貼り合わせた強度の高い防
振ケースとされていました。

以上のように,DA-1100EXは,ケンウッドのD/Aコンバーター内蔵アンプの2号機として,より完成度を高め,コスト
パフォーマンスも高められていました。系列的に見ると。KA-1100シリーズの最終形とも見ることができ,その意味
でも高い完成度を示していました。残念ながら当時のオーディオ界で大きく目立つ存在にはなりませんでしたが,20
kg近くの総重量が示すとおりのしっかりした作りに支えられた,力強くクリアな音を持つ実力派の1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



防振,電源,コンストラクション,
新シリーズのための3台NEWS。

◎振動を吸収してシャットアウト
 高音質を守るストラットエアーサスペンション
◎クオリティの高い電流を供給する
 クリーンサイクロン・サーキット
◎センタートランスの耐振構造
 ロジカルフローコンストラクション


音場,拡大。
◎高精度D/A変換を可能にした
 ツインクォーツPLL
◎リアルステップフルビットD/Aコンバーター
◎あらゆるソースに対応する豊富な入力系端子

●NEW VIG・DLD回路
●高ダンピングファクターを実現するΣドライブ
●ソースセレクター機能をあわせもつデュアル・レック・セレクター
●CDをクリアーに再現するCDダイレクトスイッチ
●放熱効果と振動減衰特性にすぐれたチムニータイプのヒートシンク
●極太電源コード
●大型スピーカーターミナル



●SPECIFICATIONS●

■総合特性■

定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作)
145W+145W(6Ω,THD0.006%)
125W+125W(8Ω,THD0.004%)
ダイナミックパワー
150W(8Ω)
270W(4Ω)
325W(2Ω)
全高調波ひずみ率(CD) 0.0006%(定格出力時,1kHz,8Ω)
0.004%(定格出力時,20Hz〜20kHz,8Ω)
0.003%(1/2定格出力時,20Hz〜20kHz)
混変調ひずみ率
0.004%(60Hz:7kHz=4:1,定格出力時8Ω)
周波数特性 オーバーオール:5Hz〜80kHz+0dB,−3dB(LINE→SPEAKER)
ダンピングファクター 1000(50Hz)
入力感度および入力インピーダンス
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 0.2mV/100Ω
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE
          150mV/47kΩ
S/N PHONO(MM) 78dB(EIAJ),87dB(入力ショート)
PHONO(MC) 74dB(EIAJ),70dB(入力ショート)
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY 82dB(EIAJ),108dB(入力ショート)  
トーンコントロール
BASS   ±10dB(200Hz/400Hz)
TREBLE ±10dB(3kHz/5kHz)
ラウドネスコントロール
9dB(VOL−30dB)100Hz
サブソニック・フィルター
18Hz,−6dB/oct
出力帯域幅
5Hz〜50kHz(ひずみ率0.04%,8Ω)
PHONO最大許容入力
(PHONO→TAPE REC)
MM:1kHz 200mV/0.004%THD
MC:1kHz  15mV/0.004%THD
出力レベル/インピーダンス TAPE REC(Pin) 150mV/330Ω



■D/Aコンバーター部■

対応サンプリング周波数(自動切換)
32kHz,44.1kHz,48kHz
SN比
108dB(EIAJ)
ひずみ率
0.0025%(EIAJ)
チャンネルセパレーション
103dB(EIAJ)
デジタル入力系
OPTICAL受光電力:−15〜−25dBm
COAXIAL:0.5Vp-p/75Ω
DATモニター:0.5Vp-p/75Ω
デジタルアウト(COAXIAL):0.5Vp-p/75Ω



■電源部・その他■

電源電圧/電源周波数 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 320W(電気用品取締法に基づく表示)
電源コンセント 電源スイッチ連動  1個 100W
電源スイッチ非連動 2個 400W
最大外形寸法 440W×171H×441Dmm
重量 19.5kg


※本ページに掲載したDA-1100EXの写真,仕様表等は,1987年
 10月のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式
 会社に著作権がありま す。したがってこれらの写真 等を無断で転載
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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