Lo-D DA-703D
COMPACT DISC PLAYER ¥89,800
1987年にローディー(日立)が発売したCDプレーヤー。セパレート型CDプレーヤーDAD-001
を発売して以来,CDの分野に力を入れていたローディーが発売した一体型の中級機で,ローディ
ーらしい正攻法の設計によるしっかりした作りの1台でした。
DA-703Dの最大の特徴は,「VC(VIBRATION CUT)メカニズム」と称する徹底した振動対策
でした。
まず,ボディを高比重の特殊樹脂による高剛性VCソリッドベース,さらに3ピース構造の大型・直
径64mmのインシュレーターによってガッチリと支える構造がとられていました。そして,ボディとVC
ソリッドベースの接触面には,60個のシンドリカルアブソーバー(円柱状突起)をコンピューターシミ
ュレーション解析の結果によってアトランダムに配置し振動を効果的に防止する構造となっていまし
た。この重量級VCソリッドベースによって,CDプレーヤー全体の重心を低重心化し,かつピックア
ップ部に偏りがちになる全体の重心をボディのセンターに寄せる効果も得られていました。
ボディー自体もサンドイッチ構造で上面からの振動を高めた「VCエンクロージャー」,ディスクテーブ
ルと前面パネルを分離,フローティングした「VCローディングメカ」が採用されていました。また,ピッ
クアップ部のベースには,同社のカセットデッキでフラッター等の振動対策用に開発されたVCメタル
(2枚の鋼板の間に薄い粘弾性高分子材料をサンドイッチした特殊な構造のパネル)が採用された
「VCピックアップユニット」となっていました。
ピックアップ部は,3スポット方式が採用されていました。信号を読み取るメインレーザー光ほほかに
左右にずらした検出用のサブレーザー光を配置し,トラッキングエラーを確実に検出する仕組みにな
っていました。トラッキングエラー訂正にあたってくどうするアクチュエーターには,振動減衰特性にすぐ
れたピュアメタルダンプ方式のサスペンションを採用して,その動作の安定化を図っていました。
また,レーザー光の反射光量によってトラッキングエラーを検出するとともに,「ダイレクト・ピット・サー
ボ方式」によって,ディスクの微妙なソリやミクロン単位の汚れをチェックし,アクチュエーターの無駄
な動きを最小限にとどめ,より高精度のトレース能力を実現していました。
デジタルフィルターには4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターが搭載され,サンプリング周波数
を4倍の176.4kHzに変換,高速処理することにより,高域ノイズの除去が一段と効果的になり,デジ
タル信号切換時に発生していたグリッジノイズも同時にカットされるため,サンプルホールド回路やロー
パスフィルターの必要が無くなり,位相特性,周波数特性等,すぐれた特性が実現されていました。
D/Aコンバーターには「ハイダイナミック4DAコンバーター」が搭載されていました。これは,初期のCD
プレーヤーがDAコンバーター1個で左右チャンネルをDA変換していたのに対し,左右チャンネルごと
に2個ずつ,計4個のDAコンバーターを搭載したものでした。左右チャンネルでDA変換を独立し同時
進行させることで,チャンネル間の時間差,位相差の発生をまず抑え,さらに,各チャンネルでは,2つ
のDAコンバーターの変換精度の優れた領域で変換動作を行い,8ビット分上位にシフトし,24ビットと
いう高分解能を実現していました。
デジタル部とアナログ部等,各部の相互干渉防止のため「デジタルアナログセパレート思想」と称して対
策がとられていました。電源部は,デジタル部,アナログ部が完全に分離され,電源トランスもそれぞれ
独立して搭載された2トランス構成となっていました。また,デジタル部とアナログ部の回路を電気的に遮
断するため,デジタル信号を5つのフォトアイソレーターによって光伝送する方式がとられ,デジタル部と
アナログ部のセパレート化が徹底されていました。さらに,外部のDAコンバーターとの接続のために光
出力端子を備えていました。また,アナログ部内でも,DAコンバーターとそれ以降のアナログ回路を分離
して干渉を抑えていました。アナログ回路も左右に分離され,対称に配置することで左右チャンネルの相
互干渉を抑えていました。
パーツの面でも,高音質コンデンサー,高速ダイオード,極太電源コードなど,音質のよい専用部品を厳
選使用していました。
本体には10キー,リモコンには20キーが装備され,ダイレクト選曲,24曲までのランダムプログラム選
曲の他,聴かない曲だけ除くデリートプログラム選曲が備えられていました。リピートも6種類(全曲,ラン
ダムメモリー,区間,1曲,ランダムプレイ,デリート)が装備され,さらに,カセットテープ等に録音する際
に,A・B両面に収録曲を好みの時間内に編集できるトータルエディット機能も装備されていました。
表示機能として変わっているのは,20曲×2列の「(TWIN LINE)ミュージックテーブル」がありました。
これは,プログラムされた曲や演奏予定曲が上段に,演奏終了曲が下段に表示されるもので,トータル
エディット機能やランダムプレイがしやすい表示となっていました。
以上のように,DA-703Dは,中級機ながらローディーらしい理詰めで手堅い作りのCDプレーヤーでし
た。ローディーブランド晩年のものでもあり,あまり話題にはなりませんでしたが,実力派の1台でした。