DIATONE DA-A10
STEREO POWER AMPLIFIER ¥80,000
1976年に,ダイヤトーン(三菱電気)が発売したパワーアンプ。スタジオ用のスピーカーも作っていたダイヤ
トーンはそのためのシステムドライブ用アンプも作っており,しかも,エレクトロニクスの三菱電機のオーディオ
ブランドであるダイヤトーンはアンプでもすぐれた基礎技術を持っていました。そして,1974年には,高級セ
パレートアンプDA-P100,DA-A100を発売し,高い評価を得ていました。そうしたダイヤトーンがエントリー
クラスのセパレートアンプとして「Feature Series」を発売し,その中のパワーアンプがDA-A10でした。
全体の構成は,電流増幅段の前に電圧増幅段を設けた2ブロック構成をとり,回路全体のゲイン配分を適切
に設定して,安定してNFBをかけることで,低歪率と安定度を確保していました。
電圧増幅段には,高ゲインで低雑音特性が得られるカレントミラー負荷の差動増幅2段増幅回路が採用され
ていました。この電圧増幅段がドライブする電流増幅段(出力段)には,直流電流増幅率が大きくて,余裕ある
電流増幅が可能な3段ダーリントン接続のピュアコンプリメンタリーSEPP-OCL回路,Pc=100Wのパワート
ランジスターによるパラレルプッシュプルという構成になっていました。でこうした構成により,低歪率化が可能
となり,100W+100W(8Ω,20Hz~20kHz),高調波歪率0.003%以下(1kHz,定格出力-3dB)とい
う特性が実現されていました。
また,パワートランジスターには,遮断周波数の高いものを採用し,カレントミラー回路の採用とあいまって,高
域まで周波数特性をフラットに伸ばすことで,過渡応答の改善を図っていました。
電源部は,200VA×2の電源トランスと63V,10,000μF×4のフィルターコンデンサーで構成され,L・R
完全独立の余裕のある電源回路によって,電源電圧の変動やL・Rチャンネル間の相互干渉による音質への
悪影響であるトランジェントディストーション,トランジェントクロストークに対処していました。
DA-A10のコンストラクションの特徴として,2モノラルコンストラクション(左右独立2電源+モノラル構成)が
ありました。外観から見ても分かるように,電源回路,増幅回路すべてを,電気的,機械的にそれぞれ左右
チャンネルを分離した構成で,20kHzで80dB以上,1kHzで90dB以上というセパレーションを実現していま
した。
DA-A10は100W+100Wという高出力アンプであるため,発熱の問題に対してもしっかりと対処していま
した。Pc(コレクタ損失)が大きいパワートランジスターを採用すると同時に,チャンネルあたり0.35℃/Wの
大型ヒートシンクを採用し,また,発熱体である電源トランスやヒートシンクを直接外気に触れる構造としてい
ました。左右完全セパレートと放熱を考慮したこうした構造が特徴的で機能的な外観にもつながっていました。
DA-A10は,同じ「Feature Series」のDA-P10などのプリアンプとドッキングさせることができるようになっ
ていました。パワーアンプ単体としては,奥行きが285mmと浅く作られており,パワーアンプとドッキングさ
せた状態でも奥行き377mmと,従来のプリメインアンプとほとんど変わらず,スペースファクター良く使うこ
とが可能となっていました。逆にいうと,パワー部とプリ部を完全に分離したプリメインアンプと考えることも
でき,セパレートアンプのメリットを取り込んだプリメインといったような,非常にユニークなアンプでした。
スピーカー出力は2系統装備され,その切換は,切換スイッチの接触抵抗によるダンピングファクターの低
下等の悪影響を避けるため,プロテクション用リレーをそのまま使用していました。また,「Featiure Series」
のプリアンプとの組み合わせでは,リモートコントロールでプリアンプからの切換が可能となっていました。
DIATONE DA-A15
STEREO POWER AMPLIFIER ¥120,000
DIATONE DA-A7
STEREO POWER AMPLIFIER ¥60,000
「Feature Series」のパワーアンプには,DA-A10の上級機としてDA-A15,弟機としてDA-A7もラインナップ
されていました。
DA-A15は,Pc=150Wのパワートランジスターのパラレルプッシュプルという構成で,電源部も250VA×2
の電源トランスと70V,12,000μF×2の電源用コンデンサー2個という構成に強化され,150W+150W
(8Ω,20Hz~20kHz)とより大出力となっていました。
DA-A7は,2モノラル・コンストラクションではないものの,セパレーションの改善にも配慮されていました。Pc=
150Wのパワートランジスターのシングルプッシュプル構成で,電源部は,300VAの電源トランスと63V,
18,000μFが2個という構成で,75W+75W(8Ω,20Hz~20kHz)という出力となっていました。
「Feature Series」は,プリアンプがDA-P10,DA-P7の2種類,パワーアンプがDA-F15,DA-F10,DA-F7
の3種類というラインナップがあり,組み合わせにより,段階的な価格,仕様のプリメインアンプになるというも
ので,その意味でもユニークなアンプでした。海外では評価され,ある程度の人気を得ることとなりましたが,
国内ではあまり話題になることもなく,地味な存在となってしまいました。しかし,音の面でも,高域の伸びたクリ
アな音は,ダイヤトーンらしい良さを持つもので,もっと評価されても良かったのではと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
セパレーションの改善
ダイナミック特性の改善
ダイナミックレンジの拡大
◎2モノラル・コンストラクション
◎歪特性の改善
◎高域特性の改善
◎大容量電源
◎機能的なスタイリングによる高信頼度
◎ダイレクトスピーカー端子
●定格●
DA-A10 | DA-A15 | DA-A7 | |
出力 | 20Hz~20kHz: 100W/100W(8Ω) 135W/135W(4Ω) 1kHz: 115W/115W(8Ω) 155W/155W(4Ω) ミュージックパワー: 320W(8Ω) 600W(4Ω) EIAJ(5%歪): 250W(8Ω) 400W(4Ω) |
20Hz~20kHz: 150W/150W(8Ω) 200W/200W(4Ω) 1kHz: 160W/160W(8Ω) 230W/230W(4Ω) ミュージックパワー: 510W(8Ω) 860W(4Ω) EIAJ(5%歪): 400W(8Ω) 600W(4Ω) |
両チャンネル動作(20Hz~20kHz): 75W+75W(8Ω) 110W+110W(4Ω) 両チャンネル動作(1kHz): 85W+85W(8Ω) 120W+120W(4Ω) 片チャンネル動作(1kHz): 95W/95W(8Ω) 140W/140W(4Ω) ミュージックパワー: 200W(8Ω) 360W(4Ω) EIAJ(5%歪): 180W(8Ω) 280W(4Ω) |
高調波歪率 | 定格出力時:0.1% 1W(20Hz~20kHz)時:0.02% 定格出力-3dB(1kHz):0.003% |
定格出力時:0.1% 1W(20Hz~20kHz)時:0.02% 定格出力-3dB(1kHz):0.003% |
定格出力時:0.1% 1W(20Hz~20kHz)時:0.02% 定格出力-3dB(1kHz):0.003% |
混変調歪率 | 1W(50Hz:7kHz 4:1):0.03% | 1W(50Hz:7kHz 4:1):0.03% | 1W(50Hz:7kHz 4:1):0.03% |
入力感度/インピーダンス | 1V(可変)/50kΩ | 1V(可変)/50kΩ | 1V/50kΩ |
周波数特性 | 0.5W:10Hz~100kHz 0dB,-1dB | 0.5W:10Hz~100kHz 0dB,-1dB | 0.5W:10Hz~50kHz 0dB,-1dB |
出力帯域幅 | IHF0.1%歪:10Hz~50kHz | IHF0.1%歪:10Hz~50kHz | IHF0.1%歪:10Hz~50kHz |
ダンピングファクター | 100 | 100 | 100 |
チャンネルセパレーション | 1kHz:90dB 20kHz:80dB |
1kHz:90dB 20kHz:80dB |
1kHz:85dB 20kHz:60dB |
残留ノイズ | 0.27mV | 0.30mV | 0.25mV |
ミューティングタイム | 5秒 | 5秒 | 5秒 |
適合負荷インピーダンス | 4~16Ω | 4~16Ω | 4~16Ω |
電源 | 100V 50/60Hz | 100V 50/60Hz | 100V 50/60Hz |
消費電力 | 電気用品取締法:240W 定格出力(8Ω):380W |
電気用品取締法:320W 定格出力(8Ω):520W |
電気用品取締法:185W 定格出力(8Ω):270W |
外形寸法 | 425W×170H×285Dmm | 425W×170H×285Dmm | 425W×170H×225Dmm |
重量 | 16.5kg | 18kg | 11.5kg |
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