A&D DA-U7000
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥89,800
1988年に,A&Dが発売したプリメインアンプ。A&DはAKAIとDIATONE(三菱)が共同で立ち
上げたオーディオブランドで,AKAI以来の伝統の高性能なデッキをはじめ,DAT,アンプなど魅
力的な機器を発売していました。特に,アカイもダイヤトーンもアンプではあまりメジャーなブランド
ではありませんでしたが,デジタルオーディオの時代の中,D/Aコンバーターを搭載した,デジタ
ルソース対応アンプとして発売されたのがDA-U7000でした。

1986年,ALPINE/LUXMAN・LV-109発売からD/Aコンバーター内蔵アンプが各社から発売
され,一時はかなり多くの機種がありました。A&Dもこの年・1988年に同社初のD/Aコンバー
ター内蔵型プリメインアンプとしてDA-U7000を,セパレートアンプとしてDA-A9500を発売しま
した。

当時,オーディオ機器の間をデジタルでダイレクトに結び,伝送ロスを抑えようとするデジタルリン
クを各オーディオメーカーが考え,それゆえにD/Aコンバーターをアンプ側に内蔵する形も生まれ
てきました。そのためには,デジタルノイズ対策も重要になり,A&Dは,デジタルノイズ・レデュー
シング・コンストラクション(デジタルノイズ低減構造)を開発し,採用していました。

入力されたデジタル信号は,D/Aコンバーターに入る前にデータ復調を行い,D/Aコンバーターと
の同期をとることになります。そのために,PLL回路や水晶発振器が用いられていました。それぞ
れ長所と短所があり,PLL回路には,温度特性に劣り,広い範囲で同期をとる場合には同期ズレ
を起こしやすい欠点があり,水晶発振器は,正確な同調ができる反面,PLLの発振と重なって,
強いノイズ源となってアナログ部に悪影響を与える可能性がありました。そこで,DA-U7000で
は,新開発のアクティブPLLサーキットを搭載していました。これは,最初に水晶発振器を用いて
デジタル信号との同期をとり,ロックしたのちはPLL回路で確実にホールドしていく方式でした。
PLL回路はVOCとともにワンチップ化され,温度特性を向上させ,不要輻射を抑えたことにより
音質への悪影響は大きく低減されていました。また,アナログ信号入力時には,不要なデジタル
回路を停止させ,余分なデジタルノイズを防ぐようになっていました。

D/Aコンバーター部は,16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターとL・R独立の16
ビットD/Aコンバーターが搭載され,ケースに納められ,厳重にシールドされていました。このシー
ルドケース自体も,アンプ・シャーシからフローティングする2重のシールド構造がとられ,アースラ
インから混入する外来ノイズをシャットアウトし,D/Aコンバーターからのノイズ洩れも抑えていまし
た。アンプの筐体全体も高さ177mm,奥行き452mmと,余裕のあるサイズとして,筐体構造的
にも音質において有利なものとしていました。



電源回路を通じてのデジタルノイズのアナログ部への干渉を抑えるため,DA-U7000の電源部
は,デジタル部とアナログ部の電源を整流回路から基板にいたるまで完全に分離していました。
そして,定電圧電源を,D/Aコンバーター駆動用,LED点灯用など合計11箇所に独立配置し,デ
ジタルノイズの干渉を排する電源構造としていました。さらに,定電圧電源には,ライト・エミッティ
ングダイオード(LED)による基準定電流を使用して,ノイズの少ない定電圧をつくりだし,再生音
質を高めていました。また,アナログ部でも電流増幅アンプ(Iアンプ)と電圧増幅アンプ(Vアンプ)
の基板を完全分離することにより,IアンプからVアンプへの大電流による磁力の影響が及ばない
ようにするなど,アナログ部での相互干渉にも配慮していました。
電源部には,独自のスーパーアクティブ電源が搭載されていました。通常瞬間的に行われる整流
ダイオードからの電源部のコンデンサーへの電流供給を,約3倍の供給時間とし,さらにDC電源
で補完するという方式で,常時安定した定電圧をアンプ回路へ供給しようとしたものでした。この
スーパーアクティブ電源により,標準的な大きさの電源トランスとコンデンサーによる電源部ながら
リップルを抑え,電圧低下を抑え,低インピーダンス,強力レギュレーションの負荷変動に強い電
源部を実現していました。



増幅回路の特徴として,オーバーオールのNFBループを取り去ったニューオープンループサーキッ
トを搭載していました。出力信号の一部を逆相にして入力側にもどすNFB(ネガティブ・フィードバッ
ク)は,歪みの低減,アンプ動作の安定化などのメリットがありますが,実際に変動する信号を増幅
するアンプ回路では,完全な逆相にしてもどすことは難しく,動的歪みと呼ばれる歪みや,音の立ち
上がり,伸びを抑えてしまう傾向が出るなど,デメリットもあり,この頃,オーバーオールのNFBを搭
載しないアンプも増えていました。基本的に出力から入力へ戻るNFBをもたず,電圧増幅アンプ(V
アンプ)と電流増幅段(Iアンプ)の2段だけというシンプルでストレートな回路で,さらに,各段とも完
全対称カスケード接続の無帰還アンプとして,裸特性を向上させていました。また,入力段は,一般
的な差動入力ではなく,完全対称のパラレルイン/プッシュプルアウトのシンプルな回路構成を採用
し,偶数次の高調波歪みを抑えていました。

デジタル入力は,オプチカル1系統,コアキシャル3系統の4系統,デジタル出力もコアキシャル2
系統が装備され,48kHz,44.1kHz,32kHzのサンプリング周波数に対応していました。アナ
ログは,PHONO,CD,TUNER,TAPE3系統の6系統が装備されていました。また,デジタル
入力もアナログ入力もパワーアンプに直結できるDIRECT OPERATIONスイッチも装備されて
いました。
その他,機能的には,BASS,TREBLE独立のトーンコントロール,-20dBのミューティング,
RECセレクターと,比較的オーソドックスでシンプルな構成となっていました。あくまでも,D/Aコン
バーター内蔵という部分をメインに置いたアンプという設計だったと思われます。

以上のように,DA-U7000は,海外では総合オーディオメーカーとして活躍しながら,これまで国
内ではテープデッキメーカーといったイメージであったアカイが,A&Dブランドでデジタル機器,AV
機器など広く展開していこうとする意欲を感じさせるプリメインアンプでした。大げさな作りではない
ものの,外観デザインのイメージと異なり,ハードではなく,滑らかですっきりとした音は,音楽を聴
くアンプとして使いやすい1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



自然な音の響きを大切にする・・・。
このサウンド・ポリシーを
表現するために,A&Dアンプを
デジタル技術で革新しました。

PRODUCT CONCEPT
◎いま,デジタルアンプの時代がスタートする。

CONSTRUCTION
◎音を汚すデジタルノイズを抑え込むDNR
(デジタルノイズ・リデューシング)コンストラクション。

●アクティブPLLサーキット
●デュアルシールドD/Aコンバーター
●デジタル/アナログ分離構成と独立定電圧電源
●ダイナミック・コンストラクション


CIRCUIT TECHNOLOGY
◎いままで聴こえなかった音が,聴こえてくる。アンプの
 理想に迫るピュア電源&無帰還型ハイパワーアンプ。

●スーパーアクティブ電源
●ニューオープンループサーキット




●Specifications●


■アンプセクション■

実効出力 120W+120W(EIAJ,6Ω) 
出力帯域幅  10Hz~60kHz/0.1% 
全高調波歪率  0.03%(1kHz,8Ω) 
周波数特性  3Hz~100kHz(+0,-3dB) 
トーンコントロール  TREBLE:±10dB(10kHz)
BASS  :±10dB(100Hz) 
入力感度/インピーダンス  PHONO(MM):2.0mV/47kΩ
CD,TUNER,TAPE/DAT,AUX,D/A:150mV/47kΩ 
出力レベル/インピーダンス  TAPE REC OUT:150mV/1kΩ 
ダンピング・ファクター  30(1kHz) 
残留ノイズ  0.5mV 
SN比(IHF-A)  PHONO(MM):85dB
CD,TUNER,TAPE/DAT,AUX,D/A:100dB 
オーディオ・ミュート  -20dB 
適合スピーカー・インピーダンス  6~16Ω 



■D/Aセクション■

デジタルサンプリング周波数 32kHz/44.1kHz/48kHz 
デジタル入力レベル/インピーダンス  コアキシャル:0.5Vp-p/75Ω
オプチカル:-14~-23dBm 
周波数特性  5Hz~20kHz(±3dB) 
ダイナミック・レンジ  95dB 
全高調波歪率  0.003% 
チャンネル・セパレーション  115dB 
電源電圧  AC100V,50/60Hz 
定格消費電力(電気用品取締法)  215W 
最大外形寸法  425W×177H×452Dmm 
重量  16.3kg 
※本ページに掲載したDA-U7000の写真,仕様表等は
 1988年3月のA&Dのカタログより抜粋したもので,
 赤井電気株式会社,三菱電機株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
 ください。

 

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