Lo-D DAD-003
COMPACT DISC PLAYER DAP-003 ¥80,000
COMPACT DISC DIGITAL PROCESSOR HDA-003 ¥100,000
1985年に,ローディー(日立)が発売したセパレート型CDプレーヤー。ローディーは,CDのスタート当初
から総合電機メーカーの力を生かして,主要パーツの面から自社開発でスタートしたブランドで,1984年
には各社に先駆けてセパレート型CDプレーヤーDAD-001を発売し,高い評価を得ていました。その弟
機として発売されたのがDAD-003でした。
プレーヤー部のDAP-003は,プレステージモデルDAD-001のプレーヤー部・DAP-001ほど物量を投
入することはコスト的にも難しいため,1年分の新しさを盛り込みつつ,技術的にも改良され,より合理的
な設計がなされていました。
ピックアップ部は,3ビーム方式が継承され,新たにダイレクト・ピット・サーボ(DPS)方式が採用されてい
ました。この方式は,信号を読み取るメインレーザー光のほかに左右にややずらしたエラー検出用の2つ
のサブレーザー光を配置し,反射光量の変化によってエラー検出する3スポット方式に,DPS回路を加え
ることにより,安定したサーボ特性を得ようというもので,従来のものに比べサブレーザー光の読み取り範
囲を限定し,ピットにかかった部分の信号だけをサンプリングするため,ディスクの違いやレーザー光量の
アンバランスによるトレース性能の変化が少なく,より確かなトラッキングを可能にしていました。さらに,新
開発プリアンプICを採用し,信頼性を高めていました。
ピックアップレンズはトラッキングエラーが生じた場合,瞬間的なレンズ移動が行われ,正しい位置に戻さ
れるという動作を繰り返すため,ピックアップレンズを支えるサスペンションの働きが重要になります。そ
のため,レンズを支えるサスペンションにゴムを一切使用しない減衰特性のすぐれたピュア・メタル・ダン
プ方式を採用し,サーボ全帯域にわたりすぐれた周波数応答特性を得ていました。
さらに,日立が半導体技術を生かして世界で初めて開発した5重訂正信号処理LSIを搭載していました。
ディスクのキズやヨゴレ,ソリや偏心による雑音や音飛びを強力に抑える高性能な信号処理LSIでした。
(標準ディスク使用の場合,エラー訂正不能の確率が2000万年に1回とうたわれていました。なお,標準
ディスクとは,10-3個/秒のエラーが入っているディスクだそうです。当時のCDプレーヤでは,通常,エ
ラー訂正処理は3重から4重でした。)
このLSIに加え,EFMディモジュレーター用及び信号処理系の総合コントロール用LSIを新開発し,高精
度の信号処理回路を構成し,搭載していました。
D/Aコンバーター部・HDA-003には,DAD-001と同様に,121次の直線位相FIR形デジタルフィルター
が搭載されていました。サンプリング周波数を2倍の88.2kHzに変換し,不要高域成分を24.1kHz~
24.7kHzで85dB以上,24.1kHz~64.1kHzで90dB以上とすぐれた減衰特性を実現していました。
D/Aコンバーターには,16ビットリニアD/Aコンバーターが搭載され,その後ろには,専用設計されたサン
プルホールドICが搭載され,S/N比,歪率の向上が図られていました。
アナログ部は,パワーMOS FET,低雑音高速ダイオード,大容量特殊防振構造グランド・ピュア・フォーカ
スコンデンサー,防振構造AWD電解コンデンサー,ブチル防振銅箔スチロールコンデンサー,高品質RMA
抵抗,PSNB抵抗,UF,GUメタライズドマイラーコンデンサー,LC-OFCケーブルによる内部配線材など,
音質専用パーツを豊富に使用していました。
機能的には,15曲までのランダムメモリー選曲,テープ録音時などのとき一定の曲間をキープするオートス
ペーシング機能,各曲の頭を10秒間ずつ再生し聴きたい曲だけメモリーできるスキャナプレイ,インデックス
サーチ,全曲/ランダム選曲/区間/1曲の4モードのリピート,ディスクを早聴きできる2スピードマニュアル
サーチ,ディスクの曲中から聴かない曲だけ削除して演奏するデリート機能など,多彩な選曲機能が搭載さ
れていました。
以上のように,DAD-003は,高評価を得ていたDAD-001の技術をいかに手頃な価格帯でという設計の
工夫が見られ,同社の半導体をはじめとする総合技術の高さを生かし,本格的な作りで完成されたコストパ
フォーマンスにすぐれたセパレート型CDプレーヤーでした。当時の日立のデジタルオーディオ時代を生かそ
とする意気込みを感じさせられた1台でした。CDトランスポート,D/Aコンバーターの接続は同軸ケーブルに
よるもので,相互干渉を避けられるセパレートした形態を生かし,おだやかですっきりとした音を実現していま
した。当時,デジタル出力を備えたCDプレーヤーが登場し始めており,D/Aコンバーター部は発展性を考えた
使い方での可能性を感じさせるものでした。しかし,これ以降しばらくするとローディーブランド自体が縮小され
ていき,同ブランドでは最後のセパレート型CDプレーヤーとなってしまいました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
操作系と音質系を完全分離。
お互いの干渉をなくしたから
個性が活きる。感動が生まれる。
◎電源の相互干渉や影響を追放
セパレートシャーシ
◎音の表情まで,もれなく再現する
5重訂正信号処理LSI
◎90dB以上の減衰特性を実現した
121次デジタルフィルター
◎クオリティの高い音を再現する
アナログ回路&電源回路
◎音質追求はまず音の入口から
ピュア・メタル・ダンプ方式
◎デジタル信号を正確に読みとる
ダイレクト・ピット・サーボ方式
●好みの曲を好みの順番で最高15曲まで
予約演奏できるランダムメモリー選曲
●テープ録音に便利。一定の曲間をキー
プするオートスペーシング機能
●各曲の頭を10秒間ずつ再生。聴きたい
曲だけメモリーできるスキャナプレイ
●希望曲中の楽章などキメ細かな頭出しが
できるインデックスサーチ
●ディスクを早聴きできる2スピードマニュアル
サーチ
●ディスクの曲中から聴きたくないものだけを
削除して演奏。選曲に便利なデリート機能
●10キー付ワイヤレスリモコン付属
●経過時間と残量時間を表示するリメイン機能
●オーディオ●
チャンネル数 | 2チャンネル |
周波数特性 | 2~20,000Hz±0.3dB |
ダイナミックレンジ | 96dB(IHF-A) |
SN比 | 98dB(IHF-A) |
高調波ひずみ率 | 0.0025%(1kHz,10次までの高調波ひずみ率) |
セパレーション | 95dB(1kHz) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下(±0.001%W・Peak)以下 |
●ピックアップ●
方式 | 対物レンズ駆動方式光ピックアップ |
対物レンズ駆動方式 | 2次元平行移動 |
光源 | 半導体レーザー |
波長 | 780nm |
●回路構成●
エラー訂正方式 | CIRC5重訂正 |
DAコンバーター | 16ビットリニア |
デジタルフィルター | FIR/121次 |
●総合●
接続
(デジタルオーディオインターフェイスフォーマット) |
インピーダンス 75Ω
端子形状 US ピンジャック |
デジタルIN/OUT | レベル0.5Vp-p |
出力電圧 | 固定端子 2.0Vrms 可変端子 2.0Vrms(MAX) |
電源電圧 | AC 100V 50/60Hz |
消費電力 | プレーヤー部 10W プロセッサ部 16W |
外形寸法/重量 | プレーヤー部 幅435×高さ93×奥行264mm/5.7kg プロセッサ部 幅435×高さ93×奥行264mm/5.1kg |
※ 本ページに掲載したDAD-003の写真・仕様表等は1986年
2月のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式
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