Lo-D DAD-1000
DIGITAL AUDIO DISC PLAYER ¥189,000
1982年に,ローディー(日立)が発売したCDプレーヤー。この年は,「CD元年」と言われ,CD(コンパクト・ディス
ク)が製品として発売され,CDがスタートした年でした。オーディオディスクのデジタル化は,デジタルオーディオ技
術のスタート以来,かなり早くから各社で研究され,次第に完成度が高められていきました。当初,DAD(Digital 
Audio Disc)と称され,多くの試作品はLPレコードと同じ直径30cmのディスクが主流で,多くは光ディスク(中に
は接触型のAHDもありました)で記録密度を上げることで数時間以上という長時間の記録を可能にするものが出
てきました。そうした中,ソニーとフィリップスが直径12cmのCD規格を提唱し,DADが商品としてスタートすること
になりました。
このCDの規格については,12cmという大きさについて,当初フィリップスの提唱する11.5cm・60分記録に対し
ソニーの提唱する12cm・74分記録,記録ビット数においては,フィリップスの提唱する14ビットに対しソニーの提
唱する16ビットというふうに,その決定にはかなりの議論があったといわれていますが,結局12cm・16ビットでス
タートしました。この12cmというサイズは,後にパソコン用の記録ディスクや映像用のディスク・DVDなどでも継承
され最も一般的なサイズとなることとなりました。
こうして,スタートしたCDは,1982年に,各社から一斉にといえるほど1号機が発売されましたが,CDプレーヤー
は,オーディオメーカーにとって,従来のオーディオ系の技術だけでなく,デジタル関係の技術,半導体技術など多
くの技術を総合したものだけに,ひとつの時代の転換でもありました。それだけに,自社だけで製品化するのは難
しいものがあり,実際,当時主要部分を自社で開発できたメーカーは,ソニー,フィリップスなど,数少なかったとい
われています。そうした中,ローディーは,総合電機メーカー日立を母体にしているだけに,自社でほぼ調達できた
数少ないメーカーのひとつでした。そのローディーのCDプレーヤーの1号機がDAD-1000でした。



ピックアップ部は,ディスクの偏芯などによるトラッキングエラーの検出に対しては,3スポット式レーザーピック
アップが採用されていました。メインレーザースポットのほかに左右にややずらしたトラッキングエラー検出用の
2つのサブレーザースポットを配置し,その反射光の量の差を検出することで左右方向のトラッキングエラーを
すばやく感知するようになっていました。上下のゆれには,焦点がずれるとビーム形状が変化して検知できる
フォーカス信号検出装置で対処するようになっていました。焦点ずれ検出信号に対して,対物レンズを素早く移
動させる仕組みとして,スピーカー技術を応用した新開発の対物レンズアクチュエーターが採用されていました。
これは,ボイスコイルに似た駆動部で,訂正信号に対し,レンズを上下と左右の2次元の方向に高速で移動さ
せ,トラッキングフォーカスが行われるようになっていました。
ディスク駆動部には,ローディー自慢のユニトルクモーターをベースに,CDプレーヤー専用ユニトルクモーター
を開発し搭載していました。線速度一定のCDの対応した高精度なユニトルクモーターで,信号のエラー率を
下げてすぐれた再生能力を確保していました。

D/Aコンバーターは,高精度な抵抗を16個並べた,最も基本的な16ビット抵抗ラダー型のD/Aコンバーター
が搭載されていました。この方式の場合,16段階の抵抗値をもつ抵抗の精度が問題となりますが,抵抗の精
度を上げるにも限界がある(あるいは非常にコストがかかる)ため,発想を変えて,自己補正型のD/Aコンバー
ターを開発し,搭載していました。理想的なレベルの信号(ランプ関数)を内部で発生させ,それを基準にして
D/Aコンバーター自身の動作をきわめて正確に構成させるもので,その校正値を内部のRAMに記憶しておき
素子のバラツキを自動的に修正させることで,D/Aコンバーターの精度が大幅に向上していました。




CDプレーヤーでは,読み取ったデジタル信号を増幅する前置増幅回路,デジタル信号の1か0を判別する
データストローブ回路,エラーを検出訂正したり,信号を規格通り並べ替える信号処理回路,D/Aコンバー
ターなど,巨大とも言える規模の回路が必要となります。そのため,コンパクトな筐体に収めることを可能に
することはエレクトロニクス技術の発展故でした。それだけに,CDプレーヤーの自社開発には,高度なエレ
クトロニクス技術,半導体技術が必要となり,実際DAD-1000には,日立のエレクトロニクス技術が生ん
だ新開発のLSI,ICが採用されていました。

機能的には,選曲スピードはすべて5秒以内で,前後の選曲ができるワンタッチ選曲,15曲までのランダム
メモリー選曲,ディスク全曲あるいはメモリーした全曲のリピートをするオートリピート,ディスクの最初から約
30秒おきの音を次々と再生できるスキャナプレイが装備され,表示機能として,トータル曲数と演奏時間表
示,曲ごとの演奏時間表示,演奏経過時間表示などに切り替えられるカウンター表示,曲番表示の他に,
ピックアップのおおよその位置を示すLOCATION INDICATORも装備されていました。

以上のように,DAD-1000は,ローディーのCD第1号として,しっかり練られた内容を持つ1台でした。第1
世代機らしい縦型ローディングのデザインは今から見ても,オーディオの未来をめざしていた当時の志が感じ
られる未来的なものでした。操作面もリモコンやテンキーはないもののコンパクトな筐体にうまくまとめられて
いるものでした。音の面では,今聴くといわゆるデジタル臭さがあるものかもしれませんが,クリアなノイズの
ない音は,新しい時代を思わせるものでした。
そして,当時グループ企業であった日本コロムビア(デンオン)から発売されたDCD-2000はほぼ同一のも
のであり,その他のメーカーの第1世代機の中にも,プレーヤーの主要部分にDAD-1000のものを使ってい
たものが多くありました。それだけ,当時のCDプレーヤーの世界では,ソニーとともに,重要な存在だったメー
カーがローディーであったといえるでしょう。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



かつてないノイズレスサウンド,
ワイドダイナミックレンジの世界へ。

総合技術力の《ローディー》から。

操作性もCDの本質と,ローディーは考えた。
だから高速アクセス,多機能選曲。

◎音楽が透明な世界から浮き出てくる・・・ノイズレス。
 ワイドダイナミックレンジ再生を可能にしたCD
◎真の使いやすさを考えて高速アクセス多機能選曲。
 かつてないスピーディ&イージー・オペレーション

●ランダムメモリー選曲
●ランダムメモリー選曲コール
●ワンタッチ選曲(SPSS)
●スキャナプレイ
●メモリーストップ
●オートリピート

総合技術力の一端をお見せしよう。
たとえば独自のレーザーピックアップサーボ。

◎メカトロニクスの時代だから総合技術がモノを言う。
 ローディーはLSIからモーターまで一貫生産
◎0.5μm幅のピットをいかに正確に読み取るか。
 3スポット方式レーザーピップアップ採用
◎上下左右2次元の方向に高速移動。
 ローディー独自の対物レンズ駆動アクチュエーター
◎目を見張るエレクトロニクス技術の急速な進歩。
 すべての回路にローディーが開発したCD専用ユニトルク。
 磨き抜かれた技術が,新しい時代を創っていく。
◎逆転の発想がCDプレーヤーの音質を決定した。
 自己補正形D/Aコンバーター,その原理と精度




●DAD-1000 Specifictions●

●オーディオ●


チャンネル数 2チャンネル
周波数特性 5~20,000Hz±0.5dB
ダイナミックレンジ 90dB以上
SN比 90dB以上
高調波ひずみ率 0.003%以下
クロストーク 85dB以上
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下



●ディスク●

演奏時間 60分/片面
直径 120mm



●信号フォーマット●

標本化周波数 44.1kHz
量子化数 16bitリニア/チャンネル
伝送ビットレート 4.3218Mb/秒



●ピックアップ●

方式 対物レンズ駆動方式光ピックアップ
対物レンズ駆動方式 2次元平行移動
光源 半導体レーザー
波長 7,900Å



●総合●


出力電圧 レベル 2.0Vrms
(CD,DAD,AUXまたはTAPE端子へ接続)
電源電圧 AC 100V 50/60Hz
消費電力 24W
外形寸法 幅320×高さ145×奥行234mm
重量 5.6kg 

※本ページに掲載したDAD-1000の写真・仕様表等は1983年1月
 のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
 著作権
があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等
 をす
ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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