DENON DCD-1500
COMPACT DISC PLAYER ¥99,000
1985年に,デンオン(現デノン)が発売したCDプレーヤー。デンオンは,1970年に,世界に先駆けて
レコード制作のためのデジタル(PCM)録音機の開発に着手し,1972年には業務用PCM録音機の第
1号機を実用化したブランドで,デジタルオーディオにおいては伝統的にすぐれた技術を持っていました。
1982年にスタートしたCDプレーヤーでは,第1号機は,当時傘下に入っていた日立(Lo-D)のOEM
でしたが,1983年に,自社開発のDCD-1800を発売し,翌年の1984年には,リモコン付属の改良
モデルとして,DCD-1800Rを発売しました。そして,その弟機ながら,より進歩した内容を持って登場
したのがDCD-1500でした。
D/Aコンバーター部には,当時最新のバーブラウン製16bit・DACのPCM-54HPが搭載されていまし
た。これは,当時のCDプレーヤーに多く採用されていた積分型DACに比べ,変換精度や安定度にすぐ
れたラダー抵抗型のDACで,他社のより上級機のCDプレーヤーにも搭載されていたものでした。さら
に,マルチビット方式で発生する変換誤差・ゼロクロス歪みを低減させる「スーパーリニア・コンバーター」
となっていました。変換誤差検出訂正回路により,DA変換後の信号に補正用信号を加えるという方式で
D/A変換誤差を極限まで低減し,ゼロクロス歪が排除されていました。そして,DACを左右チャンネル
独立に配したツイン構成(ダブルD/Aコンバーター方式)となっており,これら2つの技術の組みあわせ
を,デンオンは「Wスーパーリニア・コンバーター」と称していました。
また,DCD-1800及びDCD-1800Rでは,ローパスフィルターに高次のアナログフィルターを搭載し
ていたのに対し,DCD-1500では,新たにデジタルフィルターが搭載されていました。2倍オーバーサ
ンプリングFIR型(有限インパルス応答型)の高精度121次のデジタルフィルターが左右独立で搭載さ
れ,±0.001dB以下の高域リップル特性を実現していました。また,約30kHzまでほぼ完全に群遅
延特性が平坦な,独自開発のC.A.L.P.(Computer Analyzed Linear Phase)アナログフィルター
を搭載し,同社の業務機DN-3000FCに準ずるフィルター構成で高域特性を大きく改善していました。
オーディオ出力アンプは,DCサーボ回路が装備された本格的なDCアンプが搭載され,ハイスピードで
ワイドレンジな伝送特性を確保し,ダイナミックレンジ96dB,SN比96dB,ひずみ率0.0025%,セパ
レーション95dB,20kHzチャンネル間位相差0.5度以内という,理論値に迫るトータルにすぐれた特
性を実現していました。
ピックアップ部は,トレース能力の高い3ビーム光ヘッドを搭載し,メカベースには,堅牢さと内部損失を
あわせもつBMC(バルク・モールディング・コンパウンド,エンジニアリング高分子材の一種)を採用し,
全体をフルフローティングしていました。トップカバーも,上からメインシャーシに防振4点止めとして,外
部振動に強い構造としていました。
電源部は,22VAの電源トランスをコアに,デジタル系,サーボ系,オーディオ系,ディスプレイ系の4系
統を独立させた独立4電源とし,各セクション間の干渉を排していました。
機能的には,最大20曲のプログラム選曲,10キーによるダイレクト選曲,前後へのクィック選曲,イン
デックスサーチ,全曲(プログラム曲も含む)/A-B間リピートなどが搭載されていました。
ディスプレイは,TRACK No.,INDEX,時間表示の8桁FLディスプレイで,20曲ミュージックカレン
ダーも装備されていました。パネルデザインは,前モデルよりデンオンブランド色が薄まり,他社とよく
似たイメージの,比較的薄型のオーソドックスなものとなっていました。
以上のように,DCD-1500は,一見他のメーカーの中級機と見分けが付きにくいCDプレーヤーでし
たが,当時のデンオンがDCD-1000(¥55,000),DCD-1100(¥66,000),DCD-1500と
いうシリーズの最上級機として出されたもので,技術的な内容は,他社の10万円超えの,より上級の
機種と同一または超えるものもあるなど,中身の濃いコストパフォーマンスにすぐれた1台でした。セ
パレーションの良さ,低音の力強さなど,その技術的特徴が出た音はすぐれたものでしたが,人気機
種といえるほどの注目は集めませんでした。しかし,その後デンオンのCDプレーヤーは,このDCD-
1500から派生した機種が多く展開されていることとなり,その意味では,デンオンのCDプレーヤー
の歴史の中でも重要な機種であったように思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
いま未体験のクオリティへ。
サウンドが湧きあがり,
ハートが興奮する。
CD思想がここに結晶。
まさにデジタル・クオリティ。
◎高いトーテルクオリティを聴いてほしい!
放送業務機なみのD/A変換部構成
◎高域が冴える121次デジタルフィルター,
直線位相C.A.L.P.アナログフィルターを搭載
◎高密度サウンドを
ハイスピード再生のDCアンプ
◎卓越したクオリティを
強力に支える電源部
◎入念な制振構造で確かな
ピックアップ能力
◎多機能リモコンなど
充実した操作性・表示機能
●プログラムキーは始めに1回だけ・・・最大20曲プログラム選曲
●トラックNo.10までワンタッチの10キーダイレクト選曲
●リモコン操作の可変出力端子
●インデックスサーチ
●全曲&A-B間リピート
●クイック選曲
●スキップモニター
●14アイテム充実ディスプレイ
D/A変換部方式名 | Wスーパーリニア・コンバーター(ダブルD/Aコンバーター方式) |
フィルター | 2倍オーバーサンプリングデジタルフィルター +直線位相(C.A.L.P.)高精度アナログフィルター |
周波数特性 | 5Hz~20kHz±0.3dB |
SN比 | 96dB |
ダイナミックレンジ | 96dB |
全高調波歪率 | 0.0025% |
チャンネルセパレーション | 95dB |
チャンネル間位相差 | 0.5°以内 |
アナログ出力電圧 | (固定)10kΩ負荷時2V
(可変)10kΩ負荷時2Vリモコン |
ヘッドホンジャック | 32Ω負荷時最大出力70mW,VOL付 |
ピックアップ・ビーム制御方式 |
3ビーム,2次元平行,対物レンズ駆動方式 |
ピックアップ光源/波長 |
半導体レーザー/780nm |
外形寸法 | W434×H89×D350mm |
重量 | 6.0kg |
消費電力 | 17W |
※本ページに掲載したDCD-1500の写真・仕様表等は
1987年4月のDENONのカタログより抜粋したもので,
デノン株式会社に著作権があります。したがってこれらの
写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
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