DCD-3300の写真
DENON DCD-3300
COMPACT DISC PLAYER ¥200,000

1986年に,デンオン(現デノン)が発売したCDプレーヤー。デンオンは,1970年に,世界に先駆けてレコード
制作のためのデジタル(PCM)録音機の開発に着手し,1972年には業務用PCM録音機の第1号機を実用化
したブランドで,デジタルオーディオにおいては伝統的にすぐれた技術を持っていました。そして,1983年に,全
面自社開発のDCD-1800を発売以来,すぐれたCDプレーヤーを発売してきました。そうした中,発売した初の
重量級の高級機がDCD-3300でした。

DCD-3300の最大の特徴は,「Wスーパーリニア・コンバーター」と称されたD/A変換部でした。この「Wスーパー
リニア・コンバーター」は,「スーパーリニア・コンバーター」と「ダブルD/Aコンバーター方式」の両方を搭載した構
成を一括して名付けられた名称でした。
「スーパーリニア・コンバーター」は,マルチビット方式で発生する変換誤差・ゼロクロス歪みを低減させるもので,
変換誤差検出訂正回路により,DA変換後の信号に補正用信号を加えるという方式でした。D/Aコンバーターに
は当時世界的に定評を得ていたアメリカ・バーブラウン社製のICを採用し,これにデンオン独自の変換誤差検出
訂正回路を組み合わせることで,D/A変換誤差を極限まで低減し,ゼロクロス歪が排除されていました。
「ダブルD/Aコンバーター方式」はその名の通り,L・R独立でD/Aコンバーターを搭載したツインD/Aコンバーター
のことで,L・R独立でデジタルフィルター,D/Aコンバーター,補正回路・スーパーリニアコンバーターを搭載する
ことで,位相ずれが低減され,ステレオ感の向上が実現されたものでした。
D/A変換部に搭載されたフィルターには,直線位相のL・R独立4倍オーバーサンプリングFIR(有限インパルス
応答型)デジタルフィルターとデンオン独自のC.A.L.P.(Computer Analyzed Linear Phase=直線位相)7次
アナログフィルターが採用され,優れた遮断特性と位相特性の両立が図られていました。

DCD-3300では,デジタルオーディオで大きな問題点となる妨害雑音や不要輻射を排除するための対策がしっ
かりとられていました。そのために,まずデジタルセクションとアナログセクションの分離を徹底していました。電
源部はデジタル,アナログそれぞれ専用のトランスを搭載したツイン・パワートランスという構成がとられ,5つの
専用安定回路(独立電源)となっていました。また,デジタル,アナログ両回路の配線基板も独立分離され,その
間は,フォトアイソレーターを介した光結合とすることで,電気的な分離を確保していました。これらの対策に加え
総銅メッキ・メインシャーシ,ラインフィルター,片面総シールドの両面プリント・ガラスエポキシ基板の採用など,
高シールド設計が行われていました。

筐体の構造は,振動対策がしっかり行われた設計となっていました。頑丈な総銅メッキシャーシの周囲を,厚肉
アルミ化粧シャーシと振動吸収効果を持ったバイブレスボトムプレートで覆った堅固な二重構造キャビネットにな
っており,その下部には真鍮削り出しの大型インシュレーターが搭載されていました。上記のような異種材料の
組み合わせとモーダル解析による低共振形状による高耐振構造となっていました。
ピックアップ・メカニズム部では,共振防止設計の太いスライドシャフトを新開発のセラミック配合の重量級BMC
(バルク・モールディング・コンパウンド)ベースにマウントし,メカ全体はフルフローティングさせた構造となってい
ました。また,ディスクホルダーも高比重・高剛性のBMCに似た鉱物質混入の樹脂材料が採用されていました。

リアパネルの出力は,多数装備され,重装備と言った感じでした。アナログ出力は通常のピン端子による出力が
固定と可変の2系統の他,XLR600Ωのキャノンタイプ平衡出力が装備され,デジタル出力は,ピン端子による
同軸出力2系統と光出力が1系統の3系統が装備されていました。デジタル出力は,フロントパネルのスイッチで
切り換えられるようになっていました。
機能的には,最大20曲まで可能でバックアップ機能付きでタイマープレイが可能なプログラムプレイ機能,秒単
位の時間指定による頭出しや2点間リピート可能なサーチ機能などを搭載していました。
表示部は,トラック,インデックス,時間表示(演奏経過,残り時間切換),20曲までのミュージックカレンダーが
装備され,多彩な表示が可能となっていました。,また,本体にも10キーが装備され,本体のみでも多彩な操作
が可能でした。

以上のように,DCD-3300は,当時のデンオンのCDプレーヤーの最上級機として,しっかりと物量と技術が投
入され,しっかりした音と多機能が実現されていました。中高域の解像力が高く,繊細さを持ちながら,きつさの
ないバランスのとれた重厚な音が特徴でした。そして,このDCD-3300をベースにしてDCD-3500シリーズ
生まれ,ロングセラーモデルとなっていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



いま,大いなる感動の予感。
CDは新たなハイファイ領域へ。

完全主義を貫き,
リファレンス・クオリティともいえる感動を。


◎デジタル/アナログ完全分離
 「ツイン・パワートランス」と「光結合」
◎キャビネット/ピックアップを含む
 すべてが「無振動設計」
◎マスター・レベルの回路構成と
 高精度部品の採用
◎音楽情報を100%引き出す独自
 開発のリニアモーター・ピックアップ
◎リファレンス用/プロ用としての
 ハイクオリティの主力仕様
◎タイマーサーチ頭出しなど,
 プロユースの充実機能

●タイムサーチとタイムサーチ・リプレイ
●タイマーアプレイ可能の最大20曲プログラム
●編集の手間が省けるオートスペース機能
●トラックNo.9までワンタッチの10キーダイレクト選曲
●トラック順・プログラム順(1〜20曲)全曲リピート
●インデックスサーチ/オートサーチ/マニュアルサーチ
●15アイテム,充実ディスプレイ




●SPECIFICATIONS●

D/A変換部方式名 Wスーパーリニア・コンバーター(ダブルD/Aコンバーター方式)
フィルター 4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
+LC-OFC直線位相(C.A.L.P.)7次アナログフィルター
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.2dB
SN比 106dB
ダイナミックレンジ 96dB
全高調波歪率 0.0025%
チャンネルセパレーション 102dB
チャンネル間位相差 0.5°以内
アナログ出力電圧 (固定)10kΩ負荷時2V
(可変)10kΩ負荷時6.9V&19dBm平衡
ヘッドホンジャック 32Ω負荷時最大出力80mW,LNE可変出力兼用VOL付
デジタルアウト端子
オプティカル(光),コアキシャル(同軸75Ω,0.5Vp-p)×2
ピックアップ・ビーム制御方式
3ビーム,2次元平行,対物レンズ駆動方式(リニアモーター・ドライブ)
ピックアップ光源/波長
半導体レーザー/780nm
外形寸法 W434×H105×D360mm
重量 14kg
消費電力 24W

※本ページに掲載したDCD-3300の写真・仕様表等は
 1987年4月のDENONのカタログより抜粋したもので,
 デノン株式会社に著作権があります。したがってこれらの
 写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますので,ご注意ください。

★メニューにもどる 
     
   
★CDプレーヤー4のページにもどる

 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。
メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp 
inserted by FC2 system