DENON DCD-3500RG
COMPACT DISC PLAYER ¥248,000
1989年に,デンオン(現デノン)が発売したCDプレーヤー。1988年に発売され,人気モデルとなったDCD-3500G
をモデルチェンジした後継機で,リファレンス・ゴールドの頭文字RGが型番に付けられ,各部がさらに強化された,当
時の同社の最上級機でした。
D/Aコンバーター部は,「リアル20ビットΛ-S.L.C.」の4DACという構成となっていました。「リアル20ビットΛ-S.L.C.」
は,デジタルフィルターでつくられる20ビット8倍オーバーサンプリング信号をハイスピードでアナログ信号に変換する
方式で,量子化軸で標準16ビットの16倍,時間軸で標準の8倍の小刻みなデジタル信号を受けてアナログに変換す
ることになり,当時一般的になっていた16ビット4倍オーバーサンプリング採用機と比べ,32倍の高分解能をもつこと
になり,量子化雑音やダイナミックレンジの上で大幅な改善が図られていました。
「Λ S.L..C.」は,「ラムダ・スーパー・リニア・コンバーター」の略で,デンオンによるマルチビット方式の改良型でした。マ
ルチビット方式で問題になるゼロクロス歪みを解消するため,D/Aコンバーターチップ内部に,超高精度20ビット電流加
算型DACを差動配置する(Λ=LAMBDA=Ladder-form Multiple Bias D/Aプロセッサー)ことで原理的にゼロクロス歪
みの発生を抑えていました。具体的には,入力の正負に応じて規定のゼロレベルをわずかに移動させ(符号値でずらす
ためデジタルバイアスと呼ぶ),ゼロクロス歪みの影響の大きい小振幅では,規定0ラインを横断させないような動作に
なっていました。また,ゼロを±に変位させた2種類のデータをD/A変換後に加算すれば,±のシフト分はキャンセルさ
れ,部分的に発生している歪みが打ち消される効果もありました。
さらに,DCD-3500Gの2DACから4DACとして,Λプロセッサーの片側の出力を8倍オーバーサンプリング信号の半
周期遅延させ,出力段階で合成して16倍オーバーサンプリング信号と同等の動作とし,ノイズをより高域にシフトし,位
相特性の改善やさらなる高分解能を実現していました。
CDプレーヤーにとって音質に影響の大きいデジタル部のアナログ部への干渉を抑えるために,D・A(デジタル・アナロ
グ)独立分離が徹底された設計方針がとられていました。電源部は,デジタル専用トランス,アナログ専用トランスの大
容量で大型の電源トランスをそれぞれ1個ずつ搭載していました。さらに,大型電解コンデンサーなど,すべてのパーツ
を厳選していました。回路基板も徹底して分離し,デジタル系ノイズのアナログへの回り込みを排除し,アナログ回路に
は,業務用機に使われているバスバーラインを採用し,アースインピーダンスを下げ,高周波の飛び込みを防いでいま
した。
シャーシは,総銅メッキシャーシとして電波性雑音や磁気歪みを防ぎ,ラインフィルター,極性表示付き極太ACコードの
採用で,100Vラインからの回流ノイズをカットしていました。
アナログ回路では,チャンネル間の相互干渉を抑えるため,DACをL・R独立してそれぞれ搭載し,DAC以降のアナロ
グ回路も信号の流れにそってL・R完全独立構成としていました。
防振も徹底して行われていました。ピックアップのメカベースに,高い剛性と優れた振動減衰特性を持つ素材BMC(バ
ルク・モールディング・コンパウンド)を使用し,ピックアップは,低反発ゴムとスプリングで2重構造のフローティングをし
ていました。さらに,それを大型のBMC製メカシャーシに取付け,金属とBMCを交互に使用し,振動減衰効果を発揮す
るという「ダブルBMCベース」を採用していました。また,振動発生のおそれがあるメカ部及び電源部と,振動の影響が
音質を左右する回路系を,中央で強固な銅メッキの隔壁で二分し,内部振動の音質への影響を排除していました。天
面はリアルウッドと鋼板を採用し,底板は共に防振効果の高いバイプレスプレート(鋼板2枚貼り合わせ),1.6mm厚鋼
板,鋼メッキシャーシのいわば4重構造を採用して外来振動を徹底的にシャットアウトした「スーパー・バイブレス構造」が
継承されていました。さらに,シャーシ全体は,焼結合金を用いたインシュレーターで支えられ,防振が徹底されていまし
た。

スーパーバイブレス構造

ピックアップの駆動は,静粛で高速のアクセスができるリニアモーター駆動方式が採用され,高精度のアクセスが可能
となっていました。
機能的には,デジタル3系統(同軸2,光1)・アナログ3系統(固定出力,可変出力,平衡出力)の多彩な出力端子を搭
載し,ディスプレイは,音質対策のために全消灯,約2/3の明るさ,約1/3の明るさ,標準点灯の4段切換可能なディ
スプレイでした。通常の前後の選曲以外に,下部のシーリングポケット内には10キーが装備され,10キーによるダイレ
クト選曲,最大20曲まで可能なプログラムプレイ,インデックスサーチ,時間指定によるタイムサーチが装備されていま
した。リピートは,1曲,全曲(プログラム曲),A-B間の3種類が装備されていました。その他,ディスクの総演奏時間の
1/2に最も近い曲番の頭で前半・後半に分けるオートエディットが装備されていました。また,音質を重視して,ヘッド
ホン出力及び可変出力のON/OFFスイッチも背面に装備されていました。
以上のように,DCD-3500RGは,好評を博したDCD-3500Gの後継機として,また同社の最上級機として,しっかり
と物量と技術を投入して作り上げられた力作でした。重厚で華やかさのある音は,オーディオ的に満足感の感じられる
音でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



人の感性は,技術の広がりとともに高まる。

デジタル技術のもたらす恩恵は,
現代に生きる私たちだけの特権。
これほどの歓びに満ちた
「古き良き時代」の音楽は,
きっと過去にはなかったことだろう。

リファレンス・オブ・ゴールド。
スペックでは語れない高品位の”時”に触れる。

◎リアル20ビットΛS.L.C.の4DAC。
◎気品を奏でる,ゴールドフェース。
◎高剛性・高静粛設計。
◎D・A独立分離を徹底。

●@標準A約2/3の明るさB約1/3の明
 るさC全消灯の4段階の明るさを調節でき
 るディスプレイ・ディマー。
●ヘッドホン&バリアブル系のON/OFFスイッチ
●同軸2,光1系統のデジタルアウト装備
●時間指定による頭出しと2点間の繰り返し
 演奏も可能なタイムサーチ。




●DCD-3500RGの主な仕様●

D/A変換部方式名 リアル20ビットラムダスーパーリニア・コンバーター(4D/Aコンバーター方式)
フィルター 8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター+GIC3次アナログフィルター
周波数特性 2Hz〜20kHz
SN比 120dB
ダイナミックレンジ 100dB
全高調波歪率 0.0015%
チャンネルセパレーション 110dB
チャンネル間位相差 3°以内
アナログ出力電圧 (固定)10kΩ負荷時2V
     600Ω負荷時1V(平衡)
(可変)10kΩ負荷時0〜2V
ヘッドホンジャック 32Ω負荷時最大出力80mW,LNE可変出力兼用VOL付
外形寸法 W480×H146×D390mm
重量 22kg
消費電力 24W(AC100V 50/60Hz)


DENON DCD-3500GL
COMPACT DISC PLAYER ¥350,000
1994年に,DCD-3500RGがモデルチェンジされた後継機としてDCD-3500GLが発売されました。型番のGL
のLはLimitedのLで,限定生産モデルとして発売されていました。回路方式等継承されつつ,パーツ等細部にわ
たって,基本から検討しなおされ,価格が10万円上がっていることからも分かるように,より高品質化をめざした
チューンナップが図られていました。
外観からも分かる点として,電源部の改良がありました。デジタル専用,アナログ専用の大容量トランスをそれぞれ
ボディ外部に突出させることでトランス自身が発生するノイズを追放し,シャーシ内部へのリーケージフラックス(磁
束漏れ)も排除していました。さらに,シャーシ内の電源スペースに余裕ができ,大きな回路基板が使用でき,基板
にも配線材にもOFC線材が使用され,信号伝送ロスを防ぐ電源の低インピーダンス化が図られるとともに,OFC極
太ワイヤー採用によるDC電源の強化も図られていました。
ピックアップは,ダブルBMCベースに加えて,新構造の「メカフィックス・ブラケット」でさらに強力にサポートされてい
ました。振動発生のおそれがあるメカ部及び電源部と,振動の影響が音質を左右する回路系を,中央で強固な銅
メッキの隔壁で二分した構造も継承され,さらにディスクトレイにコラーゲン塗装を施すことで防振性を大きく高めて
いました。またトップカバーには,アルミ一枚板に銅板とテフロンシートを貼り合わせた制振構造を採用していました。
ボトムは,低重心化を図り,三重構造の厚肉シャーシを使用していました。さらに,金属同士の接合面にはすべてテ
フロンシートが挿入されるなど,防振構造が徹底されていました。
以上のように,DCD-3500GLは,各部に厳選した高品質パーツを投入するなど,正攻法でしっかりと強化が図ら
れたまごうことなき高級CDプレーヤーとして仕上げられていました。厚みがあって力強くクリアな音はさらに密度が
高められていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



リアル20ビット4DACΛS.L.C.搭載。
至上のスペックに,高密度な表現力を
織り込んだリミテッドモデル。

◎リアル20ビット4DACΛS.L.C.搭載。
◎高速リニアモーター駆動ピックアップ。
◎ピュアな伝送を実現する,徹底した無振動構造。
◎多彩なCDプレイを実現。
◎同軸2,光1系統のデジタルアウト端子を装備。
◎品位を奏でるゴールドフェイス。
◎パワフル・ツイン電源。




●DCD-3500GLの主な仕様●

D/A変換部方式名 リアル20ビットラムダスーパーリニア・コンバーター(4D/Aコンバーター方式)
フィルター 8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター+GIC3次アナログフィルター
周波数特性 2Hz〜20kHz
SN比 120dB
ダイナミックレンジ 100dB
全高調波歪率 0.0015%
チャンネルセパレーション 110dB
チャンネル間位相差 3°以内
アナログ出力電圧 (固定)10kΩ負荷時2V
     600Ω負荷時1V(平衡)
(可変)10kΩ負荷時0〜2V
ヘッドホンジャック 32Ω負荷時最大出力80mW,LNE可変出力兼用VOL付
外形寸法 W480×H136×D436mm
重量 21kg
消費電力 24W(AC100V 50/60Hz)
※本ページに掲載したDCD-3500RG,DCD-3500GLの写真
 仕様表等は1992年10月,1993年4月のDENONのカタログ
 より抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があります。した
 がってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますので,ご注意ください。

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