DD-99の写真
Victor DD-99
STEREO CASSETTE DECK ¥135,000

1981年にビクターが発売した,高級カセットデッキ。1978年にメタル対応デッキのシリーズをいち早く発売し,
一連の右にカセットホルダーと操作系を持つカセットデッキのシリーズを出していたビクターが,1ウェイ3ヘッド
シングルキャプスタンというオーソドックスなカセットデッキとして同社の一つの頂点に達した最終形といえるモ
デルがDD-99をはじめとするDD-2桁シリーズでした。DD-99はその中の最上級機でした。この後このシリ
ーズは3ヘッドのリバースデッキとして展開されていくことになりました。

DD-99の回転系は,シングルキャプスタンメカニズムでしたが,「パルス・サーボモーター」によるDD(ダイレ
クト・ドライブ)方式を採用していました。このDD-99に搭載されたパルス・サーボDDモーターは,160極80
パルスの全周積分型として検出誤差を抑え,FGマグネットをキャプスタンと同軸とした高い精度のメカニズム
を採用したサーボ系を形作り,さらにクォーツロックとして,ワウ・フラッター0.019%(WRMS)という最高レ
ベルの回転精度を実現していました。

パルスサーボDDモーター

ヘッドは,ビクターが誇るセンダスト合金ヘッド「センアロイヘッド」を録音,再生,消去用すべてに採用してい
ました。ビクターは早くからセンダスト合金ヘッドに注目して,メタルテープの市販化前から「センアロイヘッド」
として実用化して自社のデッキに搭載し,磁束密度の高いこのヘッドのおかげで,デッキのメタル対応も最も
早かったメーカーでした。
録再ヘッドは,独立した録音ヘッド・再生ヘッドが同じハウジングに入っているタイプで,それぞれ専用のギャ
ップ幅を設定して優れた特性を実現していました。構造的には,パーマロイ6層ラミネートコアのテープ摺動
面にセンアロイ・チップを高温接着した複合構造で,最大磁束密度が高く,耐摩耗性,耐食性,コア損失など
二も優れた特性を持っていました。さらに,低域特性を高めるためにセンアロイ・チップを斜めにカット(X-cut)
して形状効果=コンターエフェクト)をなくした,X-cutSA(X-カット・センアロイ)録再ヘッドとしていました。
消去ヘッドには,2ギャップセンアロイ消去ヘッドを搭載していました。構造的にはバックコアにフェライトを用
い,前面コアにセンアロイ・チップを用いることで,フェライトの優れた高周波での特性と,センアロイの高い最
大磁束密度耐摩耗性を兼ね備えた優れた性能を持っていました。

ノイズリダクションには,前モデルのDD-9がANRS/SuperANRSであったのに対して,ドルビーBと互換
性のあるANRSとドルビーCという構成になっていました。このモデルあたりから,ビクターもSuperANRS搭
載をやめていったようでした。録再アンプはカップリングコンデンサーを排除したオールDC構成となっていまし
た。

DD-99には,コンピュータでテープごとにバイアス,イコライザー,録再感度を自動調整する「コンピュータB・
E・Sチューニング」が搭載されていました。スタートボタンを押すだけで約30秒でチューニングができるように
なっていました。
そのほか機能的には,多機能な4桁表示のデジタルカウンター,「4デジカウンター」が搭載されていました。
このカウンターは,4桁のデジタル表示によるテープ走行の表示以外に,テープの残り時間表示,走行時間
表示,さらに前後1曲の飛び越し選曲機能の4つの機能を持っていました。レベルメーターも,2色FL18セグ
メントのドットマトリックス表示のメーターで,ピーク/VU切換が可能なタイプでした。

以上のように,DD-99はビクターがオーソドックスに性能を追求し,ワンウェイ・シングルキャプスタン・3ヘッ
ドのメカニズムで到達した一つの頂点となった機種でした。DD-66,DD-77,DD-88とともにビクターの
当時のカセットデッキの主力となっていた力作のシリーズとして記憶に残っています。

DD-88
DD-77
DD-66
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


3ヘッドは,ダイレクト・ドライブで
真価を発揮。
ドルビーCも搭載
 パルス・サーボDDシリーズ。
◎クォーツロックパルスサーボDDモーター搭載により,
 ワウ・フラッター=0.019%(WRMS)を実現
◎コンピューターBESチューニングによりテープごとに,
 録音バイアス(B),録音イコライザー(E),録音感度(S)
 を自動設定
◎DOLBY C-NR,ANRS(DOLBY B-NR)内蔵
 (MPXフィルター付)
◎X-cutSA(センアロイ)録/再コンビネーション・3ヘッド・
 システム
◎オールDC構成アンプ
◎ドット・マトリックス2色FL18セグメント・デジタルメーター
 (ピーク/VU切替可)
◎4桁FL電子カウンター
◎MUSIC SCAN(自動選曲)
◎メモリーオートリワインド(STOP/OFF/PLAY)
◎テンション・スタビライジング・ループ
◎タイマースタンバイ機構
◎リモコン端子(別売R-50型使用可能)
◎再生ボリューム付(ヘッドホン連動)


●主な仕様●


 
DD-99
DD-88
DD-77
DD-66
トラック方式 コンパクトカセット・ステレオ
ヘッド (消去用)2ギャップSA×1
(録音用)SA(再生用)X-cutSA
のコンビネーション×1
(消去用)2ギャップフェライト×1
(録音用)SA(再生用)X-cutSA
のコンビネーション×1
(消去用)2ギャップフェライト×1
(録音用)SE(再生用)SE
のコンビネーション×1
モーター (キャプスタン用)クォーツロックパルスサーボ
DDモーター×1
(リール用)DCモーター×1
(キャプスタン用)パルスサーボDDモーター×1
(リール用)DCモーター×1
ワウ・フラッター ±0.045%(W・Peak)
0.019%(WRMS)当社テープによる
±0.05%(W・Peak)
0.021%(WRMS)当社テープによる
周波数特性
 (メタル)
(−20dB録音)25Hz〜18,000Hz±3dB
(0dB録音)  25Hz〜12,500Hz±3dB
(−20dB録音)30Hz〜18,000Hz±3dB
(0dB録音)  30Hz〜12,500Hz±3dB
SN比 55dB(メタル)
60dB(WTD,1kHz,3%3次高調波歪率,メタル)
(ANRS/DOLBY B-NR=ON)
1kHzで5dB,5kHzで10dBSN比向上
(DOLBY C-NR=ON)
500Hzで約15dB,
1kHz〜10kHzで最大20dBSN比向上
/MOL改善効果10kHzで4dB向上
電源 100V AC,50/60Hz
最大外形寸法 435W×110H×323Dmm
435W×110H×276Dmm
重量 約7.4kg 約6.9kg 約6.1kg 約6.0kg
※本ページに掲載したDD-99,88,77,66の写真,仕様表等は1982年5月
 のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権があり
 ます。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら
 れていますのでご注意ください。                                       
   
 
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