MICRO DD-10
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥99,800
1975年に,マイクロが発売したプレーヤーシステム。マイクロ精機は,長岡精機宝石工業(現在のナガオカ・レコー
ド針で有名)の社員だった小宮康策が1961年に創業したブランドで,トーンアームやカートリッジでスタートしました。
やがてターンテーブルの製造を始め,1965年には,国産初の8極シンクロナスモーターを搭載したリムドライブ方式
のターンテーブル,M-8Pを発売し,その後,MB-800など,MBの型番をもつベルトドライブ方式のターンテーブル
そしてMRの型番を持つレコードプレーヤーを発売し,ベルトドライブ方式のプレーヤーで評価を高めていきました。
そして,1970年にテクニクスから始まったDDプレーヤーの流れの中で,マイクロも1972年のMR-711をはじめ
DD方式のターンテーブル,プレーヤーシステムを展開していきました。そうした中1974年より,その名の通りDD
の型番をもつシリーズを展開し,そのトップモデルがDD-10でした。

ターンテーブルは,直径31cmのアルミダイキャスト製で,重量2.4kg,慣性質量330kg・cm2というものが搭載さ
れていました。独自の鋳造法により密度の均一化されたターンテーブルは,塗装も含めて精密機械加工仕上げが
なされており,バランシングマシン(回転体の偏芯や回転ムラを測定,修正 する装置)による900回転での偏差は
高級プレーヤーの平均値4gに対して2gときわめて高精度に仕上げられていました。こうした完全なバランスチェック
が行われ,定速度回転にすぐれ,速度偏差もきわめて少ないという,金属の精密加工を得意とするマイクロ精機な
らではのターンテーブルとなっていました。さらにゴムシートには315g,1cm2あたり約1.2gの高密度シートを採用
し,共振を抑えていました。

駆動方式は,上述のようにDD(ダイレクト・ドライブ)方式が採用され,20極60スロット・ブラシレスDCサーボモーター
により駆動されていました。モーターの型式から分かるとおり,このモーターはテクニクスのSP-10のOEMで,当時
定番のDDモーターでした。ワウ・フラッター0.03%(WRMS)以下,SN比62dBという高精度な回転を実現してい
ました。
回転速度切換はマイクロスイッチによる電子式で,微調整はそれぞれの速度で±6%の範囲で行えるようになって
いました。精密ストロボスコープがターンテーブルの裏側に配置され,ミラーを通して小窓から確認できる,ミラータ
イプのストロボを搭載していました。



DD-10の大きな特徴として,プレーヤーシステムとしてトータルSN比を改善するために,従来,ノイズ源として問題
となっていた電源トランスを分離し,プレーヤーから離して設置できる設計となっていることがありました。約2mまで
離して設置することができ,シールド効果の小さなカートリッジあるいは低出力型カートリッジへのリーケージフラック
ス(磁束漏れ)による影響が抑えられ,SN比にも効果が現れていました。また,電源トランス部には,ACアウトレット
が2個配置されていました。

トーンアームは,単売もされていたMA-202(¥15,800)をベースにしたものが搭載されていました。スタティック
バランス方式のS字型ユニバーサルアームで,有効長237mmの標準タイプでした。回転部分軸受けは,超精密ア
ンギュラー型ベアリングとマイクロ独自のピボットの組み合わせになっており,さらに改良が施され,水平軸受部に
は,上下2点にラジアルベアリングが用いられた構造で,初動水平垂直感度10mg以下を実現していました。アー
ムの高さ調整は,レバーコントロールによるヘリコイド式で,6mmの範囲内で微調整が可能となっていました。また,
後部には別売のサブウェイトが取り付け可能で,より重量のあるカートリッジも使用可能となっていました。ヘッドシェ
ルにはアルミダイキャスト製ヘッドシェルであるH-202が採用されており,コネクターピンには金メッキ処理を施して
接触不良を防いでいました。さらに,アーム先端のヘッドロックコネクター部にはヘッドシェルの傾き調整ビスが設け
られており,垂直調整が可能となっていました。また,針圧対応可変式インサイドフォースキャンセラーを搭載してお
り,独自の針圧対応可変式構造によりレコード外周と内周に応じてキャンセル量が相対して変化するためインサイド
フォースによる針圧の左右アンバランスを解消でき、カートリッジのトレーシング能力を向上させていました。
アームリフターメカニズムは,スムーズな動きのオイルダンプ式で,パネル手前に設けられたプッシュボタンで操作
するようになっていました。



モーター部とアームメカニズムの取付けベースは,堅牢なダイキャストフレームとホモゲン板積層構造のソリッドベー
スによる二重構造となっており,ハウリングや振動に強い作りながら,DDプレーヤーとは思えないような,厚さわず
か49mmという薄型のデザインを実現していました。脚部には大型アブソーバーが装備され,振動による影響を低
減していました。この脚部は高さ調整が可能となっていました。

以上のように,DD-10は,DD方式のプレーヤーとしてオーソドックスに手堅くまとめられた1台でした。ベルトドラ
イブ,糸ドライブといったイメージが強いマイクロですが,この時期,完成度の高いしっかりしたDDプレーヤーを
作っていました。大げさでない薄型のすっきりしたデザインの中にしっかりと作り込まれ,電源部分離といったマイ
クロならではのこだわりも盛り込まれた,音楽再生用として使いやすいプレーヤーとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



SNの改善を重点に電源トランスを分離した
ダイレクトドライブ型プレーヤー




●DD-10規格●

■フォノモーター■

駆動方式 ダイレクトドライブ方式
モーター 20極60スロットDCサーボモーター
回転数 331/3,45rpm
回転数微調整範囲 ±6%(33,45独立調整)
ターンテーブル アルミダイキャスト,31cm,2.4kg
回転ムラ 0.03%以下(WRMS)
SN比 62dB以上



■トーンアーム部■


形式
スタティックバランス型
(インサイドフォースキャンセラー付)
アーム有効長 237mm
オーバーハング 15mm
針圧可変範囲
0~3g(1回転)
適合カートリッジ自重 4.5~11g
別売サブウェイトA:11~17.5g
別売サブウェイトB:17~22g
付属機構
アーム高さ調整(31~37mm)
ミラー式ストロボスコープ,アームエレベーションスイッチ



■総合■


使用電圧
AC100V,50/60Hz
消費電力
5.4W
寸法
470W×340D×133Hmm
重量 13kg(電源トランスを含む)

※本ページに掲載したDD-10の写真・仕様表等は1975年3月の
 MICROのカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは 法律で禁じられていますので,ご注意くださ
 い。

 
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