PART2
オープンリールから始まった国産テープデッキの歴史。
それはカセットデッキの時代になり世界一の水準に達
したと言えるでしょう。何より,本来,会話記録用程度
にしか考えられていなかったカセットテープをハイファ
イ録音に使えるほどの性能に引き上げたのは,国産
メーカーのテープデッキたちでしょう。そんなテープ
デッキの名機,銘機を振り返ってみましょう。取り上げ
た機種が多くなってきたので表示の時間等を考えて
2ページ目に入りました。ごゆっくりご覧ください。
Technics RS-B100
テクニクスが1983年に発売した3ヘッドカセットデッキ。同社のカ
セットデッキの中でも最強の1台と考えられます。クォーツDDダブ
ルキャプスタンの走行系とアモルファス合金の録再ヘッドを持つ3
ヘッド構成で,ノイズリダクションには,ドルビーB/Cに加えてdbx
も搭載していました。 位相補正回路という技術をアンプ部に導入し
メカニズムとアンプ系両面から音質を追求した高性能デッキでした。
当時,テクニクス自身も「原器」「テクニクスデッキの頂点」「リファレ
ンスデッキ」などと称していたものでした。
PIONEER CT-A9
パイオニアが1984年に発売した3ヘッドカセットデッキ。それまで
カセットデッキの分野ではCT-A1以来あまり定評を得られていな
かったパイオニアが本格的に物量を投入し,メカニズムの精度を
徹底して追求して作り上げた高性能デッキでした。外見のごつさゆ
えか,「性能はいいがデザインのあかぬけないワーストデザイン賞
ものだ」と称されたこともある質実剛健型デッキでした。このデッキ
の中身の良さは広くマニアの知るところとなり,10年後の名機
T-1100Sにつながることにもなった力作だったと思います。
AKAI GX-77
アカイが1981年に発売したEEポジション装備のオープンリール
デッキ。オープンリールデッキのイメージを変えるデザインとオー
プンリールデッキ初のクイックリバース機能などで新境地を開こう
としたアカイの意欲作でした。カセットデッキとのコンビネーション
で,FMエアチェックのマスター機として売り出そうとしましたが,
広く支持を得るまでにはいたりませんでした。しかし,その性能は
今でも一級だと思います。
Nakamichi 700ZXL
ナカミチが1980年に発売した超高級カセットデッキでした。同じ
年に発売された1000ZXLに次ぐ高級機としてRAMM,ABLE
などの自動化機能を搭載し,その高精度なメカニズムおよびア
ンプ系から送り出される音はカセットのわくを超えたものでした。
1000ZXLに次ぐとはいえ,通常考えられないほどの性能と機能
を持った超弩級機として記憶に残る名機だと思います。
Lo-D D-5500M
ローディー(日立)が1979年に発売した高級カセットデッキ。国
産(世界?)で初めてコンピューターによるバイアス,テープ感度
イコライザーの全自動チューニング機能を搭載した画期的なカ
セットデッキD-5500のメタル対応化モデルで,当時としては画
期的なものでした。まさに「技術の日立」の面目躍如といった感
じで,当時のローディーのフラッグシップモデルでした。こうやっ
て振り返ると,ローディーは本当にいい技術をもっていたブラン
ドでした。
YAMAHA K-1x
ヤマハが1984年に発売した高級カセットデッキ。1978年よ
り作られ続けてきた同社の高級カセットデッキ「K-1」の型番を
持つデッキの系譜の最終型でした。オーソドックスな作りの高
性能デッキとして,派手ではありませんが,実力は高いものが
ありました。
Victor TD-V931
ビクターが1989年に発売した3ヘッドデッキ。それまでシング
ルキャプスタン,右側カセットドアという形のデッキを出していた
ビクターが,1987年に発売したTD-V711より左側カセットド
ア3ヘッド・デュアルキャプスタンというオーソドックスなデッキを
出し始めましたが,このTD-V931はその系列の中でも最強の
モデルとして高性能を誇りました。徹底した振動対策が印象的
でした。
AIWA AD-FF90
アイワが1982年に発売した3ヘッドデッキ。デザインは何とな
くちゃらちゃらした感じにも見えますが,デュアルキャプスタン
の安定した走行系とアモルファスヘッドを用いた3ヘッド機で,
国産ではアイワが最も早くから取り組んでいたドルビーHXも
搭載された音質重視型の本格的な高級デッキでした。再生時
にノイズリダクションを自動的にセットできるという機能も搭載
され,アイワのカセットデッキにかける意欲が良く表れていた
1台だったと思います。
KENWOOD KX-1100G
ケンウッドが1985年に発売した3ヘッドデッキ。高剛性メカで
好評を博していたKX-880シリーズの3ヘッド版という感じでし
た。目立つ存在とはいえませんでしたが,オーソドックスなメカ
で高性能を追求したその設計により,シャープな音を持ついい
デッキだったと思います。
SONY TC-K666ES
ソニーが1982年に発売した3ヘッドカセットデッキ。ESシリー
ズの中の1台で,TC−K777ESの弟機として出ていましたが,
独自の3モーターメカニズムを搭載するなど,上級機とはまた
違った魅力を持ったオーソドックスな高性能デッキでした。
Technics U-38(RS-1500U)
テクニクスが1976年に発売したオープンリールデッキ。いわ
ゆる2トラ38機で,独自のテープローディング方式を新開発し
持ち前のDD技術を投入して作り上げられた意欲作でした。
テープ走行の安定性もよく好評を得てロングランをすることと
なった名機でした。
PIONEER CT-970
パイオニアが1981年に発売した3ヘッドデッキ。当時のパ
イオニアの機器に共通する,3分割のパネルデザインが目
立ちますが,実は,非常に優れた走行系とヘッドを持った隠
れた名機とも言える高性能デッキでした。
A&D GX-Z9100
1987年に赤井電機と三菱電機が発足させた新ブランドA&D
のもと,新開発された高性能デッキがGX-Z9100でした。スー
パーGXヘッドをはじめとする,AKAIブランドで培われてきた優
れたデッキ技術が投入され,高い完成度と優れた性能を誇りま
した。そして,モデルチェンジを受けながらロングセラーモデル
となりました。
Nakamichi ZX-7
ナカミチが1981年に発売した3ヘッドデッキ。400,500,
600・・・という3桁の型番から1桁の型番へと変わり,ある
意味で新しいシリーズとして登場した1台でした。基本メカニ
ズム等はプレステージ機の1000ZXLと同一で,マニュアル
調整で性能を追求した設計は,テープマニアたちの支持を
得ました。私自身初めて使ったナカミチ機が本機で,個人
的にも思い出深い1台です。
DENON DR-F3
デンオンが1980年に発売したカセットデッキ。きわめてオー
ソドックスなワンウェイ・3ヘッド機で,クォーツロックPLLモー
ターとテンションサーボを搭載した走行系,オールDC構成録
再アンプなど,同社のオープンリールデッキの技術を取り入
れた,手堅い作りの使いやすいテープデッキでした。
Victor DD-99
ビクターが1981年に発売した3ヘッドデッキ。ビクター独特
の右側カセットドアタイプで,シングルキャプスタン・3ヘッドと
いう構成のシリーズの最上級機にあたりました。オーソドック
スながら,DDモーターの回転精度,自慢のSAヘッドなど,音
質重視の姿勢で作られたデッキでした。
Lo-D D-X10
ローディー(日立)が1984年に発売した3ヘッドデッキ。3ヘッ
ドデッキのリバースデッキがこのころ各社から発売されていま
したが,3ヘッドのローディーが,ついに出した3ヘッドリバース
デッキがこのD-X10でした。ローディーが積み上げてきたデッ
キ技術が投入された充実した中身を持ったデッキだったと思い
ます。
Nakamichi ZX-5
ナカミチが1984年に発売した3ヘッドデッキ。ZXシリーズと
して出されましたが,それまでのZX-7,ZX-9とは筐体や
ヘッドなどが異なる毛色の違った新開発のデッキで,やや硬
めとも思える非常にシャープな音が特徴でした。
AKAI GX-747dbx
1982年にアカイが発売したオープンリールデッキ。当時
ティアックとともにアカイが推進していたEEポジション対応
のオープンリールデッキで。2Tr38並の高性能での長時
間録音を可能にしていました。本機はそのEEオープンの
代表的モデルGX-747にdbxを搭載して強化したモデル
で,ティアックのX-1000R,X-2000Rとともに,EEオー
プン最強の1台となっていました。
marantz SD-60
1989年にマランツが発売したカセットデッキ。同社のア
ンプとデザインを揃えた高級感のある落ち着いたデザイ
ンのフロントパネルが特徴的でした。中身は3ヘッドデュ
アルキャプスタンというオーソドックスなもので,まじめな
作りと高いコストパフォーマンスが特徴でした。
※ここに掲載された写真は,各製品のカタログからの抜粋で
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