KENWOOD DP-1000
COMPACT DISC PLAYER ¥69,800
1985年に,ケンウッド(現JVCケンウッド)が発売したCDプレーヤー。ケンウッド(当時はトリオ株式
会社)は,1982年にCDプレーヤー第1号機L-03DPをオーレックス(東芝)との共同開発で発売し,
音質の良さで高い評価を受けていました。その後,自社開発のDP-1100シリーズがロングセラー
モデルとなり,ブラッシュアップが続けられていきました。そうした中,1985年にDP-2000を発売し,
その弟機として発売されたのがDP-1000でした。
CDスタート3年目のこの年,マランツの戦略的モデルCD-34が発売され,一気に価格の低下と性能
の向上が進んでいきました。そうした中,¥69,800という価格で発売されながら,上級機DP-2000
の内容を数多く継承し,コストパフォーマンスが高められたケンウッドの戦略的モデルがDP-1000で
した。
D/Aコンバーターには,ソニー製の16ビット積分型・CX20152が搭載されていました。積分回路とコ
ンデンサーの充放電を組み合わせてD/A変換する最も基本的な方式で,ゼロクロス歪みが発生せず
ノイズに対する耐性などのメリットをもつものでした。このD/Aコンバーターは,当時,他社のCDプレー
ヤーの高級機にも,多く使われていました。さらに,高精度積分用定電流回路を開発・搭載し,D/Aコ
ンバーターの積分回路に安定した電流を供給することにより,全高調波歪率0.0015%という低歪み
を実現していました。ローパスフィルターは9次のチェビシェフ型・アクティブ・ローパスフィルターが搭載
され,上級機に搭載されたデジタルフィルターは未登載でした。その他,D/Aコンバーター部には,マグ
ネット・リレーによるミューティング,誤差1%以内という金属皮膜抵抗,銅スチロールコンデンサーなど
の高精度パーツを採用し,回路全体の制度をアップしていました。さらに,マルチアース方式を採用し
共通インピーダンスを減少することにより,音質を改善していました。
D/Aコンバーター部に続く,出力回路は,他の機器との接続で性能を発揮できるように,330Ω以下
のローインピーダンス出力としていました。さらに,ローインピーダンス出力にした際,トランジスタミュー
ティングではリニアリティが悪化するため,上述の高速高音質のマグネット・リレーミューティングを使用
していました。
ピックアップ部には,上級機と同じ,新開発の小型3ビーム非点収差方式の半導体レーザーピックアップ
を搭載し,レーザー駆動回路はピックアップと一体化して高剛性を実現していました。特に,心臓部の信
号読取部はインシュレーターでフローティングし,外部振動を抑えていました。スピンドル側の偏芯吸収
機構は採用されていませんでしたが,中心部のガイドは真鍮削り出しのものが搭載されていました。
電源部は,17VA・3巻線構成の電源トランスを核として,3端子レギュレーター4電源,ツェナーシャント
レギュレーター3電源という強力な10電源構成の強力なマルチ電源を搭載していました。D/Aコンバー
ター自体のアナログ系とデジタル系それぞれのリファレンスポイントを明確にして,ローエンドの分解能を
大きく改善していました。電源トランスに付随してノイズフィルターも搭載され,外部から電源を介しての
ノイズを低減していました。
選曲機能等は,当時のオーソドックスなもので,前後へのスキップ選曲,FF,BWDキーによる前後への
のマニュアルサーチの他,本体にも10キーが装備され,ダイレクト選曲が可能となっていました。プログ
ラム選曲は16曲ランダムプログラムが搭載され,リピートは全曲,メモリー曲,A-B間リピートが搭載さ
れていました。その他,演奏中にリザーブキーで次の演奏曲を予約するリザーブ機能,演奏中にボタンを
押すと演奏中の曲が終わり次の曲の頭でポーズ状態になるオートポーズ,自動的に4秒間の曲間をつく
るスペースが搭載されていました。
フロントパネルのデザインは,2倍以上の価格の上級機DP-2000とほぼ同一で,ディスプレイ部も同一
の8桁FL表示になっており,TRACK NO.,INDEX,時間表示(演奏時間,残量時間切換)が同時に表
示できる上級機並みのものとなっていました。
以上のように,DP-1000は,当時のCDプレーヤーのエントリークラスに近い価格のモデルながら,当時
の同社の最上級機であるDP-2000のエッセンスを受け継ぎ,しっかりとした内容をもったCDプレーヤー
として作り上げられていました。機能面でも上級機に遜色なく,音質においても,明るくキレのよさをもった
もので,上級機にない魅力をもっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
高剛性メカニズムが
ホール空間の広がりを雄大に描写。
10キー,リモコン付のハイCP機。
◎0.0015%の低ひずみ率(THD)を実現した
高精度積分用定電流回路採用の
16ビット積分型D/Aコンバーターブロック
◎高精度パーツD/Aコンバーター部
全体にわたって採用
◎リレーミューティングを採用した
ローインピーダンス出力回路
◎1トランス3巻線10電源の
強力マルチ電源
◎新開発ピックアップを搭載した
高精度高剛性メカニズム
◎10キーダイレクト選曲と
DPSSによる多彩な操作機能
●FF,BWDキーによるマニュアルサーチ
●ミュージックサーチキーによる飛越選曲
●最大16曲のランダムプレイ
●特定区間のメモリーリピート
●リザーブキーで次の曲を予約
●自動的に空白時間を加えるスペース
●オートポーズ
●全曲リピートメモリーリピート
◎演奏時間と残量時間表示
◎サブコード出力端子
◎DPSS操作のできる24キー
高感度赤外線リモコン
●SPECIFICATIONS●
読み取り方式 | 光学式(コンパクトディスク方式) |
ピックアップ型式 | 3ビーム半導体レーザー方式 |
回転数 | 200~500rpm,線速度1.2~1.4m/s |
エラー訂正方式 | CIRC2重エラー訂正方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化ビット数 | 16bitリニア |
ダイナミックレンジ | 95dB |
SN比 | 96dB |
周波数特性 | 4Hz~20kHz±0.5dB |
全高調波歪率 | 0.0015%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 95dB(1kHz) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
出力 | 端子出力2V(0dB) |
ヘッドホン出力 | 32mWMAX/32Ω |
サーチ | 10KEYによるT No./INDEXサーチ
UP/DOWN KEYによる1曲飛び越し選曲 FF・BWD KEYによるマニュアルサーチ(キューイング) |
メモリー | ランダム16曲可能 |
リピート | 1曲リピート,全曲リピート,A-B区間リピート |
Display | T No./INDEX No./経過・残量・累積時間 メモリー状態の表示 |
その他の機能 | リザーブ機能,サブコード出力端子付 |
消費電力 | 13W |
最大外形寸法 | 440W×88H×313Dmm |
重量 | 6.0kg |
※ 本ページに掲載したDP-1000の写真・仕様表等は1985年
12月のKEWOODのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッ
ド株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
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