DP-1000Hの写真
DIATONE DP-1000H
COMPACT DISC PLAYER ¥108,000

1986年にダイヤトーンが発売したCDプレーヤー。ダイヤトーンはスピーカーのブランドとして
知られていますが,1980年代以前には,単品のアンプ,チューナー,デッキなども出していた
総合オーディオブランドでした。その後,単品コンポーネントの分野ではスピーカーに専念する
形になり,しばらくスピーカーのブランドというイメージが定着していました。その後,1982年の
CD発売と同時に自社製のCDプレーヤーも出すようになり,新たな展開をしていきましたが,ま
たしばらくCDデッキをはじめ,スピーカー以外の単品コンポーネントは出さなくなりました。この
DP-1000Hは,そういった中で,突如,沈黙を破って発売された1台で,薄型の精悍な筐体と
しっかりとした作り込みでダイヤトーンらしさを出した実力機でした。

ピックアップ部は,高精度で安定性の高い3ビーム・レーザー・ピックアップを開発して搭載してい
ました。3ビーム方式は構造が複雑になりますが,音楽信号を読み取る信号検出用メインビーム
とトラックズレを制御するための2本のトラッキングサーボ用サブビームに完全分離されているた
め動作が確実で安定性にすぐれているといわれています。さらに,アクチュエーター部は可動部が
非常に軽量,高感度に設計され,徹底した振動解析に基づいた設計定数,形状による最適設計
がなされたもので,不要な高次共振も排除されていました。また,レーザーダイオードも徹底した
品質管理による長寿命,信頼性,安定性の高いすぐれた最新型のものが搭載されていました。
ピックアップ・ベースには,精密なアルミダイカストが用いられ,剛性と精度が確保されていました。
光ピックアップを駆動するトラバースメカニズムは,リニアモーター方式がとられ静かにかつ高速
な駆動が可能となっていました。さらに,ハイ・トレーサビリティを確保するために,常に最適なサ
ーボをかける「インテリジェント・トレーサ・システム」が採用されていました。これは,外乱状態を
検出して,複雑なサーボ動作を効果的に行うサーボ回路用に専用のLSIを自社で独自開発して
搭載し,サーボ電流の無駄を省いた高音質で高性能なサーボを実現していました。
アクチューエータ・カバーについても,剛性が高く,共振ののりにくい新材料を開発採用し,各パー
ツも一段と精度が高められ小型化され,レンズも有限系レンズにして,平行光を形成するコリメー
トレンズを廃止し,光路長の短縮により薄型・コンパクト化が実現されていました。

DP-1000Hのピックアップ系メカニズムレーザーピックアップ部

さらに,ピックアップ部は,ピックアップに光検出器とプリアンプ部とを一体型に組み込んだ「オプティ
カル・ダイレクト・アンプ方式」が採用されていました。光ピックアップで検出された信号はそのままで
は微弱であるために,信号処理回路等からのパルス状のノイズ,伝送特性の微妙な変化,外部か
らの種々のノイズなどからの影響を受けやすい状態にあります。通常のピックアップでは,リード線で
プリアンプ部に導くようになっていますが,最短距離で結ぶために,DP-1000Hでは,レーザーピッ
クアップにプリアンプ部が組み込まれた特殊ICを新たに設計開発して搭載していました。この結果
再生信号,フォーカシング誤差信号,トラッキング信号を増幅して,ICから直接,電圧として取り出す
ことができるため,ノイズを従来の1/10に低減することができていました。この方式のために異種半
導体を一体化させるには,三菱電機の持つすぐれた半導体技術が生かされたということでした。

バーティカル・クランパ

ディスクのクランパにも一工夫がなされ,通常多く使われているアーム式クランパではなく,ディスクを
ターンテーブルの真上から垂直に固定する「バーティカル・クランパ」を開発して搭載していました。ディ
スクを固定する際にディスクの逃げが生じにくく,偏芯や面振れが少なくなるという方式でした。

DP-1000Hのシャーシ

筐体は,CDデッキとしては高さ60mmと異例なほどの薄型でしたが,剛性の高いしっかりとした凝った
シャーシ構造がとられていました。頑丈なダイカストフレームをベースにしてフロントパネル(アルミ製),
サイドパネル(鉄板+銅メッキ),トップカバー(アクリル製)を4本のアルミパイプ製の頑丈な制振コラ
ム(下部にゴム脚)でガッチリと組んだ形になっていました。そして,フロントパネルには,厚肉のアルミ
パネルが使用されて剛性が強化されていました。さらに,メカニズムパーツからリヤパネルにいたるま
で銅メッキが施され,制振が図られていました。トラバースメカニズムは,メカニズム系シャーシとの間
に特殊合成ゴムとコイルスプリングを併用したサスペンションでフローティングされた構造になっており
振動吸収が図られていました。また,シャーシ内部は,メカニズム部,デジタル回路部,アナログ回路
部,電源トランス部を完全に独立させるために導電性仕切り板で4分割した完全4分割シャーシ構造
がとられ,相互の干渉を抑えていました。この4分割構造は,キャビネットのボトムシャーシとトップカ
バーを強固に連結する形になっており,全体の剛性強化にも役立っていました。

DP-1000Hのデジタル信号処理回路部は,三菱電機自慢の半導体技術を生かした最新のLSIが搭
載されていました。,データスライサ,PLL,EFM信号復調,誤りデータ検出,誤り訂正,サブコード復
調など各種のデジタル信号処理回路をひとまとめに高集積化した1チップのC-MOSタイプで,オーデ
ィオ回路への影響を抑えていました。
デジタルフィルタとしては,群遅延特性にすぐれた,4倍オーバーサンプリングのFIR(Finite Impulse
Responce)形フィルタが搭載され,ローパスフィルタとしては,位相遅延が生じにくい低歪率のフィルタ
が搭載されていました。
D/Aコンバーターは,L・R独立で搭載された2DAC構成で,L・R間の位相差を抑えていました。D/Aコ
ンバータには,レーザ・トリミングによる精密加工を取り入れた16ビット精度のラダーネットワーク形を
採用し,高S/N再生を実現していました。

電源部は,アナログオーディオ系とサーボ系・デジタル信号処理系とを電源トランスの段階からセパレ
ートしたダブルトランス方式が採用されていました。特にオーディオ系には,容量的にも強力なトランス
を搭載し,巻線からパワーコード,オーディオ基板への電源供給ラインまで,すべて無酸素銅線を採用
していました。オーディオ系安定化電源にはトラッキングレギュレーター方式が採用され,負荷変動によ
る±電源のアンバランスを抑えていました。この方式により,デジタル回路やアナログ回路で発生する
パルス性ノイズが電源回路を通してオーディオ系に混入するのを防ぎ,負荷変動による悪影響も防止
していました。
また,電源コードがAC電源に差し込まれている限り,オーディオ系電源を供給し続けるプリヒーティング
方式が採用され,パワーON直後から正常なオーディオ性能を発揮できるように工夫されていました。

出力系は,アナログアウトとしてアンバランスのPIN出力に加えキャノン端子のバランス出力,そして,
デジタル系として同軸デジタル出力が搭載されていました。また,絶対位相が逆相になっているCDのた
めに,位相を反転させて再生できるフェイズインバートスイッチが装備されていました。
選曲機能として,10キーによるダイレクト選曲,最大36曲のランダムプログラム機能,全曲/1曲/A−B
/プログラムの4モードリピート機能,音を聴きながらのマニュアルサーチ,インデックスサーチ,が装備さ
れていました。表示系には,8桁の表示と小型ながら20曲ミュージックカレンダーが装備され,より高純度
な再生のためにディスプレイOFFスイッチも装備されていました。

以上のように,DP-1000Hは,薄型ながら重量感ある凝った作りのCDプレーヤーで,各部を基本に忠
実に一つ一つ技術を積み上げ,煮詰めていった,ダイヤトーンのこだわりが感じられる1台でした。CDの
イメージが弱いブランド故か,あまり話題にならず,隠れた実力機的存在だったと思います。クリアで非常
に鮮明なヌケの良い音は,同社のスピーカーに通じるものがあり,ダイヤトーンらしい個性をもっていまし
た。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



Think Digital.
音楽にいいことは全部やってみる。
デジタルを美しく進化させる,ダイヤトーン。


Think Future.
大胆に発想する。緻密に設計する。
それがダイヤトーンのデジタル。
◎高純度再生をめざして。
  オプティカル・ダイレクト・アンプ方式
  レーザーピックアップ。
◎高精度トラッキングを実現した
  3ビーム・レーザー・ピックアップ。
◎ピックアップの理想動作を追求した
  高性能アクチュエータ。
◎ピックアップの共振を排除した
  高剛性ピックアップ・ベース。


Think Basic.
基本を徹底させる。それがダイヤトーンのやり方。
◎構造そのものから音質向上をめざした
  高剛性無共振設計。
◎ディスクの偏芯と振動を同時に防止した
  バーティカル・クランパ。
◎確実なサーボ動作を実現した
  インテリジェント・トレーサ・システム。
◎高純度信号伝送を追求した
  完全四分割シャーシ。
◎高音質を自在に繰れる
  DP-1000H形の多彩な機能。


Think Purity.
最新のデジタル技術と,
ダイヤトーンオーディオ技術の,ひとつの結論。

◎高品位な信号を送る
  高密度デジタル信号処理回路。
◎デジタルの純度を追求した
  4倍オーバーサンプリングデジタルフィルタ採用
◎高S/N再生を実現する
  ツインD/Aコンバータ。
◎電源からの悪影響を排除する
  完全セパレート電源。
◎高音質をいつでも保障する
  プリヒーティング電源供給設計。
◎外部ノイズの混入を防ぐ
  バランスアウト端子。
◎デジタル信号をそのまま取り出せる
  デジタルアウト端子。
◎操作性と静粛性を高めた
  リニアモーター・トラッキングメカニズム。
◎原音を忠実に再生する。
  フェイズインバートスイッチ。
◎不要ノイズの排除へ。
  ディスプレイOFFスイッチ。




●SPECIFICATIONS●

方式
コンパクトディスクプレーヤー
チャンネル数
2チャンネルステレオ
周波数特性
4〜20,000Hz(±0.3dB)
ダイナミックレンジ
96dB以上(1kHz)
チャンネルセパレーション
100dB以上(1kHz)
S/N
105dB以上
歪率
0.003%(1kHz,0dB)
ワウフラッター
クォーツ精度(測定限界以下)
消費電力
17W
外形寸法
425W×60H×330Dmm
重量
6.0kg


※本ページに掲載したDP-1000Hの写真・仕様表等は1976年
 1月のDIATONEのカタログより抜粋したもので,三菱電機株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
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