DP-1100SGの写真
KENWOOD DP-1100SG
COMPACT DISC PLAYER ¥89,800

1987年にケンウッドが発売したCDプレーヤー。1984年に発売され,当時から音の良さで人気を得ていた
DP-1100の型番をもつシリーズの4世代目のモデルにあたり,一つの完成形となっていたように思います。
オーソドックスに煮詰められたしっかりした内容をもつCDプレーヤーでした。

DP-1100SGの最大の特徴は,徹底した防振対策を施した筐体・構造にありました。先代のDP-1100D
で開発された複数の防振対策の総合体「マルチ・インシュレーションシステム」をさらに改良し,「NEWマル
チインシュレーションシステム」として採用していました。

NEWマルチインシュレーションシステム

脚部(@)には,「ストラットエアーサスペンション」が搭載されていました。床接地部の特殊弾性ゴムにより振動
を吸収し,さらに次段階のコイルスプリングとエアーダンパーにより直線性を保ちつつ振動を吸収するという構造
で,主要部品を剛性の高いアルミダイカストで構成し,床から伝わってくる振動を可能な限り吸収しようという強
力な防振構造となっていました。
底板(A)には,微妙な振動をさらに減衰するために2mm厚の肉厚鉄板を使用し,高剛性と重量の増加による振
動や音圧への対策としていました。
筐体をなすケース(B)は,1mmの鉄板に0.6mmの鉄板を貼り合わせた防振構造とし,共振点の異なる素材
の貼り合わせにより振動エネルギーを内部損失により熱変換して吸収するような設計になっていました。
メカニズムを支えるシャーシ(C)には,1.2mm厚の鉄板を採用し,さらに要所に大形フレームを配置して,機器
全体の剛性を高め,小さな振動を押さえ込むようになっていました。
メカニズムを支えるベース部(D)には,アルミダイキャスト一体成型マウントを採用し,メカニズムやピックアップ
への振動の伝わりを抑え,メカニカルなアースポイントを明確にしてクリアな音を実現していました。

アルミダイキャスト一体成型メカニズムマウント

メカニズムそのもののマウント部(E)には,特殊弾性インシュレーター方式を採用し,外部からの振動を抑えると
ともに,ディスクモーターなど,内部から発生する振動も抑えるようになっていました。
ピックアップを支える部分(F)には,コイルスプリングと特殊弾性ゴムによるハイブリッドインシュレーターを使用し,
ピックアップまわりの防振をさらに徹底していました。
ピックアップマウント部(G)には,亜鉛とアルミニウムを主成分とする防振金属を使用し,剛性が高く振動減衰能
力の高いこの金属により,振動の吸収を図っていました。
D/Aコンバーターに振動を伝えないために,アナログ基板全体を新設計のPCBインシュレーター(H)でフローテ
ィングし,振動の影響をカットするようになっていました。
以上のように,総合的に適材適所での振動対策が組み合わされ,徹底されているのが特徴でした。

D/Aコンバーターは,4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを組み合わせたL・R独立型のものが搭載され
ていました。16ビットD/Aコンバーターですが,最大のビット(MSB)とその半分の大きさにあたるビット(2SB)
の歪み補正を行い直線性を高めた「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」が搭載されていました。また
このD/Aコンバーターには,データーを正確に速く検出できる,当時最高速のゲート・アレイによるオリジナルICと
して搭載され,遅延量を全くなくした1チップIC構成で低歪みのD/A変換を実現していました。

デジタル信号とオーディオ信号の橋渡し部にあたる信号処理D/Aコンバーター部では,ミュート信号,エンファシス
信号にフォトカプラーを使用して,デジタル部とアナログ部のアースラインを完全に分離していました。しかも,D/A
コンバーター部のプリント基板をデジタル部とアナログ部の2枚構成とし,高周波ノイズをカットする新開発のジャミ
ングフリーエフェクト材を使うことにより,電磁波によるノイズをシャットアウトしていました。

電源部は,デジタル,サーボ系とオーディオ用にそれぞれ専用のトランスを搭載した2トランス構成で,それぞれ,
15.5VAと12VAのものをケースに封入して搭載していました。また,他の機器やAC電源自体の汚れ(デジタル
ノイズ等の高周波)を2次電圧に変換させないようにトランスの巻線に特殊なディバイスを使った「クリーンサイクロ
ン電源」としていました。この「クリーンサイクロン電源」は,デジタル用電源からフィードバックされるデジタルノイズ
も鮮やかにカットできるため,アナログ信号用の電源をクリーンに保つ効果もあるというものでした。また,電源コー
ドは極太のものが採用されていました。

DP-1100SGの2トランス電源

デジタル出力として,コアキシャル(同軸)端子とオプティカル(光出力)端子を備え,当時各社から出ていたD/Aコン
バーター内蔵型アンプや,単体D/Aコンバーターとの接続が可能となっていました。また,アナログ出力は固定と可
変の端子を備え,可変端子からの出力は,モーター付きボリュームによりリモコンでも可変できるようになっていまし
た。出力端子は金メッキ端子となっていました。
プログラム選曲機能として,通常のプログラム選曲以外に,時間枠を指定して,それに収まるように若い曲順から自
動的にプログラムして演奏できるプログラムエディット機構も搭載していました。

以上のように,DP-1100SGは,DP-1100から始まった1100の型番をもつシリーズの最終形としてしっかりと物
量が投入され,コストパフォーマンスの高い1台となっていました。ケンウッドらしいクリアで力強くカッチリとした音は
改良を重ねてきた高い完成度を感じさせるものだったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


独創のIC技術と
NEWマルチインシュレーション・システム。
揺らさない,汚さない
真のCDの姿と音楽がここにある。
◎リアルステップフルビットD/Aコンバーター
◎ストラットエアーサスペンション
◎NEWマルチインシュレーションシステム
◎クリーンサイクロン電源
◎ランダムプログラムエディット機能
◎4倍オーバーサンプリングLR独立D/Aコンバーター
◎デジタル/アナログ2トランス電源
◎D/Aコンバーターのデジタル・サーボ系とアナログ系を
 完全分離
◎オプティカル/コアキシャルデジタルアウトプット
◎モーター付ボリューム
◎オプティマムサーボタイプV
◎ジャミングフリーエフェクト
◎4プレイモード
◎極太電源コード
◎金メッキのアウトプット端子
●SPECIFICATIONS●


周波数特性 4Hz〜20kHz(EIAJ)
SN比 108dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 97dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率 0.001%以下(1kHzTHD)
0.0025%(EIAJ)
チャンネルセパレーション 106dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%WPeak)以下(EIAJ)
出力電圧 固定出力:2.0V(EIAJ)
可変出力:0〜2.0V(EIAJ)
ヘッドホン出力 60mW(8Ω)
オプティカルデジタル出力 −15dBm〜−25dBm
コアキシャルデジタル出力 0.5Vp-p(75Ω)
最大外形寸法 440W×124H×360Dmm
重量 11.8kg
電源電圧・電源周波数・消費電力 100V 50・60Hz 20W クリーンサイクロン電源
マルチインシュレーションシステム 脚:ストラットエアーサスペンション,底板:2mm,
二重構造ケース,メカマウント:アルミダイキャスト
メカニズムインシュレーター,ハイブリットインシュレーター
防振ピックアップマウント:防振金属(アルミ+亜鉛)
PCBインシュレーター
型式 コンパクトディスクプレーヤー
読み取り方式 非接触光学式読み取り
レーザー GaAlAs λ=750nm
回転数 約200rpm〜500rpm(CLV)
エラー訂正方式 クロスインターリーブ・リードソロモンコード
チャンネル数 2チャンネルステレオ
サーボ方式 オプティマムサーボTYPEV
デジタルフィルター 4倍オーバーサンプリング
アナログフィルター 5次バターワースFDNR型ディスクリート
D/Aコンバーター リアルステップフルビットD/A
左右独立高精度ラダーネットワーク型
デジタル/アナログオプトカップリング
デジタル出力 光ファイバー,同軸ケーブル用 2系統
デジタル出力ON/OFFスイッチ付
ライン出力 固定,可変(リモートコントロール付)
ヘッドホン出力 リモートコントロールレベルボリューム付
プレイモード トラック,プログラム,タイム,シングル全4モード
最大プログラム曲数 20曲(99曲対応)
選曲機能 ダイレクト選曲(10キー及び,+10,+20,+30
         +40,+50キーによるダイレクト選曲)
スキップ選曲,マニュアルサーチ,インデックス選曲
プログラム選曲,時間指定選曲,1曲選曲
表示機能 曲ごとの演奏時間表示,曲ごとの残り時間表示
ディスク(プログラム)全体の演奏経過時間表示
ディスク(プログラム)全体の残り時間表示
出力レベル表示,エンファシス表示
リピート機能 全曲リピート,1曲リピート,プログラム順全曲リピート
時間指定編集機能,オートプログラム機能

DP-1100(シルバー)の写真
DP-1100(ブラック)の写真
TRIO DP-1100
COMPACT DISC PLAYER ¥149,800

1984年に,DP-1100の初代モデルが発売されました。当時はトリオブランドで発売され,同社のCDプレーヤー
1号機
L-03DPで得た,音質に対する高い評価を受け継ぎつつ,より洗練された薄型の筐体をもつCDプレーヤー
として高い評価を得ました。特に,トリオらしいクリアでしっかりした音はすばらしいものでした。

D/Aコンバーター部をはじめ基本的には,L-03DPを受け継ぎつつより改良された内容を持っていました。D/Aコ
ンバーターは,最も基本的なマルチビットタイプ(当時はもちろん1ビットタイプはなかった。)16ビット高速積分型を
搭載していました。そして,新たに「高精度積分用定電流回路」を開発・搭載し,変換誤差をより低く抑えていました。
また,デジタル信号処理部とアナログ信号処理部のそれぞれに独立した電源供給回路を設け,相互干渉を抑えて
いました。さらに,RAM波への変換回路には,Lch,Rch専用の高精度アナログスイッチICを採用し,セパレーショ
ンの向上を図っていました。

レーザーピックアップ部はL-03DPと同じ1ビームタイプで,トラッキングエラー検出には,4分割ディテクターによる
時間差検出方式,フォーカスエラー検出には,反射型の臨界角検出方式を採用し,ここから得られたサーボコントロ
ール信号により2次元駆動アクチュエーターを駆動するタイプでした。
ピックアップのサーボコントロールには,「オプティマム・サーボコントロール」が搭載されていました。これは,1周を
120分割してキズの場所を検知するというもので,ディスクにキズやほこりなどがあると自動的に検知し,サーボ量
を適切に制御,障害部分を通過すると元のサーボ量に戻るという,当時としては先進的なもので,優れたトレース能
力を実現していました。

機能的には,L-03DPより高速選曲のDPSS,10キーによINDEXまで指定できるスピーディーなランダムアクセス
による選曲機能を受け継ぎ,プログラム選曲は16曲に増やされていました。また,L-03DPにはなかったリモコンも
付属していました。

以上のように,初代DP-1100は,同社のCDプレーヤー第1号機L-03DPをより洗練させたような内容を持った使い
やすくトリオらしいクリアな音を持った実力派のCDプレーヤーでした。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


CDの性能に新しい魅力が加わった。
THD0.0015%,音を問う。
◎0.0015%の低ひずみ率(THD)を実現した
 高精度積分用定電流回路採用の
 16ビット積分型D/Aコンバーターブロック
◎オプティマム・サーボコントロール
◎ミクロン単位のデジタル信号を忠実に検出する
 半導体レーザーピックアップ
◎コンピューターコントロールの
 高精度メカニズム・システム
◎見やすく操作性にすぐれた大型集中ディスプレイ
◎超高速応答のDPSS機能
◎演奏曲順を自由に指定し,
 自動演奏可能なプログラムメモリー
◎曲の頭出しがスムース&スピーディーに楽しめる
 ランダムアクセス
◎ワンタッチ選曲が可能なMUSIC SEARCH
◎全曲繰返し演奏はもちろん,
 1曲繰返し演奏も可能な”REPEAT”動作
◎ミュージックスキャンのできる
 リモートコントロール・ユニット付属

DP-1100Uの写真
KENWOOD DP-1100U
COMPACT DISC PLAYER ¥149,800

DP-1100は,同1984年後期にはTRIOブランドからKENWOODブランドへの転換とともにDP-1100U
へと改良が施され,完成度が高められました。外観,価格とも変更はされていませんでしたが,内部のブラ
ッシュアップが施されていました。

主な改良点として,電源部の強化がありました。特に重要なD/Aコンバーター部に高精度積分用定電流回
路を新開発して搭載し,D/Aコンバーターの積分回路に安定した電流を供給することによりより正確なD/A
変換を実現していました。また,電源回路自体,デジタル回路,サーボ回路,D/A電源供給回路のそれぞれ
に独立した巻線をもつマルチ独立電源とし,相互干渉を抑えていました。さらに,D/Aコンバーター部を3300
μF×4,4700μF×5,1000μF×3の大容量コンデンサーでフィルターすることにより,低音域の再生能
力を高めていました。

また,DP-1100Uでは,従来のアンプにもう1段アンプを設置し,全体のゲインを上げたうえで,NFループを
構成するカスケード・アンプ・フィードバック回路を開発して搭載していました。この回路では,追加したアンプ
のゲインにより多量の帰還量が得られることになり,ひずみ,SN比などの諸特性が大幅に改善されていまし
た。さらに,誤差1%以内という金属皮膜抵抗や銅スチロールコンデンサーなど高精度パーツを新たにD/Aコ
ンバーター部に採用し,回路全体の精度を高めていました。

以上のように,DP-1100のブラッシュアップにより,さらに完成度を高め,音質もよりクリアで力強いものとな
っていました。
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


強力マルチ電源により,
デジタルの低音が凄みを増してきた。
◎オプティマム・サーボコントロール
◎大容量特殊コンデンサーを駆使した
 マルチ独立電源
◎D/Aコンバーター部に
 カスケード・アンプ・フィードバック回路
◎0.0010%の低ひずみ率(THD)を実現した
 高精度積分用定電流回路採用の
 16ビット積分型D/Aコンバーターブロック
◎ミクロン単位のデジタル信号を忠実に検出する
 半導体レーザーピックアップ
◎超高速応答のDPSS機能
◎ミュージックスキャンのできる
 リモートコントロール・ユニット付属
●SPECIFICATIONS●


  
DP-1100
DP-1100U
読み取り方式 光学式(コンパクトディスク方式)
ピックアップ型式 半導体レーザーピックアップ
回転数 200〜500rpm,線速度1.2〜1.4m/s
エラー訂正方式 CIRC2重エラー訂正方式
チャンネル数 2チャンネルステレオ
標本化周波数 44.1kHz
量子化ビット数 16bitリニア
ローディング 水平ローディング
ダイナミックレンジ 95dB以上
SN比 95dB以上 96dB以上
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.5dB
全高調波歪率 0.0015%(1kHz) 0.001%以下(1kHz)
チャンネルセパレーション 90dB以上(1kHz)
ワウ・フラッター 水晶発振精度(測定限界以下)
出力 2V(600Ω) 端子出力2V(0dB)
電源 AC100V 50Hz/60Hz
消費電力 23W(PLAY時) 20W(電気用品取締法に基づく表示)
最大外形寸法 440W×88H×310Dmm
重量 6.8kg



 
 
DP-2000の写真
KENWOOD DP-2000
COMPACT DISC PLAYER ¥149,800

1985年には,型番は2000となったものの,DP-1100Uの基本設計を受け継いだ後継機と考えられる
DP-2000が登場しました。新たに,FIR(Finite Impulse Responce)型のデジタルフィルターが搭載
され,電源部も2トランス,4巻線11電源の大容量マルチ電源へと大幅に強化されていました。ピックアッ
プ部は,1ビーム方式のものから新開発の3ビーム方式のものとなっていました。
ディスクドライブ部は,新たに偏芯吸収機構が搭載されていました。これは,ディスククランパーにリング状の
マグネットを配して,ディスクを均一に着装してディスクの水平をとり,センターシャフトの周囲に真鍮削り出し
のテーパー状の形状をもつセンターガイドを採用し,バネにより浮き沈みする構造をもつこのセンターガイドに
よりセンターホールの大きさの違いによる回転のぶれを抑えるものでした。
また,デジタルデータの段階で正相,逆相を切り換えて出力できる「インバートスイッチ」が搭載されていま
した。筐体も振動対策が行われ,インシュレーターの強化,底板に2.9mm,天板,側板に3.0mmの厚板
を使用して防振材で補強した構造がとられていました。
以上のように大幅に改良されたDP-2000は弟機DP-1000(¥69,800)とともに音のよいCDプレーヤ
ーとして高い評価を得ました。
 
 
 


●SPECIFICATIONS●


読み取り方式 光学式(コンパクトディスク方式)
ピックアップ型式 3ビーム半導体レーザー方式
回転数 200〜500rpm,線速度1.2〜1.4m/s
エラー訂正方式 CIRC2重エラー訂正方式
チャンネル数 2チャンネルステレオ
標本化周波数 44.1kHz
量子化ビット数 16bitリニア
ダイナミックレンジ 96dB
SN比 97dB
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.5dB
全高調波歪率 0.001%(1kHz)
チャンネルセパレーション 96dB(1kHz)
ワウ・フラッター 測定限界以下
出力 端子出力2V(0dB)
ヘッドホン出力 32mWMAX/32Ω
サーチ 10KEYによるT No./INDEXサーチ
UP/DOWN KEYによる1曲飛び越し選曲
FF・BWD KEYによるマニュアルサーチ(キューイング)
メモリー ランダム16曲可能
Display T No./INDEX No./経過・残量・累積時間 メモリー状態の表示
その他の機能 リザーブ機能,インバート機能,サブコード出力端子付
消費電力 20W
最大外形寸法 440W×95H×313Dmm
重量 9.1kg


DP-1100Dの写真
KENWOOD DP-1100D
COMPACT DISC PLAYER ¥84,800

1986年,DP-1100の型番をもつ後継機DP-1100Dが登場しました。DP-1100U,DP-2000
の技術を受け継ぎつつさらに各部が改良・強化されていました。

大きな改良点として振動対策の強化が図られていました。上級機のD-3300Pで採用された「マルチ
インシュレーションシステム」が新たに採用されていました。この「マルチインシュレーションシステム」
は,各部の対策トータルで振動をシャットアウトするものでした。●メカニズムを支えるベース部にアル
ミダイキャスト一体成型マウントを使ってシャーシを伝わる外部振動をシャットアウトし,●次にメカニズ
ムそのもののマウントに特殊弾性インシュレーターを採用。外部振動とディスクの回転による内部振動
を抑えていました。●さらに,ピックアップを支える部分にもコイルスプリングとゴムによるハイブリッド
インシュレーターを用い,ピックアップへの振動を抑えていました。●ピックアップ部自体も複合素材に
よって高剛性化が図られ,内部振動を抑えてトレース能力を高めていました。●そのうえ,大型フレー
ム構造による高剛性・重量級筐体を使い,特殊防振ゴムの柔・硬2種類の素材を組み合わせた大型
インシュレーターで床からの振動を抑えていました。

アルミダイキャスト一体成型マウント

ピックアップのサーボコントロールは,「オプティマムサーボコントロール」が受け継がれ,改良された
「オプティマムサーボコントロールTYPEV」が搭載されていました。音楽再生中のサーボゲインをで
きるだけ下げ,サーチ時のみサーボゲインを上げるゲイン切換を行い,キズやホコリに対しては,あら
かじめ設定されたエラー電圧をサーボ系に与え,余分な力をピックアップに与えない状態で通過させ
るというシステムで,高音質トレースを可能としていました。ディスクドライブ部には,DP-2000以来
の偏芯吸収機構が採用されていました。

偏芯吸収機構センタースピンドル部
 

DP-2000同様に,2倍オーバーサンプリングデジタルフィルターが搭載され,7次バターワース型
アナログフィルターとの組み合わせにより優れた位相特性を確保していました。D/Aコンバーターは
L-03DP以来の高精度積分型で,DP-1100U同様に高精度積分用定電流回路をを搭載していま
した。また,新たにデジタルアウトプット端子が搭載され,同軸ケーブルによる外部D/Aコンバーター
との接続が可能となっていました。

電源部・コンストラクションも強化が図られ,デジタルフィルター以降のアナログ部は完全なツインモノ
構成として左右間,前段・後段の干渉を排除していました。
ディスプレイ部は,ソニー機で見られるような20曲までのトラックナンバーを表示するミュージックカレ
ンダー表示が新たに採用されていました。

以上のように,DP-1100Dは,DP-1100の3世代目(DP-2000を含むと4世代目?)として,価
格は大幅に安くなりながら,充実した内容をもつコストパフォーマンスの高い,音質のよいCDプレー
ヤーでした。
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


アナログ技術で,デジタルは成長した。

アンプ内のD/Aコンバーターまで
デジタル伝送。
音の鮮度が高まった。

◎ピックアップに振動を伝えない
 マルチインシュレーション・システム
◎電気的性能を1ランク向上させた
 ツイン・モノコンストラクション
◎共振点をもたない高剛性ピックアップ
◎振動にもディスクのキズや汚れに強い
 オプティマムサーボコントロールtypeV
◎高精度積分型D/Aコンバーター
◎デジタルアウトプット
◎CD回転中心点を確保した
 高剛性の偏芯吸収機構
 
●SPECIFICATIONS●


周波数特性 1Hz〜20kHz(EIAJ)
SN比 100dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 96dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率 0.0015%以下(1kHzTHD)
0.0035%以下(EIAJ)
チャンネルセパレーション 105dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%WPeak)以下(EIAJ)
出力電圧 2.0V(EIAJ)
ヘッドホン出力 25mW(32Ω)専用ボリューム付
デジタル出力 同軸出力:0.5Vp-p(75Ω)
最大外形寸法 440W×103H×316Dmm
重量 7.0kg
消費電力 16W
マルチインシュレーションシステム ダイキャスト・メカニズム・マウント
メカニズムインシュレーター防振メカニズム
ハイブリッド・インシュレーター
高剛性・重量級筐体
大型インシュレーター
型式 コンパクトディスクプレーヤー
読み取り方式 非接触光学式読み取り
レーザー GaAlAs λ=750nm
回転数 約200rpm〜500rpm(CLV)
エラー訂正方式 クロスインターリーブ・リードソロモンコード
チャンネル数 2チャンネルステレオ
サーボ方式 オプティマムサーボTYPEV
デジタルフィルター 2倍オーバーサンプリング
アナログフィルター 7次バターワースディスクリート
D/Aコンバーター 高精度積分型
デジタル出力 同軸ケーブル用
ライン出力 固定2系統
ヘッドホン出力 レベルボリューム付
プレイモード トラック,プログラム,タイム,シングル全4モード
最大プログラム曲数 20曲(99曲対応)
選曲機能 ダイレクト選曲(10キー及び,+10,+20,+30
         +40,+50キーによるダイレクト選曲)
スキップ選曲,マニュアルサーチ,インデックス選曲
プログラム選曲,時間指定選曲,1曲選曲
表示機能 曲ごとの演奏時間表示,曲ごとの残り時間表示
ディスク(プログラム)全体の演奏経過時間表示
ディスク(プログラム)全体の残り時間表示
総曲数,総演奏時間(タイムディスプレイ切替にて可能)
トラックNo.,インデックスNo.,ミュージックカレンダー
プログラム曲順確認,プログラム総曲数,総演奏時間確認
エンファシス表示
リピート機能 全曲リピート,1曲リピート,プログラム順全曲リピート
A→B区間
※本ページに掲載したDP-1100,DP-1100U,DP-2000
 DP-1100D,DP-1100SGの写真・仕様表等は1984年5月
 1984年10月,1985年12月,1986年10月,1987年9月の
 TRIO-KENWOODのカタログより抜粋したもので,トリオ-ケンウ
 ッド株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,
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