DENON DP-52F
DIRECT DRIVE FULLY AUTOMATIC 
           TURNTABLE SYSTEM 
                            ¥89,800
1981年に,デンオン(現デノン)が発売したプレーヤーシステム。デンオンは,1971年のDP-5000
以来,滑らかな回転特性をもつACサーボモーターを用いたダイレクトドライブ方式のプレーヤーですぐ
れた製品を作り続け,豊富なラインナップを展開していました。そうした中,それまでの同社のプレー
ヤーシステムとはデザインイメージを大きく変え,新たに電子制御アームを搭載した新しいシリーズとし
て発売されたのがDP-52Fでした。

DP-52Fの最大の特徴は,デンオンで初めて採用した電子制御トーンアームでした。デンオンの電子
制御トーンアームは「ダイナミックサーボトレーサー」と称するもので,低域共振を積極的にダンピング
する働きをするものでした。トーンアームの低域共振をダンピングする方法として,従来オイルダンプ
などの方式がとられていましたが,オイルの管理,移動時のオイル漏れ,軸受部へのオイルの影響な
ど扱いの難しい面もありました。こうしたこともあり,1980年ごろから,ソニーの「バイオトレーサー」,
ビクターの「EDサーボトーンアーム」など,電子制御トーンアームが登場するようになりました。デンオ
ンの「ダイナミックサーボトレーサー」も,技術的に同様な方式で,カートリッジのコンプライアンス(カン
チレバー等の変形しやすさのこと)とトーンアーム実効質量によって生じる「低域共振周波数(fo)」と,
低域共振による「ピーク(Q)」を適切な設定にしようとするものでした。



DP-52Fでは,軽質量のストレートアームとして,foを理想的な10Hz前後に設定し,レコードのソリ
などによって生じる変調ノイズの影響を避け,可聴帯域外となるようにしていました。その上で,「ダ
イナミックサーボトレーサー」で,Qを理想的な状態に抑える仕組みになっていました。トーンアーム
のごく微細な動き(水平・垂直)を検出コイルで検出し,駆動コイルに流す電流をコントロールする方
式で,fo点でアームが針の振動の逆方向に動く力を抑制し,トレース能力が大幅に高められる仕組
みでした。「ダイナミックサーボトレーサー」は,シンプルなメカニズムと電子回路によって構成され,
高い検出精度とハイスピードな応答性を実現し,トレース能力とともに音質の向上を図っていました。
さらに,アーム自体は電子式のダイナミックバランス形で,針圧は電子的に印加されるようになって
いました。インサイドフォースをキャンセルするアンチスケーティング機構も電子式で,アームの水平
方向駆動コイルに流れる電流をコントロールすることで行う無接触構造となっており,摩擦による感
度低下も排除されていました。

DP-52Fは,アーム動作がボタン1つでできるフルオートプレーヤーでした。そのため,コイルによる
無接触式のアーム駆動機構がここにも生かされていました。ターンテーブル上にはレコードサイズ検
出のためのセンサーが設けられており,レコードを載せてSTARTボタンを軽く押すと,内蔵のマイク
ロプロセッサーの働きにより,レコードのサイズ・回転数(30cmでは33・1/3回転,17cmでは45回
転)を自動検出してターンテーブルが回転し,アームが所定のスタート位置に降りて,演奏をスタート
するようになっていました。30cm・45回転などのレコードに対してはSTARTの後SPEEDボタンで
設定すればよく,自由な位置にアームをマニュアルで動かしての,アームリフト・ダウンも可能で,ボ
タン1つで適正なスピードで安全にアップ・ダウンができる電子式アームリフターも装備されていまし
た。ターンテーブル上のセンサーにより,レコードが載っていない状態では,アームが降りない安全
設計にもなっていました。

ターンテーブルは,直径30cm,慣性質量200kg・cm2のアルミダイカスト製で,デンオン伝統の,
外周がスラントしたフレームに囲まれた形のデザインになっていました。
モーターはデンオン伝統の交流方式のACサーボモーターを搭載していました。構造がシンプルで故
障が少
なく,原理的に電気的ノイズが少なくコッキングが発生しない,トルクムラが少なく滑らかな回
転を持ったモーターでした。つまり,トルクは小さいながら滑らかな回転を持つACサーボモーターと
比較的軽量なターンテーブ
ルを組み合わせるというデンオン伝統の設計となっていました。

回転制御には,スピード検出精度が高い磁気記録検出方式と,クォーツロックを組み合わせた「両
方向サーボDENONクォーツ」が搭載されていました。ターンテーブルの外周のリムの内側に付いて
いる1000個の
磁気パルスを検出ヘッドで検出し,検出する周波数が555.55Hz(33・1/3回転
時)という,一般のFG方式に比較して数倍~数十倍も高い周波数で高精度な
スピード検出を行い,
水晶発振による位相制御で回転速度の小刻みなバラツキを抑え,ワウ・フラッター0.01%(WRMS)
回転偏差0.002%
以内という回転精度を実現していました。また,このDENONクォーツのサーボ
は両方向サーボになっており,回
転の遅れだけでなく,早すぎた場合にも確実に対応し,45回転-
33・1/3回転の変更時や電子ブレー
キによる制動時にも迅速にかつ有効に働くようになっていました。

外観デザインは,DP-70Mなどのイメージを感じさせるシャープなデザインの薄型のキャビネットを
もつもので,これ以降デンオンのフルオートプレーヤーに継承されていきました。キャビネットは,リ
アルウッドの鏡面仕上げでとなっていました。操作ボタンは前面に集中配置され,全てフェザータッ
チの自照式で,ダストカバーをしめた状態での軽快な操作が可能となっていました。



DP-52Fには,MCカートリッジにDL-52が標準装備されていました。ダイレクト・リニアフラックス方
式を採用した,軽自重・軽針圧・ハイコンプライアンス型のカートリッジで,デンオンが新たに開発した
ものでした。

以上のように,DP-52Fは,デンオンがこれまでのアナログプレーヤーの蓄積された技術の上に,電
子制御アームなどの新しい技術を投入した新しいシリーズとして使いやすいプレーヤーとなっていまし
た。デザイン的にも新しいデンオンのプレーヤーのイメージを持った1台でした。


DENON DP-51F
DIRECT DRIVE FULLY AUTOMATIC 
           TURNTABLE SYSTEM 
                         ¥69,800


また,DP-52Fには,基本部分が同一の弟機としてDP-51Fが発売されていました。大きな違いは
キャビネットの仕上げで,DP-51Fでは,リアルウッド仕上げではなく,天然木目調仕上げとなってい
ました。また,カートリッジは,MM型のDL-60が標準装備されていました。





以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



高忠実トレースの
「ダイナミックサーボトレーサー」搭載。

高性能カートリッジ装備,軽快動作の
フルオートプレーヤーDP-52F・DP-51F

指先で軽く触れるだけで
快適なレコード・プレイ。

 ◎シャープなデザイン感覚と
  自照式ボタン採用
  フロントオペレーション
 ◎あらゆるレコードに対応する
  フルオート機能


低域共振を理想的にダンピングして
ひずみのないクリアーな中・高域
キリリと締まった低音を再現

 ◎ダイナミックサーボトレーサー
  軽質量ストレートアーム搭載


マイクロプロセッサーで制御
専用モーター駆動の高度なフルオート機構


DEONOクォーツ採用
S/N 78dB以上,ワウ・フラッター 0.01%

 ◎基本性能の高いACサーボモーター
 ◎FGサーボ方式の最も高度な方式
  「両方向DENONクォーツ」
 ◎両方向スピードサーボ
 ◎スムーズですばやい電子ブレーキ


その他の特長
 ◎電子式ダイナミックバランス形トーンアーム
 ◎電子式アンチスケーティング
 ◎専用ヘッドシェル交換方式
 ◎レーザ・ホログラフィー干渉による振動解析から
  生まれたターンテーブルシート
 ◎防振効果が高く,高さ調節が可能なインシュレーター
 ◎低容量出力コード採用
 ◎一体成型の堅固なダストカバー


軽針圧・ハイコンプライアンス形
高性能カートリッジを標準装備

 ◎MCカートリッジDL-52(DP-52Fに装備)
 ◎MMカートリッジDL-60(DP-51Fに装備




●DP-52F/DP-51Fの主な仕様●

■フォノモーター部■


駆動方式
両方向サーボ・ダイレクトドライブ
モーター
ACサーボモーター
スピード制御方式
周波数検出によるスピードサーボおよび位相サーボ
回転数
331/3,45rpm
回転数偏差  0.002%以内 
スピード切換え機構
ソフトタッチ・プッシュボタン
ワウ・フラッター
0.01%w.rms以下(回転系)
0.02%w.rms以下(JIS)
SN比
78dB以上(DIN-B)
起動時間
1.8秒以内で規定回転(331/3rpm)
負荷特性
0%(針圧80g最外周)
ブレーキ
電子ブレーキ
電源電圧特性
90~110Vの変動に対して0%
ターンテーブル
アルミダイカスト30cm慣性モーメント200kg・cm(ターンテーブル・シー ト含む)





■トーンアーム部■


形式
ダイナミックバランス,専用シェル交換式軽質量ストレート形
電子ダンピングサーボ・フルオートアーム
有効長
244mm
オーバーハング
14mm
トラッキングエラー
2.5°以内
針圧可変範囲
0~3g
適合カートリッジ重量
約3~12g
ヘッドシェル
特殊硬質樹脂製専用形PCL-50:約3.3g
出力コード
低容量コード約1.2m
付属機構
電子式アンチスケーティング機構電子式サーボリフター





■その他■


キャビネット
木製
 DP-52F:リアルウッド鏡面仕上げ
 DP-51F:木目調仕上げ
電源・消費電力
AC100V,50/60Hz・14W
寸法
455W×424D×130Hmm(ダストカバー閉時)
重量
約9kg



※ 本ページに掲載したDP-52F/DP-51Fの写真・仕様表等は
1981年10月のDENONのカタログより抜粋したもので, デノン
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無
断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注
意ください。

 
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