DENON DP-55L
AUTO LIFT PLAYER SYSTEM ¥72,000
1980年に,デンオン(現デノン・D&Mホールディングス)が発売したプレーヤーシステム。デンオン
は,1971年のDP-5000以来,滑らかな回転特性をもつACサーボモーターを用いたダイレクトド
ライブ方式のプレーヤーですぐれた製品を作り続け,豊富なラインナップを展開していました。この
年,デンオンは,DP-75MDP-70L,DP-60L,DP-60M・・・と本格的なマニュアル型のプレー
ヤーシステムを発売し,その一連のモデルの弟機として発売されたのがDP-55L,DP-55Mでした。

ターンテーブルを駆動するモーターには,ACサーボモーターが搭載されていました。DD(ダイレクト
ドライブ)のターンテーブルでは,トルクの大きいDCモーターを用い,回転変動を重量のあるターン
テーブルの慣性質量で平滑化する方式とトルクは小さいもの回転の滑らかなACモーターで軽量な
ターンテーブルを駆動する方式があります。デンオンは,本質的にトルクムラ,コッキングが発生せ
ず,振動発生に対して非常に有利なACモーターによる滑らかな回転を特徴としていました。ACモー
ターは,電気的なノイズも少なく,SN比においてもメリットをもち,小出力のMCカートリッジの使用
においても有利となっていました。
このACサーボモーターには,上・下軸受け間のスパンの長い直径10mmという太いDDモーター用
シャフトを使用しているため,ターンテーブルの横ブレ等に対して高い強度をもたせ,初期性能の
長期間維持を実現していました。ターンテーブルは,直径30cmのアルミダイカスト製で慣性モーメ
ント200kg・cm2という比較的軽量なものとなっていました。ターンテーブルシートは,レーザーホロ
グラフィー干渉による振動解析で材質・形状両面から分析し,レコードとの密着性,防振効果を高
めたものとしていました。



回転制御は,FG(周波数発電)検出方式のクォーツロックの位相制御による「DENONクォーツ」を
搭載していました。FG検出には,最も検出精度が上がるターンテーブル外周のリム内側に非常に
正確なピッチで磁気記録された1000個のパルス信号を磁気ヘッドで検出する磁気記録検出方式
が採用されていました。



1000個のパルスは,間隔誤差1/10000以内の高精度で,検出される周波数は331/3回転では
555.5Hzとなり,一般のFG方式に比較して数倍~10数倍も高い周波数で,検出精度・応答性に
すぐれ,ゲインの高い安定したサーボ系を構成し,基準電圧と比較して回転の制御をするようになっ
ていました。
検出用磁気ヘッドは,ツー・イン・ワン(2in1)型のヘッドで,両方向スピードサーボ方式により,回転
速度の増・減速にきわめてシビアな応答をし,回転変更時の立上り,立下がりに対しても,すばやい
応答を示すようになっていました。
そして,クォーツロックによる位相制御は,高精度な磁気記録検出の信号と水晶を用いた基準発振
器による信号の位相を比較して,両方向にサーボをかけ,高精度な回転を確保し,ワウ・フラッター
0.015%以下(WRMS,DENON測定法),回転数偏差0.002%という精度を実現していました。
また,水晶発振同期による一条縞ストロボが搭載されていました。



トーンアームは,実効長244mmの軽量で剛性の高いスタティックバランスS字形・ユニバーサルアー
ムが搭載されていました。実効質量の軽減化により,トレース能力を改善していました。アームパイプ
には特殊効果処理が施され,剛性を高めるとともに,ウエイト部はダンパーを介して結合し,アーム鳴
きを解消していました。そして,アームレストが一緒に上下する高さ調整機構が装備され,約5mmの
範囲で調整可能となっていました。
さらに,トーンアームには,電子制御のオートリフト機構が装備され,レコードの演奏が終了すると,無
接触の光学式にエンドセンサーが働き,トーンアームが上昇し,針先がレコードから離れるタイミング
を待って電子ブレーキが動作するように構成されていました。電子ブレーキは,すばやく確実に動作
し,ターンテーブル停止後に解除される逆回転のないブレーキ機構となっていました。アームの上下
動作は,専用のアンギュラーコントロールモーターを用いた電子サーボリフターによって,常に一定の
速度でスムーズな動作をするようになっていました。

ターンテーブルは,操作ボタンが配置されたアルミダイカスト製のターンテーブルフレームに囲まれた
デンオン伝統のデザインになっており,キャビネットは,20mm厚の高密度パーティクルボードを使用
した剛性の高いものとなっていました。特に,アームベースを取り付けるアームボード部の下は60mm
厚の積層構造となっており,アルミダイカスト製の堅固なアームベースを頑丈アームボードにがっしり
と固定することで,ハウリングや濁りを抑えた再生を実現していました。また,デザイン的には,かりん
木目をすっきりと活かした高級感のある外観としていました。そして,キャビネット全体を高さ調整可能
な大型のインシュレーターが支える構造となっていました。

以上のように,DP-55Lは,デンオンが積み上げてきた伝統的な技術をもとにバランスよく設計され
たコストパフォーマンスにすぐれた中級機でした。デザインと機能性,音質のバランスはアナログプ
レーヤーにおけるデンオンの技術の高さを感じさせるものでした。


DENON DP-55M
MANUAL PLAYER SYSTEM ¥65,000


オートリフト機構を搭載していないマニュアルプレーヤーとしてDP-55Mも発売され,よりコストパフォー
マンスが高い1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



両方向サーボ
DENONクォーツ・ターンターブル,
ダンピング付軽量トーンアーム搭載
再生の楽しさを加える
自照式スピード切替えと
高級仕上げキャビネット。

◎高性能MCカートリッジのクオリティを
 深い透明感で引き出すS/N78dB
◎FG検出方式の最も高度な方式=レコードの
 ほぼ外周位置で速度検出するサーボ機構
◎立上り・立下がり特性にすぐれた
 両方向のスピードサーボ機構を採用
◎大形アームベースに支持された有効長244
 mmのダンピング付高感度アーム搭載
◎防振特性とフィーリングの両立を重視した
 かりん木目調仕上げの優美なキャビネット



音楽のフィナーレをじっくり堪能。
オートリフト・プレーヤー

DP-55L

主な特長
●無接触エンドセンサーによる
 電子制御オートリフト・メカニズムを装備
●高精度磁気記録検出方式とクォーツロッ
 クを組合わせた,秀逸の両方向サーボ方式
 ”DENONクォーツ”採用
●スムーズで,すばやい動作の電子ブレーキ
●静かで滑らか,高S/Nを特長とする
 ACサーボモーター
●高感度トーンアーム+堅固な
 大型アームベース
●自照式ソフトスイッチ操作ボタン
●リスニングルームでの調和を重視した
 優美なかりん木目調キャビネット



プレーヤーの原点をシビアに追求。
マニュアル・プレーヤー

DP-55M

主な特長
●高精度磁気記録検出方式とクォーツロック
 を組合わせた,秀逸の両方向サーボ方式
 ”DENONクォーツ”採用
●スムーズで,すばやい動作の電子ブレーキ
●静かで滑らか,高S/Nを特長とする
 ACサーボモーター
●高感度トーンアーム+堅固な
 大型アームベースと60mm厚アームボード
●自照式ソフトスイッチ操作ボタン
●オイルダンプ式アームリフター付
●リスニングルームでの調和を重視した
 優美なかりん木目調キャビネット




●主な仕様●

■フォノモーター部■


駆動方式
両方向スピードサーボ・ダイレクト・ドライブ
モーター
ACサーボモーター
スピード制御方式
周波数検出によるスピードサーボおよび位相サーボ
回転数
331/3,45rpm
スピード切換え機構
ソフトタッチ・プッシュボタン式
ワウ・フラッタ
0.015%w.rms以下(DENON測定法)
0.02%w.rms以下(JIS)
SN比
78dB以上(DIN-B)
起動特性
1.5秒以内で規定回転(331/3rpm時)
負荷特性
0%(針圧100g最外周)
電源電圧特性
90~110Vの変動に対して0%
ブレーキ
電子式ブレーキ
回転数偏差
0.002%以下
回転数調整範囲
規定スピードに対し±6%調整可能
ターンテーブル
アルミダイカスト30cm・慣性モーメント200kg・cm(ターンテーブルシー トを含む)





■トーンアーム部■


形式
スタティックバランスS字形ダンピング付
ユニバーサル・トーンアーム
DP-55Lは,電子制御オートリフト機構付(リフターSW装備)
有効長
244mm
オーバーハング
14mm
トラッキングエラー
2.5°以内
針圧可変範囲
0~2.5g/1回転(1目盛0.1g)
適合カートリッジ重量
約15g~19g(シェル共)
ヘッドシェル
軽量アルミ合金9g
アーム高さ調整範囲
約5mm
付属機構
アンチスケーティング機構
DP-55Mは,,オイルダンプ式アームリフター付





■その他■




電源・消費電力
AC100V,50/60Hz
DP-55M 11W,DP-55L 14.5W
外形寸法
(ダストカバーを閉めた状態)
485W×400D×165Hmm
重量
約11.5kg



※ 本ページに掲載したDP-55L,DP-55Mの写真・仕様表等は
1980年8月のDENONのカタログより抜粋したもので, デノン株
式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意く
ださい。

 
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