DENON DP-67L
AUTO LIFT PLAYER ¥95,000
1982年に,デンオン(現DENON・D&Mホールディングス)が発売したプレーヤーシステム。
デンオンは,1971年のDP-5000以来,滑らかな回転特性をもつACサーボモーターを用
いたダイレクトドライブ方式のプレーヤーですぐれた製品を作り続け,豊富なラインナップを
展開していました。こうした中,最上級機DP-100Mで開発された電子制御アームを搭載し
た新シリーズの上級機がDP-67Lでした。

トーンアームは「ダイナミックサーボトレーサー」と称するもので,低域共振を積極的にダンピ
ングする働きをするものでした。トーンアームの低域共振をダンピングする方法として,従来
オイルダンプなどの方式がとられていましたが,オイルの管理,移動時のオイル漏れ,軸受
部へのオイルの影響など扱いの難しい面もありました。こうしたこともあり,1980年ごろから,
ソニーの「バイオトレーサー」,ビクターの「EDサーボトーンアーム」など,電子制御トーンアー
ムが登場するようになりました。デンオンの「ダイナミックサーボトレーサー」も,技術的に同
様な方式で,カートリッジのコンプライアンス(カンチレバー等の変形しやすさのこと)とトーン
アーム実効質量によって生じる「低域共振周波数(fo)」と,低域共振による「ピーク(Q)」を
適切な設定にしようとするものでした。この機構は,低域共振のQの高過ぎによって起こる
アームの振動を,垂直・水平用の2つの検出コイルで電気信号として検出し,アームの振動
と逆の力を与えて俊敏に制動するもので,低域共振が効果的に抑制され,ピークがない理
想的な低域再生に近づけようとするものでした。また,ダンプ量をQダンプコントロールダイ
ヤルで調整することも可能となっていました。

アーム自体は電子式のダイナミックバランス形で,針圧は電子的に印加されるようになって
いました。インサイドフォースをキャンセルするアンチスケーティング機構も電子式で,アーム
の水平方向駆動コイルに流れる電流をコントロールすることで行う無接触構造となっており,
摩擦による感度低下も排除されていました。演奏終了時のオートリフト機構も純電子的に無
接触で行われるようになっていました。



さらに,軽質量ストレート形とS字形のパイプアームが交換可能なアームパイプ交換方式
となっており,ハイコンプライアンスカートリッジだけでなく種々ののカートリッジに対応して
いました。パープアーム交換時に必要なエンド検出の切り換え,ラテラルバランスの不整
への対応も純電子的に行えるようになっていました。

ターンテーブルは,直径30cm,のアルミダイカスト製で,中央部から外周部まで重量配
分をほぼ均等にとり,従来の約2倍の厚肉ターンテーブルを採用していました。これによ
り,ターンテーブルのたわみを抑え,レコード盤上の上下微動を抑え,ターンテーブルシー
トとの組み合わせ時に,共振減衰効果を大きく高めていました。そして,デンオン伝統の,
外周がスラントしたフレームに囲まれた形のデザインになっていました。駆動モーターは
デンオン伝統の交流方式のACサーボモーターを搭載していました。構造がシンプルで故
障が少
なく,原理的にトルクムラが少ない滑らかな回転を持ったモーターでした。

ターンテーブルの回転制御はデンオン自慢のDENONクォーツを搭載していました。「磁気
記録検出方式」と「水晶発振による位相制御」による高精度な制御系で,ターンテーブルの
外周に付いている1000個の磁気パルスを検出ヘッドで検出し,1秒間に555.55回
(33・1/3回転時)もチェックするという高精度なスピード検出を行い,水晶発振による位相
制御で回転速度の小刻みなバラツキを抑え,回転偏差0.002%という回転精度を実現し
ていました。また,このDENONクォーツのサーボは両方向サーボになっており,回転の遅
れだけでなく,早すぎた場合にも確実に対応し,45回転→33・1/3回転への変更時や電
子ブレー
キによる制動時にも迅速にかつ有効に働くようになっていました。

プレーヤー全体の各部に防振設計がとられていました。キャビネットは,高さ90mmの美し
い木製で,十分な剛性を確保していました。トーンアームは剛性の高いHTパイプアームを
使用し,シェルも二層ラミネートダンプトシェルが使用されていました。フォノモーターフレー
ム,アームベースとも堅牢なアルミダイカスト製となっており,大型のインシュレーター,アク
リルダストカバーなども含め,全体のバランスも考慮した防振構造となっていました。

以上のように,DP-67Lは,デンオンの伝統のアナログプレーヤー関連の技術に最新の電
子制御アームの技術を投入し,機能と性能のバランスのとれたプレーヤーとして完成され
ていました。デンオン伝統のデザイン同様に,その使いやすさと性能は安心感あるものでし
た。


DENON DP-57L
AUTO LIFT PLAYER ¥79,800

DENON DP-57M
MANUAL PLAYER ¥69,800
DP-67Lには,弟機としてオートリフトアップ装備のDP-57Lとマニュアルプレーヤーの
DP-57Mが発売されていました。外観デザイン等は非常によく似ていますが,モーター
がやや小型のものとなっているほか,キャビネットも高さが1cm低いものとなっており
全体の重量も軽くなっているなど,いくつか違いはあるものの,近い性能を実現したコ
ストパフォーマンスの高いプレーヤーとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



電子アーム
「ダイナミックサーボトレーサー」,
アームパイプ交換方式など,
DENON最新テクノロジーを結集。

DP-67L
◎低域共振を理想的にQダンプする
 Dynamnic Servo Tracer
◎軽質量ストレート形・S字形アームパイプ交換方式
◎音質重視の厚肉ターンテーブル
◎厚さ90mmの豪華木製キャビネットを中心とする
 トータルな防振設計
◎無接触構造の電子制御オートリフト
◎ハイトルクACサーボモーターと
 両方向サーボDENONクォーツの
 強力な回転系

●Qダンプコントロール・ダイヤル
●無接触の純電子式アンチスケーティング(微調可能)
●電子ブレーキ
●アーム高さ調節可能
DP-57L/DP-57M
ダイナミックサーボトレーサー,アームパイプ交換方式,
厚肉ターンテーブルなど,DP-67Lのエッセンスを凝縮

●ダイナミックサーボトレーサー(Qダンプコントロールダイヤル)
●軽質量ストレート形とS字形のアームパイプ交換方式
 (精密なラテラルバランスをとたS字形アーム装備)
●アウトローターACサーボモーターと両方向DENON
 クォーツの強力な回転系
●厚肉ターンテーブル
●二層ラミネート・ダンプトシェル
●厚さ80mmの豪華キャビネット
●防振効果にすぐれた大形インシュレーター
●質感あるダストカバー
●アーム高さ調節可能
●電子ブレーキ
●DP-57Lは無接触構造の電子制御オートリフト




●主な仕様●
 

●フォノモーター●

   DP-67L  DP-57L/DP-57M
駆動方式 DENONクォーツ。両方向サーボ式ダイレクトドライブ DENONクォーツ。両方向サーボ式ダイレクトドライブ 
回転数 33 1/3rpm&45rpm 33 1/3rpm&45rpm 
ワウ・フラッター 回転系    0.008%W.rms以下 
JIS測定法  0.02%W.rms以下
回転系    0.008%W.rms以下 
JIS測定法  0.02%W.rms以下 
SN比(DIN-B) 82dB以上 82dB以上 
負荷特性(0%) 最外周針圧200gに対し 最外周針圧150gに対し 
ターンテーブル アルミダイカスト製厚肉ターンテーブル アルミダイカスト製厚肉ターンテーブル 
起動時間(33 1/3rpm時) 1.6秒以内 1.5秒以内 

●トーンアーム●

形式 パイプ交換式 ,スタティックバランス形 
Dynamic Servo Tracer
ダイナミックダンピング付
パイプ交換式 ,スタティックバランス形 
Dynamic Servo Tracer
ダイナミックダンピング付 
アンチスケーティング 無接触電子式 無接触電子式 
有効長/オーバーハング 244mm/14mm 244mm/14mm 
針圧調整範囲 1回転1g・0~3g(1目盛0.1g) 1回転1g・0~3g(1目盛0.1g) 
適合カートリッジ重量 4g~15g(ねじ類を含む) 
11g~20g(シェル等を含む)
4g~15g(ねじ類を含む) 
11g~20g(シェル等を含む) 
交換用ストレート形アームパイプ PCL-67(¥8,000) PCL-67(¥8,000) 

●その他●

消費電力 13W(AC 100V 50Hz/60Hz) 13W(AC 100V 50Hz/60Hz) 
外形寸法(フタを閉めたとき) W485×H195×D410mm W485×H185×D410mm 
重量 約15kg 約11.5kg 
付属機能など 無接触オートリフト機構 57Lは無接触オートリフト機構
57Mはオイルダンプ式マニュアルリフター付 
※本ページに掲載したDP-67L,DP-57L/DP-57Mの写真・仕様表等は
1982年10月のDENON
カタログより抜粋したもので,デノン株式会社に
著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等を
することは法律で禁じ
られていますので,ご注意ください。
 
★メニューにもどる             
  
   
★アナログプレーヤーPART7のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方
,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                     

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system