KENWOOD DP-7050
COMPACT DISC PLAYER ¥59,800
1993年に,ケンウッド(現JVCケンウッド)が発売したCDプレーヤー。ケンウッドのCDプレーヤーはロ
ングセラーモデルで音質の面でも評価を得ていたDP-1100シリーズを経て,1988年のDP-8010
はコストパフォーマンスも高められ,翌1989年のDP-8020では,センターメカニズムが採用されるな
ど,着実に改良・強化されていきました。そして,1991年のDP-7040では,DACが1ビット系となり,
その後継機として発売されたのがDP-7050でした。

ケンウッドのCDプレーヤーのD/Aコンバーター部は,DP-1100シリーズでは,16ビット+アナログフィ
ルター→16ビット+2倍オーバーサンプリングデジタルフィルター→16ビット+4倍オーバーサンプリン
グ・デジタルフィルターと進化し,DP-8010では,18ビット+8倍オーバーサンプリング・デジタルフィル
ター,DP-8020では,20ビット+8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターと,CDプレーヤー全
体の進化の流れとともに,マルチビット・ハイサンプリング化の方向で進化してきました。
その後,1988年頃よりCDプレーヤーでは,1ビット化の流れが起こってきましたが,ケンウッドはやや
遅れて1991年のDP-7040より1ビットD/Aコンバーターへと移行していきました。DP-7050は,その
後継機にあたる機種でした。


D/Aコンバーターは,前モデルDP-7040は,ソニー製の1ビット・パルスD/AコンバーターCXD-2552
が搭載されていたのに対し,DP-7050では,新たにフィリップス製のSAA7350とTDA-1547を組み
合わせた,いわゆる「DAC7」が搭載されていました。微小直線性のすぐれたビットストリーム1ビットD/A
コンバーターで,CDのデータに対応して,1ビットパルス密度を変えるPDM(Pulse Density Modula-
tion)方式を採用し,高SN比を実現していました。このPDM波形を作り出すために,スイッチドキャパシ
タ積分器を使用し,高密度のパルスを生成し滑らかなD/A変換を可能にしていました。

こうした1ビットD/Aコンバーターは,時間軸のゆれ(ジッター)がリニアリティに大きく影響するため,マス
タークロックの精度が重要となります。そのため,ケンウッドは,前モデルのDP-7040で,通常のクロッ
クの10~30倍のすぐれた純度を持つハイプレシジョンマスタークロックを搭載していました。DP-7050
では,さらに純度を高めたアドバンスド・ハイプレシジョンマスタークロックを搭載していました。
それまで,マスタークロックは,インバーター回路が用いられ,インバーター回路自身がゲインを20~30
dB程度持っており,発振回路を構成した場合,入力端子は高いインピーダンスとなっていました。そのた
め,入力部に外部雑音が侵入しやすく,侵入した雑音はインバーター回路で増幅され,出力に表れ,発
振周波数の純度を低下させることとなっていました。
ハイプレシジョンマスタークロックでは,ディスクリート回路構成のMODIFICATIONAL CLAPP発振回
路が採用され,ソースフォロアー回路を基本としていました。この回路の特徴はゲインが1以下という点
で,このため入力部に外部雑音が侵入した場合でも出力には増幅されず,通常のゲインを持つ発振回
路に比べ,10~30倍の純度が確保されるようになっていました。ハイプレシジョンマスタークロックでは
発振するのに最低限のゲインしかないため,発振回路さえ安定に構成すれば,電源やグランドの影響に
より発振周波数が変化することがほとんどなく,高い純度のマスタークロックが確保されていました。さら
に,DP-7050のアドバンスド・ハイプレシジョンマスタークロックでは,J-FET(ジャンクション・フィールド・
エフェクト・トランジスター)内部のきわめて微小なノイズの影響も抑えていました。

D/Aコンバーター直後の初段増幅部には,同相分除去率(CMRR)の高い高精度差動増幅回路を採用
し,D/A変換後のリニアリティを高めていました。
電源部は,整流回路部に,整流専用コンデンサーとして大容量・大型ブロックケミコンを+-2系統,サー
ボ回路部,アナログ回路部それぞれ専用に搭載し,余裕の持った電源供給能力を実現していました。

筐体構造は,防振対策を施した高剛性の設計がなされていました。フロントパネルには3mm厚のアルミ
材を使用し,これを支えるシャーシ部も1.6mm厚の厚い鋼板をボックス状のベースにした高剛性シャー
シとツインビーム構造のメカフロアとなっていました。そのうえ,背面パネルにも1.2mm厚の鋼板を使用
していました。筐体全体は,直径60mmの大型のインシュレーターで支えられていました。
さらに,ディスク盤面への音圧の影響を抑えスピンドルの動作をより安定したものとするために,アルミ材
のクランパーを採用し。メカニズム上部はアルミパネルで完全にシールドするような構造のアルミトップメ
カシャーシになっていました。センターレイアウト構造も安定性を高めていました。
ピックアップ部では,グランド電位の急激な変化を抑えるABクラスピックアップアクチュエータ駆動回路が
搭載され,ピックアップの不連続な動作を抑えていました。また,原信号を忠実に伝送するためRF位相
等価補償回路も搭載されていました。これにより,サーボ系からのデジタルノイズを抑えていました。

機能的にはオーソドックスにまとめられていました。前モデルDP-7040で省略されていた10キーも搭載
され,本体でもしっかりと選曲操作が可能となっていました。特徴的な機能として,最大80枚のデータが
記憶可能なディスクファイル機能が搭載されていました。デジタル出力として,オプティカル(光出力)端子
と同軸出力端子を備え,単体D/Aコンバーターとの接続が可能となっていました。また,アナログ出力は
アナログ出力は固定と可変の端子を備え,可変出力端子は,モーター付きボリュームによりリモコンでも
出力レベルが可変できるようになっていました。

以上のように,DP-7050は,当時のケンウッドのCDプレーヤーの主力モデルとして,バランス良く設計
されたコストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。DAC7ならではの繊細ながらしっかりとした
音は,当時の同クラスの中でも音楽を安定して聴かせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



CDの音の深さ,豊かさを伝える。
新リファレンスCDプレーヤー。

◎正確な動作基準信号を発振する
 アドバンスド・ハイプレシジョンマスタークロック
◎PDM変換ビットストリーム1ビットDAC,
 スイッチドキャパシタ積分器を搭載(DAC7)
◎万全な振動対策を施した高剛性設計
◎余裕の電源供給能力
 独立大型ブロック電解コンデンサー
◎初段増幅回路に同相成分ノイズを抑える
 高精度差動増幅回路を採用

●AB-CLASSピックアップアクチュエーター
 駆動回路
●RF位相等補償回路
●電源バックアップメモリー
●センターレイアウトメカニズム
●リモコンで操作できる
 モータードライブアウトプットボリューム
●最大80枚記憶可能な
 ディスクファイル機能
●オプティカルデジタルアウトプット
●φ60mm大型インシュレーター




●定格●

型式  コンパクト・ディスク・デジタルオーディオシステム 
読み取り方式 非接触光学式読み取り(半導体レーザー) 
回転数  約200rpm~500rpm(CLV) 
周波数特性 4Hz~20kHz(EIAJ)
SN比 105dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率 0.001%以下(EIAJ)
チャンネルセパレーション 100dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%WPeak)以下(EIAJ)
出力レベル 固定出力:2Vrms:0.4kΩ(EIAJ)
可変出力:0V~2Vrms:1.1kHz(EIAJ)
ヘッドホン出力 20mW(16Ω)
オプティカルデジタル出力 -15dBm~-21dBm(発光波長660nm)
最大外形寸法 440W×127H×318Dmm
重量 6.8kg
電源電圧・電源周波数 AC100V 50/60Hz
消費電力 18W(電気用品取締法による表示)
※ 本ページに掲載したDP-7050の写真・仕様表等は1993年
 3月のKEWOODのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッ
 ド株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,
 ご注意ください。

★メニューにもどる 


★CDプレーヤー6のページにもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。
メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp 
inserted by FC2 system