KENWOOD DP-7060
COMPACT DISC PLAYER ¥60,000
1994年に,ケンウッド(現JVCケンウッド)が発売したCDプレーヤー。ケンウッドのCDプレーヤー
は,1991年のDP-7040からDACが1ビット系となり,その後継機として1993年にはDP-7050
が発売され,さらに,その後継機として発売されたのがDP-7060でした。

D/Aコンバーターは,前モデルDP-7050と同じく,フィリップス製のSAA7350とTDA-1547を組み
合わせた,いわゆる「DAC7」が搭載されていました。微小直線性のすぐれたビットストリーム1ビット
D/Aコンバーターで,CDのデータに対応して,1ビットパルス密度を変えるPDM(Pulse Density 
Modulation)方式を採用し,高SN比を実現していました。このPDM波形を作り出すために,スイッ
チドキャパシタ積分器を使用し,高密度のパルスを生成し滑らかなD/A変換を可能にしていました。



1ビットD/Aコンバーターは,時間軸のゆれ(ジッター)がリニアリティに大きく影響するため,マスター
クロックの精度が重要となります。そのため,ケDP-7060では,アドバンスド・ハイプレシジョンマス
タークロックを搭載していました。
通常,マスタークロックは,インバーター回路が用いられ,インバーター回路自身がゲインを20~30
dB程度持っており,発振回路を構成した場合,入力端子は高いインピーダンスとなっていました。そ
のため,入力部に外部雑音が侵入しやすく,侵入した雑音はインバーター回路で増幅され,出力に
表れ,発振周波数の純度を低下させることとなっていました。
アドバンスド・ハイプレシジョンマスタークロックでは,ディスクリート回路構成のMODIFICATIONAL 
CLAPP発振回路が採用され,ソースフォロアー回路を基本としていました。この回路の特徴はゲイ
ンが1以下という点で,このため入力部に外部雑音が侵入した場合でも出力には増幅されず,通常
のゲインを持つ発振回路に比べ,10~30倍の純度が確保されるようになっていました。アドバンスド
ハイプレシジョンマスタークロックでは,発振するのに最低限のゲインしかないため,f0付近のほんの
僅かな範囲でしか発信せず,発振回路さえ安定に構成すれば,電源やグランドの影響により発振周
波数が変化することがほとんどなく,常に高い純度のマスタークロックが確保されていました。



DP-7060では,デジタル信号をもとにするオーディオ再生音の滑らかさや,微細情報等の再現性を
高めるために,新開発のD.R.I.V.E.(Dynamic Resolution Intensive Vector Enhancement)
システムが搭載されていました。
DP-7060のD/Aコンバーター部は,8倍オーバーサンプリング&20ビットデジタルフィルターに20
ビットデータインプットのD/Aコンバーターを組み合わせたものでした。その際,デジタルフィルターは
元のデジタル信号に含まれる可聴帯域外の不要成分を除去するだけでなく,演算の過程で,ある一
定の小レベル以上の信号を滑らかに(デジタル信号の階段状のぎざぎざを滑らかに)し,20ビットの
分解能で出力することができますが,ある一定レベルの小レベル未満の領域では十分な効果が得ら
れなくなり,16ビット信号に近似した出力しか得られず,出力には原理的に不要な成分が混在してし
まいます。そこで,デジタルフィルターとD/Aコンバーターの間にD.R.I.V.E.プロセッサーを設置し,あら
ゆるレベルで20ビットのクオリティでの再生をめざしたのがD.R.I.V.E.システムでした。



D.R.I.V.E.プロセッサーは,デジタルフィルターからの出力が16ビット精度しか得られないレベル域で
も,常に20ビット精度となるよう処理を行うものでした。複数個の異なる可聴周波数帯域内の遮断周
波数をもつローパスフィルターで構成され,遅延器(入力された信号を保持して後の信号と同時に処
理できるようにする働きを持つ)はこれら複数個のローパスフィルターで発生する遅延量を合わせる
役目をするものでした。デジタルフィルターからのデータは入力端子から分配され,各遅延器に入力
され,さらに各ローパスフィルターに入力されます。このときすべての遅延器とローパスフィルターは
常に動作をし,セレクターコントロール回路により入力されたデータの周波数成分及びレベルを常時
検出し,最適なローパスフィルターの出力を選択するようになっていました。こうした働きにより,あら
ゆる状況で常に20ビット精度のデータによりD/Aコンバーターを駆動することが可能になり,入力信
号と出力信号の音楽成分の相関性が保たれるようになっていました。



D/Aコンバーター直後の初段増幅部に,同相分除去率(CMRR)の高い高精度差動増幅回路を採用
した高音質オーディオ回路Super Cをオーディオ段に採用していました。ノイズを打ち消すのではなく
混入させないという積極的な動作を行い,高純度な増幅を実現していました。

ピックアップ部は,ソニー製のKSS-240Aで,アクチュエーターを,適性浮上電圧が変化してもそれ追
従する方向に最適なDCサーボ電圧が加わるように制御するアキュレートリニアフォーカスサーボを搭載
していました。そして,安定した読み取りを可能とするデジタルサーボを採用していました。ピックアップ
は,光信号(Optical Signal)と電気信号(Electrical Signal)の両方を扱えるOEIC(Optiocal 
Electorical Integrated Circuit)というICを受光素子として使用しOEICピックアップを搭載していま
した。
筐体構造は,防振対策を施した高剛性の設計がなされていました。シャーシ部は1.6mm厚の厚い鋼
板をボックス状のベースにした高剛性シャーシ構造のメカフロアとなっていました。また,電源部には
デジタル部,アナログ部を別巻線とした電源トランスが搭載されていました。

機能的にはオーソドックスにまとめられていました。本体にも10キーが搭載され,本体でもしっかりと
選曲操作が可能となっていました。デジタル出力として光出力が装備されていました。

以上のように,DP-7060は,当時のケンウッドのCDプレーヤーの主力モデルとして,コストパフォー
マンスもしっかり考えられ手堅くまとめらていましたが,新技術D.R.I.V.E.を初搭載した,ある意味画期
的な1台でした。後に同社のCDプレーヤーやMDデッキなどでも展開されていく技術となっていきまし
た。DAC7との組み合わせでまとめられたDP-7060は,手頃な価格帯ながら,音質面でも滑らかな
音が高い評価を得ることとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽が消えゆく瞬間まで美しい。
D.R.I.V.E.システム搭載CDプレーヤー。

◎音の滑らかさ,音楽の余韻がよみがえった
 新開発D.R.I.V.E.システムを搭載
◎PDM変換ビットストリーム1ビットDAC
 スイッチドキャパシタ積分器を搭載(DAC7)
◎正確な動作基準信号を発振する
 アドバンスド・ハイプレシジョンマスタークロック
◎初段増幅回路に高純度な差動増幅動作を実現する
 高音質オーディオ回路Super Cを採用
◎安定したプレイアビリティを確保する
 アキュレートリニアフォーカスサーボを搭載

●安定した読み取りを可能にしたデジタルサーボ
●デジタル・アナログ別巻電源トランス
●OEICピックアップ
●1.6mm厚鋼板採用,高剛性シャーシ
●マルチディスクエディット
●31キーフルファンクションリモコン付属




●定格●

型式  コンパクト・ディスク・デジタルオーディオシステム 
読み取り方式 非接触光学式読み取り(半導体レーザー) 
回転数  約200rpm~500rpm(CLV) 
周波数特性 4Hz~20kHz(EIAJ)
SN比 105dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率 0.0017%以下(1kHz)(EIAJ)(THD+N)
チャンネルセパレーション 100dB以上(1kHz)(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%WPeak)以下(EIAJ)
出力レベル/インピーダンス 可変出力:0V~2.0V/0.3kΩ(EIAJ)
ヘッドホン出力 20mW(32Ω)
オプティカルデジタル出力 -15dBm~-21dBm(発光波長660nm)
最大外形寸法 440W×127H×319Dmm
重量 6.5kg
電源電圧・電源周波数 AC100V 50/60Hz
消費電力 16W(電気用品取締法による表示)
※ 本ページに掲載したDP-7060の写真・仕様表等は1994年
 11月のKEWOODのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッ
 ド株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,
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