Accuphase DP-70V
COMPACT DISC PLAYER ¥480,0001989年にアキュフェーズが発売したCDプレーヤー。1987年に発売した一体型CDプレーヤーDP-70のモデル
チェンジともいえる機種で,セパレート型CDプレーヤーDP-80L+DC-81Lを一体化したともいえる内容を持ち
何よりその音のすばらしさが高い評価を得たモデルでした。セパレート型CDプレーヤーDP-80+DC81で世界初のディスクリート方式D/Aコンバーターを開発・搭載したアキ
ュフェーズは,1988年にDP-80L+DC-81Lでディスクリート方式D/Aコンバーターの20ビット化を果たし,さらに
すぐれた特性と音を実現しました。DP-70Vにはこれらの技術が投入され,20ビット・ディスクリート方式D/Aコンバ
ーターが搭載されていました。このD/Aコンバーターは,電流加算型で,通常ICで済ませるところを,厳選された電
流スイッチと超精密抵抗器によりディスクリートで組んだもので,1台1台に厳密な調整が行われ,20ビットの理論限
界値に迫る高精度なD/A変換を実現したものでした。
フィルター部には,20ビット8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを左右独立で搭載していました。このデジタ
ルフィルターは,24.1kHz〜328.7kHz間の不要雑音成分を−110dB以下に抑え,また,通過帯域内リップルが
±0.00005dB以内という当時の最高水準の素子でした。さらに,ノイズシェイピング技術が組み合わされ,再量子化
ノイズが抑えられていました。これに,音質的に有利になるゆるやかな特性のGIC3次バターワース・アクティブフィルタ
ーを組み合わせて高精度なフィルター部を構成していました。一体型CDプレーヤーで問題になるデジタル部のアナログ信号回路への干渉を抑えるため,DP-70Vは,デジタル信
号部とD/Aコンバーター以降のアナログ信号回路をフォトカプラーによる光伝送を行い,電気的に分離していました。
40Mbit/secという高速のフォトカプラーを用いることで,忠実な信号伝送を図っていました。電源部からの相互干渉を
抑えるため,デジタル部とアナログ回路の電源部をトランスから完全に分離した2トランス構成としていました。アナログ
回路の電源トランスはさらに左右独立の巻線としていました。
DP-70Vでは,この優れた性能のD/Aコンバーター部を単体としても使えるようになっていました。デジタル入力
4系統,デジタル出力2系統を備え,48kHz,44.1kHz,32kHzの3つのサンプリング周波数に対応して,多様
なデジタル機器の接続を考慮した「デジタル・コントロールセンター」としての機能を持っていました。
サンプリング周波数を作り出すVCOには,サンプリング周波数のロック範囲を広く設定できるという特徴を持つ「リチ
ウム・タンタレート単結晶振動子」を採用していました。デジタル入力端子は光2系統,同軸2系統,出力端子は,光
同軸各1系統で,デジタルレベルでののダイレクト・コピーも可能になっていました。
さらに,リモコンを使用してのデジタル方式の音量調整を搭載していました。20ビットの利点を生かし−40dBまで
音質劣化を抑えてレベルコントロールができるようになっていました。また,アナログ出力として2系統のRCAジャッ
クの出力に加え,XLRタイプの平衡出力を搭載していました。プレーヤー部は,リニアモーターレーザーピックアップと8ビットマイクロプロセッサーにより1秒以内の高速選曲を
可能にしたソニー製の「リニアモーター・メカニズム」を搭載していました。DP-70Vでは,このメカニズム部をアルミ
ダイカストフレームにマウントして共振を防ぎ,さらにシャーシからフローティングして振動の伝達を遮断していました。
さらに,メカニズム本体を支えるシャーシは厚手の重量級金属シャーシとして共振を抑え込んでいました。選曲機能
として,1フレーム(1/75秒)単位での頭出しができる「フレーム再生機能」も備えていました。
また,レーザーピックアップのフォトディテクターに新開発の超小型RF増幅器を直接取り付け,増幅した信号を取り
出すようにすることで,雑音によるピックアップ部への妨害に対処していました。
機器内の動作をコントロールするクロックは,デジタル信号処理用とマイクロプロセッサー用を統一した「マスターク
ロック方式」採用し,クロック周期の干渉によるビートの発生を抑えていました。以上のように,DP-70Vは,一体型CDプレーヤーとして優れた性能を持ち,デジタル機器を統括するコントロールア
ンプとしても使えるようになっていた先進的で高性能なD/Aコンバータでもありました。その自然で分解能の高い
音は「いい音だなあ」と実感させるものがあったことを記憶しています。CDプレーヤー初期の名機の1つだと思って
います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ディジタル・プロセッサー部
◎理論限界値の性能を実現した20ビット・ディスクリート方式
D/Aコンバーター
◎左右独立20ビット8倍オーバーサンプリング・ディジタル・フィルター
◎素子を厳選したGIC3次バターワース・アクティブ・フィルター
◎ディジタル部とアナログ部を完全分離
高周波雑音による音質劣化を防止
◎ディジタル・コントロール・センターとしての機能
48k,44.1k,32kHz 3周波数に対応
ディジタル入力4系統,出力2系統によりディジタル・コピーが可能
◎量子化雑音を減少させるノイズ・シェーパー
◎ディジタル・ディエンファシスにより偏差0.001dB,位相差1.5度
以内の理想特性を実現
◎ディジタル方式レベル・コントロール
◎本格的な平衡出力を装備
プレーヤー部
◎メカニズム本体をアルミ・ダイカストフレームにマウント
更にフローティングにより振動・共振対策を施したメカニズム
超重量級シャーシ
◎RF増幅器を内蔵し対雑音特性を向上させたレーザー・ピックアップ
◎全ての動作のタイミングを一つのマスター・クロックでコントロール
ビート音を発生せず音質の劣化が皆無
◎リニアモーター・レーザーピックアップと8ビット・マイクロプロセッサー
により1秒以下の選曲時間
◎1/75秒単位で頭出し及び再生ができるフレーム再生機能
●DP-70V 保証特性●
■プレーヤー部■
フォーマット | CD標準フォーマット
エラー訂正方式:CIRC チャンネル数:2チャンネル 回転数:500〜200rpm(CLV) 演奏速度:1.2m/s〜1.4m/s 一定 |
読み取り方式 | 非接触光学読み取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAs(ダブルへテロ・ダイオード) |
ディジタル出力フォーマット・レベル | フォーマット:DIGITAL AUDIO INTERFACE
OPTICAL:光出力;−21〜−15dBm(EIAJ) 発光波長:660nm CAXIAL:0.5Vp-p 75Ω |
■ディジタル・プロセッサー部■
フォーマット | EIA準フォーマット
量子化数:16ビット直線 サンプリング周波数(タイミング精度:レベルU) 32.0kHz ±0.1% 44.1kHz ±0.1% 48.0kHz ±0.1% |
周波数特性 | 4.0〜20,000Hz ±0.3dB |
D/Aコンバーター | ディスクリート20ビット |
ディジタル・フィルター | 20ビット8倍オーバーサンプリング
ノイズシェーパー機能 ディジタル・ディエンファシス機能 偏差±0.001dB |
全高調波ひずみ率+ノイズ | 0.0016%(1000Hz)
0.002%(20〜20,000Hz) |
S/N・ダイナミックレンジ | 119dB |
チャンネル・セパレーション | 109dB |
定格出力・出力インピーダンス | BALANCED :2.5V 50Ω(25Ω/25Ω)平衡XLRタイプ
UNBALANCED:2.5V 50Ω RCAフォノジャック |
出力レベル・コントロール | 0〜−40dB間 1dBステップ(ディジタル方式) |
ディジタル入力フォーマット・レベル | フォーマット:DIGITAL AUDIO INTERFACE
OPTICAL:受光電力:−15〜−27dBm COAXIAL:0.5Vp-p 75Ω |
使用半導体 | 66Tr 8FET 68IC 44Di |
電源・消費電力 | 100V・117V・220V・240V 50/60Hz 25W |
寸法・重量 | 幅475mm×高さ135mm(脚含む)×奥行373mm 15.5kg |
■共通■
使用半導体 | 32Tr 74IC 66Di |
電源・消費電力 | 100V・117V・220V・240V 50/60Hz 23W |
寸法・重量 | 幅475mm×高さ135mm(脚含む)×奥行375mm 24.3kg |
※本ページに掲載したDP-70Vの写真・仕様表等は1989年の
Accuphaseのカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ株式
会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
ください。
★メニューにもどる
★CDプレーヤーPART2のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。