DENON DP-7700
DIRECT DRIVE SERVO PLAYER ¥198,000
1976年に,デンオン(現デノン)が発売したプレーヤーシステム。デンオンは,1971年に同社初の民生用
DDターンテーブルDP-5000を発売し,ACモーターならではの滑らかな回転性能で高い評価を受けてい
ました。その技術をベースに,水晶(クォーツ)制御を取り入れ,さらに高精度な回転性能を求めて開発され
たターンテーブルDP-7000を搭載し,同社の最高級機として発売されたプレーヤーシステムがDP-7700
でした。



DP-7700は,ターンテーブルDP-7000(¥120,000),トーンアームDA-307(35,000),キャビネット
DK-200(¥33,000),インシュレーターAF-10(¥5,000),オーディオスタビライザーAD-3(¥1,500)
マグネシウム合金ダイカスト製ヘッドシェルPCL-5(¥2,500)2個という,単売もされている高性能な各パー
ツを組み合わせたという形になっていました。



ターンテーブル部DP-7000は,トルクは小さいながら滑らかな回転を持つデンオンが技術を蓄積してきたAC
サーボモーターと軽量なターンテーブ
ルを組み合わせた設計で,滑らかで安定した回転を確保していました。
載されたACモーターは,回転磁界の非常に滑らかな2相ト
ルクモーターで,その駆動には,位相差90°,周波
数40Hzの専用の2相駆動用アンプを使用し,ランブルが非常に低く抑えられていまし
た。2相駆動用アンプは
パルス幅変調が採用され,消費電力が少なく,発熱の心配も排除されていました。

スピード・サーボ機構には,外乱負荷に強い高精度磁気記録検出方式が採用されていました。ターンテーブル
の内側に抗磁力の大きい磁性材を塗布し,これに間隔誤差1/10000の以下の精度で記録した2000個のパ
ルス信号を磁気ヘッドで検出していくものでした。そして,増速方向だけでなく減速方向にもサーボがかかる両
方向性フェーズロックドサーボ方式が採用されていました。33・1/3回転時には,検出周波数が1111Hzと高い
周波数となり,サーボが安定し,かつゲインが高くとれ,1秒間に数回くらいまでの周期で現れるレコードのそり
や,カッティングレベルの大きい変化などで起こる外乱に対してもスピードの保持力が高く,ワウ・フラッターや
オーバーシュートが非常に少なくなっていました。
DP-7000では,この磁気記録検出方式による両方向性フェーズロックドサーボに,温度変化や経年変化の
影響をほとんど受けない水晶発振器の基準周波数と位相比較する,水晶(クォーツ)制御を組み合わせて,
より高い精度を実現していました。そして,DP-7000は,デンオン初のクォーツロックターンテーブルとして,
回転数偏差0.001%以内,ワウ・フラッター0.015%以下,SN比77dBという,当時のDPシリーズ中,最高
の特性を実現していました。

DP-7000は,両方向性サーボと新たに開発した電子式ブレーキを,スピード検出信号によって自動的に切換
えることで,スピード切換やストップ動作を行っていました。このため,回転数の切換時には素早く指定状態に
移ることができ,ストップ動作時には,減速サーボと電子式ブレーキにより,静かに完全に停止するようになっ
ていました。スタート,ストップ時の機械的振動や不要な逆回転動作が発生しない確実で滑らかな操作性と動
作を実現していました。
ストロボスコープは,基準の水晶発振器より分周した高精度の点灯周波数を持つネオンランプを使用している
ため,電源周波数の変動によってストロボが流れることのない,きわめて正確でなものとなっていました。また,
パルス幅の狭い電源で点灯しており,ネオンランプの光源の色と補色に近い緑色の補助ランプで照明されて
いるため,ストロボ縞は明瞭度があり非常に見やすくなっていました。

ターンテーブルシートは,レコード面の振動による音質の変化を防止するため,レーザー光による振動解析を
用いて振動防止をした新開発のものが搭載されていました。
また,EPレコードのアダプターも兼ねたオーディオスタビライザーが標準装備され,レコードとターンテーブル
シートを密着させレコードのそり・振動による音質劣化やハウリングを効果的に抑えるようになっていました。



トーンアームのDA-307は,S字タイプのユニバーサル型トーンアームで,新開発のダイナミックダンピング
機構が採用されていました。アームパイプを根元で2つに分割し,その間にダンパーゴムをはさみ,さらにアー
ムパイプをカウンターウェイト側からサスペンションワイヤーで引っ張る構造となっており,トーンアームのアー
ム鳴きや低域共振を抑え,アームベースを経て侵入する外来振動防止のメカニカルフィルターとしての役割も
果たすようになっていました。
また,磁力による回転力を利用した無接触式インサイドフォースキャンセラ-が装備されていました。レコード上
の針先位置によるインサイドフォースの変化に対応して打ち消し力を適正に与えることができ,トレース能力が
更に向上するとともに,ノブを引くと簡単にキャンセラーを解除できるので,ゼロバランスや針圧調整が容易に
できるという特徴もありました。アムの上下には,オイルダンプ式のアームリフターが装備されていました。
ヘッドシェルは,自重6gという軽量のマグネシウム合金ダイカスト製ヘッドシェルPCL-5(¥2,500)が2個装
備され,ヘッドシェルからパイプ部まで可動部分を可能な限り軽量化し,高精度ピボットベアリングとミニチュア
ベアリングを組み合わせた高感度(垂直・水平とも感度25mg以下)な軸受け部とともに,カートリッジの針先か
らみた等価質量が小さく抑えられ,レコードに対する追従性がより高められていました。ヘッドシェルのコネクター
部にはハム雑音防止型コネクターが採用され,金メッキ接続端子となっていました。



プレーヤーベースには,DK-200が採用されていました。厚さ63mmの重量級のポリマーボード積層キャビネッ
トで,合成レザー張りの精悍な仕上げとなっていました。そして,このキャビネットにはオーディオインシュレーター
AF-10(¥5,000)が脚部に装着されていました。AF-10は,コイルスプリングと特殊粘弾性ゴムを組み合わ
せた構造で,振動吸収率の高いインシュレーターとなっていました。高さ調整機構も備え,円錐スプリングの採用
により,カットオフ周波数が荷重の変化に対してほとんど一定で,剛性の高いポリマーボード積層キャビネットとの
組み合わせで,カットオフ周波数は約5Hzにまで下げられ,プレーヤー本体ばかりでなく,外部振動にもすぐれた
防振効果を実現していました。

以上のように,DP-7700は,当時のデンオンの実力はパーツを組み合わせて完成されたプレーヤーシステム
で,デンオンのアナログプレーヤーにおける高い技術力が生かされた1台でした。安定度においても操作感覚に
おいてもより洗練されたものとなっていると,当時高い評価を得ていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DP-7000
スピード検出に高精度磁気記録検出方式を用いた,
水晶発振によるフェーズロックド・サーボにより
回転数偏差0.001%以内,ワウ・フラッター0.015%
w.rms以下を実現したDENON最高級ターンテーブル

◎モーター駆動用2相電源内蔵
◎レーザーホログラフィーによる振動解析から生まれた新開発
 ターンテーブルシートとスタビライザー(45アダプター兼用)
◎水晶同期パルス点灯の見易く正確なストロボスコープ
◎新開発ブレーキ採用



DP-7700
DENONクォーツ・ターンテーブルDP-7000とダイナミック
・ダンピング・トーンアームDA-307を,新設計オーディオ・
インシュレーターAF-10つきのレザー張り63mm厚ポリマー
積層キャビネットに納めた最高級DDSレコードプレーヤーです。

◎無接触形インサイドフォース・キャンセラー
◎マグネシウム合金ダイカスト製ヘッドシェルつき




●DP-7000 SPECIFICATIONS●

駆動方式 サーボ式ダイレクトドライブ 
モーター  AC2相サーボモーター 
スピード制御 周波数検出によるスピード・サーボおよび位相サーボ 
回転数  33・1/3 45rpm 
スピード切換え機構  電気的切換え 
回転数調整範囲  規定スピードに対して±6%以上(VARIABLE時・連続可変) 
ワウ・フラッター  0.015%w.rms以下 
SN比  77dB以上(DIN-B) 
起動時間  0.9秒以下(33・1/3時) 
負荷特性  最外周針圧150gに対して0% 
電源電圧特性  90~110Vの変動に対して0% 
停止時間  1秒以内 
回転数偏差  0.001%以内 
ターンテーブル  アルミダイカスト31.2cm・慣性モーメント233kg・cm2 
モーターボード アルミダイカスト 
電源  AC100V 50/60Hz 
消費電力  15W 
寸法  374W×162H×378Dmm 
重量 11kg 
適合キャビネット  DK-200(¥33,000),DK-100G(¥23,000) 




●DP-7700 SPECIFICATIONS●

フォノモーター部:DP-7000 
トーンアーム部:DA-307  
形式 スタティックバランス,S字形,ダイナミックダンピング機構 
全長  332mm(最大) 
有効長  244mm 
オーバーハング  14mm 
オフセット角  20.5° 
トラッキングエラー  2.5°(最大) 
針圧調整  1回転2.5g(0.1g目盛つき) 
適合カートリッジ自重 5~10g 
ヘッドシェル PCL-5:マグネシウム合金ダイカスト製自重6g(取付ネジ類は含まず) 
アーム高さ調整範囲 42~70mm(アームボード面からパイプ中心まで,単体規格) 
ヘッドシェルコネクター 4pコネクター 
出力コード 5pコネクター付低容量コード約1.2m(約50pf) 
アームリフター  オイルダンプ式 
インサイドフォースキャンセラー  マグネチックコントロール方式(解除機構つき) 
軸受部  高精度ピボットベアリングおよびミニチュアベアリング使用 
感度  水平,垂直とも25mg以下 
総合 
キャビネット 合成レザー張り,ポリマーボード積層,新形インシュレーターAF-10つき 
電源  AC100V 50/60Hz 
消費電力  15W 
寸法  522W×193H×420Dmm 
重量  約23kg 
※ 本ページに掲載したDP-7000,DP-7700の写真・仕様表等は
1977年5月のDENONのカタログより抜粋したもので, デノン株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
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