DP-EC1の写真
DIATONE DP-EC1
ELECTRONIC CONTROL RECORD PLAYER ¥120,000
1976年にダイヤトーンが発売したフルオートプレーヤー。フルオートプレーヤーとして洗練された操作性を
実現するために電子制御を取り入れた国産初の電子制御フルオートプレーヤーとして画期的な1台でした。

DP-EC1の最大の特徴は,フルオート機構にElectronic Control(=電子制御)を取り入れて,アームを
初めとするプレーヤーシステムとしての基本性能と操作性の追求の両立を図ったことでした。オート化のた
めにアームに一切の側圧をかけて感度を損なうことをなくすために,アームの各位置検出には無接触の光
学方式を採用していました。アームリフターの状態(アームの上昇・下降),アームが水平廻動内のどの位
置にあるかを瞬時に無接触で検出して作動する設計で,どの位置からもオート動作が可能となっていまし
た。トーンアームの駆動には,垂直方向,水平方向それぞれ専用の独立したモーターを搭載し,ターンテー
ブルの回転にはもちろん,他の方向アームの駆動にも影響を与えないようになっていました。また,オート動
作中以外には,アームの通常のマニュアル操作も可能でした。
レコードサイズの検出も光学方式で自動化され,このサイズ検出機構により,オート演奏時の針降下位置,
演奏終了位置,ターンテーブルの回転速度が自動的に決定されるという,当時としては画期的な操作性を
実現していました。アーム等の操作も操作時にプレーヤーキャビネットに不要な振動を与えないようにマイク
ロスイッチによるフェザータッチ式になっていました。これらのオート機構はすべてIC化されたロジック回路に
よって制御され,正確で迅速な動作を実現していました。現在なら,LSI1個ですみそうな制御回路も多くの
ロジックICで組まれ,多くのセンサー,モーターを内蔵したその内部は「まるでアンプみたいな心臓部」と称し
たくらい複雑で,当時のダイヤトーンのこのプレーヤーにかけた情熱と技術を感じさせるものでした。
DP-EC1の内部
アームには,従来使用されていたアルミパイプにかえてより強度の大きいステンレスパイプが使用され,剛性
が高められ,アームのたわみが抑えられていました。カウンターウェイトには,内部にダンパーを組み込む構造
が採用され,針先の振動によるカウンターウェイトの共振をダンプして低音域における分解能を高めていました。
ヘッドシェルを取り付けるプラグイン部には,工作機械になどに見られるチャック式のプラグイン機構が採用され
4方向からヘッドシェルを締め付けて,ヘッドシェル部のふらつきが抑えられていました。アームのピボットでは
垂直方向のピボットのスパンを広げ,水平軸受けに本格的なラジアルボールベアリングを採用するなど,ピボッ
ガタを抑えた高精度な支持が実現されていました。

ターンテーブルには,重量級のターンテーブルをトルクの大きいモーターで駆動するという基本方針がとられて
いました。ターンテーブルは,重量1.8kgの重量のものが搭載され,モーターには起動トルク1.2kg・cmの
DCモーターが搭載されていました。この高トルクDCモーターによりDD方式で駆動され,最も精度が高いとい
われる積分形のFG方式で回転速度の検出が行われるサーボ機構が搭載されていました。ターンテーブルの
ダイナミックバランスと工作精度も非常に高精度が追求され,静かで滑らかな回転を実現していました。
音質に影響の大きいターンテーブルシートにも,レコードとの密着性と音質について硬度,比重,厚みなどの観
点から検討が加えられ,レコードの反り,厚み,タワミなどの関係からわずかにすり鉢上になるように設計され,
材質については,トーンアームその他の持つキャラクターから,最大厚み5.5mm,比重2.0,硬度40という
値が割り出され,採用されていました。
ストロボ機構には従来のネオンアンプに代えて,LEDが採用され,電子回路で1/1000という非常に短いパル
ス幅の信号を作り出してLEDをドライブする方式により,にじみの少ないクリアなストロボ機構となっていました。

プレーヤーキャビネット上部には高精度なアルミダイカスト製が採用され,下部はローズウッド調仕上げとなって
いました。

以上のように,DP-EC1は,国産で初の電子制御を取り入れた先進的な設計とアーム,ターンテーブルなどの
基本部分のきちんとした練り上げが行われた,使いやすく高性能なフルオートプレーヤーでした。

DP-EC1はさらにクォーツロック化,回路のLSI化などが行われたDP-EC1MkU(¥128,000),アームを
中心に改良(ラック&ピニオン方式のアーム高さ調整機構,チタン合金製アームパイプ,マグネシウム合金ヘッ
ドシェルの採用)が施されたDP-EC1MkV(¥130,000)へと引き継がれ,ロングセラーとなりました。ダイヤ
トーンがこんなプレーヤーを出していた時代があったのです。


DP-EC1MkV 
FULL AUTO PLAYER ¥130,000
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



基本性能追求に徹した,
新しいオートプレーヤーの登場
《EC(電子制御)プレーヤーシステム》

◎高分解能トーンアーム
 ●カウンターウェイトのダンプを行いました。
 ●パイプ部の剛性を増しました。
 ●チャック式プラグイン方式を採用しました。
 ●垂直,水平動の精密ピボット軸受け。
 ●トーンアーム駆動専用モーター採用。
◎高性能DDモーター
 ●回転精度の高いこと
 ●トルクの大きいこと
 ●振動の少ないこと
◎重量級ターンテーブル
 ●ターンテーブルシート
 ●LEDを用いた電子スライド
◎電子制御方式によるオート化
 ●無接触方式によるアーム位置検出機構
 ●随時オート,随時マニュアル
 ●レコードのサイズを検出する
 ●フェザータッチのコントロールノブ
 ●IC化されたロジック回路



●主な定格●

●ターンテーブル駆動部●

  DP-EC1 DP−EC1MKU DP-EC1MKV
駆動方式 ダイレクトドライブ方式
モーター 4相12極24スロット,
FG・DCサーボモーター
4相12極クォーツPLL・DCサーボモーター
ターンテーブル 外径312mm,重量1.8kg
アルミ合金ダイカスト
慣性能率280g-cmS2
外径333mm,重量1.8kg
アルミ合金ダイカスト
回転数 331/3,45(rpm)
スピード切換
 電子式(オート,またはマニュアル)
微調整範囲 ±3%
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS) 0.025%(WRMS,JIS) 0.011%(WRMS・回転部のみの値)
0.025%(WRMS,JIS)
SN比 65dB(IEC-B) 80dB以上(DIN-B)


●トーンアーム部●

  DP-EC1 DP−EC1MKU DP-EC1MKV
形式 スタティックバランス,ユニバーサル
S字パイプ形
全長 320mm
有効長 227mm
オーバーハング 14mm
トラッキングエラー角 +2.9°,−1.5°
オフセット角 22°
針圧調整 0〜3g直読式(0.1gステップ)
ヘッドシェル アルミダイカスト(9.8g) マグネシウム合金(6.2g)
カートリッジ取り付け
重量範囲
8〜16g
12〜20g(サブウェイト使用)
11〜16.5g
16〜21.5g(サブウェイト使用)


●総合●

  DP-EC1 DP−EC1MKU DP-EC1MKV
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 11W,電源ヒューズ容量1A 10W 12W
外形寸法 475W×150H×370Dmm 470W×150H×395Dmm 474W×150H×395Dmm
重量 11kg 13.5kg 14kg
付属品 45アダプター,オーバーハングゲージ
調整用ドライバー,スペーサー
サブウェイト

※本ページに掲載したDP-EC1,DP-EC1MKU,DP-EC1MKVの写真・仕様
 表等は,1976年6月,1980年11月のDIATONE
カタログより抜粋したもので,
 三菱電機株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられ
ていますので,ご注意ください。
 

★メニューにもどる             
  
   
★アナログプレーヤーPART2のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                     


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp 
inserted by FC2 system