DENON
DR-70G
CASSETTE TAPE DECK ¥69,800
DENON DR-70
CASSETTE TAPE DECK ¥64,800
1989年にデンオン(現デノン)が発売したカセットデッキ。オーソドックスに音質を追求したシングル
ウェイの3ヘッドデッキで,サイドウッド付ゴールドパネルの豪華な外観のDR-70Gと精悍なブラック
パネルのDR-70が発売されていました。
録音・再生ヘッドが独立したコンビネーション型3ヘッド構成で,録音ヘッド,再生ヘッドには結晶構造
を持たず高透磁率合金のアモルファスコアが使用されていました。コイルには,単結晶無酸素銅(PC
-OCC)線が使用され,すぐれた高域周波数特性,MOL特性と耐摩耗性を確保していました。消去ヘ
ッドにはダブルギャップフェライトヘッドが搭載されていました。
ヘッドは,高精度・高剛性のアルミダイキャスト製ヘッドブロックにマウントされ,不要な振動やアジマス
の狂いを抑えていました。
走行系は,デュアルキャプスタン方式で,テイクアップ側のキャプスタンには,慣性モーメントの大きい
フライホイールが搭載され,ワウ・フラッターが低減されていました。キャプスタンモーターには,トルク
が大きく回転ムラの少ない電子制御DCモーターが採用され,制振用特殊ゴムダンパーでフローティン
グして搭載され,振動の他への影響を抑えていました。リールの駆動には,機械的なスリップ機構を排
除した
「ノンスリップ・リールドライブ機構」が搭載され,安定したテープテンションを確保していました。
メカニズム制御とカウンター表示が1チップ化されたマイクロコンピューターにより,テープ走行メカニズ
ムの動作がコントロールされる「コンピュータ制御メカニズム」が搭載され,ロータリーエンコーダーを用
いたサイレントメカニズムと相まって,スムーズで静かな動作が実現されていました。
テープ走行時のカセットハーフの微振動を抑え込むために,セラミックコンポジットを使用したカセットス
タビライザー・C.C.C.S.(Ceramic Composite Cassette Stablizer)が搭載されていました。カセッ
トハーフが装着されると両面から弾力性のあるスタビライザーがハーフをしっかりと固定し,ハーフの振
動を吸収して,テープの安定走行と変調ノイズの低減を実現していました。
また,筐体全体としても防振設計がとられていました。トップカバーは,両側面と天面が一体となった鋼
板で,天面は,内側にもう一枚の鋼板が緩衝性の接着剤で固定された二重/三層構成となっていました。
両側面は,内側に高剛性シャーシを側面全体に配置し,外板に固定する二重構造となっていました。ボ
トムカバーも,1.6mm厚の鋼板2枚を重ね合わせ,高剛性シャーシに取り付けた二重構造となっており
低重心化が図られていました。
録音・再生アンプともDCアンプ構成がとられていました。再生イコライザーアンプは,高利得,低歪み,低
雑音のL/Rチャンネルアンプを1チップ化したICが採用され,アンプ部のノイズレベルを低減していました。
再生ヘッドとアンプをカップリングコンデンサーなしで直結することで低域周波数特性の劣化も抑えていまし
た。また,±2電源の強力な電源部で高電圧・高安定の電力を供給し,広いダイナミックレンジを確保して
いました。
ノイズリダクションとしてドルビーBタイプ,Cタイプが装備され,さらに高域成分の多寡に応じてバイアスを
コントロールして録音時の高域特性を改善するドルビーHX PROも搭載されていました。MPX FILER
はドルビーB/CがOFFのときは自動的に解除されるようになっていました。また,録音バイアスを微調整
できるバイアス・ファイン・アジャスターも搭載されていました。
レベルメーターは,−40dB〜+10dBを表示できる,ピークホールド機能付のFL式ピークメーターが搭
載されていました。カウンターはデジタル表示のリニアタイムカウンターが装備されていました。
その他機能として,REC/PLAYのモードが自動的に切り換わるAUTO TAPE MONITOR,録音開始
位置まで自動的に戻りスタンバイの状態になるREC Return Key,前後の頭出しが可能なミュージック
サーチ,テープ装着時のテープたるみ防止機構,通常の入力以外にCDプレーヤーとダイレクトに接続し
て録音ができるCDダイレクト入力端子など,実用的な機能が装備されていました。また,主な操作ができ
るワイヤレスリモコンが装備されていました。
以上のように,DR-70G/DR-70は,オーソドックスに音質追求の設計がなされ,デンオンの伝統的に
すぐれたデッキ技術を示していました。デンオンらしく中低域に厚みがあり,滑らかな音を持つ実力派の
カセットデッキでした。また,デンオンは粘り強く正攻法の音質重視の3ヘッドデッキを作り続けたブランド
で,その意味でも完成度の高いカセットデッキであったといえるでしょう。