DR-F3の写真
DENON DR-F3
3HEAD CASSETTE TAPE DECK ¥79,800

1980年にデンオンが発売したカセットデッキ。当時のほかのデンオンのオーディオ機器と同様に,非常に
オーソドックスながら優れた性能を持っていました。オープンリールデッキで優れた技術を見せていた同社
らしさを感じさせる1台でした。

DR-F3は,オーソドックスなワンウェイの3ヘッドデッキですが,走行系は,シングルキャプスタンでした。
デンオンはこれ以降もしばらくシングルキャプスタンメカニズムで走行性を追求していたブランドでした。
シングルキャプスタンながら,テープ走行へのハーフの影響を抑えるため,オープンリールデッキなどでよ
く使われている,テープテンションを一定に保つためのテンションサーボセンサーを備えていました。

テンションサーボ機構

DR-F3のテンションサーボセンサーの原理は,録音・再生コンビネーションヘッドと消去ヘッドの間に設定
されたセンサーが,両ヘッド間のテープのバックテンションを常に検出し,その微細な変動をセンサーアーム
とサーボブラケットを介して増幅し,その働きによって消去ヘッドとその対抗側のプレッシャーポスト間の圧着
力をサーボするものでした。このサーボシステムは,サーボループがきわめて短く,テープ自体にダイレクト
にサーボをかけているため,応答性が極めて高いもので,カセットハーフ内の供給リール,左側ガイドローラー
左側第一テープガイドの影響を排除し,テープの残量やカセットハーフによって刻々と変化するテープテンシ
ョンを一定に保つことが可能になり,安定した良好なテープタッチが得られるというものでした。

DR-F3のメカニズム部

テープ走行系の基本メカニズムは,キャプスタン駆動用とリール駆動用を完全に独立させた2モーター式に
よるドライブ機構を採用していました。メカニズムは,ICロジック回路と2つのプランジャーによってピンチロー
ラーの移動とヘッドの移動が独立してドライブされるフェザータッチによる操作系を持っていました。
キャプスタン用モーターにはDCサーボモーターを専用として使用し,精密加工のフライホイールとの間には
外部からの負荷がかからない機構により,高精度な回転を実現していました。さらに,DR-F3のキャプスタ
ンモーターは,PLL(位相同期回路)を使用したサーボ回路を搭載し,クォーツロックを採用することにより,
温度変化等に対する変動も抑え,リール用に採用したコアレスモータと合わせ,高精度で安定したテープ走
行を実現していました。
さらに,「ノンスリップ・リールドライブ機構」を採用してテープ走行の安定とメカニズムの耐久性を高めていま
した。通常,一定の速度(4.8cm/秒)でテープを巻取るとき,テープの巻き量の変化による巻き径の変化
で,巻取り側のリールに生じる回転数の変化を吸収するためにモーターと巻取りリール台との間にフェルトと
金属などによる機械的な摩擦機構を介する当時の一般的なリールの機構に対し,このような機械的なスリッ
プ機構を排除したものでした。この「ノンスリップ・リールドライブ機構」は,リールモーターの電圧を早送り・巻
戻し時の約1/5に落とし,回転数を約1/20に減速してリール台に伝達するもので,負荷が大きくなると回
転数が遅くなってトルクが増え,負荷が小さくなると逆の現象を示すというDCモーターの元々持つ性質を利
用して,巻取りテープテンションの均一化を図った巧妙な方式でした。これにより,テープ巻き取り性能の安
定性とメカニズムの耐久性を高めていました。

ヘッドには,合金系のF-ALLOY録音・再生ヘッドを搭載していました。録音ヘッドをワイドギャップ,再生ヘッ
ドはを録音ヘッドの1/5というナローギャップに設定し,20Hz〜22kHz(METAL)のワイドレンジレコーデ
ィングを実現していました。コイルの巻き方,コアの形状の吟味に加え,録音・再生ヘッド間にシールドマスク
を設け,録音ヘッドから再生ヘッドへの飛び込み磁界を−78dBに抑えるなど,コンビネーション両ヘッドの相
互干渉を防いでいました。消去ヘッドは,E字型コア使用のダブルギャップのフェライト消去ヘッドを搭載して
いました。

アンプ系は,録音・再生独立のDC構成アンプを搭載していました。ヘッドと初段アンプ間のコンデンサーをは
じめ,終段までコンデンサーを持たないオールDC構成で,マイクアンプ,録音アンプ,イコライザーアンプ,再
生アンプヘッドホンアンプ,メーターアンプに至るまですべてハイレベルのDCアンプユニットという徹底した構
成となっていました。これらをドライブする電源は±2電源方式を採用し,差動入力プッシュプル回路とともに
ワイドレンジ,低歪みを実現していました。バイアス発振回路にもプッシュプル構成を採用し,バイアス歪みも
抑えて録音信号のクオリティを高めていました。

レベル表示には,アナログ式の大型のVUメーターを搭載し,さらに,赤(+8dB),黄(+5dB),緑(0dB)の3
色のLEDピークレベルインジケーターを装備していました。FeCrタイプのテープを自社で発売していたデンオ
ンらしくNORMAL,FeCr,CrO,METALの4ポジションのテープセレクターを搭載しているのも特徴でした。

デンオンのDXシリーズカセットテープ

また,4段テープセレクターに加え,各ポジションごとに±30%の範囲でバイアスの微調整ができるバイアス・
ファイン・アジャスト機構も装備していました。そのほか機能的には,4秒以上の無音部分を探し出して曲の初
めを見付けて自動的に再生動作になる,オープンリールデッキ・ライクなCUEボタンを装備していました。

以上のように,DR-F3はオーソドックスな手堅い作りの3ヘッドデッキでした。地味ながら使いやすく性能の
よいデッキでした。弟機として,キャプスタンモーターのクォーツPLLサーボを省略したDR-F2,さらに,ドルビー
回路を録音・再生兼用の1系統としたDR-F1がありました。

DR-F2
DENON DR-F2
3HEAD CASSETTE TAPE DECK ¥69,800

DR-F1
DENON DR-F1
3HEAD CASSETTE TAPE DECK ¥62,800
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




オープンデッキの機能と音質を!!
テンションサーボ式3ヘッド機

「3ヘッド機」として確かな実力を
追求しました
 DENON”Fシリーズ”
 
 

音質改善の第一歩をまずテープ走行系で追求
◎テープ走行精度,ヘッドタッチを改善した
 3ヘッド用ニューメカニズム
 ●常に最適なテープテンションを実現した
  新開発テンションサーボ・センサー
◎2モーター,高精度ダブル・プランジャー
 メカニズムによる安定性・信頼性の向上
 ●DR-F3はキャプスタン用にクォーツロック
  PLLサーボモーター,リール用に高精度コア
  レスモーターを搭載
 ●ノンスリップ・リールドライブ機構

より高いクオリティを求めた3ヘッド方式
◎ワイドレンジレコーディング20Hz〜20kHz
 を支えるF-ALLOYコンビネーション・ヘッド
◎メタルテープの高保磁力も余裕充分にクリアー
 したダブルギャップ消去ヘッド

プログラムのクオリティをナマナマしく伝える電気系
◎ワイドレンジ,高ダイナミックレンジを期した
 ぜいたくなオールDC構成アンプ
 ●3ヘッド機の威力を発揮するダブル・
  ドルビーシステム(DR-F3・DR-F2)
◎ワイドなVUメーター+3点ピークレベル
 インジケーター
◎バイアス/イコライザー連動の4段テープ
 セレクター
 ●DR-F3はバイアス・ファイン・アジャスト機構装備
◎ヘッドホンの音量調整も可能
 アウトプット・レベルコントロール

すぐれた機能・爽快な操作フィーリング
 ●曲の初めを検出して自動的にプレイする
  オート・キュー・レビュー機構
 ●フェザータッチの快適な操作性を手元まで
  延長するフロント・リモコン端子
 ●ワンタッチ・レックポーズ
 ●PAUSE/MUTE機構
 ●スピーディー操作のワンタッチ・イジェクト
 ●タイマー録音・再生機構
 
 

●主な仕様●


 
DR-F3
DR-F2
DR-F1
形式 4トラック・2チャンネル・ステレオ
ヘッド 録音・再生:F-ALLOYコンビネーションヘッド
消去:ダブルギャップ・フェライトヘッド
モーター キャプスタン用:クォーツPLLDCサーボモーター×1
リール用:高精度コアレスモーター×1
キャプスタン用:DCサーボモーター×1
リール用:DCモーター×1
ワウ・フラッター 0.04%w.rms以下(JIS)
早巻時間 約85秒(C-60)
総合SN比 67dB以上(DOLBY・NR.ON)
総合
第3次高調波歪率
NORMAL:0.7% METAL:1.0%
総合周波数特性
(−20VU録音時)
METAL:20Hz〜22kHz
(25Hz〜21kHz±3dB)
CrO:25Hz〜21.5kHz
(30Hz〜20kHz±3dB)
NORMAL:25Hz〜20kHz
(30Hz〜19kHz±3dB)
METAL:20Hz〜22kHz
(25Hz〜21kHz±3dB)
CrO:25Hz〜21kHz
(30Hz〜20kHz±3dB)
NORMAL:25Hz〜20kHz
(30Hz〜19kHz±3dB)
METAL:20Hz〜21kHz
(25Hz〜20kHz±3dB)
CrO:25Hz〜20kHz
(30Hz〜19kHz±3dB)
NORMAL:25Hz〜19kHz
(30Hz〜18kHz±3dB)
クロストーク 65dB以上(1kHz)
入力 マイクロホン:0.35mV/10kΩ不平衡
 (10kΩ以下のマイクに適合)
ライン:70mV/50kΩ不平衡
出力 ライン:775mV
 (10kΩ負荷時,入力レベル200pwb/mm,VR最大)
ヘッドホン:1.2mW
 (8Ω負荷時,8Ω〜2kΩのヘッドホンに適合)
電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・25W
寸法・重量 W434×H117×D300mm・7.0kg
※本ページに掲載したDR-F3,DR-F2,DR-F1の写真,仕様表等は1980年
 10月のDENONのカタログより抜粋したもので,日本コロムビア株式会社に著
 作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法
 律で禁じられていますのでご注意ください。            
   
 
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