DR-F8の写真
DENON DR-F8
CASSETTE TAPE DECK ¥89,800

1981年にデンオン(現デノン)が発売したカセットデッキ。DR-F3,F2,F1のシリーズに
代わって,デザインを一新して発売されたDR-F8,F7,F6というシリーズの中の最上位機で,
走行系をはじめ各部が強化された1台でした。

走行系は,新たにキャプスタン駆動用に「フラットツインDDモーター」が搭載されていました。
キャプスタン駆動をDD方式とすることにより,回転精度と耐久性・安定性の向上が図られて
いました。「フラットツインDDモーター」は,フライホイールそのものがローターとなり,ステー
ターコイルがデンオン独自の対称配置(互いに向かい合った1対のステーターコイルとこれに
電気的に90度ずらしたもう1対のステーターコイル,そしてこのコイルの電流を制御するホー
ル素子などで構成)となる平面対向型DDモーターで,トルク特性と振動(芯ぶれ)の問題が解
決されていました。さらに,回転精度ノイズの問題に影響のあるブラシ,スロット,コアがなく,
機械的な摩耗部分はモーター軸受部のみの構造として,耐久性も高めていました。

フラットツインDDモーター

さらに,DR-F8のキャプスタンモーターは,PLL(位相同期回路)を使用したサーボ回路を搭載し,
クォーツロックを採用することにより,温度変化等に対する変動も抑え,DD方式の精度をより高
めていました。
また,「ノンスリップ・リールドライブ機構」を採用してテープ走行の安定とメカニズムの 耐久性を高
めていました。

DR-F8も,DR- F3,F2,F1のシリーズ同様にオーソドックスなワンウェイの3ヘッドデッキで,走
行系は,同じくシングルキャプスタンでした。 デンオンはこれ以降もしばらくシングルキャプスタン
メカニズムで走行性を追求していきました。シングルキャプスタンながら,テープ走行へのハーフ
の影響を抑えるため,オープンリールデッキなどでよく使われている,テープテンションを一定に
保つためのテンションサーボセンサーを備えていました。DR-F8では改良型のタイプUで,サー
ボ領域を拡大して,追従性を高めていました。オープンリールデッキでも定評のあったデンオンら
しさを感じさせる部分でもありました。

録音・再生ヘッドはDR-F3,F2,F1のシリーズのF-ALLOYヘッドを受け継いだ新型の「M&Xヘ
ッド」で,ギャップ幅を最適に設定し,再生ヘッドは,録音ヘッドの1/5というナローギャップとし,コ
ンビネーション型として搭載され,録音ヘッドから再生ヘッドへの飛び込み磁界(クロスフィード)も抑
えられていました。「M&Xコンビネーションヘッド」は,録音・再生用各アンプにコンデンサーを介さ
ずに直結され,すぐれた録音・再生性能を実現していました。消去ヘッドは,E字型コア使用のダブ
ルギャップのフェライト消去ヘッドが引き続き搭載されていました。

DR-F8のヘッド及び走行系M&Xコンビネーションヘッド

アンプ系も,DR-F3,F2,F1のシリーズ同様に,録音・再生独立のDC構成アンプを搭載していま
した。ヘッドと初段アンプ間のコンデンサーをはじめ,終段までコンデンサーを持たないオールDC構
成で,マイクアンプ,録音アンプ,イコライザーアンプ,再生アンプヘッドホンアンプ,メーターアンプに
至るまですべてハイレベルのDCアンプユニットという徹底した構成となっていました。これらをドライ
ブする電源は±2電源方式を採用し,差動入力プッシュプル回路とともにワイドレンジ,低歪みを実
現していました。バイアス発振回路にもプッシュプル構成を採用し,バイアス歪みも抑えて録音信号
のクオリティを高めていました。

また,DR-F8には新たにデンオン初めてのオートチューニングシステム「FTS」を搭載していました。
「FTS」は「Flat Tuning System」の略で,マイクロプロセッサーにより録音バイアスとテープ感度
を自動調整するシステムでした。FTSスイッチを押すだけで,テープは自動調整走行を始め,自動的
に録音入力と再生出力が一致するようにテープ感度が調整され,中低域と高域の特性がフラットに
なるようにバイアスが自動調整され,さらに感度を補正して,自動巻き戻しが行われるというもので
約5秒という短時間でチューニングが行われるものでした。
このシステムにより,周波数特性が改善され,ドルビーの動作も安定し,ドルビーCタイプ使用時に
は,0VUのハイレベル録音でも20Hz〜22kHz(メタルテープ)の周波数特性が確保されていまし
た。

ノイズリダクションとしてドルビーBタイプと当時最新のドルビーCタイプを搭載し,そのノイズ低減効
果(20dB)と相まって,メタルテープでは90dB以上のダイナミックレンジを確保していました。
レベル表示には,アナログ式の大型のVUメーターを搭載し,さらに,赤(+8dB),黄(+5dB),緑
(0dB)の3色のLEDピークレベルインジケーターを装備していました。

以上のように,DR-F8はオーソドックスに性能を追求した使いやすく音のよいカセットデッキでした。
また,弟機としてキャプスタンモーターのクォーツPLLサーボを省略したDR-F7,さらにFTSを省略
したDR-F6がありました。

DR-F7の写真
DENON DR-F7
CASSETTE TAPE DECK ¥79,800

DR-F6の写真
DENON DR-F6
CASSETTE TAPE DECK ¥69,800



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「メカニズム」「ヘッド」「アンプ」「電源」
ひとつひとつの着実な積み重ねが
すぐれた録音・再生能力を実現した。


◎楽器のハーモニックスまで実に新鮮。
 ■フラットツインDDモーターによるDD化
 ■クォーツロックPLLフラットツインDDモーター(DR-F8)
 ■ノンスリップ・リールドライブ方式
 ■テンションサーボセンサーU

◎超高域までキラリ鮮やか。
 ■M&Xコンビネーションヘッド
 ■±2電源,オールDCアンプ構成

◎マイコンがテープの能力をフルに発揮。
 ■フラットチューニングシステム「FTS」
◎音楽性豊かな90dBびのダイナミックレンジ。
 ■ダブルドルビーシステム 
 ■MPX・フィルタースイッチ付き

◎実用性の高い機能,快適な操作性
 ■軽快なフェザータッチ・コントロール
 ■ヘッドホンの音量調節も可能なアウトプット・レベルコントロール
 ■ワンタッチ・レックポーズ
 ■PAUSE/MUTE機構
 ■スピーディー操作のワッタッチ・イジェクト
 ■断続録音が可能な,タイマー録音・再生機構
 ■フロント・リモコン端子装備


●DR-F8・DR-F7・DR-F6の主な仕様●

トラック型式
4トラック2チャンネルステレオ
テープセレクター
NORMAL,CrO2,METAL 
ヘッド
録音・再生:M&Xコンビネーションヘッド×1
消去:ダブルギャップ・フェライトヘッド×1
モーター
キャプスタン用
 DR-F7,DR-F6:フラットツインDDサーボモーター×1
 DR-F8:クォーツPLLフラットツインDDサーボモーター×1
リール用
 DCモーター×1
ワウ・フラッター
DR-F7,DR-F6:0.027%W・rms(JIS)
DR-F8:0.025%W・rms(JIS)
早送時間
約90秒(C-60)
総合周波数特性
METALテープ20Hz〜22kHz(25Hz〜20kHz± 3dB)
総合SN比
76dB(ドルビーNR「Cタイプ」:ON)
総合3次高調波ひずみ率
NORMALテープ:1%以下
入力端子
マイク:0.35mV(10kΩ不平衡)
    10kΩ以下のマイクに適合
ライン:77.5mV(50kΩ不平衡)
出力端子(VOL..MAX)
ライン:775mV(10kΩ負荷時)
ヘッドホン:1.2mW(8Ω負荷時)
       8Ωから2kΩのヘッドホンに適合
電源
100V AC・50/60Hz
消費電力
25W
外形寸法
W434×H115×D320mm
重量
6.8kg

※本ページに掲載したDR-F8,F7,F6 の写真,仕様表等は
 1981年10月のDENONのカタログより抜粋したもので,
  デノン株式会社に著作権があります。したがって,これらの
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

   
 
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