DR-F8も,DR-
F3,F2,F1のシリーズ同様にオーソドックスなワンウェイの3ヘッドデッキで,走
行系は,同じくシングルキャプスタンでした。 デンオンはこれ以降もしばらくシングルキャプスタン
メカニズムで走行性を追求していきました。シングルキャプスタンながら,テープ走行へのハーフ
の影響を抑えるため,オープンリールデッキなどでよく使われている,テープテンションを一定に
保つためのテンションサーボセンサーを備えていました。DR-F8では改良型のタイプUで,サー
ボ領域を拡大して,追従性を高めていました。オープンリールデッキでも定評のあったデンオンら
しさを感じさせる部分でもありました。
録音・再生ヘッドはDR-F3,F2,F1のシリーズのF-ALLOYヘッドを受け継いだ新型の「M&Xヘ
ッド」で,ギャップ幅を最適に設定し,再生ヘッドは,録音ヘッドの1/5というナローギャップとし,コ
ンビネーション型として搭載され,録音ヘッドから再生ヘッドへの飛び込み磁界(クロスフィード)も抑
えられていました。「M&Xコンビネーションヘッド」は,録音・再生用各アンプにコンデンサーを介さ
ずに直結され,すぐれた録音・再生性能を実現していました。消去ヘッドは,E字型コア使用のダブ
ルギャップのフェライト消去ヘッドが引き続き搭載されていました。
アンプ系も,DR-F3,F2,F1のシリーズ同様に,録音・再生独立のDC構成アンプを搭載していま
した。ヘッドと初段アンプ間のコンデンサーをはじめ,終段までコンデンサーを持たないオールDC構
成で,マイクアンプ,録音アンプ,イコライザーアンプ,再生アンプヘッドホンアンプ,メーターアンプに
至るまですべてハイレベルのDCアンプユニットという徹底した構成となっていました。これらをドライ
ブする電源は±2電源方式を採用し,差動入力プッシュプル回路とともにワイドレンジ,低歪みを実
現していました。バイアス発振回路にもプッシュプル構成を採用し,バイアス歪みも抑えて録音信号
のクオリティを高めていました。
ノイズリダクションとしてドルビーBタイプと当時最新のドルビーCタイプを搭載し,そのノイズ低減効
果(20dB)と相まって,メタルテープでは90dB以上のダイナミックレンジを確保していました。
レベル表示には,アナログ式の大型のVUメーターを搭載し,さらに,赤(+8dB),黄(+5dB),緑
(0dB)の3色のLEDピークレベルインジケーターを装備していました。
以上のように,DR-F8はオーソドックスに性能を追求した使いやすく音のよいカセットデッキでした。
また,弟機としてキャプスタンモーターのクォーツPLLサーボを省略したDR-F7,さらにFTSを省略
したDR-F6がありました。
DENON DR-F7
CASSETTE TAPE DECK ¥79,800
DENON DR-F6
CASSETTE TAPE DECK ¥69,800
トラック型式 |
4トラック2チャンネルステレオ |
テープセレクター |
NORMAL,CrO2,METAL |
ヘッド |
録音・再生:M&Xコンビネーションヘッド×1 消去:ダブルギャップ・フェライトヘッド×1 |
モーター |
キャプスタン用 DR-F7,DR-F6:フラットツインDDサーボモーター×1 DR-F8:クォーツPLLフラットツインDDサーボモーター×1 リール用 DCモーター×1 |
ワウ・フラッター |
DR-F7,DR-F6:0.027%W・rms(JIS) DR-F8:0.025%W・rms(JIS) |
早送時間 |
約90秒(C-60) |
総合周波数特性 |
METALテープ20Hz〜22kHz(25Hz〜20kHz±
3dB) |
総合SN比 |
76dB(ドルビーNR「Cタイプ」:ON) |
総合3次高調波ひずみ率 |
NORMALテープ:1%以下 |
入力端子 |
マイク:0.35mV(10kΩ不平衡) 10kΩ以下のマイクに適合 ライン:77.5mV(50kΩ不平衡) |
出力端子(VOL..MAX) |
ライン:775mV(10kΩ負荷時) ヘッドホン:1.2mW(8Ω負荷時) 8Ωから2kΩのヘッドホンに適合 |
電源 |
100V AC・50/60Hz |
消費電力 |
25W |
外形寸法 |
W434×H115×D320mm |
重量 |
6.8kg |
※本ページに掲載したDR-F8,F7,F6 の写真,仕様表等は
1981年10月のDENONのカタログより抜粋したもので,
デノン株式会社に著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
ますのでご注意ください。
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