DRAGON-CTの写真
Nakamichi  DRAGON-CT
Computing Turntable ¥400,000

1983年にナカミチが発売したプレーヤーシステム。1981年にレコード再生の理想を求めた
ハイテク機構「アブソルート・センター・サーチ・システム」を搭載した高級ターンテーブルシステム
TX-1000を発売した ナカミチが,その弟機として発売したのがこのDRAGON-CTでした。

「Absolute Center Search System(アブソルート・センター・サーチ・システム)」は,レコー
ド盤の中心穴のずれをミクロン単位で検出し,自動的に補正して,完全に真円の状態で音溝をト
レースできるようにする機構でした。ナカミチの資料によると,いくらプレーヤー自体の回転精度
を上げても,レコード盤の中心穴が狂っていると,ワウ・フラッターや変調雑音が増加し,トーン
アームが左 右に振られることにより,左右チャンネル間の位相ずれが起こり,音色の濁り,音像
が動き回り,音像が広がったように聞こえるなどの現象を引き起こすのだそうです。仮に,レコー
ド盤の偏心量が0.34mmだとすると,プレーヤー単体のワウ・フラッター値が0.001%でも,実
際のワウ・フラッター値は,レコードの最内周では約0.15%にも達するということでした。ナカミチ
のレコード盤とプレーヤーとの関係を重視する考え方は,テープデッキのヘッドとテープの関係(ア
ジマス)にこだわるナカミチ独自の姿勢と通じるものあったように思います。

DRAGON-CTの「アブソルート・センター・サーチ・システム」は,基本構造はTX-1000と同様の
もので,ターンテーブルが,センターサーチターンテーブルとメインターンテーブルの2重構造に
なっており,レコードの最内周の無音溝が真円になっていることを利用して,センサーアームでこ
の無音溝をトレースし,アームの横振れ角度から偏心量を検出し,センターサーチターンテーブル
を,偏心量に応じてモーターで移動させることで,偏心補正を行うものでした。しかし,メカニズム
的には合理化が行われており,TX-1000では,メインターンテーブル内に駆動メカニズムが組
み込まれ,X軸とY軸の2方向に,それぞれの駆動モーターで,センターサーチターンテーブルを
移動し,回転させながら偏心補正を行う仕組みであったのに対し,DRAGON-CTでは,センター
サーチメカニズムをメインターンテーブルの外に出し,ターンテーブルを止めた状態で,外からセ
ンターサーチロッドという棒で押し,偏心補正を行うようになっていました。止めた状態で偏心を
補正するために,偏心方向はターンテーブル周囲に設けられた160個のスリットを利用して,光
学的に回転角度を検出し,センサーアームの振れとの関係からレコードの偏心方向を検知して,
スピンドル,レコードの絶対中心,センターサーチロッド,が一直線上に並ぶ位置でターンテーブ
ルを停止させ,補正の後,再び回転させて偏心がないことを確認するという仕組みになっていま
した。偏心補正精度は,TX-1000と同じ20ミクロン以内が確保されていました。

ァブソルート・センターサーチ・システム

メインターンテーブルは,直径310mm,厚さ18mm,重量1.4kgのアルミダイカスト製で,セン
ターサーチターンテーブルは,直径313mm,厚さ6mm,重量1.1kgのガラス製,そして,その
上に厚さ6mm重量550gのゴム製のターンテーブルマットがのる構造で,全体の重量でも3.05kg
と比較的軽くなっていました。これは,基本的に回転が滑らかなスーパーリニアトルクモーターの
搭載により,慣性に大きく依存することなく滑らかな回転が実現でき,シャフトへの負担を少なく
する設計となっているためでした。軸受部は,シャフトに特殊はスリットを設けて隙間にグリスを
注入し,回転時に均一な油膜が形成される仕組みになっていました。

メインドライブモーター(ターンテーブルを回すモーター)には,ナカミチ自慢のスーパーリニアトル
クモーターを搭載していました。このモーターは,ローターマグネットを均一に着磁せず,星形に着
磁することで,コイルに流れる電流の変化がサインウエーブ状になるようにした特殊な構造で,こ
れにより,ワウ・フラッターのうち従来のDDモーターで問題になっていたフラッター成分(細かな周
期の回転変動)が抑えられ,コギングやトルクムラのきわめて少ないS/N比の高いスムーズな回
転が得られていました。

キャビネットは,内部損失が大きく共振しにくい厚いパーティクルボード2枚を,インシュレーターを
挟んで重ねた構造になっており,トップボードとボトムボードはブラックの天然木突き板仕上げの重
厚な仕上げのものが付いていました。トップボードは,厚い鉄板を裏打ちして補強されたもので,DD
モーターとトーンアームは,この鉄板にマウントされ,機械的に一体化が図られていました。
キャビネットを支えるインシュレーターは,ゴムとスプリングという,減衰特性の異なる上下2種類
のインシュレーターを組み合わせたダブルサスペンション構造で,広い帯域にわたる振動を効果
的に減衰できるようになっていました。
また,DRAGON-CTには,TX-1000にはなかったダストカバーが付属していましたが,支柱を
ボトムボードにマウントして,ダストカバーの振動がトップボードに伝わりにくいような構造がとられ
ていました。

DRAGON-CTには,TX-1000と異なり,アームが付属していました。付属のトーンアームは,
シリコンオイルを利用したオイルダンプ式のスタティックバランス型で,ストレートアームタイプで
した。アームパイプは,剛性の高い真鍮製二重構造で,交換式となっており,交換アームパイプ
は,TA-100の型番で¥12,000で別売されていました。

機能的にも,純粋にターンテーブルとしての性能を追求した設計のTX-1000とは異なり,より
一般的な使いやすさも考えられた設計になっていました。操作部は前面の上部に集中配置され
ダストカバーを閉じたままでも滑らかにトーンアーム昇降ができるキューイング機構や,演奏終
了時にアームが上がるオートリターン機構,±6%のピッチコントロールなども装備されていまし
た。また,カートリッジからの出力は,リアパネルに金メッキ処理が施されたピンジャックに出力
されるようになっており,内部抵抗の少ない無酸素銅線のフォノケーブルが付属し,ケーブルは
容易に交換できるようになっていました。

以上のように,DRAGON-CTは,ナカミチ独自の「アブソルート・センター・サーチ・システム」を
軸に,正確なアナログレコード再生を目指したTX-1000をより現実的な使いやすい1台にした
モデルで,約3分の1の価格ながら,高い機能性と性能を実現していました。同じDRAGONの名
を持つカセットデッキのNAACにも通じる正確な再生を目指したその技術は,クリアで正確な音場
感の再現をもたらしていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



アナログプレーヤー技術の
すべてが,
ここに結晶した。
”DRAGON-CT”


◎レコードの偏心による音質劣化にピリオドを打つ。
 新たな発想から,究極ともいえるシンプルさへ到達
 したアブソルートセンターサーチ機構。
◎基音を変調し,音を濁すフラッター成分を低減した
 リニアトルクD・Dモーター。
◎徹底したハウリング,防振対策を施したダブルサス
 ペンションシステム&2重構造キャビネット。
◎高性能MC型カートリッジにターゲットを絞った,オイ
 ルダンプ機構内蔵の高性能ストレートトーンアーム。
◎音楽の余韻にじっくりひたれる。オートリターン方式
 採用のセミオートシステム。




●主な規格●



■フォノモーター部■

駆動方式
ダイレクトドライブ
ドライブモーター
Quartz PLL DC,ブラシレス/スロットレス/コアレス
スーパーリニアトルクモーター
回転数
331/3,45RPM
ピッチコントロール
±6%
メインターンテーブル
アルミダイキャスト製(厚さ18mm,直径310mm,重量1. 4kg)
センターサーチターンテーブル
ガラス製(厚さ6mm,直径313mm,重量1.1kg)
ターンテーブルマット(ラバーマット)
ゴム製(厚さ6mm,直径303mm,重量550g)
起動特性
1回転以内
回転数偏差
測定限界以外(クォーツロック時)
時間ドリフト
測定限界以外(クォーツロック時)
ワウ・フラッター
0.008%(WTD  RMS/FG直読法)
0.03%(WTD RMS,センターサーチ後)
S/N比
78dB以上(DIN-B)
慣性モーメント
380kg・cm2



■トーンアーム部■

型式
スタティックバランス,ストレートアームパイプ型
オイルダンプ機構内蔵,アームパイプ交換可能
全長
305mm
有効長
237mm
実効質量
14g(カートリッジ含まず)
針圧可変範囲
0〜3g
適合カートリッジ重量
4〜11g
カートリッジ交換方式
トーンアームパイプ交換方式(チャッキングジョイント式)
オフセット角
21°30′
オーバーハング
15mm
トラッキングエラー
+2.5°〜−1°
アームリフター
オイルダンプ式



■その他■

電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
23W
大きさ
546W×230H×421Dmm
重量
約20kg

※本ページに掲載したDRAGON-CTの写真・仕様表等は1983年9月
のNakamichiのカタログより抜粋したもので,ナカミチ株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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