DRS-810Gの写真
DENON DRS-810G
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥69,800
 
1992年にデンオン(現デノン)が発売したカセットデッキ。水平ローディング機構を採用した薄型の筐体を持ち
まるでCDプレーヤーを思わせるデザインの中に,3ヘッドを始め本格的な内容を持ったカセットデッキでした。

DRS-810Gの最大の特徴は上記の水平ローディング機構でしたが,これは,デッキメカを回転系にとって理想
的な水平に装着し,フライホイールのスラスト方向の振動を抑え,変調ノイズを低減することをねらったものでした。
ビデオデッキ,DATなどでも水平ローディングが採用されているように,水平ローディングには基本構造としてメリ
ットがあったようです。

トレイを開いた状態水平ローディングのトレイ部
カセットトレイには,ハーフの振動や変調ノイズを抑えるために振動を吸収する特性を持つセラミックコンポジットが
使用され,さらに,同じくセラミックコンポジット製のカセットスタビライザーが採用されていました。リール,キャプス
タン,ヘッド昇降,ローディング別に専用に計4個のモーターが使用され,安定したテープ走行と円滑な動作を実現
していました。そしてこれらの動作は,メカ動作とカウンター表示を1チップ化したマイクロコンピュータによって制御
される「コンピュータ制御サイレントメカニズム」となっていました。

テープ走行系にはクローズドループ・デュアルキャプスタン方式が採用され,テープの変調ノイズなど,外乱の影響
を抑え,安定したヘッドタッチを実現していました。キャプスタンモーターにはトルクが強く回転ムラの少ない電子制
御DCモーターを使用し,テイクアップ側のキャプスタンには慣性モーメントの大きいフライホイールを採用して,ワウ・
フラッターの低減を図っていました。また,DR-F3以来のノ ンスリップ・リールドライブ機構を採用して,モーターと巻
き取りリール台の機械的な摩擦をなくし,テープテンションの安定を図り,テープの巻き取り時のノイズや経年変化を
なくしていました。また,テープローディング時にテープのたるみを防ぐたるみ防止機構も搭載していました。

水平ローディング部DRS-810Gのヘッド
ヘッドは,録音・再生独立のコンビネーションヘッドが搭載され,コイルには信号劣化の少ない単結晶無酸素銅線
(PC-OCC)が使用され,高域周波数特性,MOL特性の改善が図られていました。ヘッドベースには高剛性・高
精度のアルミダイキャスト製のヘッドベースが採用され,不要振動やアジマスの狂いを抑えていました。 3ヘッドな
らではの録再同時モニターでは「オートテープモニター」が搭載され,テープ走行時にはTAPE側に,りテープが走
行していないときにはSOURCE側に自動的に切り替わるようになっていました。アンプ系は伝統のDCアンプ構成
で,電源系は2系統独立のデュアルパワーサプライとなっていました。

ノイズリダクションとしてドルビーB/Cを搭載し,高域特性を改善するドルビーHXプロも搭載していました。また,バ
イアス値の微調整ができるマニュアルバイアスコントロールを搭載していました。その他,RECリターンキーを押すと
録音開始位置まで自動的に戻るRECリターン機能も搭載していました。
レベルメーターは,−40〜+10dBのピークホールド機能付きワイドレンジFLバーグラフピークメーターでした。テー
プカウンターは4桁FLデジタル表示で,テープの残量表示が可能なリニアタイムデジタルカウンターでした。その他
機能的には,PLAYボタンとFFあるいはREWボタンを押すことで前後の曲の頭出しができる「ミュージックサーチ機
能」や再生しながら録音状態に入れる「後追い録音機能」,自動的に一定の無録音部分をつくれる「オートレコーディ
ングスペース機能」,基本的な録再動作がすべて遠隔操作できる「ワイヤレスリモコン」などの実質的な機能が搭載
されていました。

以上のように,DRS-810Gは,DAT等録音のデジタル化の時代に入って登場したカセットデッキとして,高いコスト
パフォーマンスを持った実質派の3ヘッドデッキでした。珍しい水平ローディングの採用もあって印象に残っている1台
です。
 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



水平ローディング機構を採用した
華麗な3ヘッドマスターデッキ。

◎無理のない走行性を実現する
 トレイ式水平ローディング機構。
◎滑らかなヘッドタッチと静かな駆動力。
 2キャプスタン&サイレント・メカニズム。
◎ダイキャストヘッドベースで
 不要振動とヘッドの傾きを排除。
◎高域のオーバーバイアスを防ぐ
 ドルビーHXプロ搭載。
◎録音時の操作性を向上する
 オートテープモニター。
◎録音開始位置までワンタッチで戻る
 RECリターン機能。
◎ピアニッシモにも敏感に反応する
 ワイドレンジレベルメーター。
◎マニュアルバイアスコントロールで
 テープごとに最適録音条件を設定可能。
◎その他,豊富な機能を装備。



●SPECIFICATION●

トラック方式 4トラック2チャンネル・ステレオ
テープセレクター 3段オートテープセレクター
(NORMAL,HIGH[CrO2],METAL)
ヘッド 録音再生 PC-OCCコイルヘッド×1
消去    ダブルギャップフェライトヘッド×1
モーター キャプスタン用 電子制御DCモーター×1
リール用     DCモーター×1
メカ制御用    DCモーター×1
ローディング用 DCモーター×1 
ワウ・フラッター 0.038%W・RMS(JIS)
±0.1%W・Peak(EIAJ)
早送り時間 約100秒(C-60)
総合周波数特性
(−20dB)
METALテープ,15Hz〜22kHz
          20Hz〜21kHz±3dB 
総合SN比 76dB(対3%THD,CCIR/ARM・DOLBY-CNR)
入力端子(VOL.MAX) ライン:80mV(50kΩ不平衡)
出力端子(VOL.MAX) ライン:620mV(47kΩ負荷時)
ヘッドホン 1.5mW(8Ω負荷時)
8Ω〜1.2kΩのヘッドホンに適合
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 15W
外形寸法 470W×122H×320Dmm
重量 7.4kg
※本ページに掲載したDRS- 810Gの写真,仕様表等は1993年5月のDENON
 のカタログより抜粋したもので,日本コロムビア株式会社に著
作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法
律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。                                       

   
 
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