DIATONE DS-503
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥125,000
1981年に,ダイヤトーン(三菱電機)が発売したスピーカーシステム。前年の1980年にダイヤトーン
は,画期的な4ウェイスピーカーDS-505を発売し,ここで新素材のユニットによる4ウェイシステムを
実現し,高い評価を得ていました。この「DS-50※シリーズ」の第2弾として発売されたのがDS-503
でした。

DS-505では,ミッド・バスユニットを新たに搭載した4ウェイシステムという画期的なスピーカーシステ
ムを完成させ,積み上げてきた新素材ユニットの完成度を一挙に高めていました。その弟機として開発
されたDS-503は,新素材ユニットの技術を継承・発展させ,3ウェイ・バスレフ型という,より一般的な
形式のスピーカーシステムとして,すぐれた性能を実現していました。



ウーファーは,32cm口径のコーン型で,前年に発売された上級機DS-505のアラミッド・ハニカム振
動板をベースに開発された高抗張力ポリアミド・ハニカム・振動板が採用されていました。
ダイヤトーンは,1977年にMONITOR1DS-70CDS-90Cなど,アルミニウムの薄膜でできた
アルミハニカムコアの両面をGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の薄膜ではさんだ構造をもつハニ
カム振動板を開発し,搭載したスピーカーシステムを発売し,それ以来技術を磨き上げていきました。
そして,DS-505では,アルミハニカムコアにアラミッド繊維で強化した樹脂をスキン材として組み合わ
せた構造を採用し,すぐれた性能を実現していました。さらに,DS-503では,そのノウハウや技術を
生かし,新しく高抗張力ポリアミド繊維をスキン材としたハニカム振動板を開発し,搭載していました。
この新しい振動板により,軸対称分割共振を高い帯域へおしやり,非軸対称分割共振を抑え,歪を大
きく低減していました。さらに,DS-505同様に低歪み磁気回路を搭載し,加えて平角の無酸素銅線
によるエッジワイズコイル,ガラス繊維のポリイミドフィルムのボイスコイルボビンを採用し,駆動系自
身の低歪み化,さらにはボイスコイルで発生した駆動力が損失なく振動板に伝達するように設計され
ていました。



ミッド・レンジは,6.5cm口径のドーム型で,DS-505以来のDUDボロン・ドーム型ユニットが搭載
されていました。ボロンは,金属よりむしろ磁器に近い物性をもち,チタンに高温ボロン化処理を行い
ボロン化チタンとチタンのサンドイッチ構造としたボロン化チタン振動板はそうした特性を持ち合わせ
ていました。一般に金属振動板ではQが高く鋭い共振を起こすことから,振動板自身に制動をかけて
防ぐため,響きの成分も失われるなどの問題もありましたが,DS-503のボロン・ドーム型ユニットで
は振動板自身の制動を一切行わない方向で開発されていました。振動板部とボイス・コイル・ボビン
部とを一体構造とした,直接駆動形振動板・DUD(DIATONE Unified Diaphragm)としており,
高域共振周波数も高くとれ,すぐれた特性,音質を活かして,ポールビース上部にイコライザーを挿
入して背圧のコントロールをし,さらに前面のディフューザーもなくして,音の立ち上がりのよいミッド・
レンジとして完成させていました。そして,エッジは,立ち上がりが良く,鳴きがないという背反する2
つの条件を満たすために,アラミッド繊維を特殊ブチルゴムでサンドイッチしたタンジャンシャルエッジ
を開発し採用していました。アラミッド繊維は,減衰特性にすぐれ立ち上がりの早い音に対する応答
性が良く,一方,特殊ブチルゴムは,グラファイトをスライス,鱗片状にして,ブチルゴムにフィラー処
理し,ロスファクターを調整したもので,この2つの相反する性質をもった素材をサンドイッチ構造に
し,各々の膜厚を調整することにより,アタック時の反応の早さと,弦・ボーカル再生時のとげとげし
さをなくした,鳴きを抑えた中音域再生を実現していました。



トゥイーターは,2.3cm口径のドーム型で,DS-505のトゥイーターのノウハウを採用したDUDボ
ロン・ドーム型ユニットでした。ダイヤフラム(振動板)とボイスコイルボビンを一体化したDUDによ
り,ボイスコイルに発生した駆動力を損失なく振動板に伝達することが可能となり,高音域の減衰
が少なく,入力信号に対する応答性が大幅に改善されていました。また,接着による剛性低下を
排除し,剛性の高い金属で一体成形されているため,高域共振周波数も可聴帯域外へ追放する
ことができていました。さらに,ボイスコイルに発生した熱もダイヤフラムに直接伝導し,接着部分
による熱絶縁やボビン材の熱伝導の悪さからコイル自身の放熱しかできなかった従来型に比べ
放熱効果も高くなり,入力信号に対するリニアリティや耐入力性を高めていました。ボロンの素材
自身の低質量,高剛性,耐候性などのすぐれた特性もあり,すぐれた高域再生能力を実現してい
ました。



ネットワーク回路は,導電抵抗やパーツに配慮したダイヤトーン伝統の低歪形で,特に中音域ネッ
トワーク回路は,従来のフィルムコンデンサーに加え,新開発の電解コンデンサー主体の回路を構
成し,トゥイーターとネットワーク回路の結線には無酸素銅リッツ線を採用して,表皮効果による高
い周波数でのレベル低下を防ぐとともに,瞬間入力の応答性を高めていました。さらに,すべての
結線には,無酸素銅による圧着スリーブワイヤリングを採用していました。
エンクロージャーは,分散共振形とし,さらに包み留めほぞ接ぎにより剛性を高め,剛性の高いス
トレートアルミパイプによるバスレフ・ダクトを装着し,徹底的な剛性チェックにより,高剛性のエンク
ロージャーとして,しっかりとユニットを支える構造としていました。

以上のように,DS-503は,上級機DS-505の技術やノウハウを継承して開発され,同社自身
「デジタル・モニター」と称していただけに,すぐれたユニット性能を生かした高性能なスピーカーシス
テムでした。当時,デジタルオーディオで想定されていたフラットな再生周波数帯域,ダイナミックレ
ンジの拡大に対応すべく設計されており,切れ味の鋭いクリアな音は,新しい時代を感じさせる音
でした。当時,スピーカー選びをしている中で,NS-1000Mのライバルとしてかなり最後まで迷っ
たことを思い出します。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「デジタルに対応するスピーカー・システムとは」。
この新しい音のコンセプトのもとに生まれ,
ブックシェルフ形スピーカーにその在り方を問う,
DS-503形。

デジタル・モニター,として生まれた。

◎ダイヤトーンの考える
 スピーカーのデジタル対応とは。

 ●再生周波数帯域の拡大
 ●ダイナミックレンジの拡大

◎DUDボロン・トゥイーター
◎DUD(ダイヤトーン・ユニファイド・
 ダイヤフラム)ボロン・ミッドレンジ
◎高抗張力ポリアミド・ハニカム
 コーン・ウーファー。
◎より完成されたシステムへ
 各パーツもとことん吟味。




●主な定格●

スピーカー方式 3ウェイ・バスレフ方式 
使用ユニット 低音用    32cmコーン型
中音用   6.5cmドーム型
高音用   2.3cmドーム型
公称インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 30~40,000Hz
最大許容入力 100W
出力音圧レベル 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 500Hz  5,000Hz 
外形寸法 幅390×高さ720×奥行377mm
重量 33kg
※本ページに掲載したDS-503の写真・仕様表等は
1981年8月
のDIATONEのカタログより抜粋したもの
で,三菱電機株式会社に著作
権があります。したがって
これらの写真等を無断で転載,引用等するこ
とは,法律
で禁じられていますのでご注意ください。

 

★メニューにもどる       
 
 

★スピーカーのページpart10にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方
,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system