DTC-1500ESの写真
SONY DTC-1500ES
DIGITAL AUDIO TAPE DECK ¥300,000

ソニーが1990年に発売したDATデッキ。DATの中心開発メーカーであるソニーが威信をかけて作り上げたと
いった感じの超強力なDATデッキでした。そこに投入された物量,技術の水準の高さは,さすがデジタルオー
ディオの雄・ソニーを実感させました。

DTC-1500ESの最大の特徴は,録/再同時モニターが可能になっていることでした。そのため,通常は2個
であるヘッドを2組備え,合計4ヘッド構成のヘッドドラムとなっていました。この方式はプロ用機では,ナカミチが
1988年にNakamichi1000で実現していましたが,民生用機では本機が初でした。モニター用のヘッドを持っ
ているため,カセットデッキの3ヘッド機と同じように,録音中,ソース音とテープ音をREC MONITORスイッチで
ワンタッチに切り替えることができ,音で録音の同時チェックが行えました。また,再生中は,REC MONITOR
スイッチの位置に関係なく,録音/再生ヘッドでピックアップされた信号が再生される使いやすい設計になってい
ました。

DTC-1500ESのメカ部

テープ走行系は,キャプスタン用,供給側リール用,巻取り側リール用,ヘッドドラム回転用それぞれに専用のダ
イレクトドライブモーターを配した4D.D.モーターメカニズムになっていました。このため,メカニズム系はシンプルか
つ高精度なものになっていました。また,第1世代のDATデッキと異なり,カセットラベルが見える正立透視型のカ
セットコンパートメントを採用していました。

A/Dコンバーターには,当時最新の1ビットタイプのA/Dコンバーターを搭載していました。A/D変換にともない
発生する不要スペクトラムを音楽信号のはるかかなたへシフトさせることができ,折り返し雑音を防ぐためのローパ
スフィルターもゆるやかな特性のきわめて軽いものを使っていました。
D/Aコンバーターには,業務用機器にも使われている「16倍オーバーサンプリング・18ビットオーバーラップスタ
ガードタイプ」を搭載していました。これは,片チャンネルあたり8倍オーバーサンプリング・18ビットのD/Aコンバ
ーターを半周期ずつずらして2個,両チャンネルでは4個搭載する贅沢な構成で,安定したD/A変換を実現してい
ました。

電源部は,オーディオ系用とデジタル及びその他用とを完全に分離するために,大容量のトランスをそれぞれ独立
で搭載する2トランス構成とし,安定化電源回路もそれぞれ専用の独立基板上に構成していました。さらに,+電
圧と−電圧の部品と配線パターンを対称配置にした音質重視設計となっていました。

DTC-1500ESの電源部

コンストラクションも音質重視の強固なものとなっていました。オーディオ/デジタル基板をシールド板で分離し,さら
に,銅メッキ処理した高剛性シャーシを採用して,磁気歪みの発生を抑えていました。さらに,天板も板厚3mmにも
およぶ高剛性アルミを使用し,オーディオ系は大型銅板使用による1点アースとするなど非磁性化を徹底していまし
た。同時に,外周を取り囲むフレーム,そしてフロントとリヤをジョイントするビーム(梁)によって構造をさらに強固にし
たシャーシとしていました。

モーターなどのサーボ系は,大幅にソフトウェア化されて,ソフトウェアのフレキシブルな設定により多彩なコントロー
ルを可能にし,テープに負担をかけずに,サーチの高速化を実現していました。また,エラー訂正,RAMコントロール
デジタルI/Oなどの信号処理用のLSIをわずか1個に集積したゲート数約2万にも及ぶ第2世代のLSIを採用してい
ました。また,サーボやメカニズムコントロールなどを制御するマイコンも1個のLSIに集積し,部品点数の削減と基板
構成のシンプル化を実現し,信頼性の向上がなされていました。

DATならではの,サブコードを活用した多彩な機能として,プログラムサーチ,ミュージックスキャンなどの通常の頭出
し機能に加え,新たにテンキーで時・分・秒を入力することで目的箇所をサートする「アブソリュートタイムサーチ」や専
用の時計により録音した時間が自動的にサブコードに記録され,再生中いつでも録音した日時が表示できる「DATE
機能」なども搭載されていました。また,アナログ入力時だけでなくデジタル入力時にもフェードイン/フェードアウトが
可能な「デジタル・フェードイン/アウト」機能も搭載されていました。

以上のように,DTC-1500ESは,ソニーのDATデッキの最高級機として,音質,機能両面から贅を尽くした作りで,
きわめて高性能を誇りました。その音は,投入された物量を感じさせる堂々たるものでした。デジタル入力時だけでな
くアナログ入力の音も見事なものでした。第1世代機と異なり,サンプリング周波数44.1kHz時の録音にも対応し,
CDからのデジタル入力による録音も可能になっていました。(SCMS(Serial Copy Management System)に
より,1世代コピーだけしかできませんが・・。)ソニーのDATを代表する名機だと思います。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



素材に,回路に,機能に。
じっくり腰を据えて開発に取り組みました。
妥協を捨て,ベストをめざせば,
DATデッキはこうなります。

ソニーは日本における録音機の先駆メーカー。その自信と責任が,いつの時代にも
その時代で持ち得る最高水準の技術を凝らした製品をお届けする使命感を与えてくれます。
DTC-1500ESは,DATの持つ高度な能力を存分に味わっていただくために,
現時点で持てる技術を集大成して作り上げたリファレンスモデル。
録/再同時モニターが可能な4ヘッド構成。
高精度なトランスポートを実現する4D.D.モーターメカニズム,
デジタル系/アナログ系の完全独立電源,
そして,一段と練り上げられたサブコード利用のテープオペレーション機能など。
さらに,スペックや機能面に表れない細部にわたっても
リファレンスモデルとして入念な設計を行いました。
デジタル録音に秘められた限りない魅力と可能性を
母体を業務用機器とするモデルならではの信頼性とともに,ここにお届けします。
 
 


●主な仕様●


型式 デジタルオーディオテープシステム
チャンネル数 2チャンネルステレオ
サンプリング周波数 48kHz/16ビット直線(録音/再生)
44.1kHz/16ビット直線(DIGITAL INのみ録音/再生)
32kHz/16ビット直線(DIGITAL INのみ録音/再生)
32kHz/12ビット非直線(録音/再生)
エラー訂正 ダブルエンコーデッドリードソロモンコード
エンファシス プリエンファシス(録音時,アナログ入力に対して)OFFに固定
ディエンファシス(再生時)ON/OFF自動切替え
変調方式 8-10変換
周波数特性 2〜22,000Hz±0.5dB
ダイナミックレンジ 94dB以上(録音時,エンファシスOFF)
SN比 94dB以上(録音時,エンファシスOFF)
全高調波歪み率 0.004%以下
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下
インターフェース アナログ LINE IN/OUT(ピンジャック)
DIGITAL IN/OUT(EIAJ準拠同軸および光)
電源 AC100V(50/60Hz)
消費電力 46W
大きさ 470(幅)×145(高さ)×380D(奥行)
(サイドウッド取り外し時の幅:430mm)
重さ 約17.5kg
※本ページに掲載したDTC-1500ESの写真,仕様表等は1990年10月のSONYの
 カタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。        
  
  
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