SONY DTC-500ES
DIGITAL AUDIO TAPE DECK ¥148,000
1988年に,ソニーが発売したDATデッキ。DAT(デジタル・オーディオ・テープ)デッキは1987年に
第1号機が各社から発売され,ソニーはその原器ともいうべきDTC-1000ESを発売しました。そし
て,その翌年に同社の第2号機として発売された弟機がDTC-500ESでした。

1号機のDTC-1000ESは,原器として各部にしっかり物量を投入したある意味贅沢な作りとなって
いましたが,弟機として,2号機として,より普及をめざし,より合理的な作りを考えて設計されていま
した。
DATはビデオデッキと同様の回転ヘッドによる記録再生方式をとっていました。DTC-500ESのヘッド
ドラムは,直径30mmの超小型で,2個のヘッドが取り付けられ,テープはドラムの4分の1に接触する
「90°ラップ」という方式をとっていました。再生周波数がアナログの録音機に比べて格段に高く,それ
だけに高い精度のヘッドギャップと耐久性をもつDAT用ヘッドを開発し搭載していました。まさにビデオ
デッキのメカの超小型精密版といった趣で,高いビデオ技術を持つソニーならではという感じでした。

デッキメカには,DTC-1000ESの4DDメカニズムではなく,ソニーが新しく合理化した標準メカニズ
ムと考えていた2DD+1BSLモーターメカニズムが搭載されていました。キーとなるキャプスタン駆動
用,ヘッドドラム回転用に2つのダイレクトドライブモーターを搭載し,テープ走行精度を確保しつつ,
テイクアップ用とサプライリール用は1つのモーターを合理的に使用したメカニズムで,早送り,巻き戻
し時の高速サーボなど,巧みな構成により,4DDメカニズムと比較して遜色のないオペレーションが
実現されていました。精密さが要求されるメカシャーシには,DTC-1000ESと同じく非磁性体の高硬
質アルミ合金を使い,高い信頼性を確保していました。

録音系のA/Dコンバーターには,96kHzで動作する2fs(2倍オーバーサンプリング)A/Dコンバー
ターと2fsデジタルフィルターの組み合わせが採用されていました。サンプリング後に現れるスペクト
ラムを上方にシフトさせることで,ローパスフィルターの特性を緩やかにして,群遅延特性や位相特
性が改善され,原波形を生かしたA/D変換が可能となっていました。さらに,コンバーター自体も時
間軸コントロールで位相補正していました。
再生系のD/Aコンバーターには,DTC-1000ESと同じく4fsデジタルフィルター搭載の16ビットD/A
コンバーターを搭載し,D/A変換後のローパスフィルターの負担を軽減し,またL・R独立のデュアル
構成として,位相ズレを排除していました。

DATは,録音・再生という2つの役割を担うデジタル機器であるため,再生のみのCDに比較して約
3倍のデジタル処理を行う必要があり,従来以上にデジタル回路が大型化することになります。そこ
で,ソニーは,膨大なデジタル処理をわずか2個のチップで行う集積度の高いLSIを開発して搭載し
ていました。1個あたりトランジスタ20万個以上に相当するこのLSIにより,デジタル処理部はきわめ
てコンパクト化され,設計の自由度が高められていました。

デジタル系とアナログ系の相互干渉を防ぐために,電源系もデジタル・アナログ独立構成とされてい
ました。電源トランスは,DTC-1000ESと異なり1トランス構成となっていました。
内部コンストラクションも,右半分がA/D,D/Aを含めたオーディオ回路ブロック,左半分がテープ
走行系メカニズム,電源回路,デジタル信号処理回路,システムコントロールはフロントパネルのすぐ
うしろというように,それぞれブロック構成となっていました。頑丈な外部シャーシに加え,アナログブ
ロック,デジタル信号処理,ディスプレイ部,メカニズムを分ける形で,サブシャーシに設置され,強度
を増すとともにシールドの強化が図られていました。さらに アナログブロックを取り巻くシャーシには
銅メッキが施され,磁気歪みの低減が図られていました。

DATは,テープ上に音楽とは別にサブコードを記録するスペースが設けられ,それを利用したデジタ
ルならではの高度な機能が実現されていました。スタートIDという信号を自動・手動で打ち込むことに
より,自在な頭出しが可能になっていました。①スキップ再生(スキップIDを打ち込むことにより不要
な部分を自動的に飛ばして再生)②ダイレクトサーチ(プログラムナンバーによりダイレクトに頭出し
再生)③ブランクサーチ(未録音部分を自動的に探す)など,テープデッキながら便利な機能が搭載さ
れていました。さらに,テープトップからの絶対時間を示すアブソリュートタイムの記録が可能となって
おり,テープを分単位で前後に移動させる⑤タイムサーチも可能となっていました。

表示部は,テープ走行時間を示すカウンター表示/残量時間を示すリメイニング表示/演奏中の曲の
経過時間を示すプログラムタイム/テープ頭からの絶対時間を示すアブソリュートタイムの4モードに
切替えできるリニアカウンター,-60~0dB,各ch24セグメントのワイドレンジ・デジタルピークメー
ター,録音時にあとどのくらい記録レベルに余裕があるかをdB単位でデジタル表示するデジタルピー
クマージン表示が装備されていました。レベルメーターとデジタルピークマージン表示は,デジタル処
理回路のデータを引用しているため,きわめて正確な表示が実現されていました。また,FL管の発す
る微小なノイズにも配慮し,ディスプレイOFF機能も装備されていました。
入/出力は,アナログ入/出力,同軸デジタル入/出力,光デジタル入/出力端子が装備されていまし
た。

以上のように,DTC-500ESは,ソニーのDATデッキ2号機として,各部を合理化しつつ,性能や機
能をしっかりと確保した設計がなされ,標準機として普及を進めようとするソニーの意欲が感じられる
1台となっていました。しかし,まだCDからのデジタル録音はできない仕様となっていました。この点
は1世代のみのデジタルコピーを可能とするSCMS(シリアル・コピー・マネジメント・システム)搭載機
を待たねばなりませんでしたが,逆にDAT同士では何世代もデジタルコピーができるという側面もあり
この点を好む方もいたようです。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



高度なサウンドクオリティと多彩なテープオペレーション。
フォーマットに秘められた,この2つの魅力を最大限に
引き出すことを目的に開発。ソニーDATデッキの中核機です。

◎デジタルフィルタリング
 A/D,D/Aコンバーター方式採用
◎これからのDATデッキメカの標準ともい
 える2D.D.+1BSLモーターメカニズム
◎記録レベルの余裕を数字で示す
 デジタルピークマージン表示
◎より多彩なテープオペレーションを実現
 するために強化されたサブコード機能
◎光/同軸の2方式を備えた
 デジタル入/出力




●主な仕様●


 

型式 デジタルオーディオテープシステム
チャンネル数 2チャンネルステレオ
サンプリング周波数 48kHz(録音/再生)
44.1kHz(再生のみ)
32kHz(DIGITAL INのみ録音/再生)
量子化 16ビット直線
エラー訂正 ダブルエンコーデッドリードソロモンコード
エンファシス プリエンファシス(録音時,アナログ入力に対して)OFFに固定
ディエンファシス(再生時)ON/OFF自動切替え
変調方式 8-10変換
周波数特性 2~22,000Hz±0.5dB
ダイナミックレンジ 90dB以上(録音時,エンファシスOFF)
SN比 92dB以上(録音時,エンファシスOFF)
全高調波歪み率 0.007%以下
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下
インターフェース アナログ LINE IN/OUT(ピンジャック)
DIGITAL IN/OUT(EIAJ準拠同軸および光)
電源 AC100V(50/60Hz)
消費電力 38W
大きさ 470(幅)×115(高さ)×405D(奥行)
(サイドウッド取り外し時の幅:430mm)
重さ 約9.7kg
 
※本ページに掲載したDTC-500ESの写真,仕様表等は1989年4月の
 SONYのカタログ
より抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じら
 れていますのでご注意ください。        
  
 
 
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