SONY DTC-77ES
DIGITAL AUDIO TAPE RECORDER ¥160,000
1991年に,ソニーが発売したDATデッキ。DATの中心開発メーカーであるソニーは,1990年に威信をか
けて作り上げたともいえる高級DATデッキDTC-1500ESを発売し,すぐれた性能に高い評価を受けました。
その技術を生かし,作り上げられた弟機がDTC-77ESでした。
DTC-77ESは,上級機のDTC-1500ES同様に,録/再同時モニターが可能となっていました。そのため,
通常は2個 あるヘッドを2組備え,合計4ヘッド構成のヘッドドラムとなっていました。この方式はプロ用機で
は,ナカミチが1988年にNakamichi1000で実現していましたが,民生用機では数少ない方式でした。モ
ニター用のヘッドを持っているため,カセットデッキの3ヘッド機と同じように,録音中,ソース音とテープ音を
REC MONITORスイッチでワンタッチに切り替えることができ,音で録音の同時チェックが行えました。また
再生中は,REC MONITORスイッチの位置に関係なく,録音/再生ヘッドでピックアップされた信号が再生
される使いやすい設計になっていました。
テープ走行系は,キャプスタン用,供給側リール用,巻取り側リール用,ヘッドドラム回転用それぞれに専用
のダイレクトドライブモーターを配した4D.D.モーターメカニズムになっていました。このため,メカニズム系は
シンプルかつ高精度なものになっていました。また,第1世代のDATデッキと異なり,カセットラベルが見える
正立透視型(実際にはスラント型)のカセットコンパートメントを採用していました。
A/Dコンバーターには,当時最新の1ビットタイプのA/Dコンバーターを搭載していました。A/D変換にともな
い発生する不要スペクトラムを音楽信号のはるかかなたへシフトさせることができ,折り返し雑音を防ぐため
のローパスフィルターもゆるやかな特性のきわめて軽いものを使っていました。
D/Aコンバーターは,当時最新の1bitタイプのD/AコンバーターCXD2552Qが搭載されていました。1つの
電流源を1つの電子スイッチで毎秒5000万回という高速でON/OFFして,音楽信号をパルスの疎密波とし
て表現する方式で,原理的にグリッチ,ゼロクロス歪み,微分非直線歪みの発生がなく,ナチュラルなサウン
ドが特徴のD/Aコンバーターで,同社のCDプレーヤーの高級機CDP-R1a+DAS-R1aやCDP-77ESにも
搭載されていたものでした。
電源部は,オーディオ系用とデジタル及びその他用とを完全に分離するために,大容量のトランスをそれぞ
れ独立 で搭載する2トランス構成とし,安定化電源回路もそれぞれ専用の独立基板上に構成していました。
さらに,+電圧と-電圧の部品と配線パターンを対称配置にした音質重視設計となっていました。
コンストラクションも音質重視の強固なものとなっていました。オーディオ/デジタル基板をシールド板で分離
し,さらに,銅メッキ処理した高剛性シャーシを採用して,磁気歪みの発生を抑えていました。
モーターなどのサーボ系は,大幅にソフトウェア化されて,ソフトウェアのフレキシブルな設定により多彩なコ
ントロールを可能にし,テープに負担をかけずに,サーチの高速化(最大約200倍速)を実現していました。
また,エラー訂正,RAMコントロール,デジタルI/Oなどの信号処理用のLSIをわずか1個に集積したゲート
数約2万にも及ぶ第2世代のLSIを採用していました。また,サーボやメカニズムコントロールなどを制御する
マイコンも1個のLSIに集積し,部品点数の削減と基板構成のシンプル化を実現し,信頼性の向上がなされ
ていました。
DATならではの,サブコードを活用した多彩な機能として,プログラムサーチ,ミュージックスキャンなどの通
常の頭出し機能に加え,テンキーで時・分・秒を入力することで目的箇所をサートする「アブソリュートタイム
サーチ」や専用の時計により録音した時間が自動的にサブコードに記録され,再生中いつでも録音した日時
が表示できる「DATE機能」なども搭載されていました。また,アナログ入力時だけでなくデジタル入力時にも
フェードイン/フェードアウトが可能な「デジタル・フェードイン/アウト」機能も搭載されていました。
以上のように,DTC-77ESは,同社のDATデッキの主力機として,最上級機DTC-1500ESの技術的エッ
センスを継承し,DATデッキとして高い水準の性能と機能性を実現していました。DATデッキのオリジネー
ターでもあったソニーのすぐれた技術を示していたと思います。同社のDATでは初の1bitのD/Aコンバー
ターを搭載した1台でもありました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
4ヘッド構成,4D.D.モーターメカニズムなど
リファレンス機DTC-1500ESの開発で
得た技術を凝縮。
ソニーDATデッキの中核をなすモデルです。
ソニーDATデッキの中核機ともよべるのが,このDTC-77ES。
DATを熟知したソニーならではの先進機能と信頼性を高水準に備えています。
記録したばかりのデータをモニター専用ヘッドが追いかけ,ピックアップする。
4ヘッド構成による録音同時モニター機能。
そして,ドラム,キャプスタン,供給/巻取りリールそれぞれに専用のモーターを配置し,
安定したテープ走行を実現する4D.D.モーターメカニズムをはじめ,
オーディオ/デジタル独立電源,そしてさまざまに網羅された機能のほとんどが
リファレンスモデルDTC-1500ESとほぼ同一。
さらに,パルスD/Aコンバーターなど,新開発のデバイスも積極的に採用。
デジタル録音=ソニーDATデッキの魅力を存分に味わっていただける1台です。
●主な仕様●
型式 | デジタルオーディオテープシステム |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
サンプリング周波数 | 48kHz/16ビット直線(録音/再生)
44.1kHz/16ビット直線(DIGITAL INのみ録音/再生) 32kHz/16ビット直線(DIGITAL INのみ録音/再生) 32kHz/12ビット非直線(録音/再生) |
エラー訂正 | ダブルエンコーデッドリードソロモンコード |
エンファシス | プリエンファシス(録音時,アナログ入力に対して)OFFに固定
ディエンファシス(再生時)ON/OFF自動切替え |
変調方式 | 8-10変換 |
周波数特性 | 2~22,000Hz±0.5dB |
ダイナミックレンジ | 93dB以上(録音時,エンファシスOFF) |
SN比 | 93dB以上(録音時,エンファシスOFF) |
全高調波歪み率 | 0.0045%以下(1kHz) |
ワウ・フラッター | 測定限界(±0.001%W・Peak)以下 |
インターフェース | アナログ LINE IN/OUT(ピンジャック)
DIGITAL IN/OUT(EIAJ準拠同軸および光) |
電源 | AC100V(50/60Hz) |
消費電力 | 33W |
大きさ | 470(幅)×135(高さ)×350D(奥行) (サイドウッド取り外し時の幅:430mm) |
重さ | 約11kg |
※本ページに掲載したDTC-77ESの写真,仕様表等は1991年6月のSONYの
カタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
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