Accuphase E-303X
STEREO AMPLIFIER ¥298,000
1983年に,アキュフェーズが発売したプリメインアンプ。アキュフェーズは1978年にプリメインアンプの第2弾
としてE-303を発売し,高い完成度と高品位な音質で評価され,ロングセラーモデルとなっていました。そうした
中,1982年にCDがスタートし,本格的なデジタルオーディオ時代の幕開けを迎えました。こうしたデジタルオー
ディオの時代に対応した第2世代のE-303がE-303Xでした。

E-303Xは,E-303を引き継いで,電力増幅素子として理想的と言われるMOS FETを出力ステージに採用し
ていました。E-303ではMOS FET4個によるパラレルプッシュプル構成であったのに対し,E-303XではMOS
FET6個によるトリプルプッシュプル構成に強化され,Pc(ドレイン損失)600Wを確保していました。
パワーアンプの回路構成は,プリステージは差動プッシュプル→ハイゲインで高域特性にすぐれたカスコードプッ
シュプル→プリドライブの駆動によるMOS FET出力ステージという構成となっていました。
このような大電力出力段と,余裕のある電源部にも支えられ,150W/ch(8Ω負荷,20Hz~20,000Hz,ひず
み0.01%)という大出力を実現し,2Ω負荷に対しても250W/chを実現し,2Ω負荷にも耐えうる低インピーダ
ンス駆動能力を確保していました。



イコライザーアンプは,E-303以来のアナログディスクへの対応をしっかり行う設計が継承されFETバッファー差
動入力→カスコード接続プッシュプルのプリドライブ段→ダーリントン接続のプッシュプルという構成で,全段プッ
シュプルで構成され,裸特性を高めていました。電源は,同一基板内に定電圧電源部を設け,強化されていまし
た。MCカートリッジ用ヘッドアンプは,専用フラットアンプをイコライザーアンプの前に置く本格的な構成で,差動
入力+ダーリントン出力による全段プッシュプルのヘッドアンプでした。MCカートリッジの微細な信号はコンデン
サーを通さず直接入力され,低雑音素子が厳選して使用され,同時にNFBループの低インピーダンス化を図っ
て雑音の発生を抑えていました。定電圧電源の素子も厳選されており,徹底した低雑音設計となっていました。
こうした設計により,入力換算雑音は実測値-153dBVというほぼ理論限界値に近いものとなっていました。
ゲインは30dBで,小出力のMCカートリッジにも対応できるものとなっていました。さらに,多様なMCカートリッ
ジに対応するために,入力インピーダンスを10Ω,30Ω,100Ωの3段階に切り換えられるようになっていま
した。



MCヘッドアンプ,イコライザーアンプ,ハイレベルアンプ,パワーアンプのすべてが,信号経路にカップリングコ
ンデンサーの入らない直結方式となっており,DCドリフトの問題に対しては,各ユニットアンプを強力なDCサー
ボによって安定化し,解消していました。
入力やテープモニター等の切り替えのために信号経路を引き回すことでの音質劣化を防ぐため,入力端子から
の信号をプリント基板に直結し,至近位置にリレーを配置し,このリレーをロジック回路によりコントロールするこ
とで信号経路を最短距離で結合するようになっていました。リレーは,小信号オーディオ用として特に開発された
銀パラジウム合金に金の層を形成させた,クロスバー・ツイン方式の高信頼性の密閉型リレーが用いられ,高い
耐久性・信頼性が確保されていました。

アキュフェーズらしく,プリメインアンプとして音質を犠牲にすることなく,機能的には比較的多機能にまとめられ
ていました。トーンコントロールはBASS,TREBLE独立で,正確なカーブが得られる1.5dBステップのスイッチ
式でした。ターンオーバーは,低音200Hz,500Hz,高音は2kHz,7kHzの切替式となっており,OFFも可能
となっていました。小音量時に対応したラウドネスコンペンセーターは,3種類のカーブが得られるようになってい
ました。
その他,サブソニックフィルター,-20dBのアッテネーター,2組のスピーカーを切り替えるスピーカースイッチ,
モノラル再生に切り替えられるモードスイッチが装備されていました。
入力は,PHONO2系統,TUNER,LINE2系統が装備されていました。TAPE入出力は2系統装備され,相互
ダビングも可能となっていました。スピーカー出力は2系統装備され,A,B,A+Bの切換が可能となっていまし
た。

日本的で繊細な優美なデザインは継承され,優れた機能とデザインがうまく一致したものでした。ブルーの透過
照明方式のパワーメーターも継承され,細部まで神経の行き届いた仕上げの良さ,上品さもアキュフェーズらし
さを感じさせるものでした。音質も上品さに力も加わり,デジタル時代に対応したといいながらもアナログ系が充
実しているなど,広く対応できる完成度の高いアンプだったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



全段プッシュプル,DCサーボで
全信号系を直結,
MC入力から出力まで
純粋にストレートな構成。
MOS FET トリプル・プッシュプル
50W/ch(8Ω負荷)の強力出力段は,
2Ω負荷(250W/ch)も完全駆動。

◎150W/chのクオリティーを実現した
 MOS FETトリプル・プッシュプルの出力段
◎2Ωの低インピーダンス・スピーカーをも駆動
 する強力出力段と充実した電源部
◎全ユニットアンプがDCサーボ直結方式。
 MC入力から出力まで純粋にストレートな構成
◎入力差動+カスコード+ダーリントン出力による
 全段プッシュプルのEQアンプ
◎MCカートリッジの個性をあますところなく実現する
 入力差動+ダーリントン出力による
 全段プッシュプル・ヘッドアンプ
◎ロジック・リレーコントロールにより,
 ストレートで最短の信号経路
◎ターンオーバー切替付1.5dBステップの
 トーンコントロール
◎小音量時のエネルギー・バランスを補正する
 3段切替ラウドネス・コンペンセーター
◎出力直読ピーク表示パワーメーター
◎テープモニターとダビング・スイッチ




●E-303X保証特性●
 

連続平均出力(EIA) 200W/ch  4Ω負荷 
150W/ch  8Ω負荷 
 75W/ch 16Ω負荷 
(両チャンネル同時動作,20~20,000Hz間,ひずみ0.01%以下)
全高調波ひずみ率(EIA) 0.01%  4Ω以上の負荷にて 
(両チャンネル同時動作,0.25W~定格出力間,20~20,000Hz間)
IMひずみ率(EIA) 0.005%
周波数特性(EIA) 
  MAIN AMP INPUT 

  HIGH LEVEL INPUT 
  LOW  LEVEL INPUT


20~20,000Hz +0,-0.2dB(定格出力時) 
1.5~300,000Hz +0,-3.0dB(1W出力時) 
20~20,000Hz +0,-0.2dB(定格出力時) 
20~20,000Hz +0.2,-0.2dB(定格出力時)
ダンピングファクター(新IHF) 150(8Ω負荷,50Hz)
定格入力・入力インピーダンス 
  DISC:MM時(HEAD AMP OFF)
  DISC:MC時(HEAD AMP ON) 
  TUNER・LINE・TAPE PLAY 
  MAIN AMP INPUT

2.7mV(定格出力時),0.22mV(EIA:1W出力時) ・47kΩ 
0.085mV(定格出力時),0.007mV(EIA:1W出力時)・10Ω,30Ω,100Ω 
170mV(定格出力時),13.9mV(EIA:1W出力時)・20kΩ 
1.4V(定格出力時),0.12V(EIA:1W出力時)・20kΩ
ディスク最大入力 
  HEAD AMP OFF 
  HEAD AMP ON

300mVrms 1kHz,ひずみ0.005% 
9.5mVrms 1kHz,ひずみ0.005% 
定格出力・出力インピーダンス 
  PRE OUTPUT 
  TAPE REC OUTPUT 
  HEADPHONES 

1.4V    200Ω 
170mV  200Ω(DISCの場合) 
0.4V  適合インピーダンス4~100Ω
ゲイン MAIN INPUT→OUTPUT:27.8dB 
HIGH LEVEL INPUT→PRE OUTPUT:18.4dB 
DISC INPUT(HEAD AMP OFF)→TAPE REC OUTPUT:36dB 
DISC INPUT(HEAD AMP ON)→TAPE REC OUTPUT:66dB
S/N・入力換算雑音 
  MAIN AMP INPUT 
  HIGH LEVEL INPUT 
  DISC(HEAD AMP OFF) 
  DISC(HEAD AMP ON)

123dB -120dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 102dB(EIA) 
105dB -120dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  82dB(EIA) 
 86dB -137dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  80dB(EIA) 
 72dB -153dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  80dB(EIA)
トーン・コントロール 10ステップ・コントロール 
ターンオーバー・ポイント 低音:200,500Hz 
                高音:2kHz,7kHz 
低音 500Hz:±7.5dB(100Hz) 1.5dBステップ 
    200Hz:±7.5dB( 50Hz) 1.5dBステップ 
高音  2kHz:±7.5dB(10kHz) 1.5dBステップ 
     7kHz:±7.5dB(50kHz) 1.5dBステップ
ラウドネス・コンペンセーター COMP 1:+3dB(100Hz) 
COMP 2:+6dB(100Hz) 
COMP 3:+8dB(50Hz),+6dB(20kHz) 
(VOLUME コントロール-30dBにて)
サブソニック・フィルター 17Hz,-12dB/oct
アッテネーター -20dB
パワー・メーター 対数圧縮型ピーク・レベル指示 
dB及び8Ω負荷時の出力直読
負荷インピーダンス 2~16Ω
使用半導体 108Tr,17IC,23FET,103Di
電源及び消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 
無入力時 90W,8Ω負荷定格出力時 550W
寸法・重量 幅445mm×高さ160mm(脚含む)×奥行370mm  20.5kg
  ※本ページに掲載したE-303Xの写真,仕様表等は1983年のAccuphaseのカタログ
  より抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがって,これらの
  写真
等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
    
 
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