E-405の写真
Accuphase  E-405
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥350, 000

1989年に,アキュフェーズが発売したプリメインアンプ。アキュフェーズは,セパレートアンプC-200,
P-300でスタートし,セパレートアンプで数多くの名機を輩出してきたブランドでしたが,プリメインアンプ
でも,目立つ方ではありませんでしたが,E-202(1974年),E-303(1978年),E-301(1981年)
とすぐれたモデルを出してきました。そんな中,それまでの同社のプリメインアンプの規模をさらに超えた
大出力のプリメインアンプとして発売されたのがE-405でした。

E-405は,プリメインアンプという形をとっていましたが,プリアンプとメインアンプの独立性が高く,実質
的に独立したプリアンプとパワーアンプを合体したような構成がとられ,セパレートアンプに迫る性能を実
現しようとしていたことが大きな特徴でした。それまでの,同社のプリメインアンプもPRE OUTとMAIN 
INが備えられ,プリ部とパワー部がセパレートして使えるようになっていました。E-405では,さらにそれ
を推し進め,基本回路を本格的なプリアンプとパワーアンプとして構成し,電源部の電源トランスや整流
回路も専用に備えられ,相互の干渉を絶つとともに,各々により高度な性能が追求されていました。

プリアンプ部は,イコライザーアンプとハイレベルフラットアンプから構成されていました。イコライザーアン
プは,MMカートリッジとMCカートリッジの双方に対応し,その切換はオーディオ用として開発された密封
型リレーによって行われるようになっていました。MM入力時には,全周波数帯域にわたって高入力イン
ピーダンスを保てるFETとトランジスターによってカスコードブートストラップ差動入力回路が構成され,MC
入力時には,固有雑音の小さい素子を厳選した素子とトランジスターによってカスコードブートストラップ差
動回路が構成されるようになっており,リレーを用いた入力回路の素子の切換えにより,MM/MCそれぞ
れにあった特性と増幅度が選択されるようになっていました。

ハイレベルフラットアンプは,ローノイズ・デュアルFETとトランジスタによって構成されたカスコード・ブート
ストラップ差動入力回路で,高S/Nと同時に,入力機器のインピーダンスや音量調整ボリュームの変化に
起因するミラー効果歪みをも防ぐことが可能となっていました。さらに,ハイレベルフラットアンプには,通
常の入力端子の他にXLRタイプのバランス入力が備えられ,バランス伝送が可能となっていました。
入力切替えやテープモニター等のファンクションの切替えは,信号経路のその場所に設置されたリレーを
電子的にコントロールするロジックリレーコントロール方式がとられ,切替え等のための不要な信号系路
の引き回しを避けていました。このリレーには,オーディオ専用の高品質の密封型リレーが採用され,そ
の接点は低抵抗,高耐久性のクロスバーツイン方式が採用されていました。
プリアンプ部の電源部は,パワーアンプから完全に独立した電源部が構成され,専用のトロイダルトラン
スが使用され,高速ダイオードで整流した後,さらにデュアル・レギュレーターで安定化が図られる構成と
なっていました。

パワーブロックとプリアンプ回路基板

出力段は,Pc(コレクター損失)=130Wの出力素子10個で構成された5パラレルプッシュプルの出力
段で,トータルPc=1,300Wという大電力容量を確保し,170W/ch(8Ω),250W/ch(4Ω)という
大出力を実現し,2Ω負荷に対しても350W/ch(実測)というパワー供給を実現していました。このパワー
は,単体パワーアンプP-300Lに 匹敵するものでした。
出力素子をドライブするドライブ段は,カスコード・プッシュプル+MOS FETカスコード・プッシュプルとい
う2段カスコード直結回路で,小出力時の低歪みとリニアリティに優れた駆動能力を実現していました。

E-405は,プリアンプからスピーカー出力まで全増幅段を直結方式で構成していました。不要な直流成分
をカットし,温度変化によるアンプ自体のDCドリフトを安定化させるDCサーボ方式が採用され,この回路
はIC化されて搭載されていました。また,プリアンプとパワーアンプは当然,スイッチの切替えで,独立して
使用可能で,プリアンプからの出力は通常のRCAジャックだけでしたが,メインアンプへの入力は,RCA
ジャックだけでなく,本格的なXLRバランス入力も備えられていました。

アキュフェーズは,マッキントッシュ社をひとつのお手本にしたといわれ,アンプの中で音質をできるだけ犠
牲にすることなく多機能を実現してきたブランドで,このE-405でも豊富な機能を搭載していました。入力は
テープ2系統,アナログディスク1系統,CD2系統,チューナー1系統,ライン4系統の合計10系統が装備
され,そのうち,CD1系統とLINE1系統のXLRバランス入力となっており,多彩な使い方に対応できるよう
になっていました。トーンコントロールは加算型フィルターを応用したタイプを開発して搭載し,特性・音質劣
化を抑えて音質調整を実現し,かつON-OFFスイッチも備え,トーンコントロール回路をパスすることも可
能となっていました。さらに聴いているソースとは別に同時に録音が可能な入力セレクターと独立した録音
出力セレクターやテープコピースイッチも装備されていました。その他,サブソニック・フィルター,小音量時
の低音感を増強するコンペンセータースイッチなども装備されていました。
また,これらの多くの機能は,下部のシーリングポケット内に収められ,閉じた状態では,大型のパワーメー
ターとボリューム,入力セレクター,電源スイッチのみという,一見パワーアンプを思わせるようなシンプルな
外観となり,通常使用時の使いやすさも実現していました。
さらに,E-405には,同社のプリメインアンプとして初めてリモコンが装備され,入力切替とボリュームコント
ロールがリモコンで可能となっていました。このため,ボリュームはモーターによる駆動機構が装備されてい
ました。

E-405の内部レイアウト

以上のように,E-405は,音楽を聴く道具として使い易いプリメインアンプという形の中に,セパレートアンプ
のグレードを実現しようとした意欲作でした。同社の代表的セパレートアンプC-200L,P-300Lに匹敵する
ような性能と,リモコン操作も可能とした使いやすさの両立,きめ細かさと厚みのある豊かな音の両立は,確
かにプリメインアンプの枠を超えていたと思います。そして,アキュフェーズは,E-405をスタートとして,その
後,E-406,E-406V,E-407,E-408と,大出力の高級プリメインアンプを継続して開発,販売していくこ
ととなりました。その意味でも,アキュフェーズのプリメインアンプの中で重要な契機となったモデルではなかっ
たかと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




独立電源トランスと専用電源回路により
プリとパワーを完全分離,
セパレートアンプのグレードを実現。
低負荷インピーダンス設計により,
2Ωで350W/ch(実測)の充実パワー。
DCサーボ直結方式により,
アナログ・ディスク入力から出力まで
純粋にストレートな構成。
リモートコマンダー標準装備。



   ■パワーアンプ部■

◎Pc =1,300W/ch 5-パラレル・プッシュ
 プルの強力出力段により低負荷駆動を実現。
 8Ω=170W/ch,4Ω=250W/ch,
 2Ω=350W/ch(実測)の充実パワー
◎出力段を理想駆動する「カスコード・プッシ
 ュプル+MOSFETカスコード・プッシュプル」
 ドライブ段
◎DCサーボ方式直結アンプ
◎パワーアンプ単独としても使用できる入力端子
◎大型パワーメーターとスピーカー・セレクター




   ■プリアンプ部■

◎バランス入力回路を備えたハイレベル・フラット
 アンプ
◎アナログ・ディスクのディテールを余すところなく
 再現するMM/MCイコライザー・アンプ
◎プリアンプ専用電源部>
◎ロジック・リレーコントロールによりストレートで
 最短の信号経路
◎入力ソースおよび音量を遠隔操作するリモート
 コマンダー
◎多プログラム・ソース時代に対応した豊富な
 入・出力端子
◎音質重視・加算型トーン・コントロール>
◎独立録音セレクターとコピー・スイッチ




●E-405 保証特性●

連続平均出力 250W/ch  4Ω負荷 
170W/ch  8Ω負荷 
(両チャンネル同時動作,20〜20,000Hz間,ひずみ0.02%以下)
全高調波ひずみ率 0.02%  4〜16Ω負荷
(両チャンネル同時動作,0.25W〜連続平均出力間,20〜20,000Hz間)
IMひずみ率 0.01%
周波数特性
  MAIN INPUT 

  HIGH LEVEL INPUT 
  LOW  LEVEL INPUT


20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 
0.5〜150,000Hz +0,−3.0dB(1W出力時) 
20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 
20〜20,000Hz +0.2,−0.5dB(定格出力時)
ダンピングファクター 150(8Ω負荷,50Hz)
定格入力・入力インピーダンス 
  AD INPUT(MC)
   AD INPUT(MM) 
  HIGH LEVEL INPUT
  BALANCED INPUT
  MAIN INPUT(UNBAL)
  MAIN INPUT(BAL)

0.14mV(定格出力時),0.011mV(EIA 1W出力時)・100Ω 
4.38mV(定格出力時),0.335mV(EIA 1W出力時)・47kΩ 
143mV(定格出力時),10.8mV(EIA 1W出力時)・20kΩ 
143mV(定格出力時),10.8mV(EIA 1W出力時)・40kΩ
1.47V(定格出力時),110mV(EIA 1W出力時)・20kΩ
1.47V(定格出力時),110mV(EIA 1W出力時)・40kΩ
ディスク最大入力 
  MM入力 
  MC入力

300mVrms 1kHz,ひずみ0.005%(REC OUT) 
9.5mVrms 1kHz,ひずみ0.005%(REC OUT) 
定格出力・出力インピーダンス 
  PRE OUTPUT 
  TAPE REC OUTPUT 
  HEADPHONES 

1.47V    200Ω 
143mV  200Ω(ADより) 
0.36V  適合インピーダンス4〜100Ω
ゲイン MAIN INPUT→OUTPUT:28dB 
HIGH LEVEL INPUT→PRE OUTPUT:20dB 
AD INPUT(MM)→TAPE REC OUTPUT:30dB 
AD INPUT(MC)→TAPE REC OUTPUT:60dB
S/N・入力換算雑音
 
  MAIN INPUT 
  HIGH LEVEL INPUT
  BALANCED INPUT
  AD INPUT(MM) 
  AD INPUT(MC)
     (入力ショート,A補正)
定格入力時S/N  入力換算雑音     EIA S/N
 124dB        −121dBV     102dB 
 110dB        −127dBV      83dB 
  98dB        −115dBV      83dB
  89dB        −137dBV      80dB 
  74dB        −150dBV      78dB
トーン・コントロール ターンオーバー周波数及び可変範囲 
低音 300Hz ±10dB(50Hz)
高音  3kHz ±10dB(20kHz)
ラウドネス・コンペンセーター +6dB(100Hz) 
(VOLUME コントロール−30dBにて)
サブソニック・フィルター 17Hz,−12dB/oct
アッテネーター −20dB
パワー・メーター 対数圧縮型ピーク・レベル指示 
dB及び8Ω負荷時の出力直読
負荷インピーダンス 4〜16Ω
使用半導体 85Tr,30IC,22FET,65Di
電源及び消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 
無入力時 90W,8Ω負荷定格出力時 620W
寸法・重量 幅475mm×高さ180mm(脚含む)×奥行375mm  25kg


※本ページに掲載したE-405の写真,仕様表等は,1990年
 のAccuphaseのカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無
 断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
 意ください。

 

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