ONKYO SCEPTERE-804A
4WAY SPEAKER SYSTEM ¥128,000(1973年発売時)
                      ¥139,000(1974年頃)
1973年に,オンキョーが発売したスピーカーシステム。オンキョーは,戦後すぐの1945年,大阪電気音響
として創業し,1948年より,スピーカーの生産を開始し,1951年には,ノンプレスコーンの特許を取得し,
ラジオ用等で音の良さで評価を得るなど,スピーカーメーカーとしてオーディオ分野に力を発揮していきまし
た。1968年には,ホーンユニットを搭載した名器E-83Aを発売し,高い評価を得るなど,ホーンユニットに
独自のこだわりを持ち,すぐれたホーンユニットを開発・搭載したスピーカーシステムも展開していきました。
さらに,本格的オーディオ用スピーカーユニットのシリーズとして「SCEPTER(王位の意)シリーズ」を展開し
ていきました。こうしたホーンユニットへのこだわりを進め,独自の拡散ホーンを採用し,新しいセプターユ
ニットを搭載した「SCEPTER Eシリーズ」を展開し,その中の最上級機がE-804Aでした。

E-804Aは,「SCEPTER Eシリーズ」の中で,最も大きく,唯一のフロア形システムで,ウーファー以外の
中・高音部にはすべてホーン型ユニットという4ウェイ構成を採用していました。


WM-300A
30cm WOOFER ¥29,500

ウーファーユニットは,W-300Aを搭載していました。30cm口径のコーン型で,従来のものの50%ほど
軽量な新しいパルプを使った軽量コーンと発泡ネオプレーンゴム・エッジの採用により,振動系の軽量化
が図られ,エポキシグラスファイバー積層板蝶ダンパーの採用もあり,ハイコンプライアンスウーファーと
して,軽量な振動板にもかかわらず16Hzという低いfoを実現していました。駆動系は,直径156mm,磁
束密度11,500gaussの強力なフェライトマグネットを搭載し,ボイスコイルは,ボビンに剛性が高く,熱
伝導率が高く,放熱性の良いアルミ箔を使用し,空隙が少なく空間占有率が高くとれるアルミリボン線を
3層巻きにして,捲幅を28mmと長くとったロングボイスコイルを採用し,高い許容入力を実現し,磁束分
布を上下対称にするT字型センターポールとともに,小振幅から大振幅まで,過渡特性を高め,リニアリ
ティの向上が図られていました。


HM-450A
HORN SQUAWKER ¥24,800

スコーカーユニットは,新開発の拡散ホーンを採用していました。ホーンの周辺部なるほどホーンの音道が
長くなるように設計し,ホーンの中心部から出る音に比べて周辺部からの音が遅れて出てくるようにするこ
とで,ホーン自体の内部で,音波を球面波に変える新しい設計の拡散ホーンによって,ホーン型の弱点で
ある指向特性を大幅に改善していました。振動板には,硬質ジュラルミン箔の大口径振動板を使用し,駆
動系は直径120mm,磁束密度13,500gaussのフェライトマグネットを使用し,バックキャビティで積極
的な空気制動を行うことによって,過渡特性,歪特性などの特性の改善を図り,低域の再生範囲を拡大し
ていました。カットオフ周波数は450Hzときわめて低いにもかかわらず,拡散ホーンによってホーン長は
短くなっていました。高域は,スリットが二重になっており,振動板の各部分とスロート部との距離差を小さ
くし,振動板の各部分から出た音がスロート部で逆位相となり打ち消し合う波長が短くなり,高域の特性が
改善される効果を持つ二重イコライザの採用によって,13,000Hzというトゥイーターの領域まで再生で
きる広帯域を実現し,トゥイーターとの音色のつながりをスムーズにしていました。


TW-1500A
HORN TWEETOR ¥21,800

トゥイーターユニットは,上下左右の各方向に広い指向特性をもつ拡散ホーンを採用していました。アルミ
切削加工の精密なホーンは,ホーン自体が拡散機構となっており,音響レンズ等の付属物を必要としない
形状で,カットオフ周波数を使用帯域より十分低くとることで,カットオフ付近での音質の劣化が中音域に
悪影響を及ぼすことを抑えていました。振動板には,従来の素材に比べてすぐれた応力,歪特性をもつ超
硬質ジュラルミン箔振動板を採用し,直径100mm,磁束密度14,600gaussのフェライトマグネットで駆
動され,すぐれた音質を実現していました。


TW-3300A
SUPERTWEETOR ¥18,900

スーパートゥイーターユニットは,トゥイーターユニットのTW-1500Aと同じく指向特性を改善した拡散ホー
ンを採用し,指向特性は20kHz,30°で-0.5dBを確保していました。ホーンは,アルミ棒くり抜きの精
密な仕上げで,振動板には,高域限界周波数まで歪が少なく,安定したレスポンスを示す超硬質ジュラル
ミン箔振動板を採用し,直径30mm,磁束密度14,500gaussのアルニコマグネット採用の駆動系を搭
載し,再生範囲は40kHzを実現していました。

エンクロージャーは,80Lの密閉形フロアタイプの大型のもので,天板には天然大理石を用いた,重量級
のもので,「SCEPTER Eシリーズ」の最上級機としての風格のあるものでした。中音用,高音用それぞ
れにレベルコントロールがリアに装備されていました。スピーカー端子もマルチアンプに対応したものとなっ
ていました。

以上のように,E-804Aは,オンキョーが自社開発の「SCEPTERシリーズ」のスピーカーユニットを組み
合わせて作り上げた,オンキョーの意欲あふれる1台でした。使いこなしや設計の難しさもあり,量産メー
カーではどちらかというと少数派にあたるホーンユニットをベースにしたE-804Aは,音の面で使い方や
アンプ,ソースによっては,時にキツさも感じられるときがあるなど使いこなしの難しい面もありましたが
可能性をもったスピーカーシステムだったと思います。そのユニットやエンクロージャーから考えると,現
在作ると相当な価格になると想像してしまいます。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



セプターグループのW-300A,HM-450A,TW-1500A,TW
-3300Aを4ウェイにまとめ上げた,最高級フロアタイプ・システム
です。天然大理石を用いた80Lの大型キャビネットから放射され
る音響エネルギーは,拡散ホーンによる指向特性の良さと相まっ
て最高度の音楽性を創造します。大編成のオーケストラから,演
奏家の個性的な音色が浮き彫りにされるソロ演奏まで,豊かで
迫力に満ち,しかも繊細なニュアンスも余すところなく表現します
ので,オーディオ再生の醍醐味をたっぷりと味わって頂けます。




SCEPTERE-804A 定格●

形式  4ウェイ密閉型フロアタイプ 
インピーダンス  8Ω 
定格入力  30W 
最大入力 60W 
再生周波数範囲  25~40,000Hz 
クロスオーバー周波数  550,7,000,14,000Hz 
出力音圧レベル  94dB/W/m 
キャビネット内容積 80L 
外形寸法  447W×765H×387Dmm 
重量  44kg 
使用スピーカー  30cmウーファー(W-300A)
ホーンスコーカー(HM-450A)
ホーン・トゥイーター(TW-1500A)
スーパー・トゥイーター(TW-3300A) 
※ 本ページに掲載したSCEPTER E-804Aの写真・仕様表
 等は,1975年6月のONKYOのカタログ より抜粋したもので
 オンキョー株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますので,ご注意ください。

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