FB-5の写真
Victor FB-5
2WAY FLOORTYPE SPEAKER SYSTEM ¥57,000

1975年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。この頃,各社からバック・ローディングホーン型のスピー
カーシステムが登場し,一時期ブームともいえる状態となりました。そうした中,ビクターが発売したのがこの
FB-5と上級機FB-7でした。

バック・ローディングホーン型は,1970年代以前も,また1980年代以降にも,メーカー製のものは非常に少な
く,珍しい型式になりますが,故長岡鉄男氏が,自作スピーカーとして熱心に取り組んでいたことなどもあり,自
作派には根強い人気のある型式です。ホーン型システムは,スピーカーに断面積が変化していく音響パイプを
取り付けることで,音の伝達効率を上げて音の変換能率を高める,ホーンの音響的な抵抗を利用して振動板
のムダな動きを抑え込む,などの効果があり,高能率で鳴りっぷりのよりスピーカーシステムが実現しやすい
といわれています。

FB-5のエンクロージャーは,スピーカーユニットの後面にホーンを配置したバック・ローディングCWホーンシス
テムでした。低域のカットオフ周波数が25Hzのエクスポーネンシャル・ホーン(指数関数ホーン,断面変化率の
総計が最小で,理想的なパワー伝送能力をもつとされるホーン形状の一つ)を1.8m付近で切ってマウス(ホー
ンの開口部)付近を急激に広げるという形状をとり,ホーン自身は45Hz〜150Hz付近を再生するようになって
いました。この開口部の開き方はコンピュータで徹底解析されて決定されたというものでした。CWとはConstant
Widthの略で,横幅が一定であるという意味ですが,この方式をとることで,底面のスペースを小さくでき,工作精
度を上げることで堅牢に作れるという利点を持っていました。実際,FB-5のエンクロージャーは,ホーンの曲面部
以外は新開発の針葉樹材(主材はカラ松)の高密度チップボードを用い,従来のチップボードより約40%も高い
比重により箱鳴りを抑えるとともに,針葉樹系の素直な振動減衰特性を生かしていました。また,この新しいチップ
ボードは従来のチップボードが加工性において0.5mmの精度が限界であったのに対して0.01mmの超精密加
工が可能で,これにより精密なエンクロージャーの加工と組み立てが実現されていました。ホーンの開口部の曲面
板は,1.5mm厚の単板を接着・熱成型で精密に加工された合板が使用されていました。

FB-5の内部

FB-5では,ユニットはウーファーとトゥイーターの2ウェイとなっており,低音域をホーン部が,中音域をウーフ
ァーの直接放射が,高音域をトゥイーターの直接放射が担当する形になっていました。
ウーファーは,20cmコーン型ユニットで,アメリカ・ホーレー社製のコーンを使っていました。バック・ローディン
グホーン方式に合わせて,同社の同口径のコーンの中でもいちばん硬くて軽いものが採用されていました。駆
動系は,直径120mmの強力マグネットを用いてしっかりと制動力をかけていました。また,フレームも頑丈な
アルミダイキャストが採用されていました。
トゥイーターは,6cm口径のコーン型で,こちらにもホーレー社製のコーンが使用されていました。センターキャ
ップに特殊蒸着処理されたジュラルミンを用いて高能率とトランジェントのよい明るい高音再生を可能とする振
動板としていました。

以上のように,FB-5は,中級クラスのスピーカーシステムながら,バック・ローディングホーンという,コストと手
のかかったかなり大型のエンクロージャーを採用し,実際に96dBという高能率と,鳴りっぷりの良い明るい音が
実現されていました。外観もきれいに仕上げられ,非常に破綻の少ないバランスの良い音であったことは,ビク
ターというメーカー製の良さであったと思います。今から見ると,そのエンクロージャーだけでも価格を超えるもの
があるように感じます。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



第3の指標,
トランジェント+高能率


精密ホーンの明快な動作がとらえた
あざやかな立ち上がり,高い変換効率。
バック・ローディングCWホーン・システム



●FB-5型規格●

型式 2ウェイ・バック・ローディングCWホーン・システム
スピーカー 20cm米国ホーレー製コーン
6cmホーレー製コーン 
インピーダンス 8Ω
周波数帯域 35〜20,000Hz
出力音圧レベル 96dB/W(1m)
最大入力 50W
クロスオーバー周波数 2,500Hz
レベルコントロール 定抵抗連続可変型
寸法 450W×857H×433Dmm
重量 36.0kg


※本ページに掲載したFB-5の写真,仕様表等は1975年9月の
 Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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