GX-747の写真
AKAI GX-747dbx
4TRACK STEREO TAPE DECK ¥230,000

1982年にアカイが発売したオープンリールデッキ。EEポジションというカセットテープでいうハイポジション
のテープが使える規格のモデルで,優れた性能を誇りました。そのEEポジション対応のオープンリールデ
ッキ第1号のGX-747にdbxTYPETを搭載したのが本機GX-747dbxで,同社のEEオープンの最上級
機にあたるモデルでした。

GX-747dbxは,4トラック往復録音再生(オートリバース)で,テープスピードは19cm/s,9.5cm/sのオ
ープンリールデッキでした。最も大きな10号リール使用時,19cm/sで,往復3時間,9.5cm/sで往復6
時間の録音再生が可能で,しかもEEテープの使用により性能もアップし,19cm/sで従来の38cm/sの性
能に匹敵し,25〜33,000Hzの周波数特性を可能にし,さらに,半分のスピードの9.5cm/sでも25〜
25,000Hzの周波数特性が可能でした。このように圧倒的な性能を誇りましたが,テープの単価も高く,
記録時間あたりのコストも高かったため,編集用,FMエアチェック用の録音マスター機として売り出したメー
カーの思惑とは別に,マニア以外にはあまり受けませんでした。しかし,本質的な性能の高さは抜群で,
小細工の必要のない自然な録再音はすばらしいものでした。
さらに,GX-747dbxでは,NRシステムとしてdbxTYPETを搭載し,128dB(1kHz)ものダイナミックレ
ンジが実現していました。

録音ヘッド,再生ヘッドには,アカイ自慢の「ニューGXヘッド」をフォワード側,リバース側にそれぞれ搭載し
消去ヘッドにはダブルギャップのフェライトヘッドをフォワード側,リバース側それぞれに1個搭載した6ヘッド
構成としていました。
「ニューGX(Glass & X’tal Ferrite)ヘッド」は,フェライト素材を独自の加工技術によりローノイズ・クリスタ
ル化(単結晶化)し,これをヘッドコアとシールドコアに用い全体を高硬度ガラスで固めたもので,(1)従来の
フェライトが抱えていたノイズや粒子脱落などの難点を解決(2)高域でのエディカレントロス(過電流損失)
や製造工程における特性劣化が極めて小さく,高い透磁率と飽和磁束密度を実現(3)高硬度ガラスを融着
材に用いるためヘッドギャップの工作精度が非常に高くできる(4)耐摩耗性に優れ,ゴミが付着しにくい・・
などの利点を持ち,優れた音質と高い耐久性を実現していました。「ニューGXヘッド」では,さらにヘッド先
端の形状を複合R形として,コンターエフェクト(低域特性のうねり,あばれ)を改善し,トラック間のシールド
の強化によりクロストークの低減を実現していました。

GX-747のヘッド

走行メカニズムには,左右対称の6つのヘッドの中心にキャプスタンを配置してテープをドライブするセンター
キャプスタン・ドライブシステムによる,GX-635D以来の「シンメトリカル・テープ走行メカニズム」を採用して
いました。ヘッドブロックの左右には大型のガイドローラーが配され,テープ走行が理想的な水平状態に近
づき,良好なヘッドタッチが得られるようになっていました。このガイドローラーには超精密加工のシャフトが
用いられ,テープをスリップロスなく走行させるとともに,テープ振動を効果的に吸収する役目も果たしまし
た。また,テープテンションを安定させるテンションアームにはオイルダンパー方式が採用され,プレイスタ
ート時等のテープ振動を確実に吸収するとともに優れた立ち上がり特性を実現していました。
キャプスタン駆動用には,トルクムラの少ないACサーボモーターを搭載し,サーボ特性の良好なサンプル
&ホールド回路を搭載したCPG内蔵のACサーボ方式を採用していました。送り出し,巻き取りにも専用の
ACモーターを搭載し,3モーターダイレクトドライブシステムを採用していました。
 

シンメトリカル走行システムACサーボモーター

GX-747は,アカイが得意とするオートリバース機構を搭載していましたが,それに加え,10号リールオー
プンでは世界で初めてシステムコントロールとカウンターオートシステムそれぞれに専用のマイクロコンピュ
ータを搭載していました。2機のマイコンは,5時間59分59秒まで時・分・秒をリアルタイムに表示するLED
電子デジタルカウンターを軸に,常時情報を交換し,連携プレーで(1)リバースさせたいポイントを秒単位で
セットできるプリセットメモリーオートリバース機能,(2)オートセットボタンを押すだけで,録音中任意の位置
でリバース録音へチェンジできる即動メモリーオートリバース機能,(3)録音時・再生時を問わず任意のプロ
グラム時間が測れるラップカウンター機能,(4)リーバース時にもカウントを加算して表示するカウントアップ
機能,(5)減速しながら正確にゼロ位置でストップするオート”0”ストップ機能の5つのオートシステム機能
を可能としていました。そして,これらの機能をコントロールするスイッチ類を中央の電子デジタルカウンター
周りに集中配置し,「マスターテクニック・コントロールセクション」と称していました。

GX-747のマスターテクニック・コントロールセクション

その他の機能としては,再生状態のまま早送り,巻戻しができるキュー/レビュー機構,ワンタッチで4秒間
の無録音部分をつくり録音スタンバイ状態になるオートミュート機構,±30%可変のバイアスアジャスター
再生時のテープスピードを±6%までコントロールできるピッチコントロール,マイク/ラインミキシング録音機
能などが搭載されていました。

以上のように,GX-747dbxは,オープンリールデッキにおいて優れた技術と伝統を持ったアカイらしい高性
能な名機でした。クリアーで懐の深い録音・再生性能はすばらしいものだったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


マスターの音質,マスターのメカ,
マスターの機能性。
来るべきオープンの姿が
ここにある。
Master Sound
◎ずば抜けた動特性でマスターサウンドを支える
 ニューGXヘッド
◎19cm/秒で2トラ38を凌ぐポテンシャル,
 EEポジション搭載
◎ダイナミックレンジを128dB(1kHz)に拡大する
 dbxTYPETノイズリダクションシステム
◎厳選された素子と回路技術を駆使した
 録音・再生アンプ

Master Mechanism
◎高い回転精度でマスターメカニズムの
 心臓部を支える3モーターDDシステム
◎変調ノイズを激減し,
 安定した往復走行を実現する
 シンメトリカルテープ走行メカニズム
◎操作性を大幅に向上させた
 オートロック/リリース機構
◎6時間の録再が可能のオートリバース機構

Master Technic
◎2機のマイコンが実現するオープン派待望の
 スーパーマスターテクニック
◎マスターテクニックをさらに多彩に演出する
 マルチファンクション
 
 

●GX-747dbxの主要な規格●


トラック方式 4トラック2チャンネルステレオ
最大使用リール 26型(10号)
テープ速度 19cm/秒(±0.8%) 9.5cm/秒(±1.0%)
ワウ・フラッター 19cm/秒 :0.03%WRMS(JIS) ±0.045%W・Peak(EIAJ) 
9.5cm/秒:0.04%WRMS(JIS) ±0.065%W・Peak(EIAJ)
周波数特性 25〜33,000Hz±3dB(19cm/秒)
25〜25,000Hz±3dB(9.5cm/秒)
歪率(1kHz,0VU) 3次高調波歪率 0.4%以下(19cm/秒)
SN比(19cm/秒) 65dB(JIS) 63dB(EIAJ) 100dB(dbx ON)
ダイナミックレンジ 128dB(dbx ON,1kHzピークレベル)
ヘッド GX録音ヘッド×2 GX再生ヘッド×2 消去ヘッド×2
モーター ACサーボダイレクトキャプスタンモーター×1 ACエディカレントリールモーター×2
早送り巻き戻し時間 約75秒(10号リール360mテープ使用時)
入力レベル マイク:0.25mV ライン:70mV
出力(レベル) ライン:410mV ヘッドホン:1.3mW
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 80W
外形寸法 440W×493H×256Dmm
重量 23.2kg

※本ページに掲載したGX−747dbxの写真,仕様表等は1982年10月の
 AKAI のカタログより抜粋したもので,赤井電機株式会社に著作権があり
 ます。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で
 禁じられていますのでご注意ください。                                           
   
 
 

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