ＡＫＡＩ　ＧＸ-Ｆ５１
ＳＴＥＲＥＯ　ＣＡＳＳＥＴＴＥ　ＤＥＣＫ　￥６９，８００

１９８２年に，アカイが発売したカセットデッキ。アカイは，オープンリールデッキの時代からすぐれた技術を発揮
して多くの名機を作り上げてきたブランドでした。そんなアカイが，それまでの技術や経験を生かし，使いやすさ
と性能をトータルにレベルアップした新しいシリーズとして「ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫ」を展開しました。３ヘッ
ドデッキのＧＸ-Ｆ９１，ＧＸ-Ｆ７１と２ヘッドデッキのＧＸ-Ｆ５１，ＧＸ-Ｆ３１が展開されました。この２ヘッドのシリーズ
の中の上級機がＧＸ-Ｆ５１でした。

ＧＸ-Ｆ５１は，２ヘッド方式で，録・再ヘッドには，アカイ自慢の「ツインフィールド・スーパーＧＸヘッド」が搭載され
ていました。「スーパーＧＸ（Ｇｌａｓｓ ＆ Ｘ’ｔａｌ Ｆｅｒｒｉｔｅ）ヘッド」は，フェライト素材を独自の加工技術によりローノイ
ズ・クリスタル化（単結晶化）し，これをヘッドコアとシールドコアに用い全体を高硬度ガラスで固めたもので，（１）
従来のフェライトが抱えていたノイズや粒子脱落などの難点を解決（２）高域でのエディカレントロス（渦電流損失）
が極めて小さく，高い透磁率と広い周波数特性を実現（３）ヘッドギャップの工作精度が非常に高くできるなどの
利点を持ち，優れた音質と高い耐久性を実現していました。
「ツインフィールド・スーパーＧＸヘッド」は，このすぐれた性能の「スーパーＧＸヘッド」の１つのヘッドハウジングの
中に，録音専用ギャップ（４μ）と再生専用ギャップ（１μ）をもつもので，２ヘッド構成ながら，録音と再生それぞ
れの専用ヘッドをもつ，３ヘッドに近い性能を実現したものでした。



走行系は，２モーター構成で，キャプスタン駆動用には，高い回転精度，低ワウ・フラッター，ハイトルクのＦＧ
サーボＤＣモーターによるＤＤ（ダイレクト・ドライブ）方式が採用され，ダイレクトドライブの安定性を，ＦＧサーボ
による精密な制御でさらに高めていました。そして，リール駆動用にはハイトルクＤＣモーターが搭載され，伝達
効率の高いリールドライブ機構ともあいまって，安定した駆動系を構成していました。



メカニズムは，新開発の「クイック＆クワイエットメカニズム」が搭載されていました。再生，巻き戻し，早送りなど
各モードの設定を，マイコンが専用モーターを制御して行うコンパクトなシステムコントロールメカニズムで，メカノ
イズが極小で，ストップ状態でもヘッドブロックはポーズ位置までリフトアップされており，プレイ動作の立ち上がり
もきわめて速いという特徴を持っていました。
さらに，カセットハーフをセットすれば，あとは希望のオペレーションボタンを押すだけで自動的にカセットドアが閉
まり，テープがローディングされ，テープのたるみを除去して指示された動作に入るダイレクトリードインシステム
が採用され，イジェクト機構も，マイコン制御のパワードライブ方式で，プレイ中でもイジェクトボタンを押せば自動
的に安全にイジェクトされるというパワーイジェクトも採用されていました。また，オートテープセレクターが装備さ
れており，ローディングと同時に，テープポジションを検出し，バイアス，イコライザーがリファレンス値に設定され
るようになっていました。
「ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫ」に採用された，これらの方式は，数年後には各社のカセットデッキに採用されて
いきました。当時はまだ例がなく，その操作性には高い評価が与えられ，他社にも大きく影響を与えることとなり
ました。

録再アンプ，マイクアンプには，厳選したディバイスを使った±２電源方式によるＤＣアンプが搭載されていました。
また，ノイズリダクションとして，従来のドルビーＢタイプに加えて新たにドルビーＣタイプも搭載されていました。

ＧＸ-Ｆ５１には，２ヘッド機ながら，コンピュータによるオートチューニングが搭載され，テープごとに最適な録音バ
イアス，録音感度を自動的にチューニングし，データをテープポジションごとに１つずつメモリーできるようになって
いました。バイアス設定は，Ｒｃｈでレベル検出を行い，１ステップ２．５％ずつの８ステップで順次バイアスを変化
させ，１ｋＨｚ・１０ｋＨｚを一組にして同レベルの録音を行い，１ｋＨｚと１０ｋＨｚのレベルが一致したところを最適バ
イアス値とする方式でした。録音感度レベルの設定も，１ｋＨｚ信号を１dBステップで８ステップに分けて録音し，１
ｋＨｚの基準レベルと一致するレベルに設定する方式でした。チューニング時間約２５秒で，終了と同時に巻き戻し
録音スタンバイとなるようになっていました。その他，タイマースタート機構の中に，ＰＬＡＹ，ＲＥＣに加えてＴＵＮＩＮＧ
ＲＥＣというポジションが設けられ，タイマーを使っての録音時に，チューニングをしてから録音を開始するというこ
とも可能となっていました。

ＧＸ-Ｆ５１は，「ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫ」の名の通り，様々な自動化機構を持っていました。上述のモーター
によるカセット扉の開閉「ダイレクトリードイン，パワーイジェクト」「オートチューニング」「自動テープセレクター」の他
に，録音時ソースからテープへのモニターの自動切替機構，録音やり直し時に，自動的に４秒の無録音部分を作っ
てレックポーズ状態に入るレックキャンセル機構，自動頭出し機構「ＩＰＬＳ」，曲の頭を１０秒ずつ再生していくイント
ロスキャン機構，録音の最後に自動的に４秒間の無録音部分を作ってレックポーズ状態になるオートミュート，録
音スタンバイ状態でフェードボタンを押すと設定した録音レベルまで５秒間でフェードインして録音開始し，録音中
フェードボタンを押すとフェードアウトして４秒間の無録音部分を作って録音スタンバイ状態になるオートフェーダー
など，使い勝手がよく洗練された自動化機構が数多く採用されていました。

表示部はＦＬ表示で，レベルメーター，テープカウンター，テープポジション，ノイズリダクション等の表示が横並び
で集中配置されていました。レベルメーターは，２色１２セグメントによるＦＬバーメーターで，メーター上にもテープ
ポジション表示が設けられており，最大録音入力レベルのワーニングゾーンを示すようになっていました。テープ
カウンターは，４桁電子カウンターで，マイコン制御で正確にテープ走行量を正確にデジタル表示するようになっ
ていました。

以上のように，ＧＸ-Ｆ５１は，比較的手頃な価格の中級機ながら，しっかりした走行系，ヘッドを基本に，上級機譲
りのマイコンを生かした，多彩な自動化機構と機能を搭載した，先進的な内容を持つカセットデッキでした。すっき
りとクリアな音をもつ，テープデッキに伝統的にすぐれた技術を持つアカイの持ち味をしっかりもった１台でした。
また，弟機としてＧＸ-Ｆ３１も発売されていました。オートチューニング機構とオートフェーダーが省かれた以外は
同一の内容を持つ，コストパフォーマンスにすぐれた１台となっていました。


ＡＫＡＩ　ＧＸ-Ｆ３１
ＳＴＥＲＥＯ　ＣＡＳＳＥＴＴＥ　ＤＥＣＫ　￥５９，８００

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

ドルビーＣをＤＤ＆ＤＣアンプ構成，
さらにツインフィールド・スーパーＧＸヘッド
で生かしきる，
トータル・アドバンス・デッキＧＸ-Ｆ３１

ＧＸ-Ｆ３１の性能をさらにグレードアップ。
オートコンピュータチューニングを搭載した，
トータル・アドバンス・デッキＧＸ-Ｆ５１

◎－２０dBのノイズ低減効果。
　ドルビーＣタイプＮＲ搭載
◎高精度ＦＧサーボモーターによる
　ダイレクトドライブ
◎＋－２電源方式によるＤＣアンプ
　構成の録再アンプ
◎３ヘッドの性能に匹敵する
　ツインフィールド・スーパーＧＸヘッド
◎未来感覚のコンピューターサーチ
　機構
●レックキャンセル機構
●イントロスキャン
●ＩＰＬＳ（自動頭出し）機構
●メモリーオートプレイ機構
◎クイック＆クワイエットメカニズム
◎独自のダイレクトリードイン＆パワー
　イジェクトシステム
◎ダイレクトリードインのメリットを生かす
　オートテープセレクター
◎見やすく正確な
　集中ディスプレイシステム
◎テープ特性をフルに引きだすオート
　コンピューターチューニングシステム（ＧＸ-Ｆ５１）
◎オートフェーダー（ＧＸ-Ｆ５１）
●離れて操作ができるリモートコントロール機構
●留守録･目覚まし再生ができるタイマースタート機構
●アウトプットレベルとヘッドホンレベルが調整できる
　アウトプットボリューム
●高さわずか１０ｃｍ，先進のスリムボディ

●ＧＸ-Ｆ３１，ＧＸ-Ｆ５１の主要規格●

※本ページに掲載したＧＸ-Ｆ３１，ＧＸ-Ｆ５１の写真，仕様表等は
１９８２年４月のＡＫＡＩのカタログより抜粋したもので，赤井電機
株式会社に著作権があります。したがって，これらの写真等を無
断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
ください。
　　　
　
　
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