AKAI GX-F80
STEREO CASSETTE DECK ¥99,800
1979年に,アカイが発売したカセットデッキ。アカイは,早くからテープデッキにすぐれた技術を発揮し,オープン
リールデッキからカセットデッキへと,力の入った製品を作り続けたブランドでした。特にフェライト系のGXヘッドを
中核とした製品群は,いずれも高い評価を得ていました。そんなアカイが,3ヘッドの高級機GX-F90の弟機とし
て発売したのがGX-F80でした。
GX-F90は,3ヘッド方式で,録・再ヘッドには,アカイ自慢の「スーパーGXヘッド」によるコンビネーションヘッドが
搭載されていました。「スーパーGX(Glass & X’tal Ferrite)ヘッド」は,フェライト素材を独自の加工技術により
ローノイズ・クリスタル化(単結晶化)し,これをヘッドコアとシールドコアに用い全体を高硬度ガラスで固めたもの
で,(1)従来のフェライトが抱えていたノイズや粒子脱落などの難点を解決(2)高域でのエディカレントロス(渦電
流損失)が極めて小さく,高い透磁率と広い周波数特性を実現(3)ヘッドギャップの工作精度が非常に高くできる
などの利点を持ち,優れた音質と高い耐久性を実現していました。当時,アカイは他社のデッキがメタル対応のた
めにセンダスト等の合金ヘッドに向かう流れの中,High Bs,High μフェライト材の優れた性能と可能性を信じ
高性能ヘッド「スーパーGXヘッド」を完成させ,自社のデッキに搭載していました。この「スーパーGXヘッド」を録音
用と再生用に専用化して用い,高精度に一体化したコンビネーションタイプの3ヘッドとして,録音用ヘッドのギャッ
プは4ミクロン巾,再生用ヘッドのギャップは1ミクロン巾とそれぞれにあった理想的なギャップ巾で搭載していまし
た。消去ヘッドには,ダブルギャップフェライトヘッドが搭載されていました。このヘッドは,その高い耐久性とすぐれ
た性能で現在でも高い評価を受けています。
走行系は,シングルキャプスタンで,キャプスタン駆動用とリール駆動用のモーターを搭載する2モーター構成でし
た。キャプスタン駆動用には,耐久性にすぐれ,高い回転精度を持つ電子制御DCモーターを搭載し,リール駆動用
には,トルクの強いDCモーターを搭載していました。これにより,メカニズムのシンプル化と軽快なロジックコントロー
ルが可能となっていました。
2モーターシステムのメカニズムを生かして,走行系のコントロールはICロジック回路で制御されたフェザータッチ式
のダイレクトファンクションチェンジ機構が採用され,各動作は,自動的にストップ状態を経由してから次のモードに移
るようになっており,軽快でかつ安全なテープ走行のコントロールが可能となっていました。さらに,自照式操作ボタ
ンを採用し,操作モードとスタンバイ状態が光で鮮やかに表示されるセンサーライトコントロールシステムが搭載され
ていました。PLAY,F・F,RWD,REC,PAUSE,REC MUTEのモード表示の他,リピートスタンバイやポーズス
タンバイではPLAYボタンが点滅,レコーディング・ミュート時には録音ボタンが1秒間隔で点滅するタイミングインジ
ケーター機能など,動作状態が分かりやすいシステムとなっていました。
レベルメーターとして,蛍光表示管を使用した高精度のデジタルバーメーターが搭載されていました。このメーターは
VUメーターでしたが,瞬間的な入力信号に対しては,+3VUと+8VUのセグメントがピークレベルインジケーター
としてはたらくようになっていました。
テープセレクターは,LN,LH,CrO2,METALの4ポジションが装備されていました。ノイズリダクションとしてドル
ビー(Bタイプ)が,3ヘッドシステムに対応して録音用,再生用それぞれ独立の回路で搭載され,FMステレオ放送の
19kHzのパイロット信号による誤動作を防ぐMPXフィルタースイッチも装備されていました。また,入力信号の周波
数帯域とレベルに応じて,録音イコライザーが自動的に可変し,高域における減磁作用による歪みを防止する,アカ
イ独自開発のADR(Automatic Distortion Reduction)システムが装備されていました。
入力は,LINEに加えMIC入力も前面パネルに装備され,独立してレベルコントロールが設けられていました。MIC
入力は,Lチャンネル側がモノラル入力としてはたらくモノマイク機構も装備されていました。その他,無音部分をつく
るレコーディング・ミュート機構,タイマースタート機構,ヘッドホンの音量調整もできるアウトプットボリューム,別売の
ワイヤードリモコンユニット(RC-18-J ¥6,000)が接続できるリモコン端子が装備されていました。
以上のように,GX-F80は,派手さはないものの,アカイのデッキ技術が生かされた,オーソドックスながらすぐれた
性能を持つ使いやすいカセットデッキでした。どちらかというと地味な存在でしたが,上級機GX-F90に通じるクリアな
音は隠れた実力派デッキであったことを示していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



限りなく原音を追い求めてきたAKAIの技術の結晶,
スーパーGXヘッド搭載。テープ新時代の実力派デッキ。

音質と操作性を徹底して追求すれば,
やはり3ヘッドシステム&2モーターメカニズム。

◎耐久性,操作性に優れた2モーターメカニズム。
◎ロジックコントロールによるフェザータッチの操作ボタン。
◎動作状態を光で見せる
 楽しいセンサーライトコントロール・システム。
◎誤動作を防ぐMPXフィルタースイッチつき
 ダブルドルビーNR。
◎高域の録音特性を飛躍的に向上させる
 AKAI独自のADRシステム。
◎テープの自動反復再生が楽しめる
 メモリープレイ,リピートプレイ。
◎レベルチェックが容易な
 見やすく精度の高いデジタルFLメーター。

●4ポジションテープセレクター
●タイマースタート機構
●レコーディング・ミュート機構
●マイク・ラインの2系統独立の入力レベルコントロール
●別売のリモコンユニットが接続できるリモコン端子つき
●ヘッドホンの音量調整もできるアウトプットボリューム
●モノマイク機構




●GX-F80の主要な規格●

トラック方式 4トラック2チャンネルステレオ方式
テープスピード 4.75cm/秒
ワウ・フラッター 0.035%WRMS(JIS)
周波数特性 25〜15,000Hz ±3dB LNテープ
25〜17,000Hz ±3dB LHテープ
25〜17,500Hz ±3dB CrO2(SA)テープ 
25〜21,000Hz ±3dB Metalテープ
歪率(1kHz0VU) 0.6%(Metalテープ使用時)
録音バイアス周波数 100kHz
総合SN比 62dB(Metalテープ使用時,3%THDレベルWTD) 
ドルビーNR使用時  
  S/N改善量は5dB(1kHz),10dB(5kHz以上)
ヘッド スーパーGX録音ヘッド×1 
スーパーGX再生ヘッド×1
ダブルギャップ消去ヘッド×1 
モーター 電子制御DCモーター(キャプスタン駆動用)×1 
DCモーター(リール駆動用)×1
早送り・巻戻し時間 60秒(C−60テープ使用時)
入力(レベル) マイク:0.3mV/−70dB(適合インピーダンス600Ω)
ライン:70mV(入力インピーダンス100kΩ以上)
出力(レベル) ライン:0〜410mV(最大時0VU)負荷インピーダンス20kΩ以上 
ヘッドホン0〜100mV/8Ω
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 30W
寸法 440W×135H×340mm
重量 8.9kg
※本ページに掲載したGX- F80の写真,仕様表等は1979年10月
 のAKAIのカタログより抜粋したもので,赤井電機 株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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