AKAI GXC-735D
STEREO CASSETTE DECK ¥99,8001978年に,アカイが発売したカセットデッキ。いち早くオートリバース方式のカセットデッキを発売していた
アカイが,世界に先駆けて発売したクィックリバースを採用したカセットデッキで,オートリバースデッキとし
て画期的な1台でした。GXC-735Dの最大の特徴「クィックリバース」は,従来のカセットデッキが,テープエンドまで巻き終わっ
たことを感知してリバースするため,リーダーテープ部の音切れが数秒続くのに対し,リーダーテープ部を
感知して素早くリバースすることで音切れを極めて少なくしたもので,その後,各社のリバースデッキに採
用される例が増えていきました。
GXC-735Dに搭載された「クィックリバース」は,リーダーテープ部を感知する赤外線テープセンサーが
可能にしたもので,赤外線を通過させる透明なリーダーテープ部がくると赤外線をセンサーが感知し,素
早くリバース動作に入ることが可能となりました。また,この赤外線センサー部は,テープガイドの働きも
し,安定したテープ走行にも寄与していました。リバースデッキとして往復両方向に均一な特性を確保するために,テープ走行系には「バイ・カウンター
キャプスタンドライブ方式」が採用されていました。これは,往路および復路にそれぞれ専用のキャプスタ
ンとピンチローラーを設け,テープ反転の際の立ち上がりを素早く行うことを可能にしていました。また,キ
ャプスタン駆動用に電子制御DCモーター,リール駆動用にトルクの強い専用DCモーターを搭載した2モ
ーターシステムを採用していました。
往路,復路のテープ上のトラックをヘッドに精密にトレースさせるために,ヘッドを前後に正確にシフトさせ
る独自の精密メカ,「リニアモーション機構」を採用していました。さらに,テープガイドを通常のヘッド近くに
設置されたピン状のものであるのに対して,ヘッドから離した位置に接触面を広くしたテープガイドを設置し
たアカイ独自の方式を採用し,赤外線テープセンサー,消去ヘッドもテープガイドの働きを兼ね,安定した
テープ走行とヘッドタッチを実現していました。録・再ヘッドは,アカイ自慢のGXヘッドを搭載していました。「GXヘッド」は,1969年に開発されたもので,
名称のGXは「Glass &X’tal Ferrite」の略で,フェライト素材を最新の半導体技術を駆使した独自の超精
密加工技術によりローノイズ・クリスタル化(単結晶化)し,これをヘッドコアとシールドコアに用い全体を高
度ガラスで固めたもので,(1)従来のフェライトが抱えていたノイズや粒子脱落などの難点を解決(2)高域
でのエディカレントロス(渦電流損失)が極めて小さく,高い透磁率と広い周波数特性を実現(3)ヘッドギャ
ップの工作精度が非常に高くできる・・などの利点を持ち,優れた音質と高い耐久性を実現していました。
操作系は,2モーター構成を生かしたフェザータッチの操作ボタンで,操作モードとスタンバイ状態を光で表示す
るようになっていました。PLAY,F-F,RWD,REC,PAUSEのモード表示の他,リピートスタンバイやポーズ
スタンバイではプレイボタンが点滅する機能や,さらにレコーディングミュート時には録音ボタンが1秒間隔で点
滅するタイミングインジケーター機能などデッキが動作状態を光で表示するもので,「センサーライトコントロール
システム」と称していました。
リバース機能は,片道,一往復,往復連続再生の3段切換のリバースセレクターを備え,巻き戻しor早送りボタ
ンと再生ボタンを同時に押すことにより,テープエンドあるいはカウンター000からのオートプレイ機構が搭載さ
れていました。また,タイマースタンバイ機構も搭載していました。ノイズリダクションとしてドルビーNR(Bタイプ)が搭載され,さらにアカイが開発した「ADRシステム」が搭載され
ていました。これは,入力信号の周波数帯域とレベルに応じて,録音イコライザーを自動的に可変し,高域におけ
る減磁作用による歪みを改善するシステムでした。レベルメーターは,大型の高精度VUメーターで,さらに,+3dB,+7dBでLEDが点灯するピークレベルインジケ
ーターが搭載されていました。テープセレクターは,LN,LH,CrO2,Fe-Crの4ポジションとなっていました。
入力系は,LINEとMICが独立し,それぞれに専用のレベルコントロールが搭載され,マイク,ラインのミキシング
も自由にできるようになっていました。以上のように,GXC-735Dは,国産初(世界初?)のクィックリバース搭載のカセットデッキとして,先進的な内
容を持ち,当時としては驚異的なリバースによる空白時間が0.7秒という画期的な1台でした。リバースデッキ
に圧倒的な強さを持っていたアカイらしい1台だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
カセットの革命,瞬間反転
QUICK REVERSE
クィックリバース
CASSETTE DECK 進化論
GXヘッド,ロジックコントロール,そしていまクィックリバース。
GXC-735DにはAKAIのすべての技術が集約されています。
往復の連続録音再生を可能にした
クイックリバースの出現。
カセットデッキの課題がまたひとつ消えた。
リーダーテープ直前で瞬間反転!
音を大切に考えるAKAI独自の技術です。
クイックリバース録音再生を可能にする
優れたメカニズム
◎動特性に優れた先進のGXヘッド
◎往復とも均一特性を可能にしたバイ・カウンター
キャプスタンドライブ方式とリニアモーション機構
◎AKAI独自の新テープ走行メカニズム
2モーターシステムならではの軽快な操作性
◎耐久性,操作性,ともにきわ立つ新2モーターシステム
◎ロジックコントロールによるフェザータッチの操作ボタン
◎動作状態が照明で明示される
楽しいセンサーライトコントロール・システム
音質,操作性はもちろん,数々の使いやすい
機能を満載したAKAIのスーパーカセットです。
ひたすらいい音をめざすための録音再生システム。
◎ダイナミックレンジのひろい澄んだ音が楽しめる
<ADRシステム>プラス<ドルビーNRシステム>
◎よりよい録音のためにバックライト方式の大型無反射VUメーターと
2ステップピークレベルインジケーター
◎ワンタッチでテープの特性をフルにひき出す
4ポジションテープセレクター
多彩なプレイが楽しめる豊富な機能
◎マルチプレイが楽しめる3段切り換えのリバースセレクター
◎巻戻しor早送りボタンと,プレイ・ボタンによるオートプレイ機構
◎留守録音,目覚まし再生OK,タイマースタンバイ機構
◎エアチェックやテープダビングのときに便利な
レコーディング・ミュート機構
◎楽しみ方いろいろ,マイク,ラインのミキシング
◎ヘッドホンの音量調節もできるアウトプットボリューム
●GXC-735Dの主要な規格●
トラック方式 | 4トラック2チャンネルステレオ方式 |
テープスピード | 4.75cm/秒 |
ワウ・フラッター | 0.045%WRMS |
周波数特性 | 35〜14,000Hz ±3dB LNテープ
35〜14,000Hz ±3dB LHテープ 35〜15,000Hz ±3dB CrO2(SA)テープ 35〜16,000Hz ±3dB FeCrテープ |
歪率 | 1.0%以下 LN,LHテープ使用時 |
録音バイアス周波数 | 100kHz |
総合SN比 | 55dB LN,LHテープ
56dB CrO2(SA),FeCrテープ (第3次高調波3%レベル基準聴感補正あり) ドルビーNR使用時 S/N改善量は6dB(1kHz),10dB(5kHz以上) |
録音バイアス周波数 | 85kHz |
ヘッド | 録音 /再生GXヘッド×1
消去ヘッド×2 |
モーター | 電子制御DCモーター×1 (キャプスタン駆動用)
DCモーター×1(リール駆動用) |
早送り・巻戻し時間 | 60秒(C−60テープ使用時) |
入力(レベル) | マイク:0.25mV/−70dB(適合インピーダンス600Ω)
ライン:70mV/−21dB(入力インピーダンス100kΩ以上) |
出力(レベル) | ライン:0〜410mV(最大時0VU)負荷インピーダンス20kΩ以上
ヘッドホン:0〜100mV/8Ω |
電源 | AC100V 50/60Hz |
寸法 | 440W×150H×290Dmm |
重量 | 9.7kg |
※本ページに掲載したGXC-735Dの写真,仕様表等は1979年11月
のAKAIのカタログより抜粋したもので,赤井電機株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
★メニューにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。