Lo-D HA-5700
STEREO AMPLIFIER ¥69,800
1979年に,ローディー(日立)が発売したプリメインアンプ。ローディーは,総合電機メーカーの日立のオー
ディオブランドであるだけに,パーツの面から自社開発できる強みを生かし,1977年に,世界初のパワー
MOS FET使用のパワーアンプHMA-9500を発売し,翌年の1978年にプリメインアンプHA-8700
HA-7700を発売しました。そして,その弟機として発売されたのがHA-5700でした。

HA-5700の最大の特徴は,出力段に,パワーMOS FETを採用していることでした。MOS FET(Metal
Oxide Semiconductor Field Effect Transistor=MOS型電界効果トランジスター,ちなみにMOSは
Metal(金属),Oxide(半導体酸化物),Semicondauctor(半導体)の3層構造になっていることを表して
います)は,従来高耐圧,大出力といったオーディオ用に使える素子ではなく,小出力のものしかなく,高周
波増幅用等に使われていました。現在でもLSIの中の半導体では最も一般的な構造となっています。そして
ちょうど当時,日立中央研究所で高耐圧のMOS FETつまりパワーMOS FETが開発されていました。これ
をさらに高出力に,そしてPch,Nchのペアとして開発に成功し,オーディオ用パワー素子として完成させた
ものでした。



スイッチング特性,周波数特性,温度特性等にすぐれた特性をもち,裸特性にすぐれたパワーMOS FET
を生かし,差動増幅器の1段目と定電流増幅回路を負荷とする2段目がMOS FETコンプリメンタリープッ
シュプル回路をダイレクトにドライブする3段直結DCパワー回路というシンプルな構成になっていました。
この出力段により,50W+50W(20Hz~20kHz・8Ω)の出力を0.02%という低歪率で実現していまし
た。

イコライザーアンプとトーンアンプは,新開発の低雑音集積回路(IC)を採用していました。集積回路である
ことを生かしたしっかりとした回路構成がとられており,差動入力3段直結プッシュプル出力となっていまし
た。イコライザーアンプは,広いダイナミックレンジが確保されており,FUNCTIONスイッチをMCに切換え
ることにより,MCカートリッジにも対応していました。トーンアンプは,SN比100dBで,オーバーオール特
性を重視したフラットな周波数レスポンスを確保していました。

電源部は,電源トランスから左右独立構成とした左右独立2電源になっていました。2基の電源トランスと
1000μF+1000μFの高品質大容量平滑コンデンサによる,この強力な左右独立の電源部により,セ
パレーションに優れた再生音を実現していました。

薄型のシンプルな筐体でしたが,プリメインアンプとして基本的な機能はオーソドックスに搭載されていまし
た。トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立型で,DEFEATスイッチも装備されていました。また,ラ
ウドネス,サブソニックフィルタースイッチ,STEREO/MONOのMODEスイッチも搭載されていました。
入力は,PHONO(MC・MM),TUNER,AUX,TAPE2系統が登載され,TAPEは,TAPE MONITOR
スイッチが装備され,TAPE1,2の切換の他,他のソースを再生しながらの相互ダビングができるように
なっていました。

以上のように,HA-5700は,ローディーのMOS FET登載プリメインアンプとして末弟といえるモデルで
したが,上級機の技術を継承しつつ,シンプルに使いやすくまとめられたコストパフォーマンスの高い1台
でした。きめ細かさを感じる滑らかな優美な音はMOS FETの高域特性の良さを感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



澄み切った音の世界へ。
パワーMOS FET採用プリメイン。

低ひずみ・広帯域を満足させるパワーMOS FETを採用。
高品質部品を厳選した,音質重視のプリメイン。

◎3段直結DC構成パワー回路を採用
◎イコライザーアンプとトーンアンプに,
 新開発の低雑音集積回路を採用
◎MCカートリッジの接続可能
◎強力な電源部が余裕ある音楽再生を実現

●スリムでコンパクトなデザイン
●15Hzローフィルター
●トーンディフィートスイッチ
●テープ1→2,テープ2→1と自由にテープコピー
 ができ,しかもコピーの中にFM,PHONOなど
 ソースの再生ができるモニタースイッチ
●ラウドネススイッチ
●OFF,A,B,A+Bのスピーカー切換スイッチ




●HA-5700 Specifications●

実効出力 50W+50W(20Hz~20kHz・両ch・8Ω・TUNER IN) 
全高調波ひずみ率  0.02%(20Hz~20kHz・定格出力時・8Ω) 
出力帯域幅  5Hz~40kHz(0.05%・25W出力時・8Ω,TUNER IN) 
混変調歪率
(60Hz:7kHz=4:1) 
0.03%(25W出力時,TUNER IN) 
周波数特性  TUNER,AUX,TAPE1,2:10Hz~100kHz+0.5,-4.5dB
PHONO:20Hz~20kHz±0.3dB 
入力感度/インピーダンス  PHONO(MM):2.5mV/47kΩ
PHONO(MC):0.25mV/100Ω
TUNER,AUX,TAPE1,2:150mV/47kΩ 
出力レベル/インピーダンス  REC OUT:150mV/470Ω 
PHONO最大許容入力  MM:250mV(1kHz・0.01%)
MC:25mV(1kHz・0.01%) 
SN比(IHF・Aネットワーク)  PHONO:80dB(MM),60dB(MC)
TUNER,AUX,TAPE1,2:100dB 
トーンコントロール  BASS:±8dB(100Hz)
TREBLE:±8dB(10kHz) 
ローフィルター  15Hz・6dB/oct 
ラウドネス(-30dB)  +3dB(10kHz),+6dB(100Hz) 
電源電圧  AC100V・50/60Hz 
消費電力140W(新電気用品取締法)   
ACアウトレット  電源スイッチ連動×1
電源スイッチ非連動×2 
外形寸法  435W×110H×383Dmm 
重量  10.8kg 
※本ページに掲載したHA-5700の写真,仕様表等は,1980年5月
のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著
作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等
することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

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