Lo-D HA-610
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥85,000
1975年に,ローディー(日立)が発売したプリメインアンプ。日立は,Lo-D(Low Distortion=低歪み
:に由来)のブランドで,家電のみでなく重電,半導体なども自社生産する総合電機メーカーとしての技術
力を生かして,画期的なオーディオ機器を発売していました。アンプの分野でも高い半導体技術を生かし
たすぐれた製品を発売していました。そんなローディーが発売した,当時の中級クラスのプリメインアンプ
の主力モデルがHA-610でした。

パワー部は,厳選されたHi-Fi用トランジスターと定電流駆動エミッター接地インバーテッド純コンプリメン
タリーOCL回路構成で,70W+70W(両ch駆動・8Ω・1kHz)の出力と0.006%(高調波歪率・1/2
出力時・1kHz)という低歪みを実現していました。
エミッタ接地インバーテッドダーリントン回路は,電力増幅段で電力利得を得るだけでなく,電圧利得が得
られるため,裸利得が大きく,安定にフィードバックがかけられ,ドライバー段のドライブ電圧も小さくてす
むなどのメリットを持ち,低歪み,高SNを実現していました。
差動増幅2段定電流駆動のドライバー段は,安定化電源によりドライブされ,定電流駆動化されることに
より,微少出力時のクロスオーバー歪みが抑えられるとともに,差動増幅のため,安定ドライブされるよう
になっていました。

プリアンプ部のイコライザー段は,差動入力-FET-バイポーラトランジスターの3段構成で,±2電源で
ドライブされ,280mV(RMS・1kHz)のダイナミックマージンを低歪みで確保していました。また,精度の
高い素子と十分なフィードバックによりRIAA偏差も±0.3dBと高精度な特性を実現していました。さらに
厳選した日立製LPTトランジスターにより,すぐれたSN比を実現していました。

フラットアンプ部は,FET-PNPの組み合わせによる2段直結型で,交流・直流同時にNFBをかけ,低歪
み,高安定を実現していました。また,トーンコントロール回路を低インピーダンスで駆動しており,周波数
特性のうねりのないトーンコントロール回路となっていました。トーンコントロールは,ターンオーバー周波
数がBASS,TREBLEともそれぞれ2段切替となっており,幅広い補正が可能となっていました。さらに
トーンディフィート機構も装備されていました。



ボリュームコントロールには,22接点スイッチ式アッテネーターが採用され,左右連動誤差の少ない正確
なレベルアッテネーションが行えるようになっていました。また,コントロールアンプの初段に入力インピー
ダンスの高いFETを使用し,信号源インピーダンスの変動によるNFの変化が少ないSN比の劣化の少な
いコントロールが可能となっていました。
さらに,3段(-5dB,-10dB,-20dB)のゲインセレクターが装備され,各々独立はもとより加算式では
たらく仕組みのため,-5dB~-35dBの広範囲にゲインアッテネーションやミューティングが行え,ボリュー
ムとの組み合わせで,音量の正確な微調整が行えるようになっていました。

PHONO入力は2系統備えられ,PHONO-2は入力感度レベルが6dBの範囲で微調整できるようになっ
ていました。カートリッジの出力に合わせて使用でき,2系統のアナログプレーヤーを使用する場合にも,
PHONO-1と出力レベルを合わせることが可能でした。その他の機能として,2段切換ローフィルター,2
段切換ハイフィルター,MODEスイッチ,ラウドネススイッチも装備されていました。



スピーカー端子は2組備えられ,2系統のスピーカーが接続可能であるとともに,B端子に接続したスピー
カーの音量レベルは-15dBコントロールできるようになっており,2組の能率の異なるスピーカーの音量
レベルを揃えられるようになっていました。

以上のように,HA-610は,当時のローディーブランドのプリメインアンプの中核機として,オーソドックス
ながら,しっかりと回路技術と物量を投入したまじめな作りのアンプでした。多機能で使い易く,安定した
再生能力をもった実力機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



0.006%と70W+70W,
この2つの数値に
すべての技術成果を結晶させた
プリメイン

◎回路技術の徹底追求で,70W+70Wの出力と
 0.006%(1/2実効出力時・1kHz)の低歪特性を
 実現したパワーアンプ部
◎低歪・高S/Nを達成したインバーテッド
 ダーリントン回路
◎美しいピアニシモ再生をする
 差動2段定電流駆動
◎プリアンプ部のイコライザー段は
 差動入力-FET-バイポーラトランジスタ
 の3段構成
◎コントロールアンプ部は
 FET-PNPの組合わせによる2段直結形
◎22接点スイッチ式アッテネーター採用の
 ボリュームコントロール
◎正確な微調整が行える
 加算式3段ゲインセレクター
◎スピーカーの比較試聴が行える
 スピーカーBレベル調整
◎カートリッジの比較試聴が正確に行える
 PHONO-2レベル微調整




●HA-610 Specification●


■パワーアンプ部■

回路方式
差動2段全段直結エミッタ接地
インバーテッドダーリントン
純コンプリメンタリーOCL
ダイナミックパワー
180W(IHF 8Ω)
実効出力
20Hz~20kHz(両ch駆動):60W+60W(8Ω),70W +70W(4Ω)
1kHz(両ch駆動):70W+70W(8Ω),90W+90W(4Ω)
1kHz(片ch駆動):75W/75W(8Ω),100W/100W(4Ω)
全高調波歪率
実効出力時:0.3%
1/2実効出力時:0.006%
混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1)
実効出力時:0.05%
1W出力時:0.05%
出力帯域幅
7~50,000Hz
周波数特性
7~70,000Hz(+0,-1dB)
入力感度/インピーダンス
0.8V/70kΩ
出力端子
スピーカー端子:A・B(4~16Ω)
          A+B(8~16Ω)
ヘッドホン端子:4~16Ω
ダンピングファクター
(1kHz,8Ω)
60以上
S/N
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
100dB以上



■プリアンプ部■


回路方式
イコライザーアンプ:差動1段,3段直結 FET使用
コントロールアンプ:初段FET使用 NF形
入力端子
(感度/インピーダンス)
PHONO 1  :2mV/50kΩ
PHONO 2  :1.6~6mV/50kΩ(連続可変)
TUNER   :100mV/50kΩ
AUX1    :100mV/50kΩ
AUX2    :100mV/50kΩ
TAPE PB1:100mV/50kΩ
TAPE PB2:100mV/50kΩ
PHONO最大許容入力
PHONO 1:280mV(RMS 1kHz)
PHONO 2:200~750mV(RMS 1kHz)
出力端子
(レベル/インピーダンス)
TAPE REC 1・2:100mV/1kΩ
TAPE REC 2(DIN端子):30mV/80kΩ
PRE OUT:0.8V/4.7kΩ(定格)
        6V/4.7kΩ(最大)
周波数特性
PHONO(RIAA偏差):30~15,000Hz(±0.3dB)
トーンコントロール
BASS  :±10dB(50Hz,100Hz)
       ターンオーバー周波数
       150Hz,300Hz
TREBLE:±10dB(10kHz,20kHz)
       ターンオーバー周波数
       3kHz,6kHz
フィルター
LOW:10,30Hz(12dB/oct)
HIGH:8kHz(6dB/oct)
ラウドネスコントロール
(ボリューム-30dB時)
+13dB(100Hz),+7dB(10kHz)
S/N
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
PHONO:75dB
TUNER,AUX,TAPE PB:90dB
アッテネーター
-5,-10,-20dB(加算可能)



■使用半導体■


FET
4石
トランジスタ
55石
ダイオード
29個



■電源部・その他■


電源電圧
AC100V 50/60Hz
定格消費電力
150W(電気用品取締法)
ACアウトレット
1(電源スイッチ連動),2(非連動)
外形寸法
435W×144H×388Dmm
467W×179H×400Dmm(ウッドケース使用時)
重量
12.0kg

※本ページに掲載したHA-610の写真,仕様表等は,1975年
 11月のLo-Dのカタロ グより抜粋したもので,日立家電販売株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載・引用等することは法 律で禁じられていますのでご注意くださ
 い。

 

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