Lo-D HS-400
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥69,000
1975年に,ローディー(日立)が発売したスピーカーシステム。ローディーは,スピーカーでのブランドイメージは,
あまり強くありませんでしたが,1968年発売のHS-500で開発された「ギャザードエッジ」や,1975年発売の
HS-1400WAに搭載された「ASW」など,すぐれた技術をもっていました。そして,1974年に,画期的なメタル
コーンウーファーを搭載したHS-1500を発売したローディーが,メタルコーン搭載の一般向けモデルとして発売
したのがHS-400でした。



ウーファーは,20cm口径のサンドイッチメタルコーン・L-205が搭載されていました。サンドイッチメタルコーンは
超高級スピーカーHS-1500で開発されたもので,振動板はアルミ合金で発泡樹脂をサンドイッチした三層構造
で,軽く剛性の高いものとなっていました。こうしたアルミ三層構造の振動板は,1950年代に,日本電気音響が
ミラフォンブランドで,スチレンペーパーをアルミ箔でサンドイッチしたスピーカーユニットを出していましたが,本格
的にスピーカーシステムとして採用したのはローディーが最初でした。
メタルコーンの特徴である主高域共振はピークコントロール回路によって制御するようになっており,さらに,ギャ
ザードエッジの採用により±6mmの振幅をもたせ,口径20cmで30cm口径のウーファーに遜色のない低音再生
をめざしていました。
このギャザードエッジは,ウーファーのfo(最低共振周波数)を下げるために,エッジ部のスティフネス(剛
さ)を下げ
てウーファーの振動板のピストン振動を十分に行わせ,かつ振動系をしっかり支持しようとす
る二律背反の命題を
実現しようとしたもので,通常使用されていたロ
ールエッジを改良して,独自のヒダ(ギャザー)を加えたV型のエッ
ジで,構造的に伸びと縮みの応力が一定で,かつ円周方向にも伸び縮みが一定であるために振動板の機械的直
線性が改善され,大振幅時のひずみ,エッジの共振によるひずみが低減され,foを低くとることができる
という画期
的なものでした。このエッジは,当時日立のオーディオ部門でスピーカー開発を行っていた日本有数のスピーカー
技術者・河村信一郎氏が中心となって開発したもので,耐久性にもすぐれた画期的なエッジでした。
また,放熱性にすぐれ質量の軽いアルミボイスコイルを使用するとともに,マグネットを大きくし,低歪磁気回路も搭
載して,良好な低域再生を実現していました。



トゥイーターは,3.5cm口径で,小半頂角セーラーキャップ型チタン振動板を採用したMH-35が搭載されていま
した。コーン型とドーム型を複合した形のセーラーキャップ型振動板は,上述の川村信一郎氏が開発したもので,
この形状は,後に各社に影響を与えました。セーラーキャップ型チタン振動板により高域方向に特性を伸ばし,さ
らに,ギャザードエッジ,ギャザードスパイダを採用することにより,振幅余裕±1mmというトゥイーターとしては非常
に大きな値を実現し,中低域への特性も伸ばし,1,100Hから20kHzまでの広い帯域をフラットにクリアにカバー
できるようになっていました。そして,今まではウーファーに搭載されることが多かった低歪磁気回路を採用し,歪率
は1kHzから10kHzにわたって,0.3%(90dB・1m)以下というすぐれた特性を実現していました。

エンクロージャーは,内容積50リットルの密閉型で,ユニットに対して比較的余裕のある容量をもち,ウォルナット仕
上げの落ち着いた外観となっていました。ユニットの配置は,左右の指向性が同一になるようにインライン配置とし
ていました。
ネットワークは,クロスオーバー点での位相のつながりを考慮し,理論値と基礎測定に基づく計算値,1,100Hzで
-6dBでクロスさせる設定がとられ,トゥイーターには,-6dBまでの連続可変のレベルコントロールが搭載されてい
ました。

以上のように,HS-400は,ローディーが実験的最高級機HS-1500を,一般ユーザー向けに小型化したともいえ
るような技術的な多くの特徴を持った画期的な1台でした。ローディーの歴代のスピーカーの中でも,HS-1500とな
らび,川村信一郎氏の設計が最も生かされたスピーカーであったといわれ,壁に埋め込むなどの無限大バッフルの
発想から生まれた新しいスピーカーでした。その超フラットな特性,音のクリアさなど潜在能力の高さは,当時は,同
クラスの価格帯のアンプでは十分に生かすことができず,スピーカーではあまり高くないローディーのブランド力故か,
評価があまり上がらなかった部分もありましたが,逆に,現在でも高く評価される実力派のスピーカーでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



スピーカーに新時代を招来する
メタルコーンの新2ウェイ

◎完全なピストンモーションを求めて
◎無限大バッフルでのシステム測定
◎ウーハーは,サンドイッチメタルコーン
 ギャザードエッジ(L-205)
◎ツイーターは,広帯域セーラーキャップ形
 チタン振動板(MH-35)




●HS-400 Specifications●


エンクロージャー形式 密閉
エンクロージャー内容積 50リットル
使用スピーカー ウーハー:20cmサンドイッチメタルコーン
ギャザードエッジ(L-205)
ツイーター:3.5cmセーラーキャップ形チタン振動板
ギャザード(MH-35)
再生周波数帯域 35~20,000Hz(-8dB無限大バッフル)
20~20,000Hz(-15dB無限大バッフル)
50~20,000Hz(-8dB無響室)
35~20,000Hz(-15dB無響室)
クロスオーバー周波数 1,100Hz
入力インピーダンス 8Ω
最大入力 100W
出力音圧レベル 88dB(1W・1m)
外形寸法 355W×630H×340Dmm
重量 20kg
エンクロージャー仕上げ ウォルナット
スピーカーグリル色 ブラウン

 
 

●L-205 Specifications●


形式 ハイコンプライアンス形ウーハー
外径 22.9cm
開口径 16.4cm
バッフル穴径 19.4cm
定格入力 15W(40Hz以上連続)
出力音圧レベル 89dB(1W・1m)
ボイスコイルインピーダンス 8Ω
再生周波数帯域 60Hz~1,100Hz
fo 31Hz
共振尖鋭度(Qo) 0.30
実効質量(mo) 25g
実効半径 8.2cm
クロスオーバー周波数 1,100Hz以下
総磁束 336,000マクスウエル
奥行 11.2cm
重量 4kg
その他 注(1)サンドイッチメタル振動板
  (2)ギャザードエッジ・ギャザードスパイダ使用
  (3)ピークキャンセラー付

 
 

●MH-35 Specifications●


形式 コーン形ツイーター
外径 16.6cm
バッフル穴径 13.1cm
定格入力 7W(1,100Hz以上連続)
出力音圧レベル 88dB(1W・1m)
ボイスコイルインピーダンス 8Ω
再生周波数帯域 700Hz~16kHz(-3dB)
fo 260Hz
共振鋭度(Qo) 0.34
実効質量(Mo) 0.43g 
実行半径  1.75cm 
総磁束 176,000マクスウエル
磁束密度 14,000ガウス
奥行 9.1cm
重量 2kg
その他 注(1)セーラーキャップ形チタン振動板
  (2)ギャザードエッジ,ギャザードスパイダ使用
※本ページに掲載したHS-400写真,仕様表等は1978年1月の
 Lo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
                        
 

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